ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
忙しくなってきた。
組織としての拡大前にここまで手広くなると人手がやっぱり足りない、というか外で使える存在の少なさがネックだと感じる。
まだ教育機関は稼働し始めたばかりだし、皆が優秀とは言え流石にすぐ外で使いましょうってわけにはいかないわけで、俺としてはここからしばらくが踏ん張りどころだろう。
「まず、ラナーの案に関してからか」
蒼の薔薇をカルネ村に派遣させ内部戦力の調査を行わせる。
いや、行わせてはならない。村へと一歩も足を踏み入れられずに目的を頓挫させるためにはどうするか。
端的に言ってしまえばカルネ村の戦力として偽装した存在をぶつけてしまえばいいんだけど、あまり強すぎてもだめなところがミソではあるな。
さっくり蒼の薔薇が全滅するかもレベルの戦力を向かわせてしまえばそれこそ誰も近寄らなくなるだろう、いわゆる放置、名前だけ王国の領土、村としておきつつ暗黙の了解で村の独立を認めるなんてことになりかねない。
蒼の薔薇が善戦するも、これ以上は危険だとして撤退せざるを得ないと判断する程度の戦力が求められる。
「蜥蜴人……は、無理だな。竜王国へ派遣の予定だし」
コキュートスを頂点においた多種族連合軍。連合と言うにはまだ蜥蜴人だけだけど、いずれそうなるだろう。
その試しとしては十分な相手だと思うビーストマンは。まだ竜王国へナザリックからの書状をもってアウラとマーレがついさっき出発したところだし、細部はまだ決まっていないが。
コキュートスの軍が使えないとなると、他に適している戦力に挙げられるのは。
「プレアデス、か」
ユリに関してはカルネ村で仕事を任せているわけだし適任だろう、ルプスに関しても巨人だ蛇だの話が落ち着くまではバックアップに入りやすいよう待機している。
蒼の薔薇がどれほど強いのかはまだ掴めない所だが流石にこの二人で十分だと言うのは浅慮としか言いようがない。
ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ、ガガーラン、ティア、ティナ、イビルアイ。
この五人。
最低でも同数は確保しておきたいところだ、保険を付けるなら俺が行くべきだろうか。
とはいえソリュシャンは張った網の管理に忙しいし、蒼の薔薇と対峙してる時に網にかかりましたなんて事になれば目も当てられない。
ナーベラルは漆黒として活動してるし面が割れてる以上難しいしセバスも同じく。エントマも連絡役の要をしてくれてる以上気軽に動かすのは厳しいか。
「ユリ、ルプス、シズ……あと二人」
やっぱ俺は入らないとダメだろうな、ってことは後一人。
あぁ、そういえば八本指がカルネ村に潜伏してるかも知れないなんて言うかもとラナーが言ってたか、ならゼロを使っても良いな、こいつなら蒼の薔薇より強かろうが弱かろうが関係ないし。
じゃあ俺、ユリ、ルプス、シズ、ゼロの五人で蒼の薔薇と戦おう。
モモンガさんに報告する時シズを一時借りるって事に加えて、万が一に備えてもらうことも必要か、やっぱ忙しいなぁ。
流石にギルメンというか、ユグドラシルプレイヤーレベルカンスト勢以外に負けるつもりはないし、プレアデスもそうそう引けは取らないだろうけど……まぁアダマンタイト級冒険者ってやつの実力を拝む良い機会か。
「出来るならこっち側に引き込みたいところだし」
蒼の薔薇ってネームバリューはそこそこ価値がある。
ラナーは今回こいつらを切った。切り札を使ったという意味ではなく、完全に切り捨てた。
無論無事に王都へ帰還すれば今後も付き合いは続けるだろうが、俺たちに委ねたんだ。
やっぱりラナーは取り扱い危険物だなと再確認出来た話し合いではあったんだよな、ほんと頭痛い。
そんなわけで俺たちナザリックとしてもまだ表で活動できる存在が少ない以上、有名冒険者を自由に使えるようになりたいってのはある。
上手く道筋を探して行きたいところだな。
「伝言――ソリュシャン」
『はっ、ロコモコ様如何なされましたか?』
今は巡回中だったな、一応確認もしておくか。
「そっちの確認とこれからの動きに関してだ、まず網の様子はどうだ?」
『申し訳ありません、まだ誰もかかってない状態です。後、以前仰られておりました東の巨人、西の魔蛇と呼ばれる存在を目視で確認しました、トロールとナーガのことを指しており、また住居……いえ拠点らしき場所も確認しています』
ほほーん? 森の残った大きい勢力はその二つかね。
カルネ村の使い方が決まった今、余計なちゃちゃ入れされても困るな。
