ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
「忙しい中よく集まってくれた。皆、楽にせよ」
「お、御言葉ですが――」
「よい。こうして守護者やプレアデスが一同に介するのも久しぶりと感じる、皆の顔をよく見せてくれ」
何そのムーブ。
……あ、はーん? あれですね、支配者ポジをちょっとスライドして校長先生ポジに移行しようとしてますね? ダメですダメダメ、ナザリックの支配者はモモンガさん。異論は認めない。
「モモンガさん、それ多分孫に久しぶりに会ったおじいちゃん的ポジっす」
「ぐ……」
ほらほら皆も困惑してるから、そっちに行きたいならちゃんと相談乗りますから、ね?
叶えるとは言っていない。
「はぁ……アルベド、いつもの頼む」
「はっ! 皆、顔をあげてアインズ様、ロコモコ様の御威光に触れなさい」
うんうん、皆安心するよね。いや、これで安心するってのもあれだけどさ。
だけどモモンガさんの言う通りこうやって各リーダー級と言える存在が集まるのも久しぶりだ。
やっぱそれぞれに仕事を割り振ってるもんな、どうしても二、三人欠けた状態が多かったし。
あ、ほらパンドラズ・アクターさん? ごめんって。
ともあれ仕切り直し。
今日こうやって集まったのはこれからの行動についてモモンガさんから改めて伝えるためとナザリック教育機関開設のお知らせなんだから。
「まず最初に皆の忠勤に感謝しよう。おかげでこれからの行動をある程度確定することが出来た」
「何を仰いますかアインズ様。全てはアインズ様のご慧眼通り、我々はアインズ様のご軌跡を辿っただけに過ぎません」
あ、また失敗しましたねモモンガさん? お前達のおかげだー作戦もダメでしたね……流石に少し同情します。ちゃんとフォローは後でしますからここは踏ん張りどころですよお願いします。
「やれやれデミウルゴス。仮にこれが私の想定通りであったのなら、その想定通り動けた自分を誇るが良い、下手な謙遜はよせ」
「申し訳ありませんアインズ様。御言葉、有り難く存じます」
よっ! 流石アインズ・ウール・ゴウン! 支配者ムーブのがやっぱり素敵ですぞ!
「ではこうして主たるもの全員に集まってもらった目的を話そう、今後の動き方についてだ」
よし、思考を引き締めよう。
モモンガさんに掴んだ情報そのままと私見については述べた通りだ。
俺としてもその後どう決定したのかはまだ聞いていない、集中しないとな。
「まず国作りに関してだが、竜王国をバックにつけた後カルネ村を独立させる」
……そう決定したのね、モモンガさん。良い決定、かも知れないな。
竜王国をバックにつけるってのはナザリックに対して、だな。カルネ村と竜王国を結びつける意図では無いだろう。意味もあんまりない。
カルネ村の独立はナザリック支援の下、王国から独立させるって意味かね。
ラナーを通して襲撃を受けたカルネ村の税は免除されるって話が出てると聞いてるけど、まぁ後の祭りではあるわな。
必要な時、必要とされる場所に居るってのはとてつもなくでかい。
警戒や備えという意味でもそうだ、襲撃の報せを聞いてから向かったところで手遅れになってる可能性のが高いってのは誰でも……いや、わかってたらこう付け込まれないか。
特にエンリ新村長とは個人としてモモンガさんと交流している。
王国よりは魅力的な話に聞こえるかも知れない……そこは上手く調整しなきゃなんないかな? どう考えてるんだろ。
「竜王国は現在ビーストマンから継続的な襲撃を受けて疲弊している。我らナザリックはそのビーストマンとの戦争に介入し竜王国を救い滅ぼす」
「救い、滅ぼす……?」
おっとアウラとマーレが首を傾げてるぞっと。シャルティア、わかったような雰囲気出さないの。
なるほどね、とりあえず竜王国に対してはビーストマン殲滅してから傀儡国家化を目指す方向で決定か。
「デミウルゴス、確認だ。ここまででわかった事をアウラ、マーレ、シャルティアに向けて説明せよ」
「畏まりました。アインズ様の遠謀、全てを理解出来たとは思えませんが恐れながらも。良いかい――」
コキュートスさん? こっそり答え合わせしてますね? いいぞもっとやれ。
さて、じゃあどう動くかな。
帝国の動向はまだ掴めてない、網にかからないと判断するにはまだ少し早いしもうちょっと根を張っておきたい所。
軍事的に介入するってことなら練習も兼ねてコキュートスと蜥蜴人に任せるのが一番だろうか、モモンガさんはもう考えてるのかな? まぁ考えてるだろう、この人の調整的な能力はほんとに尊敬するレベルだし。
「――そして竜王国を傀儡化した上で、ナザリック援助の下カルネ村を独立させる。これはナザリックの手中に二つの勢力を得るということなのだよ。多少つじつまが合わないことや不都合は全部竜王国に泥として被らせれば、我々は実験含めてあらゆる事を自在に行える」
「な、なるほどでありんす」
アウラのジト目に気づくんだシャルティア。いやまぁやっぱ守護者達の関係性はほんとほっこりするな。
デミウルゴスがモモンガさんに向かってよろしかったでしょうかと言わんばかりに一礼して、大きく頷かれる。
ん? ってことはカルネ村でも旗揚げしないし、竜王国にアインズ・ウール・ゴウンの国も作らないってことか?
