ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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ナザリック進出編
支配的融和


「顔を上げ、アインズ様、ロコモコ様の御威光に触れなさい」

 

 守護者達、プレアデスに加えてナザリックでも上位に位置する皆の顔が上げられて。

 

「うむ、まず一段落と言った所だ。一度全体の進捗確認、並びにこれからの方向性を伝えるために集まってもらった。皆、忙しい中感謝しよう」

 

 そんなモモンガさんの声にすかさずデミウルゴスが何をおっしゃいますと返すこのやり取り。

 最早テンプレではあるが、そうだけになんだか安心する感覚がある。

 

 モモンガさんが言った通り一段落だろう、この場でようやく実感が湧いてきた。

 なんというか気を張ったという意味で疲れたよね、他の皆はなんかつやつやしてるけどさ。

 

 ともあれ今回のカルネ村に関する出来事は落着した。

 色々となるほどなと思える部分も多く十分に理解が及ぶ範囲。

 

「ではデミウルゴス。竜王国についてはどうだ?」

 

「はっ。女王、ドラウディロン・オーリウクルスは全面的なナザリックに対する表向きの協力、事実上の従属を誓わせています。それを違えた時どうなるかを想像できる程度に頭は働くようですし、監視は要しますがひとまず裏切りの心配などは無いかと」

 

 うんうん、俺は報告書だけでしかまだ見てなかったけど流石の手並みだよね。

 直接面識は無いけれど、女王もまずまず国を統べるものとしての器量はあるみたいだし。ビーストマンって言う脅威がなければこちらに対する呼応はしっかりやれるだろう。

 

「よくやってくれた。今後竜王国に関しては私が築く共栄圏へ積極的参加を促し指示に従わせる予定だ」

 

「勿体なきお言葉。畏まりました、監視兼常駐している配下のものへと伝えます」

 

 っと? 配下を派遣してるのか。へぇ、ちょっと変わったなデミウルゴス。てっきり自分で行くかとも思ったが……教育の成果、と言うには早すぎるかも知れないけどいい兆候だね。

 

「共栄圏に関しては全員の報告を聞いてから説明しよう、では次にコキュートス」

 

「ハッ」

 

「蜥蜴人達……というよりはコキュートス隊だな。損害は無しと聞いている、良くやった」

 

「アリガタキオコトバ」

 

 コキュートスはあのアンデッド達を率いた時と同じく自分では手を出さず指揮に徹していたらしい。その面だけを見ても随分な成長だと喜べる。

 蜥蜴人達もナザリックの装備支援があるとは言え随分と強くなったみたいだな、ハムスケに関しては元々この世界では強いって話だしわからないわけではないが武技を習得したって話も聞いている。

 やっぱり俺たちにしてもそうだがまだまだ成長出来る希望はある、か。

 

「ビーストマンの一部を捕獲したとも聞いている、奴らに関しては使えそうならお前の自由にして良い。竜王国の忠誠維持にも利用できるだろうその辺りはデミウルゴスと連携しろ」

 

「カシコマリマシタ」

 

 抜け目ないよねほんと。

 あの白い蜥蜴人……なんだっけ、クルシュ、だっけか? あいつを事前にモモンガさんの近くに呼んでいた時も思ったけど何気に細かな気配りが出来る。

 いやはや、出来る男はデミウルゴスだがやれる男はコキュートスだね。

 

「エントマもコキュートスのフォローへよく務めた。お前の負担は理解しているがこれからも頼ることは多くあるだろう、引き続き頼んだぞ」

 

「も、もったいなき……御言葉です」

 

 お。まさか水を向けられると思ってなかったのね? 動揺がわかるよ、表情は動かないけどさ。

 

「先も言ったが、今後竜王国は都合のいい存在として扱う。とは言えある程度の国力を保たせる必要はある、その部分については追って話そう」

 

「はっ!」

 

