ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜   作:失望されないルプスレギナ

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懺悔、あるいはプレイスタイル

「ロコモコさぁん……?」

 

「いや正直すまんかったっす」

 

 骸骨だから表情に出ないわけだが、モモンガさんのジト目が簡単に想像できるし言いたいこともわかる。

 

「悪いとは思うけど、多分あれで正解なんすよ」

 

「んん? どういうことですか?」

 

 まだ詳しい事は分からないけど、あいつらは間違いなくアインズ・ウール・ゴウンというギルドに忠誠を誓っている。

 モモンガさんはその象徴として図らずともギルドという枠組みに向けられていた忠誠を一身に背負うことになったわけだ。

 

「頂点はモモンガさん、これを崩したらまずいっすみんな混乱しちまう。最悪、派閥が生まれてロコモコ派、モモンガ派なんて二分化が生まれかねない」

 

「あー……なるほど」

 

 俺自身ギルマスであるモモンガさんこそがてっぺんに相応しいというか、そうあって欲しいという思いがあるし、なりかわりたいなんて欠片も思わない。

 だからこそ最初の場面でそう宣言する必要があった。

 

「だからあんな形で宣言したってわけでもないっすけどね。ずっとアインズ・ウール・ゴウンを守り続けてくれたモモンガさんこそがてっぺんに居て欲しいって気持ちはもちろんっす」

 

「なんだかこそばゆいですけど、わかりました。けど、俺を支えるってどうするんです?」

 

「まぁここまでは直感で判断した事なんでなんとも。とりあえず、うちの現状っつうかそういうの教えて貰えませんか?」

 

 ギルドというかナザリックごとこの世界に転移して、NPCたちがあんな感じになったってのは先に教えてもらったけど。

 こっちに来てからどういうことがあったのかがまだわからない。加えてこの姿だ、再会したとき急に冷静になったモモンガさんを不思議に思って聞いてみれば、精神鎮静化が発動したってモモンガさんは言ってたけど、そりゃつまりユグドラシルのプレイヤーではなく、アバター自身になったということだ。

 

 要するに俺も正真正銘ロコモコになったって言う事でもある。

 流石に取得したスキルだなんだは覚えているけど、どういう形で発動するかとかはまだ分からない。

 

 そんなことを考えながらモモンガさんの話を聞いた。

 

 現在セバス、ソリュシャンが王国で情報収集していること。

 モモンガさんがナーベラルと共にこの世界の冒険者となり活動していること。

 シャルティアが精神支配を受けて一時モモンガさんと敵対したこと。

 

 かいつまんで纏めればそんな感じだけど、正直色々驚いた。

 

「なる、ほど」

 

「って感じですけど、どうです? ロコモコ(キツイの担当)さん」

 

「それやめて下さいってば」

 

「じゃあ鳳雛のが良いです?」

 

「やめれー」

 

 思わず苦笑いしてしまったけど、懐かしいな。

 かつてメンバーからそんな風に呼ばれていた。ぷにっと萌えさんが考案した誰でも楽々PK術、そのメイン実行担当だったからだ。

 おかげでまぁ色んな事を覚えられましたよ、ほんとに……よく使われたよおのれぷにっと萌え。

 頭が良いわけでもないし、ぷにっと萌えさん程作戦を考えたりできるわけでもないのに相方というかセットでみられて、よく臥龍鳳雛とか言われてたっけな。

 

「ともあれ、俺が来るまでにあったことは把握したっす。苦労したんすね」

 

「実のとこそれほどでもないんですよね、NPC達が優秀なおかげで。俺がした苦労なんて精々みんなから凄い人って思われるのを維持するくらいのものです」

 

「いやそれが一番大変だから」

 

「……わかってくれますか」

 

「わからいでか」

 

 まぁそこが問題って程じゃないけど心配な点なんだよな。

 

「現状アルベドやデミウルゴスの解釈というか、深読みに助けられているって面は強いっすね」

 

「作ったギルメンに文句を言うべきなのか、感謝するべきなのか」

 

 上手く回ってるのならそれでいいとも思うけど。

 ともあれ齟齬、あるいは勘違いってのは本来ならマイナスに働き得るもんだ。聞く限りアルベドやデミウルゴスなら勝手にプラスへと昇華するだろうが、そうならない場合の方が多い。

