ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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尽き果てるまでの心

 どうしてこうなった。

 いやまじでどうしてこうなった。

 

 あのカオスをモモンガさんが強制的にといって良いだろう締めて、しばらく動けなかった俺に声をかけてくれたのは……誰だったっけ? やばい、頭の中真っ白すぎて何も覚えてねぇ。

 

 えーと? とりあえず?

 

「何? これっていわゆるお父さん公認のお付き合い的な?」

 

 わけがわからないよ。

 

 いやいや、現実逃避やめよう俺。

 まずは冷静になって現状を見直すんだ、それこそ勝利への第一歩。何を以て勝利というのかわからないけど。

 

 真っ白な頭とは言えなんだったか。

 確かソリュシャンもルプスレギナも先にプレアデスへの引き継ぎを済ませるって言ってたよな。

 いや、俺が言ったんだ。一旦頭を整理したいから先にしてきてくれって。

 

 ソリュシャンはセバスに王都での活動詳細を、ルプスレギナはカルネ村に関してを。

 

 うん、そうだ、思い出してきた。

 

「えーと? 俺に合わせるって言ってたよな? まとまればお呼び下さいって」

 

 どれくらい時間がかかるかわからないけど……って結構時間経ってる、こりゃそろそろ呼ばなきゃならん。

 

 諜報部隊として今後の活動をどうするかってのは結構考えていたし、まずはそっちから詰めるか。

 んじゃ呼び鈴っと。

 

「お呼びでしょうか」

 

「あぁ、ソリュシャンを呼んでくれ」

 

「畏まりました……わん」

 

 ん? ペストーニャ? ってあぁ、行っちゃった。

 

 餡ころもっちもちさんの創ったNPC、確か優しいって設定だったよな? んー……ソリュシャンの事はともかくとしても相談してみるか。

 

 いやいや、切り替え切り替えっと。

 

「お待たせ致しまして申し訳ありません、ソリュシャン・イプシロン。御身の前に」

 

「ありがとう。引き継ぎはもう終わったか?」

 

「はっ! 滞りなく完了しております」

 

 っとー……めちゃくちゃ気合い入ってるな、一目でわかるくらい。

 俺も気合いを入れよう、大丈夫自分の口で言ったじゃないか、お前の上司になることとはって。

 

 ここで堅苦しいのは止めようなんて間違っても口にしてはいけない。

 そうさ、わかってる。ソリュシャンが俺に対して忠義を向けたいが為に頑張ってくれていたことなんて。

 少なくともソリュシャンに対しては絶対たる上位者として振る舞わなければならない。それが何よりの礼儀でありソリュシャンの心に報いることだ。

 

「よし。まずは今日に至るまでの活動、よく務めた」

 

「勿体ない御言葉です。全てはロコモコ様のお導きあってのこと」

 

「それは違うなソリュシャン。モモンガさんに副官を誰にするかと聞かれた時、俺はお前をと即答した。そしてそれはお前が使いやすいからと思った等という理由じゃない、お前が相応しいと思ったからだ。導かれたなんて言うな、お前が自ら掴み取ったんだ」

 

 言ってみればソリュシャンは一瞬身体を震わせる。

 別に聞こえの良い言葉をと思ったわけじゃない、本心だ。

 確かに役割上俺が担えない部分を埋めてくれるって目論見はある、だがルプス以上にソリュシャンはその時すべき事を考えるって面が長けている。

 

「俺は事前にあの屋敷へ送る人間をどう篩にかけるかとお前に伝えなかった。しかし、結果を見れば実に良い塩梅で振り分けてくれた。ルプスでは出来ないだろう、お前だからこそ出来たことだと俺は思う」

 

「勿体ない……御言葉です……!!」

 

 ルプスじゃきっと全員情報を吐くだけの機械にしてただろう、言ってしまえば廃人にまでしていたと思う。

 顕著なのは何も伝えないまま、その場で閃いただけの娼館に捕らえられていた女の扱い。

 扱い方にまで考えが及んだわけじゃないかも知れないが、しっかり他のモノとは違う意図を感じ取ったという証明に違いない。

 

