仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

5 / 15
戦闘!バロンの力

 

『転送完了。調子はどうだい?』

「インベスを見つけた。今から殲滅する」

 

琴里から渡されていたインカムを耳に着け、そこから聞こえる令音の声に戎斗は返事をする。

戎斗の言うとおり、眼の前にはシカインベスやカミキリインベス、多数の初級インベスの群れがいた。

クラックから次々と現れるインベス達は、一貫して精霊がいると思わしき方向に進んでいる。まるで、灯りに引き寄せられる真夏の虫のように。

 

『インベス達は精霊に向かっているのか……?』

『どっちにしろ。インベスがいたら、こっちの方も危ないわ。こちらもすぐ済ませるから、気を付けなさい』

「ふん。誰にものを言っている。……変身!」

《バナーナ!》

 

戎斗がバナナロックシードを起動すると、上空にアームズが現れる。

 

《ロックオン!》

 

そしてバナナロックシードを戦国ドライバーにセットする。

 

『バナナ、バナ、バナナっ!?』

『士道うっさい!』

「バロンだ!」

 

インカムから聞えた士道と琴里の声にそう叫ぶと、カッティングブレードを下ろす。

 

《カモン!》

《バナーナアームズ! ナイト・オブ・スーピアー!》

 

バロン バナナアームズに変身した戎斗は、バナスピアーを構えてインベスの群れに突撃する。

ここにきて、ようやく戎斗に気付いたインベスたちも、戎斗に襲い掛かる。

 

「ぎゃぎゃっ!」

「はぁ!」

 

戎斗は群れの中を走り抜けながら、バナスピアーで斬撃を浴びせていく。

正面から突撃してくる初級インベスをバナスピアーで薙ぎ払い、側面からの攻撃をスウェー回避しカウンターを食らわせる。

 

「シャァ!」

「ギィ!」

「ふっ! 邪魔をするな!」

 

シカインベスとカミキリインベスの攻撃を、戎斗はバナスピアーで受け流していくも、さすがは初級インベスより格上の2体のインベス。

受け損ねた攻撃をくらい、戎斗は吹き飛ばされる。

 

「がぁ!」

『ちょっと戎斗! 大丈夫!?』

「この、程度の敵に……負けてたまるか!」

「ぎしゃぁ!」

 

片膝立ちの状態の戎斗は、飛び掛かってきたカミキリインベスを、バナスピアーで貫く。

そしてすぐさま立ち上がると、カッティングブレードを一回下ろす。

 

《バナーナスカッシュ!》

「はぁぁぁあああっっ!!」

 

跳び上がった戎斗が放ったキックは、カミキリインベスを貫いていたバナスピアーの石突に当たり、背後にいた初級インベス共々爆散させた。

 

「……こちら戎斗。インベスを片付けた」

『ありがとう、戎斗』

「礼など要らん。そっちはどうなった」

『ええ。上手くいったわ。これでまずは一安心ね』

 

安堵したような琴里の話を聞いていると、ふと視界の端に蠢く何かが見えた。

 

「ぐ……がぁあ……」

「さっきのインベス!? まだ残っていたのか!」

 

その正体は、先ほどまで戦っていたシカインベスだった。

そしてその近くには、クラックから出て来たと思われるヘルヘイムの森の植物と、その植物に()っているヘルヘイムの果実があった。

 

「まずい……!」

 

戎斗は早急に止めを刺そうとするが、それよりも早く、シカインベスが果実にかぶりついた。

 

「あ゛あ゛……うがぁぶっ! ぐぶっ!? ぶが、ガアアアアアアアアアアッッッ!!!」

「ぐぁ!」

 

シカインベスが咆哮を上げたかと思うと、全身から生えた蔦がインベスの体を覆い、緑色の発光と共に巨大な姿に変貌した。

その際の勢いに戎斗が吹き飛ばされるが、シカインベスの強化体は戎斗に目もくれず走り去って行った。

 

『戎斗! 戎斗! いったい何がどうしたの!?』

「くっ……ぬかった! おい! この一帯の住民は避難しているな!?」

『そりゃ、終わってるけど……映像の復旧まだ!?「映像の復旧、完了しました!」って、なによこれ!?』

「奴を追うぞ!」

 

そう言って、戎斗はバラの装飾が施された「ローズアタッカーロックシード」を起動し放り投げる。

ロックシードは瞬く間に変形、巨大化し、バイク「ローズアタッカー」になる。

戎斗はローズアタッカーに乗り込むと、シカインベスを追いかけはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お――が――ッ! 折――ッ! ――折紙ッ!』

「……う……ぁ……」

 

耳元から聞こえる上司の声で意識がひっぱりあげられる。

全てが蹂躙され、崩壊した街並の中で、鳶一折紙は何があったのかを思い出す。

……そうだ。自分は確か、精霊を狙撃した時、そばにいた五河士道を誤射してしまい、その後精霊が暴走したのだ。

その力に為すすべなくやられて、止めを刺されそうになった時、誤射してしまったはずの士道が――――。

そこから先を覚えていない。どうやら、そこから意識を失っていたようだ。

 

『折紙! そっちは今どうなってる!?』

「……?」

 

上司に何がどうなったのか聞こうと口を開いた瞬間に響いた上司の焦ったような声に、喉元まで出かかった声が思わず引っ込む。

 

「なにが、起こって……」

『未確認生命体よ! 巨大な未確認生命体と思われる怪物が暴れてる! しかも、()()()()()()()()()()()

「……え?」

 