 竜王国に関する出来事は実にスムーズに帰結した。

 今後どんな形であってもあいつらは俺たちに協力しなければならない。

 これが救済などでは無いなんてことは流石にわかってるだろう、それだけに少しでも良い形を維持したいと思っているはずだ。

 当面、竜王国は都合のいい駒として扱える。不安が出るとしたら世代交代が行われた時期になるだろうがそれまでは。

 

「では次にカルネ村独立作戦、お疲れさまでしたロコモコさん」

 

「いえ、俺はモモンガさんの指示に従っただけですよ」

 

 いやほんとにね。

 今回俺ってばただの噛ませ犬しただけだし、特に苦労してないし。

 

「またそんなこと言って……まぁいい。ユリ、ルプスレギナはよく呼応と調整を行ってくれた」

 

「勿体なき御言葉です」

 

 そうそう、むしろそっちですよすごいのは。

 

「特にソリュシャン。お前の活躍は目覚ましいものだと聞いているし、私もそう思う。この調子で励め」

 

「も、勿体なき御言葉です!」

 

 あ、ちょっとプルプルしてる。プルプルプレアデ……いやまぁそれはいいか。

 後にも先にも考えて結構な仕事を割り振られてたんだよな、ワーカー達をカルネ村に誘導しながらタイミングの調整を行って。

 終わったと思えばバルブロの捕獲だ、ほんとに忙しかったはず。

 

 ちなみにバルブロ捕獲は案外すんなりといったらしい。

 カルネ村の住人に一当てされたのもあってだいぶボロボロだったとか。

 

 いや、たかが村人の奇襲でボロボロになるって……まぁよそう。

 

「では次にカルネ村そのものに関してだ。アルベド」

 

「はい。アインズ様のご提案なされた共栄圏への参加を表明いたしました。先立ってお伺いしていました新しい形の冒険者組合……クランに関する説明。並びに防衛維持戦力としてハムスケと蜥蜴人の一部を向かわせています」

 

 クラン、ね。

 いつだったかモモンガさんと話してたっけ、この世界の冒険者は冒険者じゃないっての。

 大筋でモモンガさんの言う冒険者に対して賛同しているしその通りそれこそがと思う。

 まぁ個人的にはもうちょっと刹那的と言うか破滅的というか、死んで覚えろよろしく死ぬことを楽しむなんて考え方が俺にはあるけれど、それはユグドラシルってゲームだったからこその考え方なんだろう。

 

「また、村で身柄を管理していましたワーカー達。ロコモコ様の推薦もあり、フォーサイトというチームへクランの勧誘を行っていますが愚かにも条件を提示しています、そのことについては後ほど、またその他のものに関しては帝国へと帰しています」

 

「うむ、ご苦労アルベド。条件とやらはまた聞こう。王国からは何かあったか?」

 

「第一王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフの身柄引き渡し要求。王国兵団に対する賠償請求。並びに即時武力の一切を放棄し、独立を撤回しなければ再び攻め入るとの勧告が来ております」

 

 まじ? え、まじで?

 バカじゃねぇの? あ、アルベドもそう思う? うん、こめかみピクピクしてる所見るにフォーサイトの条件とかどうでもいいレベルでキレてるなこれ。そりゃ事実上カルネ村はナザリック直下のものになったんだ、ひいてはモモンガさんのもんになった。それに対してその反応は、なぁ。

 

 と言うかまだ自分達の傘下にあるって思ってる節があるな? 交渉のテーブルをまずは用意するべきだろうほんと何考えてんだ?

