仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

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進み続けるステージ

 

<ハーミット>の霊力封印から翌朝。

琴里から艦橋に来るように呼ばれた戎斗に、それはあっけらかんと言い放たれた。

 

「明日には精霊用の特設住宅を作るのだけど、戎斗もそこに住んでちょうだい」

「…………は?」

 

 

 

 

 

 

<ハーミット>の霊力封印から2日後。

 

「なんじゃこりゃぁぁぁあああああ!?」

 

閑静な朝の住宅街に、近所迷惑になるくらいの士道の叫び声が響き渡った。

しかし、それもそうだろう。なにせ、朝起きて外を見れば、家の隣に昨日までなかったはずのマンションが建っていたのだから。

 

「……ふぁ、うるさいわよ。ご近所に迷惑でしょ」

「琴里!? いや、だって、なんだよアレ!?」

「言わなかったっけ? 精霊用の特設住宅よ。十香や四糸乃、ついでに戎斗もあのマンションに暮らして貰ってるのよ」

 

当たり前のように言いきる琴里に、士道は唖然とする。

 

「物理的耐性はもちろん、顕現装置(リアライザ)も積んでるから、霊力耐性もばっちり。多少暴れようとなんのそのよ」

「いや、だとしてもこんなもんすぐに作れるわけ……」

「あんた、陸自の災害復興部隊だって、破壊されたビルを一日で復興させてるでしょ」

「あ……」

「十香が家にいたのは試用期間。今頃荷造りしてると思うから、声かけときなさいよ」

 

それだけ言うと、琴里は部屋を出て行った。

残された士道も、とりあえず十香の部屋に向かおうと部屋を出る。

 

「……あ。そういえば……」

 

しかし、士道はふと足を止め、2日前の折紙との会話の一幕を思い出した。

それは空間振警報が鳴り始め、折紙が士道に避難を促して部屋から出ようとした時のこと。

 

『……士道。私がASTになった理由は、精霊を倒すこと以外に、もう一つある』

『え?』

『あの大火災の日、両親を探していた私目掛けて倒れてきた燃え盛る電柱から、私を助けてくれた男の人。今、彼が何処にいるのかもわからない。そのための手がかりも、ほとんどない。だけど、その男の人を見つけることが、私のもう一つの目的』

『折紙……ッ?』

 

あの時、一瞬だけ見えた()()()()()()()()()()()()。それはどことなく、戎斗が持っているロックシードに似ていることに気付いた。

しかし士道は大して気にしていなかった。見えた限りでは、その錠前は青色で、戎斗の持っていた物(少なくとも士道が見たことのある中で)とは違っており、状況も状況なためプラスチックの玩具だと思ったのだ。

その後、なぜか玄関に設置されていたトリモチで足止めを食らい、ドームに閉じこもる前の四糸乃に接触することが叶わなかった。

 

「(折紙の恩人かー。探してるってことは、やっぱそれだけお礼が言いたいんだろうな。まぁ、命の恩人ならそれもそうか。……にしても、折紙もああいう玩具を持ってたりするんだな)」

 

そんなことを考えながら、こんどこそ十香の部屋に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教科書を詰め込んだ鞄を持ち、これから住むことになる新たな家を出る。

琴里から戎斗に言われたのは主に2つ。精霊用特設住宅であるこのマンションに住むこと。もう一つは精霊たちとも、出来る限りコミュニケーションを取ること。

一つ目に関してはまだわかるが、二つ目が難題だ。

戎斗はそこまで話すような人間ではない。良く言えば落ち着いた、言葉を選ばなければ寡黙な男だ。

しかし琴里は「特に四糸乃。彼女の相手をしてあげなさいよ」と言ってきた。戎斗はこの言葉の意味を測りかねていた。

その時、戎斗に件の少女の声が聞こえた。

 

「……あの…戎斗さん……おはようございます…」

『おーはよー! バナナのお兄さーん!』

「……四糸乃か」

 

声の方向に顔を向けると、霊力が封印された関係上、霊装ではなくワンピースに麦わら帽子という格好の四糸乃がそこにいた。

左手にはよしのんが装着されており、おずおずと差し出されていた。

 

「今から<フラクシナス>に行くのか?」

「は、はい……。検査があるので」

「そうか……」

 

