ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
『なるほど、状況はわかりました』
『ええ、多分これは岐路っす。どちらに進むかは俺が決めて良い事じゃないっす』
そう時間は多くない。
ルプスからの報告に出たコッコドールとか言う奴は、少なくとも犯罪組織中の上役に位置する者だろう。本人が来るとは思えないが、間違いなく息のかかった存在がこの屋敷へ近いうちにやってくる。
こちらの目論見通り、目的はツアレを買い取った事をダシに更なる甘い蜜を吸うことだろうな。
つまりは好機。
我ながらツアレをゲットしておいたのはナイスプレーだったな。裏界隈の情報が多少掴めたら良かった程度だったんだけど、クライム……もといラナーからの情報。人身売買に関する法制定と絡めれば一気に価値が高まったし。
まぁそれは良い。
モモンガさんへラナーの件含めて報告をした。
『ロコモコさんは、どう思いますか?』
『……この犯罪組織を支配、あるいは傘下に置けば、王国において裏の支配者となるのは容易っす。逆に殲滅ないし二度と活動出来ない状態にしてしまうのであれば王国の国力は向上、するかはまだわかりませんが少なくとも真っ当な方向へは向かう足がかりにはなるっすよ』
モモンガさんが聞いてきたのは俺ならどうするかって話だとは分かる。
だけどだめだ、それをしてしまったら、認めてしまえば。
俺がナザリックの裏の支配者となってしまう。
それだけはダメだ。
『ロコモコさん……』
『わかって下さいっすモモンガさん、一度これを許してしまったらずるずる行くっす。相談は喜んで、モモンガさんの意を叶えるための協力も献身もするっす。だけど決定だけは俺がしちゃいけないんすよ』
俺ならこうするって考えはもちろんある。
だけどそれは絶対にしてはいけない事だ。俺はナザリックの、モモンガさんの意を叶えることこそが存在意義なのだから。
故にこうすればこうなる、ああすればそうなると可能な限り具体的なビジョンを示すことこそが俺の仕事であり立ち位置。
そしてその最大目標はアインズ・ウール・ゴウンの名を轟かせること。
今モモンガさんに決定してもらうのは、どう轟かせるかその第一歩なのだから。
『……今はとにかく金がないです。パンドラズ・アクターが冒険者として稼いでくれてはいますが、それ以外にまとまった外貨を稼ぐ手段がない。この問題は恐らく当面続くだろうからこそ解決すべき案件だと思います。ロコモコさん、王国は金のなる木ですか?』
『微妙な所っすが……植林する事は可能っすね』
王国を滅ぼすことを視野に入れて吸い尽くすか、力を残して金を引き出せるATM代わりにするかって違いはあるが。
モモンガさんは活動資金不足を当面続くだろうと言った、同感だ。
デミウルゴスの人間心理把握は進んでいるだろうが、完全なノウハウを得られたなんて段階にはまだ至っていないだろう。
『わかりました、ならその犯罪組織を囲い管理する。その上で王国には力をつけてもらいましょう、ナザリックの資金源として。
……ふふふ、流石我らがマスターさん。もう、モモンガさんってば欲張りね。
『
『やめてください!?』
あーあーよっしゃよっしゃ、やったろうじゃないか。
そうだよこれだよ、これこそ
『ありがとうっすよモモンガさん』
『お礼を言われる理由がわかりませんよ。こちらこそ、よろしくお願いします』
伝言を終える。
うんうん、やる気出てきたね。
モモンガさんは言ったのだ、要するにどっちともやれって。
犯罪組織を支配しながら、王国にある程度の力を持たせろってこった。
んじゃまぁどうしますかね。
犯罪組織を支配するのはまぁ簡単だ、ぶっちゃけ攫って拷問かけて忠誠を誓わせりゃいいだけの話。調教とも言うか。面倒くさいなら
流石に芽を残してはおけないからまるっと組織そのものをいただけるようにしなきゃならないが、ありがたーい事に向こうからやってくるんだ、馬鹿だよなー詰めをかける時こそ一番警戒を高めないといけないってのに。
自分たちこそが上にいると思ってるんだろう、大きく振る舞えばそれが当たり前に通ると思ってるんだろう。今までそれがまかり通ったが故に。
知らないだろうから教えてやるよ、獲物の気持ちってやつを。
「……あぁ、そういやルプスは殺したいやつがいるって言ってたか」
