ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
なんと言うか、なんと言うかである。
ナザリックまでの道中、表情豊かに話しかけてくるアウラと相対してもなおいまいち信じられなかったが、どうやらNPCは自我だろうか、そういったものを得たらしい。
しかも向けられる感情がおおよそ敬意のようなもので、こそばゆいったら無い。
ルプスが卒倒した理由はわからないけど、その様子を見て折角握手で身体を起こしたばかりのセバスとユリが再び平伏しだした時はマジでどうしようかと。
「モモンガさんに、色々聞かなきゃな」
「アインズ様もロコモコ様と同じ気持ちでございましょう」
目の前の扉を開ければその人がいる。
後ろに控えているのはセバス。ルプスはユリが何処かへ連れて行った。
と言うかアインズ様って。
多分モモンガさんのことを指してるんだろうけど、改名したのか?
理由を聞いても謝られた後、直接聞いて欲しいなんて言われるし。
うーん。
正直に言えばやっぱり引け目を感じている。
引退を明言したわけじゃなかった、けどサービス終了その瞬間まで結局顔を出せなかった嘘つきだ。
こうして何の奇跡か再び会えるわけだけど、それでもここはかつてのよく知るユグドラシルじゃあない。
「さぁ、ロコモコ様」
「あぁ。そうだな、俺らしくもない、か」
よっし、踏ん切りついた。
セバスにありがとうと言えばもったいないお言葉ですなんて言われるし、多分どうあがいても今の所
そう腹を括って、扉を開けた。
「ロコモコ、さん」
「――」
あぁ、モモンガさんだ。
よく知っている、よく見た、その姿。
「……約束破りには、なってねぇっすかね?」
「はい。でも、ギリギリですよ? 次からは、だめですからね?」
気づけばどちらともなく近づいていて。
「はは、やっぱ骨の感触なんすね」
「ええ、アンデッドですから」
笑って握手を交わしていた。
「顔をあげよ」
玉座の間にナザリック大集合。
こうやって見ると迫力満点だ、なにせ多種多様にも程があるが様々な人間を除いた種族達が俺達に頭を下げている光景。
かつてのリアルじゃどうあがいても見られないわけだし。
「知っての通り、我が心腹の友。ロコモコさんが帰ってきた。まずはそのロコモコさんの話を聞いて欲しい」
うひぃ、一斉に頭が上がって視線がこっちに!
やばい、めちゃくちゃ緊張するぞモモンガさん。よく今までその魔王ロール崩さずやってきましたね、流石ギルマス。
「最初に何より皆へ感謝をしたい。ありがとう」
言いながら頭を下げた瞬間場が騒然とした。
大丈夫、モモンガさんからある程度聞いてこれくらいは予測済みだ。
「こうしてアインズ・ウール・ゴウン、ナザリックが健在であること。モモンガさんはもちろん、皆のお陰だ。よく、やってくれた」
そこまで言ってみれば多くの目から涙が溢れる。
……いや、ほんと。忠誠心マックスも良いところじゃん。
「そしてその涙へ謝罪したい。急に姿を消してしまって、済まなかった」
再びざわつく玉座の間。だけどまぁ感謝も謝罪も素直な気持ちからなわけで、ここは譲れない。
「本来であれば、その涙はここに残り続けたモモンガさんにのみ捧げられるものだ。俺に対して向けて良いものじゃない」
「そのようなことっ!!」
声を上げたのはデミウルゴスだった。見れば他の皆も同じ気持ちなんだろう、同意の気配を感じる。
「ありがとう。だがいいんだデミウルゴス。モモンガさんはギルドへ尽くし、俺は途中で途切れた。それは事実だ。理由はあるが、それは生まれから今までよりこれからも忠義を尽くしてくれる皆に対する言い訳でしか無い」
そう言えばデミウルゴスも他の者達も、何かを言いたげに、だけど何も言えず唇を食いしばっている。
漂う沈黙を破ってくれたのはやっぱり我らがギルマスで。