 

 あ。モモンガさん口開きっぱなしでこっち見ないで下さい。

 

「……そ、そうか。まぁまずは今後のことを話してからだな、うん」

 

「畏まりました」

 

 というかアルベドはよく直面して何もしなかったな? モモンガさんの代理としていったから我慢できたのかな? ……自制、効くようになったのね、ほろり。

 

「ご、ごほん。ともあれ共栄圏について、並びに今後のことについて話そう。共栄圏はその名の通りだ、まずはカルネ村を発展させると共に、ナザリックの一部を表に進出させる。そして以降ナザリックを中心とした多種族が集う国を作る。この共栄圏が魅力的なものになればなるほど大きな国となり、ナザリック、アインズ・ウール・ゴウンの名声は高まることになる」

 

 将来的にはカルネ村が多種族が住むことができる中立地帯となるだろうか。

 文化や文明が違うだろうし完全な共存は不可能だろうし、ナザリックの周りにそれぞれの種族村、街が集う形が未来予想図。

 

 この話を先に聞いた時は思わず手を打ったもんだ。

 カルネ村が類を見ない発展した都市となれば各地から多くの人、物資が集まってくるだろう。

 敷く法的なものにもよるが、それぞれの安全や権利が脅かされないのであればそれこそ世界中から。

 

 加えて。

 

「なるほど……そういうことでございましたか!」

 

「え? ど、どうしたでありんすデミウルゴス」

 

 まぁ、気づかないわけがないよね。アルベドは代理の役目があったから先に知っていたけど、知っていただけに当然ねと言った顔でデミウルゴスを見てる。

 

「ふむ、デミウルゴス。掴んだようだな、皆に話してみせよ」

 

「はっ! アインズ様の深慮遠謀に遠く及びはしないと存じていますが――」

 

 そして唐突に始まるテスト。

 いや、これは俺たちにとってのテスト、だ。

 

「戦う前に勝つ。お教え頂きましたこの状況を作るためには些か遠回りかとも思っていましたが、先のカルネ村での件。言葉は不敬になってしまうが特にロコモコ様……黒狼の存在を利用するのだよ」

 

「ロコモコ様を……?」

 

 ピクリと反応するのはルプスレギナ。はいはい、ステイステイ。全然悪いことじゃないからね。

 ともあれここまではオッケー。

 

「黒狼はこの世界にとって危険な存在。それは強者と言われている蒼の薔薇が確認しているし、その危険な存在と互角に漆黒のモモンが戦えることも確認している。しかしそのさらに上をいくのがアインズ様という事実を作り上げそれを示した」

 

 そう、黒狼噛ませ犬プランだ。

 しかし当然それだけではない。

 

「そのことでアインズ様が管理する共栄圏の安全性は格段に高まった。少なくとも王国やこの出来事を知る人間はそう思えるだろう。そして同時に黒狼による他国襲撃を行い、黒狼の危険性を高めるとどうなるかわかるかい?」

 

「え、えっと……漆黒のモモン、アインズ様の力を借りようとするでありんす?」

 

 おぉ、シャルティアもいい感じじゃないか。いや、バカにしてるわけじゃなく。

 

「その通りだよ。助力を要請されるなら様々な条件をこちらに都合よくつけられるし、何より黒狼という存在が憚られる事なく各国へと敵対行動が取れる。危険であったり従属まで取り付けられないだろう国を表立って滅ぼせる。人間という種に限らず多くの者は自分たちの繁栄を願う。共栄圏に属したほうが繁栄が叶うと知ればこちらから何もせずとも勝手にすり寄ってくるでしょう」

 

 ……よし。

 モモンガさんと視線を合わせてみれば頷いてくれた。

 

 そう、これは俺たちにとってのテスト。

 守護者達と考えのすり合わせがしっかり行えているかというテストだった。

 言い換えるなら勘違いが生まれないかの確認でもある。

 

「流石アインズ様……!」

 

 アルベドやデミウルゴスが別の方向へ考えを飛ばす可能性もあった。

 しかし今回は違う、完璧にモモンガさんが想定した中に収まった。

 

「うむ、デミウルゴスその通りだ。完璧だな」

 

「何をおっしゃいますアインズ様。ですがこのデミウルゴス、さらなる高みを目指しよりナザリックへ貢献出来ますよう忠義に励む所存です」

 

 ……まぁこの辺りの持ち上げはもう諦めようね、うん。

 

