ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
「なぁアルベド。ちょっとモモンガさんに反逆しようと思うんだが」
「何を仰られますか、お戯れにしては言葉が過ぎるかと」
言葉が過ぎるどころかやべぇんですが。
うーん、思ったよりアルベドから強く信頼されているらしい、咎める口調ではあるけど緩やかに笑ってる。
そんなことするわけがないと思ってもらえてるみたいだ。
いや嬉しいのは間違いないんだけど。
言っておいて真面目に反逆したいと思ってるわけでもないしな。
「むぅ、まともに聞いてほしいんだがな? 仕方ない……上手く出来ればアルベドがモモンガさんの妻となれるかも知れなかったが、その信頼を裏切るわけにもいかないな」
「詳しくお話頂ければこれ以上の喜びはございませんっ!!」
はい大勝利、ルーザーアルベド。決まり手、モモンガさんはあんたの夫。
なお、誰が正妻かとは言っていない。
さてさて、現在ナザリック内部の整備に関してアルベドと話を詰めている最中。
モモンガさんにはめられた俺はルプスレギナを専属メイドにできましたやったぜ。……ではなく、このまま枕に涎零して濡らしているだけはいられない、プライド的な意味で。
ちらりと後ろを見てみればおすまし顔でいたルプスレギナは視線に気づいてにっこり笑顔を向けてくれた、くそう愛してる。
ともあれいじるいじられるの関係は極めて繊細だ。
このまま主導権を握られているわけにはいかないのだ。
「社内恋愛を大々的に認める……いや、推奨しようかとな」
「社内恋愛、でございますか?」
いまいちピンと来ない様子、いや急に社内とか言われてもまぁわからんわな。ナザリックは会社じゃないし。
「さてアルベド、デミウルゴスとセバスの仕事に関しては把握しているだろう?」
「無論でございます。既に実験含めた報告書が何枚もあげられておりますし、内容も把握しております」
「流石アルベド。前から言っているようにこの仕事は人間の心理を把握して、より効率的かつ効果的に人間を使うためのものであるが、狙いとしてはもう一つある」
そこまで言ってみればアルベドは首を傾げた。
美人なんだよなぁという感想はさておき、こと人間に関してはやっぱり下等生物認識が強くて額面上だけで受け取りがちだよな、ナザリックのほぼ全員がそうだけど。
「それがヒトの営みを知ること、だ」
「営み、でございますか? 申し訳ありません、蒙昧である私にはその深思を理解する事できず……」
「いや、言葉が足りなかったな。ヒトに限らず生物の営みと言うべきだった。平たく言えばアルベド、たとえばお前がモモンガさんの子を授かり産んだとして――」
「くっふーー!!」
あ……やらかした。
いやでも、他にたとえようがなぁ……。
「か、重ねて申し訳ありません。そ、それで? アインズ様のお子を私が授かったとして?」
「あ、はい。とりあえずその鼻息を落ち着かせて下さいお願いします」
はいはいステイステーイ、アルベド。
あ、落ち着いた? うん、じゃあ話すけどまた倒れないでね?
「その子供をアルベドは愛せるか?」
「当然でございます!」
「それは何故だ?」
「……はい?」
おっと、こっちのが逆鱗だったかな?
「いやすまない、アルベドの愛情を疑っているわけじゃないんだ。要するに、お前はモモンガさんを愛する女としてその子を愛するのか、その子の母であるから愛するのかといった話だ」
まぁ人間であればそれは両方、あるいはそれらの理由とその他諸々含めてだろう。
どれか一つというわけではないはずだ、全てが愛する理由となる。
「そう仰られますと、確かにこれこそがとは言えません。なるほど、アインズ様を愛することに理由は要らないと思っておりましたが、そういうことでございますね」
「言っておくが、今アルベドが言うそういうこととした部分は俺にわからない。そして恐らく違う誰かに聞いたとしてもわからない。千差万別だろうからな、また別の者は違う答えに行き着く可能性、いや違って当然だと俺は考える」
希薄になった人間性ではそのあたりの機敏へ想像が及ばない。元人間だった俺でさえそうなんだ、NPCたちはそれ以上に掴めていないはず。
ただ少なくとも、アルベド然り、多くの生物は愛する相手との子供だから愛せるというのは間違いないだろう。
「理解致しました。それを知るために営みを知れと」
「そういうこと。教科書作りは順調だ、だが教材から学べる事は多くとも実践出来なければ意味がない。そこで社内恋愛推奨だ」
営みを知り、自分たちならではの営みを模索する。
理解できないものは怖い。ナザリックにおける人間排他はモモンガさん原理主義を確立させる上で重要ではあるが、手に入らないものもある。
その補完をこれで担う。
「生産性という面では効率的とは言えないがな、モモンガさん然りの召喚、自動湧き等に比べるまでもない。生命の営みへ通じるという意味として恋愛があるのならばいまいち適しているわけではないが、平たく言えばもっと交流を深めましょうという話だ」
「はい、仰られた意味はよく理解できました。人の営みを通じ、実践し己達の営みを知り、再びそれを人間達を利用することへおろす……。恐らく知ったからこそ余計に排他するものも現れるでしょうが、理解及べたものこそが外で働く適性を持つものであると」
さっすがアルベド、素晴らしいね。
まぁつまりはそういうこと。
知るということは考えを及ぼせる様になるということだ。
「関係性の強化とも言える。蜥蜴人然り、お互いの関係から生まれる何かが強さを増す可能性はあるんだ、あいつらに出来てナザリックの者たちが出来ないということはないはずだ」
「デミウルゴスにしても配下との関係性が良くなった結果、巻物の生産性向上と言った結果も出ております。なるほど、ナザリック内において交流を深め関係性を高める重要性……理解いたしました。ですが、その……」
うん? どうしたのアルベドもじもじしてさ。
「わ、私がその、アインズ様の妻にという言葉へ、どう繋がるのでしょう? 愚かな私にご教授下されましたらこれ以上の喜びはありません」
あーっと、そりゃそうだ。
アルベドにしたら一番気になるところはそこだもんな、さっきから悪かったよほんと。
「関係性には名前がつくんだよ。ポジティブな意味であるなら友人、恋人……その中に夫婦と言うものもある。ネガティブな意味であってもそうだ、怨敵だとか名称であらわせる」
「はい、理解できます。恐れながらもロコモコ様と私であれば上司と部下と言ったように、でございますね?」
「そう。だが、それ一つではない。モモンガさんの幸せを望むといった意味において俺たちは同志と言った関係性を示す言葉にもあてはまるだろう。こんな感じで関係性は一つだけで全てを示すことはできないんだ。俺とルプスは先の件から主とそのメイドになり上下関係が築かれたが、これもいずれまた変わる」
ピクリと後ろで動く気配。
あぁいや心配するなと、俺がお前を捨てるわけがないだろうと。
「変わると仰いますと?」
「あぁ、嫁にする。いわば夫婦になるわけだ」
あ、ざわざわ気配が収まった? うん、安心してくれたかな?
