ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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ナザリック整備編
プレアデス月例会議


 プレアデス月例会議。

 定期的にプレアデスの面々で集まり近況などの報告を、といった場。

 現在ルプスレギナ・ベータとソリュシャン・イプシロンを除く全員が既に集合している。

 

「プレアデスで集まるのも、考えた方が良いのかも知れないわね」

 

「そうぉー?」

 

「物理的に……難しい……」

 

 現にこうしていつもの時間に間に合わないという事態が発生している。

 セバスが王都への仕事へ着任し、代行という形ではあるがプレアデスをまとめるリーダーとなっているユリとてやってこれたのはギリギリだった。

 予め定められていた規定を考えれば、六連星(プレアデス)から七姉妹(プレイアデス)へ移行し、オーレオール・オメガをリーダーとする必要があったが、今後の活動へ柔軟に対応するためそのままとなっている。

 

 仕事を任される事は幸せだ。ナザリックのためとなるに何の憚りがあるのか。

 全員がそう思っている、しかし同時に若干の寂しさに近い感情を覚えてもいた。

 

「アインズ様の身辺をって任務も、最近一般メイドに任せきりですし。難しいものですね」

 

 彼女たち本来の役割を考えれば、でもある。

 寂しさというよりは不甲斐なさとも言えるのだろうか、新たに任された仕事をこなしつつその本来に従事出来ないことを歯がゆく感じていた。

 

 ユリにしても一時的にカルネ村の管理代行を行っていたとは言え、正式にスライドしてきた仕事となれば勝手が違う。ルプスレギナが培った人間関係にしてもそのままスライドしてくるわけでもない訳で、関係構築といった部分からの着手。

 

 ナーベラルとて同じく多忙だ。

 冒険者モモンに付きそう美姫、冒険者としての活動があった。

 アインズ自身がモモンとなる頻度は下がったが、冒険者モモンの活動頻度が下がったわけではない。

 むしろパンドラズ・アクターの精勤故に冒険者としての活動頻度は高まり、同様に冒険者ナーベとしての仕事も増えた。

 

 現在完全にナザリック内勤として存在しているシズとて暇ではない。

 ナザリックギミックの管理とて手の抜ける仕事でないのは勿論だが、分担していたナザリック内の業務がシズへと集中し始めたこともあり手が足りないと実感している。

 

 ではエントマはどうなのか。

 無論多忙である。内と外の連絡役として適しているが故に内外問わずの活躍というか、縁の下の力持ちといったポジションに収まる事となり、その腕を振るっている。

 忙しさのあまりおやつを働きながら食べる姿を見かけるようになったのは最近の話。

 

「明確な役割を与えられている喜びは勿論ですが」

 

「ええ、不満だなんて思わない。ただ本当に少しだけ、寂しいというだけです」

 

 もしかしたら今回が最後の月例会議になるのかも知れないと、場にしんみりとした空気が漂い始めた時。

 

「遅くなりました……どうしたのかしら? この雰囲気は」

 

「ソリュシャン」

 

 手に紙束を抱えながら入室したのはソリュシャン。

 やや疲労が見える様子ではあるが、それ以上に気力が充実してることがわかる。

 

「ロコモコ様のぉ、副官、たいへんー?」

 

「その言葉は不敬かと思うわ。でもそうね、やり甲斐……そうですわね、本当に、やり甲斐があるわ」

 

 事実ソリュシャンはやる気に満ち溢れていた。

 自分の働きがロコモコの評価に直結するといった認識も勿論あったが、何より自身の忠勤がロコモコに認められることイコール、自分を通してナザリックの僕全ての忠義が認められることだと認識していたから。

 

 そういった部分も含めてではあるが、ソリュシャンは非常に満たされてもいた。

 自分の意見、それが取るに足らないレベルのものであろうともロコモコは理由を含めてしっかり返答してくれたし、良いものであれば良いものと認めてくれもした。

 

