仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

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謎の組織と少女の決意

インベスとの戦いの翌日。

バイク型ロックシードが変形したローズアタッカーを使い、破壊されていなかった場所に移動した戎斗は、ネットカフェで一夜過ごした。

持っていた金銭が使えたのが助かった。

そしてネットカフェを出た戎斗は、街を散策しながら昨夜のうちに調べたことを思い出していた。

 

「空間振……そんなものは今まで聞いたことない。それに天宮市だと? ここは沢芽市ではないのか?」

 

しかし、調べれば調べるほど、分かるのは今いる街が沢芽市ではない事ばかり。

もちろん、沢芽市と言う町は何処にも存在しない上に、昨日助けた集団のことも分からなかった。

 

「沢芽市が存在しない。ここは、俺がいた世界ではないと言うことか? ……それと、いい加減出てきたらどうだ」

 

空を見上げた戎斗が自身の背後に声を掛けると、戎斗の背後の角から、一人の女性が出てきた。

 

「……察していたのか」

「ふん。とぼけるな。こんな分かりやすい誘導、こちらを試していたのだろう?」

 

今戎斗がいる路地裏は人の気配がほとんど感じられない。

途中で工事中の場所などを迂回したが、その迂回の多さから、この場所まで誘導されていることに戎斗は気づいていたのだ。

それがネットカフェから出た時から尾行している何者か、もしくはその尾行者が属している組織が。

 

「昨日の奴らの仲間か」

「いいや。私たちはAST……昨日の集団ではないよ」

「ならば別の組織と言うことか」

「ああ。そういう君は、あの怪物を倒した騎士で間違いないかな?」

「どうせ既に調べているのだろう。何の用だ」

「そうだね。私たちは君に付いてきてほしいんだが――」

 

女性が用を話そうとした瞬間、二人の間を遮るようにジッパーが現れた。

 

「クラックだと!?」

「ぐぎゃっ! ぎゃぎゃ!」

 

ジッパー状のゲート「クラック」の出現に驚く戎斗をよそに、開いたクラックから初級インベスが次々と飛び出してきた。

 

「ぎしゃっ!」

「はっ! おい、そこの女! さっさと逃げろ!」

 

襲い掛かってきたインベスを蹴り飛ばし、反対側にいる女性に逃げるよう言う。

しかし当の女性は耳元に手を当て「……てんそ…ない……じょうぶ…ろう」と、誰かと話しており、逃げようとしない。

 

「ちっ! 仕方あるまい! 変身!」

《バナーナ!》

 

突進してきたインベスを躱した戎斗は、バナナロックシードのロックを外す。

頭上にバナナ型のアームズが現れる。

 

《ロックオン!》

 

腰の戦国ドライバーにロックシードをセットし、カッティングブレードを降ろす。

 

《カモン!》

 

アームズが戎斗の頭に被さり、展開して行く。

 

《バナーナアームズ! ナイト・オブ・スーピアー!》

《バナスピアー!》

 

アーマードライダーバロンに変身した戎斗は、インベスの集団を突っ切り、女性を背後に庇うように立つ。

 

「おや、守ってくれてるのかい?」

「馬鹿を言うな。得体の知れない貴様を守るほど、俺は貴様を信用していない!」

 

そう言いつつも、戎斗はバナスピアーを振るい、次々と迫りくるインベスを切り捨てて行く。

 

「これで終わりだ!」

 

戎斗はそう宣言すると、カッティングブレードを一回倒し、バナスピアーを掲げる。

 

《バナーナスカッシュ!》

「はぁ!」

 

巨大なバナナ状のオーラが纏われたバナスピアーを振りおろす。

狭い路地裏では回避することも難しく、初級インベスは全て爆散した。

 

「お見事だね」

 

変身を解除した戎斗に、女性は表情を変えることなく拍手を送る。

 

「ありがとう。助けてくれて」

「言ったはずだ。俺は貴様を信用していない」

「それでもさ。……さて、話の続きをしよう。こちらの用だが、君を招待したいんだ」

「断る。貴様は信用できん」

「……沢芽市」

 

女性に背を向け立ち去ろうとする戎斗だったが、女性の言葉にその足を止める。

 

「貴様……」

「少々申し訳ないと思ったが、君の使っていたパソコンの検索履歴を調べさせてもらった。この日本に、沢芽市という市はない。それなのに君は、沢芽市に関係していると思われるワードについても検索していたね」

「だからどうした」

「アーマードライダー、ビートライダーズ、ユグドラシル・コーポレーション」

「ちっ。すでに調査済みというわけか」

「そうだね。加えていうなら、君の名前もね。駆紋戎斗。不思議なことに、君の戸籍は存在しなかったよ」

 

次々と放たれる自身の情報に、戎斗は再び舌打ちをしそうになった。

ネットカフェだからと言って、軽率すぎた。

もしかすると、自身で思っているよりも今の状況に混乱しているのかもしれない。

 

