続くかは未定。
変身! バナナで騎士!?
それは己が信念を突き通すための戦い。
「葛葉ー!」
「戎斗ー!」
それは新たな王の誕生。
「なにがお前を、そこまで強くした……!?」
「守りたいと言う祈り……! 見捨てないと言う誓い……! それが俺の全てだ……!」
それは運命にあらがった者たちの物語の閉幕。
「俺は、泣きながら進む!」
「お前は……ほんとに強い……」
それは新たな強さを求める物語の開幕である――――
「―――――ッ!? ここは、何処だ……?」
駆紋戎斗が目を開けると、そこは先ほどまで戦っていた場所ではなかった。
とは言え、眼の前の状況も決していいものではない。
インベスを如何にかするために、また沢目市にミサイルでも撃ちこまれたのか。だとしても、黄金の果実を手にした葛葉が放っておくわけがないだろう。
「火事だと? ……っ!? なんだこの姿は!?」
おかしいのは周囲だけではなかった。
何と戎斗の姿が、高校生の時の姿に戻っていたのだ。否、正確には高校生の姿に変わっていたと言うべきか。着ていた服も、葛葉と決着をつけた時の物がそのまま小さくなっているし、懐を探れば戦国ドライバーに幾つかのロックシードがあった。
「なにがどうなっている。……ん? おい、お前! ちっ!」
困惑する戎斗の目の前を、一人の少女が走って行った。
何故自分が此処にいるのか、自分は宿敵である葛葉鉱太と戦い死んだのではなかったのか。
疑問は残るが、明らかに炎が燃え盛る方に向かっている少女に、戎斗は舌打ちして後を追う。
わざわざ死にに行くような少女を、自身が命を懸けて止めに行く必要はない。だが、だからと言って見捨てて自分の命を優先すれば、それは戎斗が唾棄する”弱者”と同じである。
戎斗は少女を追いかける。
「はぁ、はぁ、はぁ……お母さん! お父さん!」
炎の中を走る少女は、必死に家族の名を叫ぶ。しかし、返ってくるのは建物が崩れる音と炎が燃え盛る音。そして……そばに合った電柱が倒れてくる音。
「あ……」
少女は呆然と、電柱が倒れて来るのを見てるだけだった。
圧倒的質量をもつ電柱は、少女を押し潰そうと倒壊し……その直前で戎斗が少女を抱えて地面を転がった。
「何をしている! 死にたいのか!」
「え、あ……お兄さん、誰?」
少女は状況を呑み込めていないのか、戎斗の言葉に戸惑うばかりだった。
「とにかくここから逃げるぞ」
「待って! お母さんとお父さんがいないの!」
「なに?」
「早く探さないと……だから私の事はいいから、お兄さんは逃げて!」
そう言って少女は戎斗の腕から抜け出し、親を捜しに行こうとする。しかし戎斗はその少女の腕をつかむ。
「離して! 私は……!」
「行くぞ!」
「え……?」
少女がもがこうとすると、それより早く戎斗が動き出した。
戎斗は少女の隣に立ち、並走する。それに驚いた少女は思わず立ち止まる。
「どうした? 親を探すのではないのか?」
「手伝ってくれるの?」
「ふん。貴様は弱者ではない。自らの手で、自分の大切なものを守ろうとした強者だ。なればこそ、俺も手伝ってやる。さっさと行くぞ」
「あ、ありがとう!」
少女のお礼に戎斗がそっぽを向くと、二人は炎の町の中を走る。
おそらく少女の家にいるかもしれないという少女の言葉に、二人は少女の家に向かう。
走る事数分、ある曲がり角を曲がると、二人の前に二つの人影が見えた。
「あ! お父さん! お母さん!」
「あれがお前の両親か」
「うん! ありがとうお兄さん!」
少女は戎斗にお礼を言い、嬉しそうに両親のもとに駆けよる。
それを見届けた戎斗は、背を向けてその場を離れようとすると、視界の端に何かが映った。
その”何か”は人のような姿形をしていたが、その見た目は人間とは程遠い物だった。
赤黒い表皮、頭部に生えた禍々しい角、そして先端に水晶を嵌め込んだ錫杖。それは人と呼べるものではなかった。
「あれは、インベスだと!?」
―――インベス。
ヘルヘイムの森に住まう存在。ヘルヘイムの森の種子を運ぶ役目を持ち、凶暴な生命体である。
「(だがおかしい。もしあの時、俺を倒した葛葉が黄金の果実を手に入れたのなら、インベスを残しておくことなどしないはずだ)」
戎斗の脳裏に、あの底なしにお人好しで、誰よりも傷つき、それでも立ち上がった男が思い浮かぶ。
自身が負けた後何が起こったか知らないが、インベスがいるなら放っておくわけにはいかない。
そう思い、戦国ドライバーを取り出そうとした瞬間、背後から途轍もない衝撃が戎斗を襲った。
「なにっ!? ぐぁ!」
不意の衝撃に、戎斗はなすすべなく吹き飛ばされる。
そして地面に叩きつけられると、不思議なことにまた周囲の風景が変わっていた。
先ほどまで燃えていた炎は何処にも見当たらず、眼の前には半壊した学校がそびえていた。
「またか……。こんどはなんだ」
戎斗は立ち上がり、眼の前の校舎に近づくと、唐突に校舎の壁が吹き飛んだ。
それをすぐに察知した戎斗は前方に転がり、落ちてきた瓦礫を避ける。この時、開いた穴から宙に飛び出してきた一人の少年の姿が消えたのだが、戎斗はそれに気づくことは無かった。