……代わりに前からとてつもないプレッシャーを感じるけど。
「……申し訳ありません。不敬どころか許されない事と理解しておりますがぶん殴ってもよろしいでしょうか」
「待て待て待て!? 悪かった! お前とモモンガさんに先んじて関係を進めたのは悪かったって! 惚気たいわけでもない! だけど落ち着いて話を聞いてくれ!? ほら、そんな血涙流しながら手を奮わせるな!?」
ふふふ、怖いです。
いやまぁ、愛されてるなぁモモンガさん……。
「いずれと言っただろう? モモンガさんに先んじてしまったのは俺としても痛恨なんだ。だからこそ、次のステップだろう夫婦ってのはまず先にモモンガさんがと思ってるんだよ」
「そ、それはつまり私を!」
「いや、そこははっきりしておこう。俺はモモンガさんの嫁になりたいと思う存在を全力で支援すると約束するが、そう思っている者はアルベドだけではないだろう」
「むぅ……」
ふくれっ面のアルベドもいいね! とまぁ感想はさておき、例えばシャルティアだって狙ってるというかなりたいと思ってると話は聞いたし。依怙贔屓は良くない。
「だが前提としてモモンガさんが幸せになれるだろう相手、という言葉がつく。そして俺の目から見て、条件を達成しているだろう存在は少なく、アルベドが達成するに一番近い位置へいると思っている。違うか?」
「っ!! 相違ありません!」
「ならばアルベドがモモンガさんの妻となれるよう協力は惜しまない。存分に頼ってくれ、そして早く俺とルプスを夫婦とならせてくれ」
「畏まりました。持て得る力、全てを使いお望みを叶えますこと誓います」
ククク……そうだ、それでいい。
モモンガさぁん? よぉくもやってくれましたよねぇ?
目には目を、歯には歯を、ってのはダメですけど幸せパンチのお礼は幸せパンチしてもいいですよねぇ?
覚悟して下さいよぉ? このお礼はきっちり倍返ししますからねぇ? ククク。
「あ、あの……ところでロコモコ様?」
「ん? なんだ? 早速何か手を打つか?」
流石アルベド、一刻も早くってか? いやん、素晴らしいわね。
「いえ、確かに動きたいこと山々ではございますが。後ろをご覧くださればと」
「え? 後ろ? ……ル、ルプスゥ!?」
恐怖! ロコモコは見た! 血の海に沈む将来の嫁!
え? あれ? 一体何が?
くそう、伏兵か!? や、やるじゃないアルベド……!」
「いえ、私が何かをしたわけではありません。アインズ様の名に誓って」
「な、なら一体誰が……! くっ、見つけたらただではおかんぞ……!」
「ですが犯人でしたら存じ上げております。どうぞ、こちらを」
うん? 鏡? まさかここに犯人が映って――って俺じゃん。
え、何? どういうこと?
「犯人はロコモコ様でございます。お気づきになられませんでしたか? ロコモコ様がルプスレギナを嫁にすると言った瞬間よりこうなっておりましたよ」
「なん、だと……」
なにそれ怖い。ラブコメ怖い。
いやいや、そんなことあるぅ? ここナザリックだよ?
「はぁ……いえ、申し訳ございません。僭越ながら、アインズ様がかつて口にした言葉をロコモコ様へ」
「な、なに?」
「リア充爆発しろ」
……はい、大変申し訳ございませんでした。
「ロコモコ様?」
「なんでございましょう?」
「ルプスレギナをこのようにするその手腕、お見事でございます。アインズ様と結ばれるため賜りますご支援、不敬ではございますが大変期待しております」
「……はい、誠心誠意、この身、この心を尽くして支援します所存です」
あーうー……なんだかなぁ、こりゃ暫く誰にも弱いかも知んねぇな俺。
やれやれ。
「えへ、えへへ……ロコモコさまぁ……愛してるっすぅ……」
「はいはい、俺も愛してますよー」
鼻血を流しながらもトリップしてるらしいルプスを介抱しながら。
爆発させられないよう頑張ろうと、心に決めた一日だった。