「今後ロコモコさんは黒狼としての活動、そして従来どおりの諜報部隊としての活動を兼任する。また、黒狼としての活動時はアウラ、マーレは優先的にバックアップ出来るよう動け。戦力を必要とした場合はテイムした魔獣を応援に出すなどな」

 

「かしこまりましたアインズ様! ロコモコ様、よろしくおねがいします!」

 

「かか、かしこまりました! よろしくおねがいします!」

 

「あぁ、よろしく頼むよ二人共」

 

 王国だけで見るなら俺一人で十分だったりするが、慢心や油断はよくない。

 それで反省したばかりなんだ、しっかりやろう。

 でもなぁ……さっきの要求内容を考えるにそこまで考えが至って無い感じなんだよな。ラナーの差し金? ありえるけど、こういう場面にまで力が及ぶわけでもなさそうなんだよな、うーん。

 

「ソリュシャン」

 

「はっ!」

 

 そしてソリュシャンだ。

 俺が兼任になるって言われた瞬間ちょっと動揺してたよね、不安はあるんだろうけど……だ。

 

「聞いての通りロコモコさんは兼任となる。諜報部隊と黒狼としての活動は確かに兼任出来る部分も多いだろうがやはり負担は大きい」

 

「はい、恐れながらも理解の及ぶ所で御座います」

 

 出来ないことはない。が、やっぱりどうしても雑になるだろう。

 今まで俺が部隊長に専念していたとは言えそれでも反省することばかりなんだ、先を考えれば我ながらゾッとしてしまう。

 

 故に。

 

「ソリュシャン、お前を諜報部隊の長とする」

 

「……?」

 

 おっとソリュシャン珍しく何言われてるのか理解できないのか首を傾げたー! かわいいー!

 

「ロコモコさんは諜報部隊の副官……というか相談役になる形だな、存分に頼るが良い」

 

「お、お待ち下さいアインズ様!? そ、その! 私が、え……あの!?」

 

 はい、貴重なソリュシャンの混乱シーンがこちらです。

 いやまぁバカやってる場合じゃないか、モモンガさんから目配せも来た。

 

「ソリュシャン」

 

「ろ、ロコモコ、様」

 

 はっきり言って。

 まだ俺には及ばないだろう、不安もある。

 

「ソリュシャン、俺の下じゃお前は腐る」

 

「そ、そのようなこと! 私は! ロコモコ様に遠く及びません! これからも私をお導き下さい!」

 

 わかる、わかるさ。

 確かに俺の下にいてこのまま仕事を続ければ、俺のコピーにはなれる。

 けどそれが腐るっていうもんだ。

 

「弟子は師匠を超えるもんだ。ソリュシャン、思う存分やってみろ。お前が俺に相応しくないんじゃない、俺がお前の器を満たすに足りないんだ」

 

 磨けば俺よりも光るだろうナザリックの皆だから。

 そしてそう一番自信を持って言えるのがソリュシャンだから。

 

「頼んだぞ」

 

「――」

 

 目を真っ直ぐ見据える。

 視界の端に映ったルプスの一瞬嫉妬したような表情が見えたけど、まぁそれは後で。

 

 超えてくれ、ソリュシャン。

 お前が一番最初に俺へ忠誠を捧げることが出来た存在なら、一番最初に俺を超えられると証明出来る存在になってくれ。

 

 それこそが、俺に忠義を示すことだと知ってくれ。

 

「――畏まりました」

 

「うん」

 

 そんな想いを目に込めて。

 

「これよりソリュシャン・イプシロン! 至高の御方様達へと遠く及ばぬ身ではありますが! ナザリックへの忠義を諜報部隊長として示すことを誓います!」

 

「うむ。励め」

 

 短く簡素なモモンガさんの声。

 だけど俺と同じだろう、胸にはきっと喜びの感情。

 

「おめでとう御座います」

 

「おめでとう、ソリュシャン」

 

 ――おめでとう。

 ――おめでとう。

 

 玉座の間に響く万雷の拍手。

 

 こうして今、俺の一つの役目が終わった。 

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