ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
「ふぅ……」
アルベドとのやり取りを終えて自室に戻ってきた。
一先ずこれで安心というか、一定の信用は得られただろうパーフェクトとは言えないかも知れないが、グッドコミュニケーションではあったはずだ。
言った内容や考えていたことに偽りは無いけど、やっぱり何処か気がひけるのはギルドから姿を消していた事実による負い目のせいだろうか。
「まぁこれから、だわな」
一言二言、一回やそこいら腹を割って話した程度で信頼関係を築けるとは思っていない。流石にNPCとはいえそこまでちょろくないだろう、ないよね?
中間管理者というか、いわゆる良い上司ムーブは出来ているだろう。
単純に自分だったらこんな上司が欲しかったっていうのを実践しているだけに近いが、それこそが今のナザリックに必要であるとも思えるだけに徹底していきたい。
そういう実践を通してモモンガさんの苦労というか努力を垣間見えた気もする。流石ギルマス、さすマス。
ともあれ可能な限り自分の立ち位置をはっきりさせるべきだろう、下手に時間をかけてしまえば第二の支配者的な扱いを受けてしまうかも知れないことを考えれば。
あくまでもナザリックの支配者はモモンガさんなのだ、そして俺は良い上司程度に収まりたい。
ある意味既にナザリックは完成している。俺こそがイレギュラーであり異分子なのだ、そのことがアルベドと話してよくわかった。
それだけにこれから当面の間は最大限注意して動かないとな。
「にしても、勢いで言ったとは言え子供か」
寿命がどれほどに設定されているかわからないが、モモンガさん程は無いだろう。
モモンガさんを支えたいって気持ちはマジもマジだし、子供へとその意思を継がせたいとも思っている。
ただまぁ子供となるともちろんお相手が必要なわけで。
この世界の現地人でも探せば居るのだろうが、やっぱり価値観の違いに悩まされるだろう。そもそも異形種間で子を成せるのかも疑問だ。
ならばユグドラシルからの設定を引き継ぐナザリックで探す? となると。
「ルプスか」
同じ異形種というカテゴリーかつ同種の人狼。
獣王メコン川さんがルプスレギナを作る時から思ってたけど、正直どストライクなんだよな。いや、メコさんとお互いの性癖ぶち抜こうバトルの結果がルプスレギナだから俺にクリティカルなのは当然だけど。
性格というか内面に関してはまだよくわからない。設定に関しては色々知っているけれど、どういう形で反映されているか確かめられてないし。
「話をしようにもあの調子じゃなぁ」
最初に出迎えてくれた時はビビった。セバスの鋭い目がなんだか生暖かくも感じたけど、それに気を向ける余裕もないくらい。
モモンガさんの話を聞いて忠誠心が高じてなのかなと一旦結論を出したけど、案内してくれた時の様子を見てもどうやらそれが正解だろう。
つまりそんな忠義の心を持ってくれているルプス相手に迫るってのは……どう考えてもパワハラアンドセクハラです、ありがとうございました。
多分受け入れてはくれるんだろう、それこそご寵愛だなんだと喜んでくれるのかも知れないが、やっぱりそういう気持ちで抱くのはアウトだ。
メコさんに申し訳が立たないし、彼の流儀にも反するだろう。それはよろしくない。いやもしかしたらさっさとYOU喰っちまえよとかいう可能性はあるが、メコさんがここに居ない以上俺がメコさんに対して創った性癖ぶち抜きNPCをあてがえないし、お食べ下さいどうぞも出来ないし。
やっぱり愛だよ愛。
一方的な密約になってしまった以上、ちゃんとお互いの気持ちを大事にしたいところだ。
仕方ない、最悪ナザリック外の存在を片っ端から種付けするか、数撃ちゃあたるだろ、良心も傷まない。外の存在である以上生まれる子供の能力に不安はあるけど、子供のころから躾れば大丈夫だろ。
「……ん?」
不意に気づく。確かに身内以外に対する興味は希薄な方だけど、ここまでだったっけ?