 至高の御方に認められる。

 間違いなく何よりの至福だったし、かつての自分であれば身を喜びに震わせ動けなくなっていただろうとも思っているソリュシャン。

 しかし今は違う、もっと認められたい、もっと色々なことを知りたいと震える暇なく欲求が生まれるのだ、もっともっとと。

 

「あぁ、理解しましたわ。その気持ちは私にもあります、やっぱりこうして集まれば何と言いますか、ほっとする気持ちがあります」

 

「ソリュシャン……」

 

「ですが私は思うのです、今こそが忠勤を示す時だと。ロコモコ様は今を土台作りと仰っておられました。下地を作り、その上にシステムを構築する。それが出来た時、無理なく満足感をもって仕事が出来ると」

 

 現状を放っておく気はアインズにもロコモコにも無かった。

 慣れない仕事、したことのない仕事をするということはそれだけでストレスであり、負担。

 それをすることで何かを犠牲にする可能性は誰しもにあった、プレアデスで言えばこういった月例会議という交流だったし、コキュートス等は蜥蜴人の統治に忙しく本来の守護者としての役割をしっかりこなせていないのではないかと悩んでもいる。

 

「負担等と思いませんとは申し上げましたが、そこは固く放置してはいけないとも言われました。そして、これですわ」

 

「これ、ですか?」

 

 ソリュシャンが紙束から取り出した一枚の書類。

 ユリが受け取り記載されている文字を読んでいく。

 

「業務、改善計画……週、休二日制? ええと、これは?」

 

「アインズ様とロコモコ様が共同でお考えになられたものです。草案であるとのことで、更に発展させて欲しいとのことですわ。まずはプレアデス、そして一般メイドから意見を募りたいということです」

 

 自分たちの意見など、と驚きを顔に表すユリ達。

 しかしながら御方達のご意向ならばと真剣に書類を回し読む。

 

 平たく言えば休日の制定といったものであった。

 ナザリックへ尽くすことこそ喜びであり全てという考え方の彼女たちであるが故に、変な発想……暇を言い渡されているのではないかと不安になりもしたが、ソリュシャンが上手く伝え直す。

 

「英気を養う……というよりは思考を整理する時間を作るとも言えるかも知れません。その日までに行ってきた仕事を振り返るでも良いのです。そういった時間を作ることで、次に仕事へ向かう時新たな思いで向かえると」

 

「確かに、効率はわかりませんが効果的であるかもしれません」

 

 ユリはなるほどと頷く。

 ナーベラルやシズ、エントマも続いて頷きながら今までそういった事を大事にしてきただろうかと省みる。

 

「それに、まずはプレアデス、一般メイドからという言葉通り、試験的に休日を制定されるそうです。まずは、その休日に月例会議……いえ、週例会議を行ってみるというのも良いかも知れませんわね」

 

 ソリュシャンの随分と綺麗な笑顔にユリは思わず手を叩いた。

 続いて自分たちが感じていた寂しさもお見通しなのであろうと、苦笑いが浮かぶ。

 

「本当に、アインズ様もロコモコ様も……慈悲深い御方です」

 

「頂けた慈悲を無為に帰すわけにもいかないわ。この機会にしっかり考えないと」

 

 ユリが危うく感涙にむせび始めるのを制して、ナーベラルがキリリと言うが、同じく目端は光っている。

 

「そうですね、しっかり皆で考えましょう。……ところで」

 

「ルプー、おそいぃ」

 

 それなりの時間が経過してもまだ姿を見せないルプスレギナ。

 事前に確認して参加すると返事をしていたものの、ここまで遅いと何か緊急事態でも発生したのかと心配してしまう。

 

「ロコモコ様の専属メイドですもの」

 

「はりきるのも……わかる」

 

 ソリュシャンの言葉にシズは頷く。

 なんとなく含んだソリュシャンの言い方が気になったユリ。

 

「やっぱり、怒ってる?」

 

「怒ってなどは。まぁ確かに当て馬にされた気分ではありますわ」

 

