ナザリックらいふ!~愛され上司のすゝめ〜 作:失望されないルプスレギナ
「おつですロコモコさん」
「おつっすよーモモンガさん」
アルベド、デミウルゴスへのまぁ挨拶か。
それが終わって、改めてモモンガさんの元へ。
こうしてあの頃時代の挨拶をするとなんだかほっとする気持ちがある。さもすればやっぱりこの世界がゲームなんじゃないかと錯覚もする。
「どうでした?」
「やぁ、なんと言うかやっぱ驚いたってのが大きいっすね」
各NPCにつけた設定、それがああいう風に反映されている。
アルベドに関しては想像以上の予想外。
ギルドに対してではなくモモンガさんへの忠誠と言うか愛情と変更したってことが気になったのはそうだけど、途中で獣の勘が発動するとは思わなかった。
間違いなく、途中で俺を殺そうと考えていたんだよなアルベド。怖い怖い。
デミウルゴスに関しては逆に予想通りではあったか。
回りくどい言い方をしたけど、要するに部下を大事にしろって言うことはちゃんと伝わっただろうし理解もしただろう。
部下のために手を汚せない上司に部下はついてこない。同じ理由で部下を愛せないやつは愛されないもんだ。
その辺りを補強出来ただろうデミウルゴスならまぁ無敵も良いところだ。
もちろん二人に対してこれで万事オッケーなんて言わないし、ちょこちょこ様子を見るつもりではある。
「とりわけモモンガさんに近い二人の理解は得られたと思うっす。この調子でいけばモモンガさんの位置をそのままに、俺も自分の立ち位置が確保できそうっすよ」
「相変わらず結構なお手並みで。敵として再会しなくて良かったですよ」
同じ思いですよモモンガさん。
ぶっちゃけ俺がいなくてもナザリックは完成してるんだ。そんな完成しているナザリックと敵対するなんて骨が折れそうだもの。
いや当たり前に敵対なんざしないし、したくないが。
「そいでモモンガさん。コキュートスというか、
「ええ。タイミング悪くて相談できませんでしたけど、どう思います?」
コキュートスによる蜥蜴人集落への襲撃。
俺がナザリックに帰ってくる前にモモンガさんが指示したことで、なんだかんだと知れたのは牧場でデミウルゴスの口から。
「勝つか負けるのかの話じゃないっすよね?」
「もちろん」
狙いとしてはコキュートスが、というか俺たち含めたナザリックの存在が成長できるのかということ。
んでもってついでに微妙どころか低級と言わざるを得ない戦力をぶつけることで現地の戦力を測るってあたりだろう。
「いい案、だと思うっす。人選と言うか戦力抽出もいい感じっすね、モモンガさんの疑問についての答えがしっかり出ると思うっす」
「そうですか……ロコモコさんにそう言って貰えると安心できます、よかった」
実際内面的な成長って意味じゃ俺もアルベドやデミウルゴスに近いことを促しに行ったわけだし、恐らく結果がどうあれコキュートスは成長するだろう。
ただまぁ不安があるとすれば。
「蜥蜴人が想像以上に弱かったらちとまずいっすけど」
「あー確かに」
ナザリック側が圧勝してはダメだ、だからこそモモンガさんも低級アンデッドをコキュートスにつけたんだろうけど。
最低でも善戦の上両陣営退却、じゃないとただナザリックが強いという証明にしかならない。
うーん、俺が調整に入るか? いや、ちょっと時間も足りねぇしコキュートスの成長にも繋がらない、か。
先にコキュートスに会いに行く? それも微妙か? 今でさえコキュートスなりに考えているところだろう、そこへ助言に入れば従われてしまいそうだ。いやでもなぁ……。
早めに会いに行きたいとは思ってたけどタイミングが悪い、お話しで済めるような時間は残されていない感じか、仕方ない。
「ロコモコさんに何かしらしてもらえたら安心出来るんですけど」
「買いかぶりっすよモモンガさん。それに、まだ挨拶回りも済んでないっすから」
シャルティアやアウラ、マーレに直接会いに行くのはもちろんだけど。
それ以上にまだ気になることがあったりする。
「挨拶回りですか。ちょっと羨ましいですね」
「いやぁ、支配者は辛いっすねぇ? それこそモモンガさんがそんなことしたらナザリック大慌てっすよきっと」
しょぼんと肩を落とすモモンガさんは可愛いけれど、そこは我慢してもらわないとな。俺の仕事がなくなっちまうし。
「ともあれコキュートスに関してはあまり心配は要らないってことでいいです?」
「はい。率いるアンデッド軍団が余裕で勝ってしまいそうな場合だけ、俺がちょちょっと工作するっす。上手く負けてくれた後に関しては、モモンガさんが好きな様に運んでもらって大丈夫っす」
「わかりました。まぁしっかり支配者することにします」
二人して頷き合う。
かつてのユグドラシルとは全く違うけれど、やっぱりこうしてモモンガさんと何かしらやってるとゲームで遊んでるなんて感覚へ浸る事にしよう。
「コレハ、ロコモコ様。オ呼ビ頂ケマシタラ馳セ参ジマスモノヲ」
「いやいいんだ。蜥蜴人どもを相手にする準備を進めているところだろう? 邪魔はしたくないしな」
「邪魔ナドト」
頭を下げようとするコキュートスを制しながら、何ともまぁ武人然としたキャラになったもんだなと少し感動する。
「まぁ陣中見舞いを兼ねてになってしまうけど。こうして会えてうれしいよコキュートス」
「勿体ナキオ言葉。僭越ナガラ、私モ嬉シク思ッテオリマス。コノ感動ヲドウスレバオ伝エ出来ルノカ思イ浮カバナイ事、オ許シクダサイ」
ほんと隙あらば平伏しようとするよね? まじで勘弁して下さい、俺はモモンガさんほど魔王ロールが出来るわけじゃないんだよって。
内心慌てながらコキュートスの手を取って握手してみれば、その身体震わせながら冷たい息を吐かれる。
感動してると思いたいんだけど、流石に虫の表情は読み取れない。
正直デミウルゴスやアルベド以上に表面から掴めない感じは強いな。
「ともあれコキュートス。蜥蜴人相手の準備はどうだ?」
「万事、滞リナク」
ほむ。
話す前にこっそり確認しておいたから
そして今の状態を万事と言ったコキュートス。
「流石だな、それならモモンガさんも安心して戦いを任せることができるというもんだ」
「ッ……必ズヤ勝利ヲ捧ゲマス」
一瞬詰まったな? あぁうん、わかるよ。
いつでも戦える準備は出来ている。だけどそれが必ず勝つ準備となっているかに自信がないんだろう?
