ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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メモリぐるぐる

 これからのことについて話をすると玉座の間から出ていった二人を見送って、少しと言うには長い時間が経過したにも関わらずその場を動こうとするものは居なかった。

 

「――」

 

 ロコモコの宣誓に身体を震わせ、動けないのだ、誰一人として。

 

「皆、いつまでもそうしている場合じゃないわ。各自仕事に戻りなさい」

 

 そんな中、アルベドは守護者統括として口を開いた。

 

「アルベド!」

 

 まさしく無粋だろうその言葉。

 いきり立ち、アルベドをにらみつけたのはシャルティア。他の者も、デミウルゴスさえも眉を顰めその無粋を咎めたい意を示している。

 

「気持ちは、わかるわ。だけどロコモコ様はナザリックに尽くす私達に感謝を告げられた。ならば足を止めることこそ礼を、忠を失する行為ではないのかしら?」

 

「う……」

 

 アルベドの言に気勢を失い言葉を詰まらせてしまったシャルティアではあるが、確かに尤もだとも思えた。

 

「そのとおりでございますね。ではそれぞれの役目へ戻ることにしましょう」

 

 そういったのはセバス。

 プレアデスを引き連れてその場を辞そうとするが。

 

「……っ」

 

 セバスもプレアデスも、第一歩が上手く運べなかった。

 ロコモコの言葉は未だに脳を痺れさせ、膝を震わせていてまるで無重力の中を歩いているかのように地面に足がつかない。

 

「くっ」

 

 崩れ落ちそうな身体へ活を一つ。

 まさしくここで倒れてしまえば忠を失することだとセバスとプレアデスは歩き示し、その場を辞した。

 

 そしてその姿に倣うよう集まった者たちは持ち場へ戻り始める。

 あるものは未だ涙を止められず、あるものは身体の震えを止められないまま。

 

 それほどの言葉だったのだ。

 ナザリックへ尽くすことはまさしく幸せである彼ら彼女らだからこそ、その働きを認められ、あまつさえ至高の御方自らが守るというロコモコの言は。

 

「――」

 

 それはモモンガ個人へと全てを捧げているアルベドにしても同じく。

 あの場で支配者然として振る舞われたのならば憎めた。表向きは従う振りをして、裏で排除を考えることが出来た。

 

 ――悔しい。

 

 認めざるを得なかった、認めたくなった、信じたくなった。

 もう二度とモモンガは裏切られないと。

 

 モモンガからすればこれから一緒にギルドをもり立てましょうと言いあった直後に。

 あ、俺もモモンガさんに尽くす側になりますね、てへぺろ。

 され裏切られているのだが、アルベドの目から、価値観からすればロコモコの態度や言動はまさしく求めていたものだった。

 

「……幸せだねー」

 

 いつしか玉座の間に残ったのは守護者のみ。

 しみじみと、噛み締めながら言葉を零したのはアウラ。

 

「ダガ、自分ガナサケナイ。ロコモコ様ヲ、アインズ様ヲシテ勝テナイト言ワシメル敵ガ存在シテイタニモ関ワラズ、ソノ場ニ立テルコトスラ出来ナカッタトハ」

 

「うー……く、悔しい、です」

 

 落ち込む様子を見せたのはコキュートスとマーレ。

 知らされていなかった。それはつまり戦力にならないと思われていた証左であると思っている。

 

「確かにその一面はあるだろう。だけど、あのロコモコ様だよ? 恐らく、だからこそお一人で立ち向かわれたんじゃないかな」

 

「……どういうことでありんす?」

 

 コキュートスとマーレ、二人と同じく自身の不甲斐なさを呪っている中、デミウルゴスの含んだ言い方を問うのはシャルティア。

 

「至高の御方に遠く及ばない我々とて盾にはなれるでしょう。強大な敵、そのただ一撃を防ぐ程度の存在にはなれる、なれることを誉れとも思う。そう我々が思っていることを理解している、いと慈悲深きロコモコ様だからこそ一人で立ち向かったのじゃないかと思うのだよ」

 

「えっと、つまり……?」

 

「ロコモコ様は決して私達を盾にすることを良しとしない。だけど私達はその場にいたら考えるまでもなく盾にでもなんでもなろうとするでしょう? それを嫌われたからこそ一人で戦われていたのよ」

 

 デミウルゴスの言葉を噛み砕き言い直したのはアルベド。

 守護者達に理解の色が差し、再び喉元にこみ上げる想い。

 

「本当に、ロコモコ様、優しい。優しすぎるよ……うぅ」

 

「わ、私、より一層の忠誠を誓うでありんす!」

 

「それはもちろんだがね。ロコモコ様はあるはずの無い罪に苛まれておられる。忠勤に励みつつ、どうにかその念を晴らして差し上げなければ……」

 

 感動を胸におきつつ、頭を働かせ始めるデミウルゴス。

 それに倣い考え始める守護者達の中、アルベドは思う。

 

(さて、私は何をどうするべきか)