「ソリュシャン、お前を部下として信頼する。俺達はチームだ、突発的、瞬間的な判断を要する時は必ずある。そんな時に限らず、お前が俺の意図を探り思考し活かせるよう動くように、俺もまたお前の意図を探り思考し、我が意を簡単に優先せず、大切な意見として扱いナザリックへ活かせるよう考慮することを誓おう」

 

「――」

 

 ソリュシャンは黙って平伏した。そしてそれを俺は止めない。

 

 これが俺とソリュシャンの新しい関係なんだ、在るべき状態なんだ。

 

「顔を上げろ」

 

「はっ」

 

 ショゴスでも涙は出るんだな、なんて思いながらではあるけれど。

 

「ソリュシャン、よろしく頼む」

 

「この身、この心。全てをナザリック、そしてロコモコ様のために捧げ、死力を尽くしお役に立てるよう忠義に励む事を誓います」

 

 こうしてプレアデスではなく。諜報部隊副官、ソリュシャン・イプシロンが誕生した。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 あの後は今後の打ち合わせだった。

 まずはアウラとマーレが作り上げた地図を見て、ガワとしての世界環境、情勢を確かめる。

 その上でどの国をどう扱っていくかを検討し、そのために動いていくなんて話。

 

「まぁ性に合わないなぁ……」

 

 モモンガさんやっぱすごいよね、支配者ムーブしっかり出来てるわけだし。

 影でこっそり苦悩はしてるんだろうけど、その苦悩を払うことだって俺の仕事なわけだし。気張らないとな。

 

「しっかしソリュシャン、中々に積極的だね」

 

 質問や意見交換が活発だった。

 少しでも多く俺の意を把握しようって姿勢が見えたし、自分の考えを理解してもらおうと意見を出してきた。

 

 紛れもない成長だ。

 少し過激というか冷酷が過ぎて情報を活かしきれない面はあるけど、こうして打ち合わせを重ねていけば解消されるだろう確信がある。

 

「んで、だよ」

 

 問題……って言ったら違うか。

 ルプスの俺を愛したい発言だよ、それをモモンガさんが俺をすっ飛ばして認めた発言だよ。

 

「……ペストーニャ」

 

「はい。お呼びでしょうか、わん」

 

 いい加減向き合おう、別に好きなものも嫌いなものも最後に残す様なタイプじゃないはずだ俺は。

 

「ペストーニャは俺のことが好きか?」

 

「……しょ、少々お待ち下さい? ……ふぅ、それはもちろんでございます、わん。私だけではなく一般メイドに限らずナザリック全ての存在がそうです、わん」

 

「では俺を愛したいと思うか?」

 

「……あの、畏れ多いこと存じておりますが。これがいわゆる愛のムチというものでございますか? ……わん」

 

 ……うん、愛のムチ(パワハラ)ですねほんとうに、ありがとうございました。

 

「悪い、そういうつもりはなかった」

 

「であれば、こちらこそ申し訳ありません。不敬をお許し頂ければこの上ない喜びでございますわん」

 

「うん、許す」

 

「ありがとうございます。そして先程の御言葉に対する答えですが……思わない、でしょう。無論、お許し頂ければ全力で、ご命令であれば全てを捧げて愛することお誓いできますわん。ですが、そういった意味ではないのでございましょう? わん」

 

 その通りだ。

 NPC達はそうあれかしと設定され創られた存在だ、何処までもその範疇を超えない。

 いや、設定のもと自分で思考し設定に行き着くという言い方が正解だろうか? アルベドなんかが良い例ではある。

 元の設定を書き換えたことにより、モモンガさん個人を愛するようになった結果、アインズ・ウール・ゴウンを憎んだ。少し言い方を変えるのであれば、アインズ・ウール・ゴウンを憎むことがモモンガさんへの愛情の証明なんだ。

 

 それを加味してアルベドには、俺はモモンガさんを幸せにしたいからこそ戻ってきた。という部分において信頼されているはずだ。

 それこそその部分が揺らいでしまえば容易く再び憎悪されるだろう。揺らがせる気持ちはないし、そんなことしそうになりそうであれば、なる前に自分を殺す所存だが。

 