「当て馬?」

 

「私が副官に選ばれたからこそルプーは専属メイドの立場を頂けた。それを上手く処理出来ない面はあります。けど」

 

 逆ならばどうだっただろうかとも思うのだソリュシャンは。

 あの場で選ばれたのがルプスレギナであれば、自分は肩を落としながらも別の褒美を頂戴していただけなのではないか、無垢な者をなんて言っていただけなのではないのかと。

 

 アルベドかシャルティアがアインズに正室として選ばれた後、自分は側室を狙ってみようか。

 なんて目論見もかつてぼんやりと考えてみていたように、ご寵愛を至高の御方に求める心がないわけではない。

 

 だが。

 

「あそこまでまっすぐ私は求められる気がしませんわ。処理できない面は確かにあります、けどそれ以上に尊敬する気持ちが強いのです」

 

 穏やかに笑ってソリュシャンは言う。

 その笑顔は姉妹であっても初めて見るもので。

 

「今のソリュシャンなら、受け入れて頂ける様な気もしますが」

 

「あら? そうであればそれ以上の喜びはありませんわ。けど、まずは副官としての仕事をしなければなりません。そう、今の私は仕事が恋人ですもの」

 

 全員で笑い合う。

 

(あぁ、やっぱりこの時間は……失いたくないな)

 

 ユリがそうしみじみと思った時。

 

「っ!? ル、ルプー?」

 

「いやー! ごめんっす! おまたせっす!」

 

 元気よく入室してきたルプスレギナ。

 もう誰が見てもご機嫌、超ご機嫌といった様子で。

 

「ルプー……すごく、元気」

 

「シズちゃん! 私はいつも元気っすよー! あぁでも今日はいつも以上に元気なのは否定しないっすけどね! ビンビンっす!」

 

 なんとなく。

 そう、本当になんとなくルプスレギナの言葉で部屋の温度が下がった気がしたユリ。

 

「なんでぇ、そんなに元気なのぉ?」

 

「おっ! エンちゃんも聞きたいっすか? 聞いちゃいたいっすかぁ!?」

 

(聞くの!? 止めて! それはきっと地獄の蓋を開けることになるわ!?)

 

 ちらりと横目で、温度を下げただろう存在を見やるユリ。

 

「――」

 

 そこには先程浮かべた笑顔のまま、自身の背後に漂う空気を重くし始めたソリュシャンがいた。

 

「いやー! でも言うようなものじゃないっすよー」

 

「勿体ぶるのは変わらないわね。……でもどうしてさっきからお腹を撫でているの?」

 

(いーやー!? 触れちゃダメだってボクの勘が言ってる! なんで貴女にはその勘がないの!?)

 

 目を覆いたい気分だった。

 ルプスレギナはさっきからこれ見よがしに下腹部を撫でている、まさに誰か気付いてと言わんばかりに。

 

「あー申し訳ないっす、ついつい触っちゃうんすよね……なにせここにご寵――」

 

「ルプスレギナァァアアア!!」

 

「うわっ!? ソーちゃん一体何すかぁ!?」

 

 ソリュシャンはキレた。そりゃあもうキレた。

 こちとら一生懸命色々な気持ちに一旦折をつけようとしてるのになんだこの能天気馬鹿はとキレた。

 

「あ! だめっす! 私にそんなことしたらロコモコ様が悲しむっす!!」

 

「ムキィイイイイイイイ!?」

 

 どったんばったん大騒ぎ。

 

「ユリ姉」

 

「なんですか? ナーちゃん」

 

 そそくさとユリの後ろに回ってきたエントマとシズ。

 隣に呆れた様な顔をしてやってきたのはナーベラル。

 

「月例会議、今後もやりますか?」

 

「……前向きに検討することを善処します」

 

 続けるようになろうとも、終わることになろうとも。

 

 もうかつての月例会議は戻ってこないんだろうなぁと、二人が大暴れする光景を見ながらユリはため息交じりに確信した。

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