「こちらには、君を保護する用意がある」

「生憎と、貴様らのような組織の保護は信用ならなくてな」

 

ユグドラシルのことを思い出した戎斗は、その提案を断る。

ここまで手酷く断れば、()()()()()()()()人員を使って強引な手に出て来るかもしれない。

そう考えて戎斗は警戒を強めるが、女性の次の行動に目を見開いた。

 

「それに関しては、信用してほしいとしか言えない。この通りだ」

「なっ……!?」

 

眼の前の女性が頭を下げた。

その行動に、戎斗は驚愕した。

 

「君の過去に何があったのかは聞かない。だが、今はその過去よりも、私を信用してくれないだろうか?」

 

頭を下げてそう言う女性に、戎斗はため息をつく。

 

「いいだろう。付いて行ってやる」

「……ありがとう。信用してくれて」

 

戎斗の言葉に、女性は礼を言うと頭を上げる。

 

「それでは、さっそく向かうとしよう」

 

女性がそういうと、戎斗を船酔いに似た感覚が襲った。

そして気づいたときには、まったく別の空間にいた。

 

「何だと!?」

「大丈夫かい?」

 

戎斗の様子を心配したのか、女性が声を掛ける。

 

「ああ……ここは何処だ?」

「すぐに説明するよ。まずは()()()の艦橋に案内しよう」

「(艦橋だと? ここは船だと言うのか?)」

「ああそれと、まだ名前を言ってなかったね。私は村雨令音だ。よろしく」

 

 

 

その頃、天宮駐屯地の射撃訓練場では、一人の少女が的に向かって構えた銃の引き金を引いていた。

やがて一マガジンを撃ち切ると、構えていた銃を降ろす。

的への命中率を確認すると、ふぅと息を吐いてリラックスする。

 

「こんな時間まで残って、精が出るわね。折紙」

「……この程度では、精霊は殺せない」

 

訓練をしていた少女――鳶一折紙に声を掛けたのは、ASTの隊長である日下部燎子だった。

 

「相変わらず物騒なこと言ってるわね」

「事実を言っているだけ。それより、昨日のアンノウンについて何か分かったの?」

 

昨日現れたアンノウン――便宜上『未確認生命体』と呼ばれている怪物は、脅威に違いなかった。

ASTの殲滅対象の世界を壊す災厄と呼ばれる精霊とまではいかないが、こちらの攻撃が一切聞かず、こちら同様飛行すら可能な種類がいるのだ。

 

「未確認生命体のことは、まだ何も連絡が来てないわ。<ナイト>の方もね」

 

燎子の口から<ナイト>の単語が聞こえた瞬間、折紙がわずかに反応した。

識別名<ナイト>。アンノウンの出現と共に現れた、謎の存在。

騎士のような姿に槍と思わしき武器を持ち、精霊ともアンノウンとも違う。

アンノウンに襲われていた燎子たちを助け、アンノウンの撃破を撃破した<ナイト>もまた、未知の存在として上層部は危険視している。

 

「……そう」

「そういえば折紙。あんた、やけに<ナイト>のことを気にしていたわね。なんか知ってたりするの?」

「別に。アンノウンを倒せる存在が、気になっただけ」

 

それなりに折紙と付き合いのある人間にしか分からない感情の機微に気付いた燎子は、からかう様に折紙に問いかける。

しかし折紙に素っ気なく返され、燎子は苦笑しながら背を向ける。

 

「そっ。まあいいわ。あんまり無理すんじゃないわよ」

 

部屋から出て行く燎子を見届けると、折紙は懐からあるものを取り出した。

それは透明な青色で錠前の形をしており、レモンを模したと思われるパーツが付けられている。

それは五年前、いつの間にかポケットに入っていた物だった。

 

「(あの日、いつの間にか持っていたこれと似たものを、<ナイト>は持っていた。なら、これの持ち主についても何か知っているかもしれない。もしかすると、()()()()の手掛かりになるかもしれない)」

 

思い出すのは五年前のあの時、一緒に両親を探してくれた青年。

倒れてくる電柱から助けてくれた彼は両親を見つけた後、何故か居なくなっていた。

そして()()()()()()()()()悲しみにくれる中、もしかしたら避難したのかもしれないと、一縷の望みをかけて避難所を探しても結局見つからなかった。

それはASTに入隊し、当時の行方不明者・死亡者のリストを調べても同じだった。

だから折紙は信じているのだ。あの時、自分を救ってくれた彼が死んでいないことを。

 

「私は諦めない。精霊を殺して両親の仇を取ることも、お兄さんを見つけることも」

 

決意を新たに銃のマガジンを取り変えた折紙は、再び的に向けて引き金を引いた。

 




ネットカフェに行ったことないから、利用に戸籍とか住所とか必要ないか分かんない。
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