「さっきから、妙な事ばかり……一体何が起きている。……ん? あれは、人間か?」
先ほどから妙な事ばかり起きることに、戎斗はそう吐き捨てていると、眼の前に不審な集団を発見する。
アーマードライダーたちの纏うアームズのような機械に、その手に持っているのは紛れもなく銃。そして何より、
「(新たなアーマードライダーか? だが戦国ドライバーやロックシードが見当たらない)」
柱の影に隠れながらその集団を観察していると、その集団に襲いかかる影があった。
「グギャッ! グギャッ!」
「またインベスだと!?」
空を飛び回り、集団に襲いかかるのはコウモリインベスと呼ばれるインベスの一種。
いきなり現れたコウモリインベスに、空中にいた集団の何人かが背負っていた機械を攻撃され地面に落ちて行く。さらにその人たちを狙うかのように初級インベスが複数現れた。
「ギャッ! ギャァ!」
「グギュッ! ギュルルル!」
「攻撃開始! アンノウンを排除しろ!」
群がってくるインベスに対し、リーダーらしい女性の命令で攻撃が開始される。
しかし、構えている銃は現代兵器らしく、インベスに有効打を与えられない。
「ちっ、仕方あるまい!」
その様子を見ていた戎斗は、懐からある物を取り出す。それは黒く何かを嵌めるような窪みや、刀を模したパーツが付けられていた。
「戦国ドライバー」と呼ばれるそれを、腰に当てるとベルトが巻かれ固定される。
続いて、バナナの形のパーツが付いた錠前「バナナロックシード」を取り出した。
「変身」
その言葉と共にバナナロックシードのロックを外す。
《バナーナ!》
音声が鳴ると、戎斗の真上にジッパー状に縁どられたゲートが出現し、そこから様々な果物を模した鎧「アームズ」が現れる。今、戎斗の上空にはバナナアームズが現れている。
戎斗はバナナロックシードを手元で回転させて戦国ドライバーに装填し、刀を模したパーツ「カッティングブレード」を降ろす。
《カモン!》
バナナロックシードが展開され、アームズが戎斗の頭部に被さり変形。その身を守る鎧となる。
《バナーナアームズ! ナイト・オブ・スーピアー!》
戎斗の強さの象徴とも言えるその姿は、まるで中世の騎士のごとく。
変身を終えた戎斗は、インベスの群れに向かって突撃する。
《バナスピアー!》
「はあああ!」
皮をむいたバナナ型の槍「バナスピアー」を召喚し、初級インベスに蹴散らしていく。
「な、なんだ貴様は!?」
「邪魔だ! 生き残る気が無いのなら黙っていろ!」
銃が効かず腰を抜かしていた男性を襲おうとしていたインベスの背中を斬りつけ、男性からインベスを引き離す。男性は恐れを含んだ声で戎斗に話しかける。
しかし文字通りの腰抜けに、戎斗は構うことなくインベスを次々と倒していく。
「シャアア!」
「ふっ!」
まるで手足のごとくバナスピアーを振り回して、正面から向ってくるインベスを斬り倒し、背後から襲ってきたインベスは視線を向けることなく逆手に持ったバナスピアーで貫く。
「ぎしゃぁ!」
「ふん。雑魚はこれで全部か。後は……」
戎斗が未だに飛行しているコウモリインベスに目を向けると、コウモリインベスも戎斗に気付いたのか、滑空して襲い掛かる。
「ギシャァ!」
「甘い!」
しかし、真っ直ぐに向かってくるだけでは戎斗にとって敵ではない。
コウモリインベスの攻撃をかわし、さらにカウンターでバナスピアーで叩き落とす。
「止めだ!」
戎斗はカッティングブレードを2回降ろし、バナスピアーを構える。
《バナナオーレ!》
「はあああ……はぁ!」
バナスピアーを突き出すと、バナスピアーからバナナ状のエネルギーが発生し、コウモリインベスを貫き爆散させた。
インベスを倒し終えた戎斗が変身を解除しようとロックシードに手を伸ばすが、その手は途中で止まった。
気づけば戎斗の周囲では、先ほどインベスに襲われていた者たちが銃を構えていた。銃口が狙っているのはもちろん戎斗だった。
「何か用か?」
「そうだね。まずは礼を言わせてよ。あの化け物どもを倒してくれてありがとう」
このままの状態でいるわけにもいかず、戎斗が声を上げると先ほど命令を出していた女性が答えた。
「俺は貴様らを助けるつもりで戦ったわけではない」
「それでもじゃんよ。で、話が変わるけどさ、あんた何者?」
鋭い警戒を含んだ声で、女性は戎斗に問いかける。だがその程度では、数々の死闘を潜り抜けた戎斗にとって威嚇にもならない。
「人に銃口を向けなければ話が出来ない貴様らに、語ることは無い」
「それは、友好的な態度じゃないって認識で良いの?」
「そんなに気になるなら、力づくでやってみろ!」
振り向いた戎斗がバナスピアーを地面に着き立てると、黄色の閃光が弾け戎斗以外の人間の視界を奪う。
閃光が収まった時には、戎斗の姿は消えていた。
そしてまた別の場所では、戦いの一部始終を見ていた者たちがいた。
「謎の怪物、それを倒した謎の騎士……令音、何か知ってる?」
「いや、私も今まで見たことない」
「なら、会ってみるしかないか」
物語は動き出した。駆紋戎斗という人間がもたらすのは希望か、破壊か。
ガイムの中ではバロンが一番好き