仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

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転校! 来禅高校!

「あら? いつの時代だって、呪いのかかったお姫様を助ける方法なんて、一つしかないじゃない」

「まさか……」

 

琴里がにぃっと笑みを浮かべると、戎斗から見て正面のモニターに映像が映し出される。

それは、空中に佇んでいる精霊と思わしき少女と、士道と呼ばれていた青年がキスをしているシーンだった。

 

「これが、私たちの奥の手。五河士道は、精霊とキスすることで、対象の霊力――精霊の力の源ね――を奪うことが出来るの」

 

戎斗は、琴里の語ったことをうまく処理できなかった。

百歩譲って、精霊を大人しくさせる方法がキスなのは良い。いや良くはないが、実際それが結果を出しているのだから、戎斗がとやかく言うことではない。

戎斗が気になっているのは、まったく別のこと。それは――。

 

「あの士道とかいう男。さっきまで何も知らなかったようだが……」

「ええ。そうでしょうね」

「今はとにかく、<ラタトスク>のことを知ったのも、つい最近の話よ」

「やはりか……」

 

言葉の端に微かな怒気を込めた戎斗は、琴里に詰め寄る。

 

「ならば貴様らは、なんの力もないあの男を戦場に送り込んだと言うことか」

「仕方ないじゃない。現状、精霊をどうにかできるのは士道しかいないのだし」

「ある程度の訓練の積んだならまだしも、つい先日まで何も知らない人間を奥の手にするなど、正気の沙汰ではない」

「確かに訓練を積ませるべきなんでしょうけど、それじゃ意味がないのよ」

 

椅子を回し、戎斗に背を向けた琴里の話に、戎斗は顔を訝しめる。

 

「士道が霊力を吸収するためには、対象の好感度を一定値まで引き上げないといけないのよ。もし士道に訓練なんか積ませようとすれば、この事は言わなくちゃいけなくなる。でも、それはつまり精霊を口説くために、心にもない言葉を言うこと。そんな男に、少女が惚れると思う?」

「そのために、奴の覚悟を利用したと言うことか。まるでゲームだな」

「…………そんなこと、知ってるわよ」

 

その言葉を機に、琴里は沈黙する。戎斗にはその表情は分からない。

戎斗も、もう用はないとばかりに背を向ける。

 

「まあいい。少なくとも俺が受けた依頼は、インベスの退治だ」

「戎斗……」

「貴様にも思うところがあるのなら、しっかりと守ってやれ。……そして、もしものことがあれば、俺が片を付ける」

 

部屋を出る直前の戎斗の言葉に、琴里は思わず扉に振り向く。しかし、戎斗の姿はすでになかった。

琴里はため息をつき、椅子の背もたれに寄りかかる。

 

「お疲れだね。琴里」

「……令音」

 

声をかけてきた令音に億劫な視線を向けると、令音は普段の無表情だった。

 

「そんなに顔に出てる?」

「ああ。彼と話していたんだろう? どうだった、彼は」

「ずばずばと、気にしていることを言われたわ。彼、本当に高校生かってくらい大人びてるわ」

「……そうか」

 

色々な感情が籠った琴里の言葉に、令音は何も言えなかった。

 

「ああそれと……」

「まだ何か言われたのかい?」

「『もしものことがあれば、俺が片を付ける』、ですって……」

「…………」

 

琴里からすれば、何気なしに伝えたのだろう。

しかし今度こそ令音は、何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

精霊十香の暴走から翌日。

何故か戎斗は≪≪高校生の≫≫制服を着て、とある教室の中に立っていた。

 

「そ、それでは、転校生を紹介します。自己紹介を」

「……駆紋戎斗だ。よろしく頼む」

 

手短な戎斗の挨拶に、担任は何処となくひきつったような笑みを浮かべる。

 

「え、えっと、それだけか?」

「ああ。何かあるのか?」

「い、いや何でもない。駆紋の席は、奥のあそこだ」

 

戎斗は、担任が指し示した奥にある席に座る。

周囲の生徒が声を潜めて話し、転校生である戎斗に奇異の視線が集まる。

それをうっとおしく思いながら、どうしてこうなったのか、戎斗は昨夜のことを思い出した。

 

 

 

 

昨夜、部屋にいた戎斗を、令音が訪ねて来た。

 

「夜遅くに悪いね」

「何の用だ」

「君にこれを渡しておこうと思ってね」

 

そう言って手渡されたのは、いくつかの書類だった。

 

「明日までに目を通しておいてくれ」

「なんだと? 今何時だと思っている。それに、なんだこれは?」

「来禅高校への転入手続きだ」

 

戎斗は耳を疑った。しかし、令音の表情からは一切嘘だと思えなかった。

 

「君は確かにこの世界の人間ではないかもしれない。だが、君は高校生だろう? なら、少なくとも高校には入っておいた方がいい」

「インベスが出てきたらどうする」

「その時は、学校の方はこちらで対応する。実は十香も転入することになっていてね。もしものために、私も来禅高校の教師として在籍している」

 

この時、戎斗は自分を高校生の姿にした何者かを激しく恨んだ。

高校に入れば、確実に昼の間の時間をつぶされる。そうなれば、調査のために動くことが難しくなる。

そう思って拒否しようと口を開くが、機先を制した令音の言葉に沈んだ。

 

「そうそう。君の戸籍を、こちらで作っておいた。それと、これは今日の依頼の報酬が入った通帳だ。これからは、依頼の報酬はこの口座に振り込まれる。……それじゃ、また明日。学校で会おう」

 

そう言い残して、令音は部屋を出て行った。

戎斗に、断ること選択肢はなかった。




次回の鎧武外伝!

「二体目の精霊だと……」
「クラックなんて見つからないわよ?」
「彼らは何かに引き寄せられているのかな?」
「よしのんが、いなくて……」
「守られるだけで満足するな!」
「守れるほどに強くなれ!」

《マンゴーアームズ!》
《ファイト・オブ・ハーンマー!》
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