ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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教育方針

「おつっすーモモンガさん」

 

「おつですロコモコさん。……それで早速なんですけど、アルベドに何かしました?」

 

 恒例の二人会議ですが何ですか藪から棒に。

 

「何かって、特にこれと言って何かした覚えはないっすけど」

 

「ほんとですか? ……って嘘だ、その笑い方は絶対嘘だ。うあぁ……悪かったですって! ルプスレギナのご褒美に関してはほんとにごめんなさい! だからアルベドのアレ何とかして下さいよ!?」

 

 あーダメだ、やっぱ顔がにやけちゃうよね仕方ないよ仕方ない。

 

 さて、アルベドに対して入れ知恵はした。

 あまりの剛速求愛をしてしまうとモモンガさんはドン引きする、つまり精神鎮静化が発動する。

 あんまりにも強い感情を抑制するってスキルというか特性なんだけど、これにはキモがあった。

 

「何かですね、こう……奥ゆかしいんですよアルベド! もの凄く男心をくすぐってくるんですって!」

 

「良いじゃないですか。あんな美人に言い寄られるじゃないっすけど、男冥利に尽きるってもんです」

 

 そう、つまりプラス、マイナス方向へ振り切れない感情の動きは抑制されない。

 たとえば風呂に入って気持ちいいなんて思うのは抑制されないのだ、一緒に風呂入って確認したから間違いない。あと、今度三吉君は俺も借りる。

 

「やめて下さいアルベドに惚れてしまいます」

 

「設定書き換えたのはモモンガさんでしょ? ゆー惚れちゃいなよっす」

 

 サムズアップしてみれば何を言っても無駄だと分かったんだろうモモンガさんは肩を落とした。

 

 よしよし、アルベドによるアインズ様攻略は順調なようだ。

 ある程度アルベドが攻略方法を確立させた頃合いを見計らってシャルティアにも声をかけよう。

 

「あ、なんですか? まだ悪だくみしてるんですか?」

 

「いいえちっとも。ほら見て下さいこの澄んだ瞳を」

 

 きらきらー。

 

「……次はシャルティアですか」

 

「なぜばれたし」

 

「わからいでか」

 

 やられたらやり返されるんですよモモンガさん。

 ほら、ぷにっと萌えさんも言ってたでしょう?

 

「目には目を、歯には歯をと言わない。だって報復はマシマシでするもんっすから」

 

「おのれぷにっと萌えさん、とんでもない相方育ててくれおって」

 

 ふふん、俺を敵に回すとこうなるんですよわかってくれました? ええそうです、幸せ卍固めです。

 

「我らナザリック一同、アインズ様のご結婚、心待ちにしておりますれば」

 

「やめるんだっ!? ……くぅ、抑制された。まったく、とりあえずその話は良いです。真面目な話、良いですか?」

 

 ええご随意に。正直俺もそっちのが性に合いますし。

 

「カルネ村の件は聞いてますよね。今回の件もあって、出来ればナザリック直下のものにしたいんですけど何か腹案ありますか?」

 

「……このロリコンが」

 

「違う!?」

 

「冗談っす。俺も悪い気どころか嬉しかったですから、賛成です」

 

 ナザリックに初めて人間が招待された。

 ンフィーレア、エンリ、そしてネム。中でもネムに関してはナザリックを褒めちぎったというか心から思ったんだろうすごいと。

 モモンガさんは当然、俺たちギルメンからしてもすごく嬉しかった。地味にちょっと泣いた。

 

 それだけに体裁的な重要度だけではなく、心情的にもカルネ村の重要度を高める事には賛成だ。

 だからこそ、モモンガさんは歓待した上で自身が改めてアンデッドであることも教えたんだろう、今後あの村と関係を上手く構築していくために。

 エンリたちは当然驚きはしたし、冷静になるまでいくらかの時間はかかったものの決め手はネム。

 

 ――かっこいい!

 

 なんて言う一言だった。

 思わず笑ってしまったが、個人的にカルネ村の中で一番重要な存在に格上げしておいた。

 

 まぁそれはともあれ俺としてもカルネ村の活かし方は既に考えている。

 

「ポーションの聖地とでも言いますか、いや、その他の事全般を含めて。あそこを学術的な研究都市化するって手段がまず一つあるっす」

 

「研究都市、ですか」

 

 ポーションの研究だけではなく、たとえば魔法武器なんかにしても。

 そういったこの世界にだけ存在している技術を研究する場所にする。

 

「ナザリックが勢力として表に進出した後にはなるっすが、そうすると決めたら大々的にあらゆる支援が可能っす。何より今回ンフィーレア達へモモンガさんはアインズとして面会し交流を深めた。カルネ村としても呼応しやすいかと」