「この陣立ては全てコキュートスが?」
「設備ニ関シテハ、アウラガ手伝ッテクレテオリマスガ、攻メ触レニ関シテハ私ガ」
裏を返せばどう戦うかという面を誰かに相談したりはしていないと。
なるほどなるほど、モモンガさんが望んだ一番の部分はこの辺か。
ただ盲目的に命令を実行する将は将に足りえない。
位置する立場が違うだけで本質的に命令を受け、命令を実行するという構図に変わりがないからだ。
ある命令を受ければ、それに適した存在を群から抽出し、指示を与える。
将であるならばその適した存在を抽出、今であるならば勝利するという条件を満たすためにどうすればいいかを思考するべきで、思いつかないなら相談すべきなのだ。
「そうか、コキュートスの手ならば間違いはないな。安心したよ」
「――ハッ! 有難キ、オ言葉」
っと、流石にいじめ過ぎだな。パワハラが過ぎた。
ともあれそういったことの重要性を説くことは簡単だ。もちろん俺よりモモンガさんが言うほうが効果もある。
その役目を奪ってしまうのは良くないどころかダメだろう。
ならば。
「安心したところで、だ。コキュートス、一つ頼まれてくれないか?」
「ハイ、ナンナリト」
その効果をより高め、多くをコキュートスが手に出来る様に計らうことこそが肝要。
「ちょっと身体がなまっていてな? 相手をして欲しいんだよ」
「相手……ッ!? オ、オ言葉デスガ至高ノ御身ヘ刃ヲ向ケル等!!」
うんうん、そういう忠誠はノーサンキューなんすよね、今は。
「何故だ? 俺から頼んでいることだぞ?」
「サリトテ――」
「それともお前に刃を向けられる程度の事で俺が気分を害するとでも? そちらの方が問題だなコキュートス」
うおぉ……胸が苦しいぞ……! ぶっちゃけ牧場での皮剥よりよっぽど辛い!! 百倍くらい!
あ、でもやっぱ身内に対してはこういう風に思える自分が残ってて一安心か。
コキュートスが吐く息、その温度が一段と下がった気がする。
武人然であるコキュートスだ、ある意味誇りを汚す言葉だ、辛かろうて。
「コキュートス。モモンガさんとシャルティアの戦いを見たな? その勝算はどう見立てた?」
「……アインズ様ガ3、シャルティアガ7ト見テオリマシタ」
「それは10回二人が戦えばそれ位の黒星白星数になるだろうと言う意味でか?」
「恐レナガラモ、仰ル通リデス」
なるほど、ね。
確かにまぁそれ位に落ち着くだろう、コキュートスの見立てに間違いはない。
「コキュートス、ならば俺とお前が戦った場合その数字はどうなる?」
「ソ、ソレハ――」
「答えてくれ。これは俺の
「――9対1。私ガ9デス」
うん、言いづらいだろうことをよく言ってくれたよね。
「あぁ、その通りだ。お前が幻想とも願望ともいえる物に惑わされず、しっかりと現実を見ることが出来るもので嬉しく思う」
ちょっとずつ表情が掴めて来た。表情というより雰囲気、だが。
心苦しいのだろう、至高としている相手より自分の方が勝っていると告げるなど。
裏方特化である俺が、戦闘を目的として創造されたコキュートスに戦闘力で劣るなんて当たり前なんだけども。
事実だけに気にしないで欲しいがそう言っても仕方がない。
そう、そう考えているだろう、だからこそ。
「よしコキュートス、陣中見舞いだ」
「ロコモコ、様?」
絶対に負けられない時に
「俺に対して10回の内9回勝て、これは