いやモモンガさんが何かするって言ってたし、調査結果を報告するか。
「わかった。網については継続して張っていてくれ。巨人等の情報はよくやった、ありがとう、俺から先にモモンガさんへ口頭で簡単な報告はしておくから、帰還次第詳細な報告書をモモンガさんへ提出してくれ」
『ありがとうございます、かしこまりました。ではこれからの動きに関してとは?』
「あぁ、カルネ村付近でアダマンタイト冒険者をプレアデスの一部と俺、あと一人数合わせの人間を入れて迎え撃つ予定が出来た。その間はソリュシャンに対して指示が出来なくなるって報告と合わせて、今日から戦闘が終わるまでの間は一時、網に関する扱い全てをお前に委ねる」
『――っ』
良い機会でもある。
ソリュシャンはいわば俺の弟子と言えるし、教育機関が設立されるよりも早く俺の教えに触れている存在だ。どれほどの成長をしてくれたか見せてもらおう。
「今を維持してもいいし、何かを発展させてもいい。ソリュシャン、思う存分にやってみろ。ただし直接帝国に潜入すると言った行動は禁じる」
『畏まりました! このような機会を頂きましたこと感謝いたします!』
ぶっちゃけ手が回しきれてないしな! お願いソリュシャン助けてってなもんだ。
やる気もマシマシになってくれたし良いよね? 良いと思う。
よし、まぁともあれ。
「モモンガさんに報告してから、カルネ村に行きますか」
カルネ村はずれ。
やっぱりちょっとした要塞だよなと外壁を見て思う。
櫓らしきものも立ってるし、中さえ見なきゃ軽い軍事拠点と言われても信じられる。
「プレアデス、ユリ・アルファ。御身の前に」
「プレアデス、ロコモコ様専属メイド、ルプスレギナ・ベータ。御身の前に」
「プレアデス、シズ・デルタ……御身の前、です」
「え? あ、え? ぜ、ゼロ、です。お、御身の前、です?」
いやこうして綺麗どころに混じらせて悪かったよ、めっちゃ浮いてるわ。
「……お前」
「も、申し訳――」
「いや、良い。事前に何も言わず召集をかけたんだ、許すよゼロ。それよりも今から一時的にチームを組むことになる、まぁ仲良くやろう」
そこまで言えばプレアデス達は纏わせた怒気を霧散させてくれた。うん、ありがとう。
とはいってもやっぱりこいつ弱いな、横に並べたら余計にわかる。
何とか目的を達成させるためには上手く動いてもらわんとならんが……ふぅむ。
「さてこれからチームを組むと言ったが、理由を話そう。アダマンタイト冒険者チーム、蒼の薔薇がカルネ村へと調査にやってくる。俺たちはそれをここカルネ村外周で迎え撃ち、撃退する。これはその為のチームだ」
「あ、蒼の薔薇を、ですか? そりゃまたどういう――」
「黙りなさい、何を勘違いしているの? ロコモコ様がそうすると仰った、なら私たちはそれにイエスと答える以外に言葉は必要ない。……これだから人間は」
おっとルプスさん? 前のメイドの件から人間にあたりめっちゃきついですね? いやほんとごめんなさい。
というかユリもシズも頷かないで? ほらゼロ震えてるから、ね?
「構わない。チームと言っただろう? ある程度の情報共有は必要だ、これから理由の一部も含めて説明するから聞いてくれ。ゼロもそう怯えるな、闘鬼の名が泣くぞ?」
「も、申し訳ありません!」
よしよし、聞く体勢は整ったな?
「ゼロは王都で進行中の工作を把握しているな? あれはこの村を独立させるためのものだ、そして今回蒼の薔薇をここで撃退するってのも同じく必要な一手なんだよ。ここに一定以上の戦力があると誤認させるための手段だ」
「独立、ですか……そりゃ――いえ、何でもありません。かしこまりました」
お、学ぶねぇゼロ君。いかついだけが取り柄じゃないよね。
「蒼の薔薇を通じて王国に報せるためだ、あんたらが本腰入れないと簡単に独立しちゃいますよってな。殲滅ではなく撃退といった意味はここにある」
「蒼の薔薇自体を報告書扱いするということですね?」
「その通り」
この中じゃユリが一番その面では賢しいな、カルマは善に寄ってるはずだけど……これなら心配はいらんか。
「蒼の薔薇がどれほど強いのかって部分はいまいちハッキリしない。ゼロ、お前をここに入れたのはそれを知る為でもある」
「はい。直接やりあった事はありませんので、ずばりこうだとは言えませんが……俺と同等から王国戦士長ガゼフ以下、ってところでしょう」
えぇと? 正直いまいち物差しが出来てないんだよな、セバスの私見ではユグドラシル基準でレベル30位って言ってたか。
ってことは相当弱くないか? え、それでアダマンタイト級になれんの? マジ? んじゃ冒険者モモンがアダマンタイトって不釣り合い過ぎない?