その会話を皮切りに、何とも言えない空気がその場に満ちる。

戎斗がどうしたものかと頭を捻らせていると、よしのんが陽気な声で四糸乃に話しかける。

 

『それで四糸乃ちゃーん、バナナのお兄さんに言うことあるんでしょー?』

「言いたいこと……」

「はい……。その、この前は、助けてくれてありがとうございました!」

 

一気に捲し立てた四糸乃は、ガバリと頭を下げる。

 

「礼を言われる事ではない。それに、よしのんを見つけたのも、五河士道だ」

「でも、あの怪物さんから守ってくれました……。だから、お礼を言いたいなって…」

 

おずおずと話す四糸乃に、戎斗は近づいて麦わら帽子の上からポンポンと優しく手を置いた。

 

「あ、あの……!?」

『おおー! お兄さんだいたーん!』

 

おっかなびっくりといった感じに戎斗を見上げる四糸乃だったが、四糸乃は逃げることも無く、離れることも無かった。

そのまま数十秒、遂に戎斗の手が離れ、四糸乃は何処か寂しい気持ちを覚えたのだった。

 

「……インベスを倒すのは俺の役目だ。だから、お前が礼を言う様なことじゃない」

「…………」

「だが! もし、危険な目に合ったら俺を呼べ。何時でも駆けつけてやる」

「……ッ!」

 

そのまま戎斗は四糸乃の横を通り過ぎようとして、

 

「戎斗さん!」

 

四糸乃の声に引き留められた。

 

「戎斗さんの事、()()()()()()()って呼んで、いい…ですか?」

 

背を向けていた戎斗には分からないが、四糸乃の顔は珍しく大きな声を出したことと羞恥で赤く染まっていた。

そんな彼女に、戎斗はただこう言った。

 

「……好きにしろ」

 

そう言い放ち、再び歩みを進める。

背後から聞える『やったね四糸乃!』「……うん!」という会話を背中で聞きながら、戎斗は学校に向かう。

 

 

 

だが、マンションを出た直後、戎斗は何かの()()()を感じ、辺りを見渡す。

しかし、怪しいものは特に見当たらず、勘違いかと当たりをつけた戎斗は歩を進めた。

その直後、マンションの影が歪み、()()()()()()()()()()()()()

 

「あらあら……まさか感づかれてしまうとは、やはり今回の時間は何かが違いますわねぇ」

(わたくし)、どうしてあの方を始末いたしませんの? 不穏分子は即座に消しておかなければ、どんなイレギュラーが起きるか分かりませんわよ」

「おやおや(わたくし)、イレギュラーなら既に起きているではありませんか。明らかに見たことのない、精霊の力をも取り込んでしまうインベスと呼ばれる化け物。それを倒すあの男性。そして、DEMの動向」

「ここまで捻じれてしまっているのです。不用意な行動は慎むべきではなくて?」

「そもそも何故()()()()()()んですの?」

「簡単なことですわ。これまで何度もやり直してきた中で、唯一とも呼べるイレギュラー。(わたくし)は期待しているのでしょう?」

「まさしく藁にでもすがる思いですわねぇ」

 

口々に騒ぎ立てる()()()()を、少女はピシャリと窘める。

 

「……うるさいですわ。どの道、士道さんとはそろそろ接触しなければなりません。いずれ出会うのです。あの方を見極めるのは、それからで良いでしょう。それよりDEMの動向はどうなってますの?」

「まだ何も。()()()()()()()()は手に入るのですが、例の最重要特殊区画の情報だけが手に入りませんの」

「DEM本社の情報サーバーとも独立しているほどの手の込みよう。これもやはり、イレギュラーですわね」

「分かりました。ならば、そちらの調査は続けてくださいな。こちらも行動を開始するとしましょう」

 

その言葉を最後に、少女は影に沈んだ。

 

 

 

「さぁ、踊りましょう?」

 

 

「さぁ、狂いましょう?」

 

 

「今宵の時間は何処まで行けるのかしら?」

 

 

(わたくし)たちはただ、狂い続けるのみ」

 

 

「キヒッ」

「キヒヒッ」

「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッッッ!!!」

 

少女は嗤う。己の狂気を示すために。

 

 

 

 

 

 

――――――――己が、狂ってしまわないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでダンスホールのような部屋に、その男はいた。