「カルネ村に独立の動きがあると王国に情報を流す、カルネ村には何も告げずな。その時ナザリックの存在を明かしていなければ王国の行動はどういうことが予想される?」
あ、なるほど。そういうことね。流石モモンガさんだな。
ていうか中々えげつないな、マッチポンプを図るのね。
「え、えっと……なにしてるんだーって怒りに来ます」
「その通りだマーレ。実際にはまず司政官が派遣されるだろうな、何故だと。しかしカルネ村は何のことかさっぱりだ、当然そんなつもりも無いのだから知らぬ存ぜぬだろう。しかし流す情報が確かだと王国に信じさせることが出来れば虚言だと見なされ反乱発起と断定される、そこでロコモコさん」
「はい、情報を流すのは任せて下さい。その上で王国に武力鎮圧を促せば良いんですね? ナザリックとしてはそこに介入すると」
「なるほど! 王国が自国民へ槍を向ける等施政者に非ずと義勇を装うのですね!」
そうすりゃカルネ村の守護者として立場を確立出来るし、武力だけに限らず直接的な支援も可能と。
いやぁ、いい手だな惚れ惚れする。俺の私見とナザリックの意見を上手く絡めた手段だ流石調整の鬼。
それじゃラナーにも言わなきゃならんな、八本指にも工作させるか。
タイミングは竜王国の傀儡化がある程度進んでからだろうけど、そこまで時間がかかるようなもんでもないだろう、一度助けられてしまうという事は救われることではない。弱みを握られて付け込まれることへ怯えなければならないのだ。
それがわからない愚物であればより楽だけど、精々期待することにしよう。
「そうしてカルネ村を勢力として明確に保護する。カルネ村の今後は開拓村から研究都市へと考えているが、ある程度村の規模が大きくなった頃に国としよう。アインズ・ウール・ゴウン国としてな」
「畏まりました、素晴らしいご慧眼。感服致しました」
うんうん、ナザリックの技術をもっての支援を行えば発展はまさに瞬く間だろう。
発展が周囲に知らされればエ・ランテル辺りの都市はすり寄ってくる可能性もあるし、思っている以上に立国は早いかも知れない。
なら俺としては王国への情報統制をしつつ、帝国の件を早めに片付けないといけないな。途中で変なちゃちゃ入れられると困るし。
後はまだ情報を得られてないけど法国にも手を伸ばさなきゃな……中々に忙しくなってきそうだ。
「ここまでは良いな? そしてこのプランを実行に移すため必要なものがある。アルベド、何かわかるか?」
「人手、でございますね? ある程度まとまった数で並行し動かねばなりません。規模に関わらずまとめる者や各仕事に適した者が足りないかと」
おっと、そろそろこっちの出番だな?
「その通りだアルベド。知っての通りセバス、デミウルゴスが人間心理に関する研究を進めその成果が形となった。まずはその働きに感謝しよう。後ほど褒美を用意する」
「勿体なき御言葉……!」
「ナザリック、アインズ様のために働くことは当然でございます! 褒美等と……!」
「よい。二人が作り上げた教科書、ロコモコさんと共に確認したが素晴らしい出来栄えだった。これに褒美をつけられず何につければいいというのか。望むものを考えておいてくれ」
いやほんとにね。
名付けて誰でも楽々人間操縦術ですか、マジで抜け目ないのが出来たよ。
「その人員確保、または人員育成のため、将来的に人間を使役するため。この教科書をもってナザリックにおいて教育機関を設立する。また、この機関における最高責任者は私ではなくロコモコさんだ。皆、我が友の顔に泥を塗らぬよう励め」
……はい?
「畏まりました!!」
ぬぇっ!? いやいやいや!? 畏まったじゃないよ! 畏まらないで!?
ああ!? モモンガさん絶対内心笑ってるだろ! あたいわかるんだから!!