 

「なるほど……」

 

 うんうんと頷いてくれるモモンガさん。

 

「もう一つとしてカルネ村で旗揚げするという方法っす」

 

「旗揚げですか? つまりカルネ村を王国から独立させるってことですね、そんな事可能なんですか?」

 

 まぁ王国のトップ、ではないけどラナーを押さえているし、何らかの動きで合わせてくれるだろうって見越しもあるが。

 

「手っ取り早いっすねこっちの案は。カルネ村の人々は受け入れてくれるでしょう。ただ世界的に受け入れてはくれないでしょうから、この案を執るのなら自然と王国を滅ぼす方向へ進んで行くっす。八本指は上手く動いてくれているし、一気に金を得る機会にもなるっすね」

 

 個人的にはあまりお勧めは出来ない方向でもある。

 だけど表に出る機会を伺っているだけでは上手く動けないのも確かで。

 さっさと国の原型を作ってしまった方が動きやすい可能性もある。

 

「うーん……確か王国と帝国は毎年戦争してるんですよね? 確かにカルネ村の位置であれば介入することも容易か」

 

「お決まり戦場のカッツェ平野は直ぐ傍っすからね。とはいえカルネ村に国を作った場合介入を嫌って別の場所が選択される可能性もあるっす、他の国の動向もまた変わると思うっすよ」

 

 そこら辺の問題が出て来るんだよな。

 随時対応していくって形はあまり好ましくはない、ナザリック内の教育がまだ出来ていない以上現場判断が上手く実らない可能性がある、というかこっちで把握したり制御するのが難しい。

 

「他にカルネ村の利用方法ありますか?」

 

「今の所は思いつかないっす、申し訳ない。現状唯一のナザリックに対して友好的かつ理解を得られやすい勢力……というには小さいっすけど。そういう存在であるってのは確立されてるのは確かっす」

 

 それ以上を求めるのであればこっちの体制確立がなった上じゃないと難しいな。

 

「わかりました、まずはこっちが表に出ることが先か……」

 

「はい。表に出る方法の一つとして今竜王国の情報収集へ着手し始めています」

 

「竜王国ですか?」

 

 ドラウディロン・オーリウクルス女王が治める国。

 ビーストマンに自国の人間たちを餌扱いされている弱い国。

 

「カルネ村程じゃありませんが、カッツェ平野で行われるだろう戦争にも介入しやすい位置っすね。また、王国が腐った国ならこっちは半死の国です。生かすも殺すも簡単で、恩を売って依存させ傀儡化を目指すも、滅ぼして新たに建国するのにも適していると思うっす」

 

 このままでは間違いなくビーストマンに食い荒らされて終わりだろうが。

 アウラの報告によればビーストマンも対した強さじゃないって話だし、ナザリックからすれば殲滅は容易だろう。

 

 ビーストマンを殲滅してビーストマンになるもよし。

 ビーストマンを殲滅して竜王国になるもよし、だ。

 

 気になる事があるとすれば竜の血をひいてるとかなんとか、それによる想定外の何か位だろうか。

 

「どういう形にしろ竜王国を奪っておけば表に出た時の後ろ盾に出来る、ですね」

 

「はい、そうすればカルネ村で旗揚げした場合でも多少やりやすくはあるっす。もちろん放置してもいいっすけど、滅びのカウントダウンは始まってるっすから、何かしらに使うなら早めによろしくっす」

 

「わかりました」

 

 ここら辺が俺の仕事範囲だろう、後はモモンガさんが考える事だ。

 

 そう思えば随分この形にも慣れてきたな、モモンガさんも。

 少なくとも俺たち二人のラインがしっかり確立されてきた証明だろう、いいことだ。

 

「他に諜報部隊として何かありますか?」

 

「そうっすね、この前の模擬戦で、アンデッドの軍団と蜥蜴人が戦っているって情報が帝国に渡ってるっす。恐らくっすけどナザリック近辺を調査に人間が来るかと思うっす」

 

「うーん……あぁ、なるほど。そこを捕らえると」

 

 一瞬首を傾げたのはわざわざなんでって感じだろうか。

 やっぱ人間に嗅ぎまわられるのはモモンガさんも嫌なんだろうな、基本的には。

 

「積極的に外に行けないっすから、呼び込む形を取ったっす。申し訳ないっす」

 

「いやいや、大丈夫です。ありがとうございます」

 

 出来るだけこの辺もモモンガさんの意向を反映しないとな、反省しよう。

 やっぱナザリックの整備は急務か。ぼちぼちデミウルゴスとセバスへ会いに行こう。

 