 

 そしてそこに俺の仕事がある。

 

「モモンガさんに俺の仕事は言いましたっけ?」

 

「え? あぁ、確か探偵でしたっけ浮気調査専門の」

 

 頷いて返す。

 リアルでのくそったれな仕事は探偵だった。

 浮気調査だなんだだったらまだよかったがそうじゃない。

 

 社会の不穏分子となり得る存在を調査する探偵だった。

 

「少し嘘ついてました」

 

「嘘、ですか?」

 

「はい。俺は間違いなく探偵です。けど浮気の調査なんかじゃない、社会不穏分子を事前に発見し、できるなら排除するって役目を負った探偵です。ユグドラシルを始めたきっかけは仕事の一環だったんです」

 

 モモンガさんが固まった。さて、どういう反応になるだろうか。

 

「そんな、たかがゲーム、ですよ?」

 

「たかがゲームだからこそ、調査しやすいんですよ。ねぇ、鈴木悟さん」

 

「っ!!」

 

 身構えられた。いや、まぁ仕方ないよね……って、落ち着いた? あぁ、精神鎮静化か。

 

「心配しないで下さい。少なくともギルドメンバーに関しては何も問題なかったです。DQNギルドだなんだ言われてたのにも関わらずね」

 

「……信用しろと?」

 

「信用、信頼してもらうために今話をしてるんです。もうかつてリアルと呼んだ場所は既に異世界、今更新たな事実を発見したところで報告出来ないしするつもりもない。何より俺自身が処分された身ですから」

 

 墓場まで持って行くなんて選択肢はあった。

 だけど隠し事をすれば、隠し通すために偽りを重ねて行かなければならない。

 それはもう、嫌だ。

 

「あの頃が大事な思い出だってのは本当です。誓ってもいい、もしもあの頃俺のあずかり知らぬ場所でギルメンの誰かに処分命令が下されたのなら、俺は自分の命を賭けてでも防いでいました。その覚悟があった」

 

「……」

 

 ギルメンの情報をなんとなく掴めないように工作したりもした。

 結局そのせいで昇進した後処分が決定されたってのはまぁ、笑い話だろう。

 

「もちろん信用できないと結論を出してもいい。そん時は出来ればモモンガさんに殺されたいです、正直ここに今いるのはモモンガさんといつかまたユグドラシルでって約束を果たすためで、それはもう叶った。思い残すことはないっす」

 

 間違いなくこれは本音だ。

 ユグドラシルじゃあないけれど、それでもこうしてかつてのリアルじゃない場所でモモンガさんと再会するって約束は守られたと思う。

 

「ナザリックの皆には、調査を頼んで遠地へと向かってもらったとでも言えば良い。建前上、モモンガさんが大きく信頼しているからこそ頼んだと言えば不自然な事もないですから」

 

 そこまで言って口を噤む。

 言いたいことは言った、むしろ少し喋り過ぎたくらいだ。

 

 出来ればまたモモンガさんと一緒に遊びたいって気持ちはあるけれど、モモンガさんの、親愛なるギルドマスターの決定に従おう。

 

「はぁ……ずるいですよ、ロコモコさん」

 

「まぁ、自覚はあるっす」

 

「アンデッドになった弊害か鈴木悟が希薄なのか。それでもあの頃を大事だと言ったロコモコさんに嘘はないってわかる。というか元よりギルメンを疑うなんてしたくもない」

 

 モモンガさんは……いや、俺もだろうユグドラシルに偏重している気があった。だからこそ仲良くなれたって部分もあるけれど。

 

「俺も……正直に言えば。シャルティアと戦ったことで、あの頃と決別したつもりだったんです。仲間はもうここには来ない。ならば自分自身こそがギルド、アインズ・ウール・ゴウンとしてかつての日々を背負いこの世界を生きる覚悟を決めたつもりだったんです。だから皆にもあの場で確認したし、もう少し突っ込んで言えばロコモコさんが言った手段をとることも考えてました。ですけど――」

 

 そこでモモンガさんは俺をまっすぐに見つめてから。

 