上司の言葉の直後、地面が揺れた。

通常の地震とは違い、一定のリズムを持って揺れる地震に、痛みを堪えながら何とか首だけを動かすと、()()が見えた。

ゴリラに似た姿をしており、しかしその大きさはゴリラよりも何倍に大きい。

そして何より、怪物がその大きさからは想像もつかないスピードで、こちらに迫っている。

 

「(逃げ……なければ……)」

 

理性は逃げろと警告を発し、ただ恐怖が心を支配する。精霊と戦って死ぬ覚悟はあるが、あんな化け物と戦って死ぬ覚悟は持ち合わせていない。

しかし、精霊との戦いで激しく負傷したせいで、逃げること一つままならない。

 

「(ここで、死ぬと言うの? 精霊を一体も殺せずに、あのお兄さんにも会えずに……)」

 

死の使いが目の前に迫る。しかし怪物は足を止めない。

きっとこの怪物にとって折紙の死など、足元の蟻を気づかずに踏み潰すことと等しいのだろう。

ここで死ねば、天国の両親に会えるのだろうか?

生を諦めた折紙は目を閉じて、その時を待つ。しかし、その時――。

 

「グゥガァァァアアアアッッ!!」

 

怪物の悲鳴のような咆哮が聞こえ、訪れる筈の感覚が来ない。代わりに感じたのは、地面越しに伝わる振動だけ。

疑問に思った折紙がゆっくりと目を開けると、視界に移ったのは倒れ伏す巨大な怪物と、その頭部に槍を突き立てる騎士(ナイト)だった。

 

 

 

 

 

 

『戎斗、やばいわ。インベスが向かっている先に、ASTの隊員がいる! たぶん、十香との戦いでやられた隊員よ』

『おい琴里、このままじゃ折紙が!』

『分かってるわよ! 戎斗、急いで!』

「ちぃ!」

 

ローズアタッカーを駆り、逃走するシカインベスを追いかける戎斗の耳に琴里の焦った声が聞こえる。

最悪の報告に、戎斗はローズアタッカーのスピードを上げる。道路の瓦礫を避けながら進むと、シカインベスの背中が見えた。

追いつくためにさらにスピードを上げると、シカインベスが曲がり角を曲がった。その先には、琴里の言っていたように誰かが倒れているのも見えた。

 

「させるかっ!」

 

戎斗は咄嗟に道に転がっていた車に登り、ジャンプ台のようにして跳んだ。

曲がり角を大幅にショートカットした戎斗は、シカインベスの背中をバナスピアーで切りつける。

 

「でやぁ!」

「グゥガァァァアアアアッッ!!」

 

背後からの不意打ちに、シカインベスは悲鳴を上げて立ち止まる。

戎斗は地面に着地すると、すぐさま方向転換し、シカインベスに向かって走る。

 

「ガァァアァアアッッ!!」

 

向かってくる戎斗に、シカインベスは剛腕を振るうがバイクごとジャンプした戎斗は、その剛腕をバイクで登って行く。

 

「はあああああ!」

 

そしてバイクから跳躍し、落下の勢いそのままに、シカインベスの脳天へバナスピアーを突き立てた。その衝撃はシカインベスを地面に縫い付けるほど。

 

「ガァアアアアアアッッッ!!!!」

 

しかし、身体を揺らしてシカインベスは抵抗を続ける。

それに対し戎斗は、カッティングブレードを三回下ろす。

 

《バナナスパーキング!》

「これで止めだ!」

 

バナスピアーから黄色の光が溢れ、爆発。

炎と煙が立ち込める中、戎斗だけが姿を現した。

 

『インベスの反応消失。何とか倒しきれた様ね』

 

琴里の労いの言葉を聞きながら、戎斗は倒れている折紙の元に向かう。

折紙の側で膝を折った戎斗は、折紙が息をしているか確認する。

 

「息はあるな」

『脈も安定しているし、ひとまず心配はないでしょう。ASTが時期に回収するだろうし。こっちも、あなたを回収するわよ』

「……ああ。(こいつ、どこかで見たか……?)」

 

次の瞬間、辺りの風景が切り替わる。<フラクシナス>に回収された戎斗は変身を解除する。

その足で艦橋に向かうと、それを琴里が出迎えた。

 

「お疲れ様、戎斗。色々と大変だったわね」

「最後のあれは、俺の不手際だ」

「だとしても、私たちにはインベスを倒す手段がないもの。もし他のインベスもああなっていたら、まさしく世界の終わりね」

「世界の終わりがあの程度とは思わんがな」

 

一応緊急事態を解決したからか、二人の会話には幾分かの安堵が籠っていた。

しかし戎斗は、話を一旦途切れさせると、琴里に鋭い視線を向ける。

 

「教えてもらうぞ。精霊とやらをどうやって大人しくさせたのか」

「ええ、いいわ。そういう約束だものね」

 

そう言って琴里は、懐から新たなチュッパチャプスを取り出す。

 

「士道がどうやって精霊を大人しくさせたか。そもそもあの精霊は、士道が()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、好感度はあったのよね」

「……何の話だ?」

 

何の脈絡もなく語られる話に、戎斗は口を挟む。

しかし琴里は、それを気にすることなく話を続ける。

 

「あら? いつの時代だって、呪いのかかったお姫様を助ける方法なんて、一つしかないじゃない」

「まさか……」

 

琴里が言わんとすることに気付いた戎斗に、当の琴里は、手に持ったチュッパチャプスにチュッと口づけた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。