「……あー、これがモモンガさんの言うやつか」
この身体に精神が引っ張られている。
リアルに生きていた頃の自分との差異。
モモンガさんから聞いた時はいまいち理解できなかった。
っていうのも精神沈静化ってスキルの存在がモモンガさんにはあるからだ。
プラスにもマイナスにも昂ぶることが出来なくなった心に精神が適応したんだと思ってた。
怒りも悲しみも、やっぱりそれは人間らしさなんだよな。言い方を変えれば感情こそが人間の証明である。
モモンガさんの言うところの鈴木悟の残滓。
こうして実感してみて思うけど、それは僅かに残ったモモンガさんのモモンガさんらしさなんだろう。
「なら俺は……どれくらい俺が残ってるんだろう」
わからない。
ただこれもやっぱりふとした時にしか気づけないんだろう、考えてわかるものでもなさそうだ。
まぁ丁度いい。
ナザリックは基本的に排他主義だ、同族至高主義とも言えるのかも知れないけど。
そんな中で生きていれば、気付ける機会は多いだろう。
それに。
「次は、デミウルゴスと会うし」
カルマ値マイナス500の極悪属性。
ある意味デミウルゴスとの会話は自分の試金石となり得るだろう。価値観、知性それらを含めて。
アルベドから今までモモンガさんに提出していた報告書、そして提出
デミウルゴスに対する危惧を解決するだけではなく、この存在を確かめる為にも会わなければならない、曰くの牧場で。
十中八九予想は的中しているだろうが、それでもだ。
「まさか気が重くならないことに対して気が重くなるなんてな」
なんとも複雑な気分だ。
けどこれも良い上司確立のため、頑張らないとな。
そんな時だった。
「失礼致します。お食事の準備が整いましたが、こちらでお召し上がりになりますか?」
「ん? あぁ、それじゃ食堂に行くよ。一緒に食べよう」
「と、とんでもありません。至高の御方と共になど……!」
慌てたようにわたわたと両手を振るルプス、可愛い。
やっぱりなー好みなんだよなーでもなーパワハラはなー。
「良いんだって、これも俺の我儘なんだ。可愛い子と一緒にメシ食いたいっていうさ」
「か、かわっ!? お、おおお、お戯れを……! そ、そんな事言われたら、我慢出来なくなっちゃうっす……!」
うん? 微妙に口調が?
いや、まぁそれはいいか、嫌がってる感じはしないし、ここは押すところ?
「頼むよルプス。一人で食事も味気ない。それに明日もついてきてくれるんだろ? その打ち合わせもしたいしさ」
「か、かしこまりました。ええと、ですが、ほんとに、よろしいのですか?」
「もちろん」
「はいっ! ……夢じゃないっすよね?」
なんかほっぺた抓りだした。うん、可愛い。
やったぜかわいこちゃんとごはんだー! パワハラではない、断じて、いいね?
「うまっ!? なんだこれうまっ!? シェフを呼べ待ったなしなんだけど!? うーまーいーぞー!!」
「い、今お召し上がりになられていますのが、ナザリック産三種の冷製サラダクリームスープです。次に前菜としてスモークサーモンの塩マリネ、シェフ渾身コンソメルアン風、ホタテと鯛のムースと続きメインディッシュにドラゴンの桜燻製肉を準備しております」
何その呪文!? いいやめっちゃうめぇしなんでもいい!
うわーこれはリアルになってくれて嬉しいポイント高いよマジで。
あのクソリアルじゃ絶対食えねぇよこんなの、しかもさ。こんな可愛いメイドさんが給仕してくれてさ!
ナザリック万歳、超万歳。
「料理の紹介ありがとさん! ルプスも食おうぜ! めちゃくちゃうめぇぞ!」
「か、かしこまりました。それでは失礼致します」
いやたまんねぇよこれ、ここが天国か!
なんか厨房の奥から泣き声が聞こえるけど気のせいだよな! うめぇ、うめぇぞ! グッジョブだ!
あ、一般メイドさんごめんなさい、行儀悪いかもしれないけど許してね? お作法がどうのとか言ってられないの!
あー、っていうか!
「皆も食おうぜ! そんなとこで遠巻きに見てないでさ! あぁごめんな!? ちょっとこれ美味すぎる! 料理してくれてるやつもさ! ごめん! 皆の分も作ってくれねぇかな! んで落ち着いたらこっちきてくれよ!」
良い上司どこー? 知るもんか! そんなもんそこらのアンデッドに食わせてやれ! あ、食えねぇか!
「よ、よろしいの、でしょうか?」
「良いって良いって! メシは家族で囲んで食うのが一番美味いんだからさ!」
そういった瞬間だった。
「ロコモコ様ぁ……!」
「うおっ!? な、何で泣いてるの!? ごめん、やっぱ行儀悪いか? ごめんな? 次からはちゃんとするからさ、今日だけでも頼むよ」
周りの奴らが一斉に泣き出したぞ!? 軽くどころかホラーだぞ!?
「いえ……いえ! とんでもございません! 是非、是非ご一緒させて下さい!」
「お、おお! ありがとう! そんじゃ一緒に食べよう食べよう!」
あーこれあれだな! いわゆる会社の飲み会ってやつだな! 酒は飲んでねぇけど! ははは!
その場にいた奴ら皆で食卓を囲んで、美味しい料理がさらに美味しく感じて。
「ナザリック最高!」
食べられないモモンガさんには申し訳ないけど、最高の一時を満喫したのだった。
獣王メコン川さんとの性癖ぶち抜こうバトルは当然ながら捏造です。
ルプスレギナの名前に込められた意味的には獣王メコン川氏が同じく人狼であった場合俺の嫁的意味があったのやも知れませんが堪忍して。