うあー……妙な予感はこれかー……しかも我が友とか言われちゃったし……こ、断れねぇ。
「ではこの場を解散とする。次いでロコモコさんより教育機関の説明を第九階層、円卓の間にて行ってもらう。そうだな、一時間を目処に準備を終え再集合するように」
い、一時間……くっそ、文句を言う時間がねぇ! なんで抜け目ないんだよ! ちくしょう! 後は任せるってこういうコトかい!
あーあーわかりました、わかりましたよ! やります! やらせていただきますぅ! ぶー!
「さてまずは皆お疲れ様、モモンガさんと重ねて時間を作ってくれて感謝してるぞ」
「勿体なき御言葉です」
忠誠はまだ受け取らないってのは大分と浸透しているみたいで、モモンガさんに向けられる忠誠の儀は行われない。いい傾向だ。
「早速だが、皆に言っておきたいことがある。俺は皆よりも頭がいいとか仕事が出来るとか全てを見通すことができるなんて大層なモンじゃない」
「そ、そのような――!」
「いいやデミウルゴス。俺は皆よりも多少人間の事をよく知っているだけだし、仕事である諜報に関してもそうだ。今から、いやこれから受けてもらう教育の中で成長すれば俺なんて足元にも及ばない程優秀な存在になるだろう」
デミウルゴスは反射的に何かを口にしそうになったけど、他の皆は驚きのあまり絶句してしまったようだ。
確かに自分を過小評価しすぎてるのかも知れないが、皆が成長すれば俺より遥かに優秀な存在になるだろうってのは間違いない。
「言い方を変えよう。この教育機関はそういった存在を作るため、俺を超えてもらうために存在している。生徒は教師のコピーになるのではない、教師を超えるために学ぶんだ」
「――」
うわぁお、一気に空気が重くなった。
そんなこと出来るわけがない、ってところだろうか? 至高の御方リスペクトはやっぱすごいよね嬉しいけど。
「うーん……そうだな、モモンガさんの言葉を借りようか。お前達はギルド、アインズ・ウール・ゴウンの子だ。ならばモモンガさん、俺にとっても子。その親が願うこととは何だと思う?」
「……も、蒙昧なる私達には、とても」
さて、それは思考停止というものだが。
そうだな、皆は少し遠慮が過ぎる。
「親の願いとは子の幸せと成長。親よりも幸せに、優秀に育って欲しいと願うんだ」
「――ロコモコ、様」
そうさ、かつて理解していたことの中で今も実感としてあるもの。
それが皆の幸せを願う気持ち。
「独善的であることは認める、わがままであるとも。それに俺を踏み台になんて言えば抵抗があるかもしれない。だが、俺よりも幸せになってくれる、俺よりもナザリックにとって優秀な存在へとなってくれることが何よりの幸せだ。その一助になれるだろうことを、心の底から嬉しく思っている」
本音だ。
自分で考えて答えを出す、出せるようになるという意味は自分なりの幸せを探せるようになるということ。
やっぱりわがままではあるんだろうとわかってる、けれども願わずにはいられない。それが親としての……いや、ロコモコとしてのエゴだ。
「成長した皆が、やっぱりナザリックに尽くすことこそが幸せだと思うならそれが正解だ。だが、今はまだ答えを出すな。いずれ自分で見つめ直してくれ、その上で出した答えが何であれ俺は絶対に祝福する。きっとモモンガさんも同じ思いだろう」
アインズ・ウール・ゴウンというギルドを愛したモモンガさんだから。
ナザリックに存在する意思ある者の幸せを祈っている。
「もう一度言う。俺よりも幸せになれ、俺よりもナザリックに利を運べるようになれ。……あぁ、もちろん簡単になれると思うなよ? 既に幸せという面だけなら、今この場にいる誰よりも幸せだという確信があるからな」
ちらりとルプスへ目を向けると顔を真赤にしてくれてる可愛い。
ふふんとドヤ顔で言って煽ったつもりだったけれど。
「ふふ、それはどうでございましょう」
「うん?」
「ええ、アルベドに同意です。恐れながらもロコモコ様、今の私達はお二人に負けず劣らず幸せだと確信しております」
「む……?」
なるほど? よくわからんが張り合われてるな? くそう、負けるもんか。
「ふん、なら何よりだよ。だがまだまだ足りないな、もっともっと貪欲になれ。知識に対しても幸せに対してもな」
「はっ! 我ら一同、ロコモコ様からの学びを以てより幸せの高みに至ること、お誓い致します!」
お、おおうここで忠誠の儀ですか? な、なんかタイミング違うくない?
ま、ままええわ?
とりあえず言っときたい事は言ったしお授業始めますかね。
「よし、それじゃ今後の授業プランについて説明してくぞ? まずは――」
次話から新章、立国編です。
ここまでのご愛読ありがとうございます、今後とも変わらぬご愛顧頂ければ幸いです。