ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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主の道筋

 モモンガ。

 いや、鈴木悟という存在について話さなければならないと思う。

 

 一般家庭、というべきだろうかつての世界では。

 彼の情報概要上羨ましいと思ってしまう自分が居たことに否定はできない、それくらい鈴木悟という人物はまだ(・・)恵まれていた……いや、ありふれた家庭で生を育んだ。

 

 比較対象として自分を挙げるなんて僻みのように感じるかもしれないが、少なくとも俺のように一芸に秀でていたおかげで、他人を陥れて最底辺を辛うじて生きていたと言えるくらいの人間から見れば、たっち・みーさんのような勝ち組で眩しいことを実感出来ない人よりも身近な眩い人だと思う。

 

 不幸自慢をしたいわけでもない。

 ただ、多くの交流をモモンガとロコモコとして重ねた俺はそう感じていたんだ。

 

 そんな彼は良く言えば温厚であり悪く言えば臆病と言えるだろう。

 癒やしキャラ認定されていた彼はギルド内で目立った主張をするわけではなく、基本的に聞きの姿勢かつ出揃った意見をまとめて決定するというポジションを徹底していた。

 

 ある時聞いたもんだ、何かこうするべき等の意見はないかと。

 そうすればただ曖昧に笑って皆のほうがしっかりしていますからと言う。

 なんとも自己評価が低いものだと付き合いの浅い頃には思ったもんだ。

 

 でもその評価はすぐに改める事になった。

 

 敢えて言おう、彼は異様だと。

 

 彼の一歩引いた中立的な立ち位置のおかげでギルメン含めた色々なことが円滑に回っていた事実。

 ギルドマスターであれば当然と思われるかもしれないが、アインズ・ウール・ゴウンだ。平たく言ってしまえば曲者揃いのDQNギルド。

 仮に俺がモモンガとなれなんて言われたら一週間持たずギルドは瓦解していただろうと確信している。

 

 最終的にほぼ事実上の解散状態となってしまったが、それは隆盛期があればその逆もあるわけで永遠に栄え続くものなんて存在しない。仕方のないことだ。

 

 そう、そんなギルドの長で居続ける難しさもそうだしPVP勝率の高さもそう。

 鈴木悟という人間は、極めて情報を総じるに対して異様な適性を持っている。

 俺も当然含めて、ギルメンは彼の最終決定へ決して異を唱えなかった。もちろん多少なりの不満はあったりもしただろう、だが最終的にモモンガさんが決めたならで納得していた。

 

 彼の人間性が納得を加速させた面はあるが、何よりギルメンが出した情報をほぼ納得できる形に方針へと落とし込む。

 徹底してモモンガさんは自分のことを普通だ、一般人だと言うけれど、それを誰もがそうだと思っていなかった。

 

 もちろん俺も。

 異世界なんていう場所にたどり着いて尚、彼は必要な情報が集まれば最善を導くと固く信じている。

 故に俺の仕事は中間管理であり、彼が彼にとってより良い答えを導き出せる材料を集めることなのだ。

 

 そんな彼が、任せろといった。

 

 聞いた時は言葉にできない感動があった。

 あのモモンガさんだぞ? と、耳を何度も疑った。

 夢じゃないことを確認したあとにようやく背筋が震えた。

 

 だってそうだろう?

 つまり今ある情報で、彼は最善を生み出せると確信したんだ。

 だからこその言葉だ、僅かにでも失敗する可能性があれば決して口にしない。

 少なくとも俺が知っているモモンガさんはそういう人だ。

 

 ……複雑な気持ち、といえばそうなのかも知れない。

 少しの嫉妬はあるし、来た当初感じていたナザリックは俺が来なくても完結しているという確信を深めたなんて面もある。

 

 でもそれ以上に嬉しかった。

 成長を感じられてなんて言えば烏滸がましい、ただ彼は新しい世界の自分を確立し始めた。

 

「俺も……負けてられねぇや」

 

 ミスもした、今回は完全にモモンガさんにケツを拭いてもらう形だ。

 ギルマスが先陣切って歩み始めたんだ、俺もちゃんと続かないとな。

 

 

 

「ルプス、ソリュシャン」

 

「はっ!」

 

 最終確認を始めよう。

 いつもよりも緊張感を増して膝を着いている二人。

 我ながら少し固めの声が出たと思う、そこらへんが伝わったんだろうなほんと出来すぎるくらいによく意を汲んでくれる。

 