研究者なのだろうか、白衣を着て回転椅子に座る男は、これから来るであろう友人を待っていた。

広い部屋の中心にポツンと置かれた机に、その上に設置された複数のパソコンと散らばる資料。まるで研究者気質な男を表しているようだった。

シュッと最低限の音を立ててドアが開く。やってきたのはスーツを着込んだ男と女だった。

 

「やあ、よく来たねアイク」

「待たせてすまないね。プロフェッサー凌馬」

「別に構わない。僕らの互いの目的のために、お互い忙しい日々を送っているからね」

「無駄口はいりません。さっさと要件を話しなさい」

 

旧知の友人と再会したような感じで話す凌馬と呼ばれた白衣の男。しかし女は厳しい双眸を向け、白衣の男は肩をすくめる。

 

「相変わらずせっかちなお嬢さんだ。世界最強を自称するなら、それに見合った雰囲気を身につけるべきではないかな?」

「ならば今ここで証明してみせましょうか? あなたを殺すことによって……」

 

ヘラヘラと笑う凌馬の煽りにキレた女は、懐から取り出したデバイスに顕現装置(リアライザ)で光刃を形成。

凌馬に斬りかかろうとするが、その直前で先ほどまで誰もいなかったはずの場所から伸びた手が、女の腕を掴む。

女は咄嗟に反応し、腕を振り払う。そして、乱入者へとそのまま斬りかかるが、乱入者はバックステップで躱し膠着状態になる。

よくよく見れば、乱入者の正体もまた女だった。しかし、光刃を持った女はプラチナブロンドの挑発なのに対し、乱入者は黒髪の短髪だった。

 

「そこまでだ、エレン」

 

二人の女は再びぶつかると思われたが、それより早く凌馬にアイクと呼ばれていた男が仲裁に入った。

 

「プロフェッサー凌馬、彼女は?」

「ああ、彼女は私のボディーガードだよ」

「そうか。エレンが済まないことをしたね」

「私は大して気にしていないさ。それより本題に入ろうじゃないか」

 

凌馬は机の上の複数のモニターの内一台を、アイクに見せる。

 

「君の言っていた天宮市にて、インベスと精霊の反応が融合するという珍しーい反応が確認された」

「ほぅ……」

「もっとも、このインベスが取りこんだのは精霊の力のカスだけどね。だが、こんな珍しい反応、調べないわけにもいかないだろう? だから、君の所で誰か向かわせてほしいんだが……」

「それならちょうど、日本に向かわせた人員がいるんだ。ほら、例の彼女だよ」

「ああ。なるほど、それなら適任だ」

「要件はこれだけかい?」

「最後にもう一つ」

 

そう言って凌馬は、机の下からアタッシュケースを取り出した。

 

「エレン君用のものが完成してね。せっかくだから渡しておこうと」

 

そう言って開いた中には、戦国ドライバーとロックシードが入っていた。

 

「彼女用にカスタムされているから、扱いやすいはずだ」

「それは助かるよ。エレン」

「……ええ」

 

アイクに促され、エレンはアタッシュケースを受け取る。

喜んで、というよりも、アイクに言われて渋々といった感じである。

 

「それじゃ、僕たちは失礼するよ」

「ああ。互いの目的のため、頑張ろうじゃないか」

 

短く言葉を交わした後、アイクとエレンは部屋から出ていく。エレンに関しては、睨みつけると言ったサービス付きである。

そして二人が完全に出て行ったことを確認した凌馬は、近くに控えていた黒髪の女に声を掛ける。

 

「さて、彼にはああ言ったが、実際彼女だけでどうにかなるのか疑問が残る。だから、君にも天宮市に行ってもらうとしよう」

 

それを聞いた黒髪の女は頷くと、何も言うことなく部屋を出ていく。その様子はまるで、糸で操られた人形のような不気味さだった。

 

「さて……どんな結果になるのか。精々良いデータを期待しているよ―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崇宮 真那(たかみや まな)三尉であります。以後、お見知りおきを」

 

 

 

 

 





次回の鎧武外伝!

「なぜお前がここにいる!」
「時崎狂三と申しますわ」
「もしもの時は、俺があいつを倒す!」
「俺は……あいつが、人を殺すところを……ッ!」

《ラ・フランスアームズ!》

「貴様の覚悟はその程度かッ!」
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