「あぁ。ペストーニャ、その通りだ。お前が今優しさで言い難い事を述べてくれたように、そうあれかしという部分はお前たちの行動、思想原理そのものだ。遅くなったが礼を言うよ、ありがとう」

 

「勿体ない御言葉ですわん」

 

 つまりルプスは俺を愛すると獣王メコン川さんに設定されたが故に愛したいと許しを請うたのか。

 自身の成長により自分で考えた結果として俺を愛したいと願ったのか。

 

「恐れながらロコモコ様」

 

「うん? なんだ?」

 

「確信を持って申し上げますが、我らナザリックに生きるもの一同。至高の41人の御方達、誰からどのように扱われましても、須らく喜びでもって受け入れることでしょう。……わん」

 

 ……なるほど? と言うかそれを問題視してもいるんだが。

 

「再び恐れながらも。誰からどのようにと申しましたのは、御方達が思われるベストを向けられることに強く喜びを感じると申し上げました。私は愛という感情を深く今は理解できません、しかしながらもロコモコ様が思う最大の愛を頂戴下さるのであれば、まさにこれ以上の幸せは無いと思うのです、わん」

 

 ……はぁ、やっぱりさ。

 

「……そうあれかし、か。やれやれ、やっぱりペストーニャは本当に優しいな」

 

「勿体ない御言葉です」

 

 ナザリック最高かよほんとさ。

 

 要するに俺のやりたいようにやれってこった。

 思うがままに振る舞うこと、それこそが自分たちの喜びであり幸せだってよ。

 

「よっしペストーニャ。それじゃルプスを呼んでくれ」

 

「畏まりました。……えっと、呼んだ後は何時間ほどここを離れ、誰も来ないよう配慮すればよろしいでしょうか? ……わん」

 

「……お前さぁ? いや、良いよ。ご休憩だって配慮にしてくれ」

 

「畏まりました。では、失礼致しますわん」

 

 

 

「ろ、ロコモコ様、せ、専属メイド、る、るるルプスレギナ! 御身の前に!」

 

「あぁ、遅くなってごめんな」

 

「と、とんでもございません! え、えっと! さ、先程の醜態、どうかお忘れになって頂ければ……じゃないっす! 忘れられたら泣いちゃうっす! えぇと、えっと!?」

 

 うーわー、めっちゃテンパってる。

 いやまぁ俺も人のこと言えねぇか、手汗がとてもやばい。

 

「ルプス」

 

「は、はいっす!」

 

「引き継ぎはちゃんと出来たか?」

 

「はい! と、滞りなく! ゆ、ユリ姉が……で、ではなく! ユリ・アルファに引き継いでおりますっす!」

 

 口調もうめちゃめちゃじゃん? くっそ可愛いんだけど?

 あー元気っ娘が、異性と忠義に揺らぐ様に心がわんわんするんじゃぁー……。

 

 ん、んっ!

 

「ルプス、お前は俺の専属メイドだろ? 口調もそうかしこまらなくていいさ、その方が楽なんだ」

 

「で、ですが! ほ、他の者に示しがつかないっす! ってあぁ!? ほ、他の者に示しがつきません、どうかお許し頂ければこれ以上の喜びはありません!」

 

 やれやれですなぁ。

 いやまぁ、やっぱ好みどストライクなんだよな、メコさん……良い仕事しやがって。

 

「じゃあ二人きりの時だけでもいい。それで今は二人きりだ、どうだ?」

 

「う……ずるいっす、ロコモコ様」

 

「様も要らない」

 

「あうあー……畏まりました、ロコモコさ……さ、ささ、さ……さん」

 

 まぁこれくらいがいい塩梅かね。

 後は時間が解決してくれるだろう、そう思おう。

 

「まずは副官の件、悪かったな、選ばなくて」

 

「と、とんでもないっす! 御心のままにっす!」

 

 あぁいやいや、平伏しなくていいってば。

 

「それで、だ。俺の専属メイド、ルプスレギナ・ベータ」

 

「っ! はい!」

 