「顔を上げてくれ、まずは確認から。ソリュシャン」

 

「はっ、捕らえた人間たちより帝国に関して、依頼人に関して。そしてその他個が有している情報、自身と他者について等、聞き出せる全てを取得完了しています」

 

 頷く。

 上がってきた情報をいくつか改めて確認しなければならない部分はあるが、上出来だろう。

 少なくとも今回の作戦を遂行するにあたって不足はない。

 

「あぁ、ありがとう。取得したものの周知化は?」

 

「はい、現在守護者格の方々にはロコモコ様へと提出しました物と同じものをお渡ししています。また、守護者様各位が必要と思った配下に対してなら開示しても良いとお伝えもしています」

 

 よし、シャルティアやアウラ、マーレに対してはやや余る情報かもしれないがアルベド、デミウルゴスなら既に把握しているだろう。

 とりあえず動き出す前に今回動いてもらわなければならないシャルティアにフォローはしないとな。

 

「ではルプス」

 

「はい。捕らえた人間たちはアインズ様含めた記憶操作能力のある者達により操作完了、また治療も終え既に指定の場所へと運び込んでおります」

 

 迅速な行動だ。

 スピード勝負というわけではないが、遅れはあまり歓迎できない。むしろ今回はタイミング勝負だ、早すぎても遅すぎてもダメ。

 今頃捕らえた人間たちはどうしているだろうかねと考えれば少し愉快な気持ちにもなるが……まぁ今は置いておこう、どの道後で会うことになるんだし。

 

「よくやった。まずは二人へ今回の作戦における実働内容について説明する。質問があれば話し終わった後まとめて答えよう。まずは座ってくれ」

 

「はっ!」

 

 至極真面目な顔で椅子に座る二人。

 十分な意気込みを感じる、王都での試用と言うか試験の時に比べれば適度な緊張感を纏っていると言えるだろう。あの時は若干気負い気味ではあったし。

 

 そう考えればこの短期間でこれだけ成長したことにやっぱり驚きを隠せない。

 本当に、何度も思うけど俺よりよっぽど優秀だ。

 

「まずはソリュシャン。お前には今回の作戦における追い込みの指揮を任せる」

 

「っ……! 謹んで拝命致します」

 

 緊張感を少し高めながらもしっかり頭を下げるソリュシャン。

 網の管理といい、本人にしてみればやや重責に思えるだろうが正当な評価だ。

 俺としてもソリュシャンが指揮を取ってくれることで自分の仕事に専念できる。

 

「適度に傷を与えろ、その中でも殺しても良いリストはこれだ。奴らにしっかりと全力を出させるのに必要であれば殺しを許すという意味だ」

 

「畏まりました。一切の興を交えず必ずや遂行致します」

 

 うん、遊びはなしだよってのはしっかり伝わっている。

 

「加えて俺の動線指示も頼む。タイミングがシビアだが、しっかりルプスと連携を取るように」

 

「はっ!」

 

 リストを渡す。その時ソリュシャンの手が震えていることに気づいた。

 

「ソリュシャン」

 

「も、申し訳――」

 

「慣れろ。お前なら出来る」

 

 じっと目を見つめる。

 本当に難しいポジションになったと思う。彼女に言った明確さを大切になんて言葉を守れないくらいに。だけど難しいと理解できるソリュシャンなら大丈夫。

 そうだと信じられる、信じていると伝わればいいんだけど。

 

「――はっ!」

 

「よし……次にルプス」

 

「はっ!」

 

 リストを抱きながら瞑目し、再び目を開けた時にはしっかりと返事をしてくれたソリュシャン。

 本当に、いいノリ具合だ。

 

「お前はユリと共にカルネ村防衛支援だ。ガゼフ・ストロノーフが出張って来ない限りだが、敵戦力的には先に戦った蒼の薔薇以上の存在はいないと思われる。はっきり言ってお前やユリなら一人でも殲滅出来るレベルだろうが……直接手を出すなよ? あくまでも籠城することが正解だと思わせる程度に回復等での支援に努めろ」

 

「畏まりました」

 

「ガゼフとやらは民に刃を向けることは絶対にしないとラナーからの言もあるからまずないだろう。敵戦力は3000だそうだ、カルネ村防壁裏門にユリ、前門にルプスを配置する形で頼む」

 