 

 今アルベドの胸を大きく占めるのはロコモコに対する期待。

 結果的にアインズ、モモンガが幸せで在るのならばそれに勝る喜びはないのだ。

 そのためになら、その一点のためだけにならアルベドは何でもできる。

 

(なんて、ね。まずはやっぱり、ロコモコ様のご帰還を喜ぶことにしましょう)

 

 頭を抱え続けている守護者達の顔を見て、ようやくアルベドはただの守護者、その一人として至高の御方(モモンガの幸せ)が手に入ったことを喜んだ。

 

 

 

もめんなふぁいっふ(ごめんなさいっす)ふぁんふぇーひへふっふ(反省してるっす)

 

 セバスとソリュシャンを除いたプレアデス。

 猿轡をされ、首から<私はロコモコ様に無様な姿を晒しました>と書かれた看板を下げたルプスレギナを背にテーブルを囲んでいる。

 

「一般メイド達とも連絡を取ったけど、当面の間は私達がロコモコ様の警護につくことになりました」

 

「ほふぁー! ほふぁー! もめんなふぁいっふ(ごめんなさいっす)! ふぁんふぇーひへふっふ(反省してるっす)!!」

 

「ソリュシャンはセバス様と既に別の任務についているからダメ。ナーベラルもアインズ様と同行、警護の任があるからダメ。となると私か、シズ。エントマになるんだけど……」

 

ふひひなひへほひいっふ!!(無視しないでほしいっす!!)

 

 後ろから聞こえるルプスレギナの声にこめかみを押さえつつ。話を進めようとするユリだったが、シズのなんとかしてといった視線とエントマのなんとも言えない顔を見てため息を一つ。

 

「ルプスレギナ。ほんとに反省してる?」

 

ひへふっふ!!(してるっす!!)

 

「本当ならこの程度じゃ済まないのよ?」

 

わふぁっへふっふ!(わかってるっす!)

 

「……はぁ、ロコモコ様に感謝してよ?」

 

 やはりため息をつきながら猿轡を外した瞬間。

 

「ぷはぁ! はいはいはい! 私が立候補するっす! やるっす! 絶対に!」

 

「……やっぱりもう一回」

 

「もぉー。反省してないぃ」

 

「めちゃくちゃしてるっす! もう海より深く! だから私がロコモコ様の警護担当になるっす!!」

 

 ユリの呆れた視線へシズとエントマを加えてなおその役目は渡さないと必死なルプスレギナ。

 事実必死も必死だった。

 予定というより妄想では、完璧なメイドとしての自分を見ていただくはずだったのにも関わらず、笑顔を賜っただけで失神KOされてしまったのだ。

 汚名返上の機会を逃してなるものかと気概を超えた何かを迸らせている。

 

「言っておくけど、一般メイド達もものすごーく渋ってたからね? こちらに来られたばかりで不測の事態に備えるためって説明して尚だからね?」

 

「ロコモコ様、人気……だから」

 

「わたしもぉ、やりたいぃ」

 

 ユグドラシル時代より、ロコモコはNPC達を可愛がっていた。

 確かにゲーム時代を考えればあくまでも雰囲気作りとしての意味合いが強かった存在ではあるが、大事な仲間が作った彼女たちをとても大切に思っていたが故に。

 加えて一般メイドやプレアデスだけではなく、ロコモコはギルドで生まれたNPC全てが対象であった。

 ユリは口にしなかったが、役割を超えて自分が警護役に付きたいと志願してきたものすら居る。

 

「言うまでも無いことだけど。ぼ、私もだからね? ロコモコ様のお付き、したいんだから」

 

 恩返しの念が強い。

 自分のような存在に、等という謙った思いが無いとは言えないが、ロコモコに対して――不忠ではあると思っているが――親愛の念を抱いていないNPCはいない。

 

「で、でも! それでもお願いするっす! どうか、どうか私にやらせて欲しいっす!」

 

 ついにルプスレギナは地面に手をついた。

 

 恥も外聞もなくここまでする。

 メイドにあるまじき姿ではある。しかし彼女がここまでするのはロコモコに関して以外に無いだろう。

 仮にこれがアインズ当番であるならば、誉れと捉え出来得る限り最大の忠勤に励むことは間違いない。

 しかしこれほどまでに固執はしないだろう、理由を言えば残念に思うだろうが交代もする。

 

「わかった。なら、カルネ村での任務は一旦私が引き継ぐ。その代わりと言うまでも無いけど、二度目は無いからね」

 

「仕方ないね……良いよ」

 

「しかた、ないぃ」

 

「~~っ!! ありがとうっす! もう絶対失敗しないっす!」

 

 顔をあげたルプスレギナの目は輝く。

 

(この生粋のサディストをして、今ならボクの靴を舐めるでもなんでもしそうね)

 

 そんなことを考えたユリは、背中にゾクリと奔った何かに首を傾げながらも喜ぶ妹の頭を撫でた。

 

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