「ともあれ、帝国は真っ当な強国だと思うっす。良い国かどうかはわかんねっすが、表の舞台に置いて強い国、ここに対しては可能な限り早くモモンガさんの意向を決定できるよう情報を集めたいところっす」

 

「じゃあ捕らえた奴らに情報を吐かせて決めましょうか、俺も出来る事があれば協力します」

 

「ありがとうございます。なら捕らえられ次第報告するようにするっすよ」

 

 モモンガさんに協力してもらう内容ってなるとまた難しいな。

 尋問はソリュシャンがやってくれるし、その効果も高い。難しい様であればニューロニストに協力してもらえばいい話だし。

 まぁあれか、どこから来たのかわかればそこに対してアンデッドによる何らかを仕掛ける事になるし、そのアンデッドを創ってもらう形か。

 

「そいじゃナザリック内についてのお話しっす」

 

「そうですね。諸々まとめて教育でしたっけ? 実際どういう形でやっていくんです?」

 

「はい、まずは守護者格、セバスやプレアデスは優先的に受けてもらいつつ。受けるべきとこちらから声をかけた者と、受けた者が推挙する者が受けられる形するっす」

 

「そうですね、全員一度に受けられるものでもないですし。闘技場なんか使えば出来そうですけど、内容が薄くなりそうか」

 

 質問やらに答えられる時間が取れなくなるし、そういうことですね。

 

「そういったベースの上で、提供する講義は選択式でいくつか用意しようかと」

 

「選択式?」

 

 知りたい知識を篩にかけるって目的だ。

 命令で受けさせるよりも、進んで自ら知りたいと思ったことの方が頭に入りやすいし、身にも付きやすいわけで。

 

「もちろん概論というか、基礎的な部分を知ってもらうのは必須っす。その上で、そうですね。たとえばセバスに人間の陥れ方なんて説明しても嫌悪感なんかが先に来るでしょうし、逆分野の方こそ上手く活かしてくれるでしょう」

 

「それぞれの得意分野を伸ばしていく形ですね。そして伸ばしたものを活かせる場所へ配置すると」

 

 その通りっすな。

 守護者なんし上の立場が学びを修めて、部下配下へとそれを教える。その形を確立させてしまえば、一気に浸透していくだろう。

 

「なら十分に理解出来たかどうかを確かめるためのテストも準備しましょうか。パス出来ればそれを教えていいよ的な資格を渡すとか」

 

「おー、その発想はなかったっす。そうですね、その方がこっちとしても安心ですもんね」

 

 さすモモ。

 そうだな、その方が効率も良いか。いわば教師役の確保としても使える。

 

「最初の概論、でしたか。それはロコモコさんがやってくれるんでしょう?」

 

「そのつもりっすけど。出来ればモモンガさんに一発目、なんらかして欲しいかなって。教育機関の設立とその重要性について皆の前で話すとか」

 

「うっ……」

 

 俺がやっても良いけどさ、モモンガさんがやるのが一番効果あるもん。

 変な場所で支配者然とさせてしまうことに気が引けはするけど、これもナザリックのためっすよ。

 

「少し暗い話をしますが。教育ってのは一種の洗脳っす」

 

「洗脳とはまた良い言葉じゃないですね」

 

 まぁかつてのリアルを知る俺たちにとっては尚更だから、気持ちは痛いくらいに理解できる。

 

「自由思考に方向性を持たせようとしてるんです、今までの漠然としたモモンガさんの意を叶えようって言う部分を管理すると言っているようなものっすから」

 

「まぁ……そうですね、それは俺たちが痛いくらいに理解している事です」

 

 確実に言えることが一つある。

 ナザリックの皆はとてつもなく頭が良い。赤子がスポンジのように知識を蓄える様に、様々な事を吸収する。

 いや、まさに赤子なのかもしれないな。この世界に来てから初めて自分の意思を発露出来るようになったんだ、言い得て妙なのかもしれない。

 

 このまま自由思考に任せていれば、知らないうちに俺を……いや、俺たちの判断が及ばない領域に足を踏み入れる。

 皆がモモンガさんへと向ける忠誠心を疑うつもりは欠片もない。だけど、そんなときに足を引っ張る存在にはなりたくないのだ。

 出来るのであれば、その成長を喜び認め、はっきり任せると言えるようになりたい。

 

「子の成長は早い、か」

 

「モモンガさん?」

 

 なんとなく笑っているように見えるモモンガさん。

 子の成長、か。もしかしたら似たような事に考え至ったのかもしれないな。

 

「わかりました、最初に俺が皆へ言葉を贈ります。そこから先の事は、任せましたからね?」

 

「……なぁんか妙な予感がしますが。了解っす、万事お任せあれっすよ」

 

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