い、いや。
「なるほど? じゃあパーティとして強いってわけか」
「パーティとして
……えぇ? これだったらプレアデス連れて来なくても良かったんじゃ?
むしろユリとルプスだけで戦力的には十分だったかも知れんな。
……だめだめ、侮るのはまずい。
武技だなんだと知らないスキルのようなものだってあるんだ、緩めないでおこう。
しかし、良い傾向だなゼロは。自分こそ最強って思ってたこいつがナザリックを知ったことによる意識変革。それにより自分への妄信が無くなった結果、互いの戦力を測る目が良くなったみたいだ。
過小評価に振れるかその逆かはまだわからない。が、ユリ達を見て弱者だと決めつけるどころか警戒する姿を見せたゼロだ、ある程度は信頼できる目になっただろう。
つまり、そう大きく違いは無いってのは確かで、パーティならではの連携を取られたら不味い、か。
「わかった。ならこっちは各個撃破の形を目指そうか、協力されたら面倒そうだし……よしゼロ、蒼の薔薇について知ってる情報を」
「畏まりました。まずは――」
――なるほど、ね。
パーティリーダーラキュースは神官戦士、水神を信仰する信仰系魔法詠唱者か。
キリネイラムとか言う魔剣が気になるところ。真っ当にユリが相手にした方がいいか、使わせる暇を与えないってことで。
ガガーランは純粋な戦士みたいだな。ゼロといい勝負って話だし、そのままゼロをぶつけるか。
簡単に負けても困るしその逆もそうだから、ゼロには何かしら持たせる必要はありそうだが。
ティア、ティナなんてどう考えても忍者だろ。
え? ってかまじで忍者? だったらそれなりに強いはずなんだけど? うーん、前提ジョブとかの条件どうなってんだろ。
んで、だ。
「イビルアイ……」
「こいつは噂じゃ蒼の薔薇主力って話です。極大級魔法詠唱者なんても呼ばれてますし、最大限警戒するべきかと」
こいつだよ、こいつが一番よくわからない。
わからないだけに俺が相手にする必要がありそうだ。
全員の力量が同じ程度であるなら手の内がわかるって意味で相性的に忍者の二人を俺が相手にするべきなんだが……。
「よし。まず蒼の薔薇を発見できるように周囲へトラップを仕掛ける。発見出来次第、相手をバラけさせる様に動き一対一での戦闘へ持ち込むことが第一目標だ」
「畏まりました」
ゼロは俺と一緒に行動させよう、明らかに一人動きが鈍い状態になるし。
探知に引っ掛かればそこに集合し、相手の状態を見て散開させる。強制短距離転移のアイテム作っとかないとな。
「各自の相手はユリがラキュース、ゼロにガガーラン。ゼロには後でバフアイテムを渡そう、勝たなくてもいいが最低限負けるな」
「畏まりました」
「か、畏まりました! 必ずやご期待に応えます!」
うんうん、良い気合いだねゼロ。
ユリは……平常運転かね。
「双子の相手はシズとルプスに任せる。二対二の体をとっても良いが、どうする?」
「場所によっては私の炎系魔法が使いにくいです。出来ればシズと共闘出来ればと」
「前衛、いませんので……出来ない事は、ありませんが。出来れば」
そうなんだよな、俺が入りたかった理由はそれもある。
まぁルプスには回復手段もあるし、最悪粘ってもらう形を取ってもらうか。
「わかった。ならそれを前提にしよう」
「ありがとうございます」
「感謝……申し上げます」
パーティ戦ならこっちも構成自体は良いんだけどね。ゼロがなぁ……。
「俺はイビルアイってやつにあたる。最終確認だが、出来れば殺すな。けど実力が肉薄していて手加減が厳しいようなら殺していい。逃げる姿勢を見せられたら追わなくていい」
「はっ! お任せください!」
「よし、それじゃあ細部を詰めていくぞ」
それじゃ準備しますかね。