 今回のキモ、というよりは絶対条件は防壁の扉が突破されそうでされない状態を維持することだ。

 されそうでされない。

 つまり優勢になっても劣勢になってもダメだということ。カルネ村の人間たちが撤退を選択しても、王国軍が撤退を選択してもダメだ。

 

 難しいって点ではソリュシャンと大差はないが、役割という点では明確である分十分にこなせるだろう。

 ユリには王国軍を率いるバルブロが選択するだろう戦術をまとめたものをユリに渡してもいる、二人で上手くやってくれるはず。

 

 フォローとしてアサイーもつけたし、難しそうであればプランの一部変更をするとはモモンガさんも言っていたし、その辺は任せてもいいだろう。

 直接俺は俺の仕事に注力して欲しいなんて言われたし、それはつまり余計な情報を知らないほうがいいってことだ。それくらいわかる。

 

「上手く状況が進めば、防壁門は開かれることになる。開かれたタイミングを持ってソリュシャンは王国軍の動向監視に移行、恐らく指揮官……バルブロは撤退を選択するだろう、上手く戦場から撤退出来た頃捕らえろ、バルブロ以外は殺していい」

 

「戦場から撤退後、行方不明扱いにせよということですね? 畏まりました」

 

 バルブロ自身に価値は無いが、これは王国に対する保険でもある。

 いや、対ラナーと絞って言うべきかも知れないな。まぁどのみち保険だ。用済みが確定すれば処分する。

 

「ルプスは防壁門が開かれた以降お前も前線に出てくれ。基本的には味方の(・・・)支援だ」

 

「味方、ですか?」

 

「あぁ……いや、俺にも誰が味方かとは言えない、というか教えてもらってない。モモンガさんがかなり情報を絞っていてな、少なくともその場に会せばわかるとは言っていたけど」

 

 軍事用語で言うところのNeed To Know、アインズ・ウール・ゴウンで言うところのぷにっと萌えさんの教えではあるが。

 ある意味今回の作戦はモモンガさんの実験といった意味合いもあるんだろうな、俺に対してはある意味テストになるんだろうか。まぁ効果測定。

 

 それだけに失敗は許されない。

 俺はどれだけ泥を被っても構わないが、ギルドの旗に泥は被せられないし被らせない。

 

「まぁそうだな、喜んでいいと思うぞ。モモンガさん、いやアインズ・ウール・ゴウンのパズルピースとなれた。それはつまりそれに足ると認められたということだ」

 

「っ! 畏まりました、機を逃さないよう注視、注力致します」

 

 よし。それでこそ俺のメイドである……なんてな。

 頼りにしてるぞ、ほんと。

 

「以上になるが、何か質問は?」

 

「村の損害はどれほど認められるのでしょうか?」

 

 おっと、良い質問だねルプス。

 

「最優先で守護するべきはエンリ・エモット新村長、並びにンフィーレア・バレアレ、ネム・エモットだが可能な限り人間は死なせるな。ゴブリン、オーガに関しては気にしないで良い」

 

「畏まりました」

 

「作戦上私はトブの大森林からですが、人間たちの逃亡支援はロコモコ様達への攻撃という手段を取ってもよろしいでしょうか?」

 

「っ!?」

 

 おっとー、ソリュシャンいいねぇいいねぇ! はいはいルプスはそこまで驚かないの。

 

「ソーちゃ――!」

 

「構わない。ただトロール……いや、トロール・ゾンビは殺すなよ? ルプス、これは必要なことだ。いやむしろ作戦の出来と確実性を向上させるとすら言える。気持ちは嬉しい、だから後で慰めよろしく」

 

「う……最近のロコモコ様は意地悪っす……畏まりました」

 

「申し訳ありません。閨に余計な問題を起こしてしまいました」

 

 ニヤニヤしてまぁソリュシャンさん? 何気にしてやったりですかね?

 やれやれ、まぁこれくらい気軽なほうがいいよ、やりやすい。

 

「責任取れって言ったらどうするよ」

 

「その時は誠心誠意ご奉仕させていただきますわ」

 

「ソーちゃん!?」

 

 あはは、ルプスいじられキャラ路線開発かー? それもありだな?

 

「はいはい、緊張もほぐれたところで各自準備に動くぞ。俺はこれからシャルティアのところへ寄ってからトブの大森林へ向かう。二人の精勤に期待してるからな」

 

「畏まりました!」 

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