えらい剣幕で言われたしな、そいつはあげよう。
ソリュシャンにしてもそうだ、拷問するのを任せたらご褒美になるだろうか? 聞いてみよう、せめてストレス発散位にはなればいいな。
組織をまるっと頂くが、別に原型を留めておく必要はないんだし。
やっぱり考えないといけないのはどうやって王国に力をつけるかって部分だな。
それはまぁ王国の裏を知り尽くしてるらしいこいつらの持つ情報次第ではあるけど、ラナーと直接会う必要も出て来るか。
「できれば、ラナーに対して上から構えたいところだけど」
第三王女を旗に、王国の治世へ介入することが出来れば。
何とも言えないマウント合戦だ。
取れたと思っても、実は取らされたんだよみたいなこともあり得るし。
結局ラナーの持つ欲望というか、望みを知らなきゃ無理か。
それは言い換えれば弱みだ、握っておかなきゃならないだろう。
「まぁこいつらからわかる事もあるだろう……さて、誰が来るのかは知らんがどうでもいい。精々ナザリックの役に立ってくれ」
笑わずにはいられない。
「あなたは世の渡り方をよくご存知だ……今回の件が終われば、良き関係を作り直したいものです」
サキュロントと言ったか、屋敷を出る間際俺に対してそう言い残した。
「ルプス、あいつらを尾行しろ。無いとは思うが二手に分かれるような事があればサキュロント、あのフードの男を優先。何処かの建物に入れば伝言をくれ、位置は
「はっ」
ルプスレギナが姿を消して音もなくこの場を後に。ソリュシャンがドアに向かって塩を投げつけてるのを見ながら、割と感心している。
「……あの喧嘩騒動を収めたところから、か」
「ロコモコ様?」
俺の存在を晒したのは酔っ払いの喧嘩を収めた時と、裏路地でクライムとやり取りした時だけ。
クライムとのやり取りは事前に周囲の気配を確認していたし、実質喧嘩仲裁の時だけにも関わらずちゃんと把握していたということだろう。
「いや、思ってた以上に優秀な組織だと思ってな」
「……そうなの、でしょうか?」
「あぁ。喧嘩仲裁で俺を知り、ツアレを助けたことによって人柄と身分を推測したんだ。こうして直接会うのは初めてだが、あいつらに動揺は見られなかった。予測の内ってことだったんだろうな」
スタッファン・ヘーウィッシュ、だったかあの巡回使とか言う役人は。
頭ごなしに恫喝してくる上に下手くそな演技。ありゃただの愚物だったが、サキュロント自身か彼に指示をした存在は優秀だ。確実にこちらへ詰みをかけてきていた。
「しかし、ロコモコ様にあの様な態度を」
「構わない、あちらが想定した通りの人物を演じる必要があった。むしろよく我慢してくれたな」
「勿体ない御言葉です」
正義感、あるいは哀れみからツアレを保護した慈悲深き大商人。
なんとも反吐が出る人物像ではあるがセバスが王都で築いた偽造身分のこともある、俺はその主として顔を合わせる必要もあったし仕方ない。
その甲斐あって相手方からすれば実に御しやすい相手だと思われたことだろう、サキュロントが最後に言った言葉は遠回しな傘下への誘いでもある。
「改めて王都、いや王国か。思っていた以上の泥舟だな、掌握した後のことを考えれば頭が痛い」
スタッファンは本物の役人だろう、あの欲望丸出しの視線や恫喝。今まで甘い蜜を吸いきってそれに慣れきっている様子を見るにだが。
つまりは役人、貴族が犯罪組織と通じている証明。
組織さえ掌握してしまえばほぼ王国を牛耳られるという証左でもある。
「ソリュシャン」
「はっ!」
「俺はルプスの報告を待ってからだが、ここから出ることになる。その間、ツアレの警護をしつつこの屋敷へ
「かしこまりました、また遊びを許可して頂き有難うございます」
俺とルプスが動いている間に
転移は道具生成で対象一体を指定の場所へ送られるものが作れるし、ルプスの支援があればそれなりの数を連れてこられるだろう、問題ない。
サキュロント、スタッファンどちらかへ支配をかけ情報を割らせる。出来ればコッコドールとか言うやつも居てくれればもっとスムーズにことが運ぶだろうが……居るかは五分五分だな。
『ロコモコ様、二人揃って建物に入りました』
『わかった、すぐに向かう。他に出入りが無いかだけ注視しておき俺を待っててくれ』
『かしこまりました。お待ちしています』
よし。ここからはスピード勝負。
ラナー陣営には何一つ渡さない、全て攫いきってやる。