「――話を続けましょう? 過去、その内実がどうあれ。やっぱり俺は、こうしてまたロコモコさんと一緒に遊べるのが嬉しいらしく、その気持ちが何より大きいみたいです」

 

「……ありがとうっす」

 

 本当に、ありがとうモモンガさん。

 あぁ、俺もNPC達のことは言えないな。大概忠誠心すごいわ。

 あー泣きそう。

 

 いや、泣いてる場合じゃねぇ。

 

「それにしても、最終日にログインしたんですよね?」

 

「ええ。ログインしきれたかどうかはいまいち覚えてませんけど、それがどうかしました?」

 

「いや、何で時間差が出来たんだろうなって思いまして。最初から一緒に転移していたなら変に悩まなくて良かったのになーなんて思っただけです」

 

 そういやそうだな。

 やっぱログイン処理しきれてなかったのかね? それが時系列に影響を及ぼしてこの世界でのスタート位置がずれたとか?

 ってことはやっぱ処分されたんだな俺、なーむー。じゃなくて、元同僚なら空気読めっての、ちゃんとログイン出来てたら今頃何も気負わず新しい世界満喫できてただろうにクソが。

 

 とと、まぁそれを言っても仕方ないか。うん、モモンガさんも似たような結論に辿り着いたっぽい。

 

「じゃあ切り替えるっすよ」

 

「はい。アレな探偵だったってことがどうしました?」

 

 アレって……いやまぁわかるけどさ。

 

「中間管理をするっすよ、俺」

 

「中間管理?」

 

 そう、中間管理。

 

「現状その役目の多くは守護者クラス、多分メインはアルベドが担っているんだと思います」

 

「そうですね。アルベドとデミウルゴスがそれっぽい位置です」

 

「それ自体に問題はないっす。もちろん二人が深読みする事を含めて」

 

「え、問題ないんですか?」

 

 はい問題ありません。

 モモンガさんが上手くこなしていると言うべきか、アルベドやデミウルゴスが優秀と言うべきかはわからないが。

 結果的にモモンガさんが納得できるなら重大な問題とは言えないし、フォローも容易だ。

 

「問題なのはあの自分を殺してまで尽くすほどの忠誠心です」

 

「それは……」

 

 ある意味理想の会社形態だということは間違いない。究極的なトップダウンという構図として。

 

 しかしNPCが意思を持った以上その理想形を維持することに問題が生じた。

 

「ストレス、ですか」

 

「そうっす。恐らく全員モモンガさんの命令なら何でも忠実に実行する。どれだけ自分の意に添わなくとも」

 

 中間管理にアルベドやデミウルゴスがいる。

 能力としては問題ない、しかしその強すぎる忠誠心からモモンガさんの命令に難色を示すことですら許さないだろう。

 

「なるほど、中間管理っていうのは実務的な部分ではなく精神的な面をですか」

 

「はい。俺はそういったストレスのケアに対処します。どういったことがその個人にとって喜びか、やりがいを強く感じるか。モモンガさんに仕える事こそが喜びだーなんて言われるかもしれませんが、好みってのはそれらを超えた場所にあるべきだ。適材適所、適所に適していないなら適するための成長を促せるよう育成も兼ねた」

 

 幸いと言うべきかロコモコは情報収集特化ビルドで組んである。戦闘に適性が無いわけじゃないが、得意なのは情報収集だし、俺自身も人の変化に対して敏感だったからこそ探偵なんざクソッタレな仕事に就けたわけで、その力を活かすには最高の適所だと思う。

 

 何より早急に片づけないとならない案件が既に一つあるわけだし。

 

「わかりました、まさに適任だと思います。俺に直接言いにくい事とかもあるでしょうし、そういう存在が居るメリットについてもよくわかりますから」

 

「ありがとう、モモンガさん」

 

「いえいえ。それに多分皆喜びますよ。ユグドラシル時代のこと覚えているみたいですし、尚更」

 

 あー、そうなのか。いや、そうなんだろうな。だからこそ最後まで残り続けたモモンガさんへの忠誠心がぶっ飛んでるんだろうし。

 

「その頃に恥じないよう、そしてギルメンの顔に傷をつけない様頑張るっす」

 

「ええ。よろしくおねがいします」

 

 そういって二人でもう一度握手をした。

 

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