仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

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狂三キラー
監視者


精霊を救おうとする者と殺そうとする者。

その現実を改めて目のあたりにした駆紋戎斗は、殺されそうになっても反撃しない精霊、四糸乃の霊力を五河士道と<フラクシナス>と協力して封印した。

しかしその影で、暗躍する者たちもまた、行動を起こそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

霧が立ち込める鬱屈とした森。

乱立する木の幹には、おびただしいほどの蔦が絡みついており、赤黒い果実が生っている。

そんなどこか幻想的な森に引き込まれる者を、現実に引き戻すかのような戦闘音が響いていた。

 

 

 

 

《バナーナオーレ!》

「――はぁ!」

 

振るわれたバナスピアーが、初級インベス達を一掃する。

襲撃の気配が消えたことを確認すると、戎斗は肩の力を抜き、バナスピアーを逆手に持ち替える。

 

「……<フラクシナス>、応答しろ」

『ハァイ、戎斗。状況はどうかしら?』

「一時間近く探索しているが、やはりこれといった手掛かりは見つからない」

『そう。なら、今回の探索は切りあげましょう。クラックを監視しているクルーから、クラックが閉じかけているとの報告があったわ』

「閉じたとしても問題ない。探索を続けるぞ」

 

戎斗が今いるのは、ただの森ではない。

インベスの棲家、意思ならざる意思を持つ森”ヘルヘイム”。

事は一時間前、突如として天宮市の街中にクラックが現れた。

それに気づいた<フラクシナス>は、クラックが現れた場所が運よく人気が無い場所だったため、すぐさま人払いをし監視を開始した。しかし、戎斗の提言により、戎斗によるヘルヘイムの森の探索が決められたのだ。

 

『駄目よ。いくらあなたがクラックを自力で開けるとしても、念には念を入れましょう。探索を認める代わりに、私の指示に従う。それが条件だったはずよ。』

「……了解した」

 

語気を強めた琴里に、戎斗は渋々従う。

琴里としても、戎斗を心配していることは理解しているため、不満はあれど怒ることはない。

<フラクシナス>との通信を切った戎斗は、近くに止めてあるローズアタッカーに向かおうとする。

 

――パキッ

 

「っ! 誰だ!」

 

小枝が折れる音に戎斗は振り向き、隠れているであろう何者かに向かって叫ぶ。

警戒する戎斗の視界の端に、木の影から何かが飛び出してきた。

 

「――ギャギャッ。ググォ……」

 

出てきたのは初級インベスだった。初級インベスは戎斗を一瞥すると、戎斗とは別方向に走って行く。

インベスを追わずに未だ警戒を続ける戎斗は、インベスが出てきた木に近づく。

しかし、そこには誰もおらず、ヘルヘイムの果実が二つ、不自然に落ちていた。

 

「(……先ほどまで何者かがいたということか? それにこの森も、何か違和感を感じる)」

 

胸に残るそこはかとない違和感を感じ、戎斗は落ちている果実を二つとも手に取る。

握った瞬間、二つの果実は戎斗の手の中でロックシードへと変化した。

 

「……フン」

 

今度こそ、戎斗はローズアタッカーへと向かう。

そしてその様子を、少し離れた位置で監視していた者がいた。白いスーツに緑色の鎧。腰には戦国ドライバーが装着されており、伸びるベルトには無双セイバーが差されている。

その監視者の手の中には、初級インベスを呼び出せるヒマワリロックシードが握られていた。

 

「………」

 

監視者は戎斗が去るのを見届けると、同じように踵を返して去って行った。

 

 

 

 

 

 

一方、<フラクシナス>艦橋。

艦長席に座り、チュッパチャップスを咥える琴里は、疲れたように背もたれに寄りかかる。

「はぁ……」

「お疲れの様だね、琴里」

 

そう声をかけ、琴里にココアが入ったマグカップを差し出したのは、解析官の令音。

礼を言ってカップを受け取った琴里は、軽く冷ましてから一口飲む。

 

「クラックの出現も、今回で既に5件目。なぜ急に増えたのかしら?」

 

ここ最近、クラックが出現する頻度が異様に高い。

クラックは出現する時間も選んでくれない様で、今も平日の真昼間である。そのせいで、学校を早退してまで来なければならなくなった。

 

「ふむ……。とはいえ、そろそろ対策用のマニュアルも完成している。琴里が現場にいなくても、ほとんどの対策は出来るだろう。だが……」

「戎斗はそうもいかない、か」

 

クラックが出現すると言うことは、必然的にインベスが迷い込んでくる可能性があるということ。

実際、クラック発生の5件中4件でインベスが現れた。その全てを戎斗が対処しているのだ。

インベスを対処できるのが戎斗だけなため、戎斗を呼ばないわけにはいかないのだ。

どうにもならない現実に琴里が頭を抱えていると、プシュッと音を立てて環境の扉が開いた。

 

「……あ、あの……」

「あら、四糸乃。いらっしゃい」

 

入って来たのはヘルヘイムの森から帰って来た戎斗ではなく、ワンピースに身を包み、左手に兔のパペットを嵌めた四糸乃だった。

 

「ふむ。そういえば、そろそろ検査の時間だったね。わざわざ済まない」

「い、いえ。大丈夫です……」

「ああ。こっちは落ち着いて来たし、もう大丈夫よ令音。……そうそう、もうすぐ戎斗が帰って来るから」

()()()()、がですか? 分かり、ました……」

 

取ってつけたように付け加える琴里に、おずおずと答える四糸乃。

何とも言えない雰囲気が両者の間に広がるが、令音が機転を利かせて四糸乃を促し、二人は部屋を出て行った。

一人残った琴里は、気まずさから頬をポリポリと掻いた。

 

「困った物ね……。まぁ、身から出た錆なんだけど」

 

こうなったのには訳がある。

つい先日、琴里の前で四糸乃が戎斗のことを「戎斗お兄ちゃん」と呼んだのだが、琴里はそのことで戎斗をからかったのだ。

勿論、琴里としては冗談の類であり、戎斗が士道のようにその程度で狼狽える男ではないと知っていたからだ。

結果として、戎斗『は』狼狽えなかった。その代わり、四糸乃が激しく狼狽えた。

顔を真っ赤にして羞恥に縮む四糸乃は、小柄な見た目と相まって非常に可愛らしかったのだが、戎斗の呼び方がさん付けになったのだ。

後ほど四糸乃にはしっかりと謝り、戎斗と二人きりの時にはお兄ちゃん呼びなようなので、度々二人きりでいられる時間を作っているのだ。

 

「それにしても、ここにきてクラックの発生。……面倒な事が起こらなければいいのだけれど」

 

祈るかのように、琴里はそう呟いた。

 

 

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