 うお、めっちゃ姿勢良くなった。

 この辺やっぱプレアデスというかナザリックの存在だよね。自分の立場を意識させると一瞬で切り替わる。

 

「ありがとう、お前の忠義と愛情。嬉しく思う」

 

「――っ!」

 

 あら、一瞬ガッツポーズしようとしましたね? 良いんですよやっても。

 

 ……落ち着け、ちゃんと言おう。

 

「その上で、だ。ルプス。これを受け取って欲しい」

 

「こ、これは……」

 

 ホントなら慰め用というかでクラフトしたもんなんだけど。

 ちょっと別の意味になっちゃったな。

 

感知増幅(センサーブースト)と同等の効果がある腕輪だ、褒美とか贈り物にしてはちゃちだけど……道具創造で創ったもんだ、俺が魔力を通し続けないと存在出来ない。その……俺は諜報部隊だからさ、お前と離れることも結構あると思うんだ、だから、それで俺がちゃんと生きてるというかこの世界に存在してるって知っててもらいたくて、あぁサイズは装備したら自動で合うから大丈夫だと思うんだけど!」

 

「――」

 

 うあーめっちゃこっ恥ずかしい! あーもー顔めっちゃ熱いんだけど!?

 

 って、あぁうん、ごめんそんな恐る恐るというか大事そうに受け取ってもらうようんもんじゃ――っておおい!

 

「ルプス……」

 

「えへへ、やっぱりここっす。ロコモコ様、ありがとうございます」

 

 腕輪のはずが、ルプスはそれを首に装備した。

 照れたような、嬉しいって叫ぶのを我慢してるような。

 

 ……いやほんとなにこの可愛い生物。

 

「ルプス」

 

「はい」

 

 うん、ちゃんと言おう。

 

「俺は、お前を愛しているかはわからない」

 

「……はい」

 

「わからないんだ。愛情とはどういう風に示すべきものなのか……うん、理解はしていた(・・・・・・・)はずだけど。今の俺は、どうすればそれを示せるのかがわからない」

 

 かつてリアルに生きた頃の俺だったら、きっとわかっていたはず。

 だけどロコモコになってからは……どうもそれに違和感を覚えて、あまつさえ嫌悪感も抱いてしまっている。

 

「だけど俺はお前を愛したい(・・・・)

 

「……」

 

 好みだなんだと言うものがあるってのは否定しない。

 何だかんだ、モモンガさんのおかげで踏ん切りをつけられた。いわば棚ボタだとも理解してる。

 

 だけど。

 

「俺を愛したいと言ってくれたお前を愛したいんだ、ロコモコとして。もしかしたら歪な示し方になるのかもしれない、お前が望む形では無いのかも知れない。……がっかりするかも知れない、お前に存在しているロコモコから遠く離れた姿を晒すことになるかも知れない。だけどそれでも愛したい」

 

 残滓に引きづられてかつて人間だった頃の示し方をなぞることになるのかも知れない。

 未だ想像がつかないロコモコとしての示し方になるのかも知れない。

 

 だけどそれでも。

 

「それでも、良いか? 情けない事を言っているのは自覚している。この先ずっとこんなのかも知れない。それでも――」

 

「ロコモコさん(・・)

 

 言い訳がましい言葉が出続ける俺、けどそんな俺を。

 

「私は、ルプスレギナ・ベータは。この身、この心尽き果てるまで……いえ、尽きようともずっと。ロコモコさんを愛します」

 

「――」

 

 抱きしめてそう言ってくれたルプス。

 

 あぁ、いい女だな。

 ほんとメコさん、良い仕事しすぎっすよ、性癖ぶち抜きバトルは俺の完敗です。

 いつかこの世界で再び会えたのなら、そん時は改めてお嬢さんを下さいってやらせて下さいね。

 

「ルプス」

 

「はい。どうぞ、ロコモコさんのやり方で、愛して下さい……っす」




王都編はこれにて終了です
ここまでのご高覧ありがとうございます!
引き続き共にお付き合い頂ければこれ以上の喜びはありません。
次編はナザリック内部でのお話中心です。
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