「ロコモコさんは、敵と戦っていた」
「っ!?」
モモンガさんに事情は話した。
仕事でしくじったこと、処分されそうになった中、最後にユグドラシルへログインしようとしたこと。
その上で、俺をどうするかは今のこの場で決めて欲しいと。
「敵は、強かった。それこそ、私ですら勝てないだろう存在だ。そんな強大な相手に、ナザリックへ迷惑がかかるからとたった一人孤独に戦っていたんだ」
「そ、そんな……!」
上手いこと言う。
確かに、どうあがいても俺じゃ……いや、俺たちじゃ勝てない敵だ。
社会の仕組みになんて、リアルで負け組と言われたやつどころか、たっち・みーさんのような勝ち組であろうと勝てない。
「そして今、絶望的な戦いからロコモコさんは帰ってきた。……私は、そんな英雄とも言える彼を再び迎え入れたい」
モモンガさんからちらりと視線が送られてきた。
――これが俺の答えです。
なんて伝えてくれる。
「だがこれは私の我儘だ、そう従えと命令したくはない。故に問おう、ロコモコさんを迎え入れることに異議のあるものはいるか?」
「異議などと!!」
「そのような不届き、不忠者はナザリックに存在しません!!」
「アインズ様万歳! ロコモコ様万歳! ナザリックに栄光あれ!!」
うわお……すんげー嬉しいけどなんと言うかカルティックで複雑だな?
いや、まじで嬉しいけど。
あぁもう、モモンガさんもそんな目で見ないで下さいってば。
骸骨だろうとわかりますよ? それなりに付き合い長いんですから。
「重ねて、言いたい。ありがとう」
一歩前に出て感謝の言葉を。
そうすれば一層の歓声があがる。
「だが聞いてくれ、俺はやっぱり俺が許せない。皆の捧げる忠義に足る自分であるとはまだ思えない」
「そのようなことはございません! むしろ我々がロコモコ様の敵へ共に立ち向かえなかったこと、お許しください!」
あー……うん、なるほど? モモンガさんが困ってたのは
ならやっぱり、そうだな。
俺が出来ること、出来そうなことは。
「良いんだ。これは俺の我儘だ。皆の忠義はやはりモモンガさんに捧げられるもので、今はまだ俺に向けるべきものじゃないんだ。故に、これから俺も皆と同じようにモモンガさんを支えるものの一人として働く」
「い”っ!?」
大丈夫ですってモモンガさん、多分これが一番上手く回りますよナザリック。
「その働きを見て、いつか俺が皆の主、その一人に足ると確信できた時。そして俺が俺を許すことが出来た時、改めて皆の忠誠を受け取りたいと思う。だからどうか、共に居ることを認めて欲しい」
「あ、頭をお上げ下さい! ロコモコ様!!」
うんうん、慌ててる。慌てるよねそりゃ。
モモンガさんが教えてくれた話と、この皆の様子を統合してなんとなく掴めた。
モモンガさんを絶対的支配者として君臨させつづけるためには、中間管理者が必要だって。
居なくてもまぁ問題は無いんだろう、主を疑うという発想を持ちえないのだろうから。
それを俺にも向けてくれるのは嬉しい。そしてだからこそそれを利用しよう。
他のギルメンがやってくるかはわからない。
サービス終了時にログインしていたことがこの世界へ転移する理由なんだとすれば、望みは薄いだろうが。
やっぱり俺はここが好きだ。
大切な仲間が居て、仲間が遺した
俺の人生の中で唯一楽しかった時間が詰まっている場所だからこそ。
「ここに誓おう。今このときより俺はアインズ・ウール・ゴウンの矛であり盾。アインズ・ウール・ゴウンとはモモンガさんと皆だ。ナザリックに存在するもの、全てを守り、全ての敵を打ち払うと!」
「――」
一瞬の静寂。
そして。
「アインズ・ウール・ゴウン万歳! ナザリック万歳!!」
静寂を割れんばかりの歓声が切り裂いた。
「……うらぎりものー」
モモンガさんの恨めしそうな声をかき消しながら。