仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

8 / 15
ヘルヘイムの謎

駆紋戎斗は、()()()()空を見上げため息を吐いた。

学校が終わり、元の世界に帰るための調査に行こうとした時に、急に雨が降り出した。

かなり土砂降りなため、仕方なく近くの屋根に入り雨宿りしている。

 

「予報では雨ではなかったはずだが、こんなこともあるか」

 

調査どころでは無いので、適当なところで<フラクシナス>に回収して貰うことを決めた戎斗は、カバンの中からクッキーが入った袋を取り出す。

今日の授業で女子だけ調理実習があり、なぜかクラスの女子たちからクッキーを貰ったのだ。

今取り出した分以外にも、それなりの数がかばんに入っている。

 

「………美味いな」

 

袋から取りだし食べる。

作った生徒は、おそらく調理が不慣れだったのだろう。幼い頃に両親を亡くした経緯から料理が出来る戎斗にしてみれば、荒い部分が色々と目立つが、それでも気持ちが籠っていることが分かる。

 

「……何を考えているんだ。俺は」

 

他人の思いを無碍にするつもりはない。が、だからと言って特に何かを思うわけではない。

頭を振った戎斗は、クッキーが残る袋をかばんに突っ込み、スマホを取り出して<フラクシナス>に連絡を取る。

 

「……俺だ。そっちで回収してくれ」

『はぁい、戎斗。ちょうどいいわ』

「五河琴里?」

『今から家に来てほしいのよ。<フラクシナス>じゃなくて、私の家の方ね』

「なぜ貴様の家に行かなければならない?」

『色々と報告があるのよ。<フラクシナス>で送らせるから、来なさいよ』

 

琴里はそう言うと、戎斗が何か言う前に通話を切った。

戎斗はため息を吐くと、カバンを取り出して人目が無い場所へと移動するのだった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃい。取りあえず入って」

 

言われた通り、戎斗は五河家に<フラクシナス>の転送装置で送ってもらい、インターホンを鳴らすと琴里が出迎えた。

琴里の後ろをついてリビングに入ると、ソファに腰掛ける令音がいた。

 

「やぁ、戎斗。急に呼んでしまって悪いね」

「村雨令音か。俺を呼んだのはお前と言うことか」

「そうだよ。取りあえず座ってくれ。まぁ、私はここの住人と言うわけではないのだが」

 

令音に促され、戎斗は向かいのソファに座る。

丁度その時、玄関からドアが開く音と帰りを告げる声が聞こえた。

 

「――ただいま」

「あら? ちょうど士道も帰って来たようね」

「それなら、シンにも話しておいた方がいいだろうね」

 

令音が言った「シン」というのは士道のことだ。

何故か彼女は士道のことをシンと呼んでいる。

 

「いッ、いいからでていけ……ッ!」

「ぐぇふっ!?」

 

何故かリビングの外から、十香の怒号と士道の変な声が聞こえてきた。

少し後に、鳩尾の部分に手を当てた士道がリビングに入ってきた。

 

「琴里ぃ! どういうこ……戎斗?」

「おかえり、おにーちゃん。それとお客様がいるんだから、もうちょっと静かにならないかしら?」

 

士道は琴里を見るやいなや、何かしらの抗議の声を上げようとしたのだが、ソファに座る戎斗を見てその声が引っ込んだ。

 

「やぁ、お邪魔しているよ、シン」

「令音さんまで……」

「とりあえずそろったのだから、話をしましょうか」

「それもそうだね。ただその前に、シン」

「はい?」

「服を着替えてきたらどうかね?」

「あ……」

 

言われたときには、既に床が水浸しになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……」

「えーと……」

 

着替えてきた士道と、琴里が連れて来ていたらしい十香もソファに座り、やっとのことで話し合いが始まった。

 

「それじゃぁ、まずはクラックの調査の方ね。士道と十香は、インベスやクラックのことは覚えているわね」

「うむ! たしか、変な姿をした怪物のことだろう?」

「説明されたときはゲームみたいな話だとは思ったけどなぁ」

 

十香は元気に、士道はしみじみと答える。それに頷いた琴里は話を続ける。

 

「結果から言えば、戎斗」

「なんだ」

「クラックなんて見つからないわよ?」

 

琴里の報告に、戎斗は眉をひそめた。

 

「確認できたのは、令音があなたと初めて接触した時と、十香の霊力を封印した時だけ。それ以外は影も形も見当たらないわ」

「……そうか」

 

お手上げと言わんばかりに肩をすくめる琴里に、戎斗は短くそう言った。

そんな中、士道が手を挙げた。

 

「なぁ。クラックってそもそも、なんなんだ?」

「……説明してあげたでしょ? っていうところだけど、クラックについては私も理解が追いつかないことがあるのよね。戎斗、説明して貰ってもいいかしら?」

「クラックは、ヘルヘイムの森が開くゲートだ。ヘルヘイムの森自体は、別の世界からやってくる。そのためのゲートがクラックと言うことだ」

 

戎斗の説明に琴里は腕を組んで唸る。

 

「何度聞いても不思議な話よねぇ。精霊とか知ってる私が言うのもなんだけど」

「だが、クラックが開いたと言うことは、ヘルヘイムの森はこの世界を侵略しようとしているはずだ」

「……は?」

 

戎斗が放った言葉に、士道の口から呆然とした声が漏れ出た。

 

「な、なんだよそれ……」

「ヘルヘイムの森がクラックを開くのは、他の世界を侵略しようとするからだ。対策手段を持っていなければ、この世界はあっという間に支配されるだろう」

「……はっきり言って、それも信じがたいのよね。森が侵略するって……」

 

琴里もついには額に手を置き、ギブアップを宣言する。

士道は理解が追いつくはずもなく、十香にいたっては眠たいのか、コックリコックリと首を上下させていた。

そんな中、令音だけが思考に耽っていた。

 

「つまり、ヘルヘイムの森とやらがクラックを通って、私たちの世界を侵略しようとしている。そしてインベスは、その先兵という捉え方でいいんだね?」

「ああ。どういう対応を取るにせよ、奴らはこの世界に侵略してくる」

「その存在を知らないよりもマシ、か。取りあえず、その対策も明日に考えましょう。今日はもう疲れたわ」

 

いかにも疲れたという姿勢の琴里をよそに、戎斗は立ち上がり部屋を出ようとする。

 

「あら? どうしたの?」

「話し合いが終わったのなら、ここにいる意味はない」

 

そう言うと、戎斗はさっさと部屋を出て行ってしまう。

協調性をもうちょっとどうにかできないのかと思いつつ、疲れている琴里は追いかけない。

 

「……なんか、ほんと現実とは思えないな……」

 

話しに関われなくてほとんど空気だった士道が、ポツリと感想を溢す。

 

「残念ながら、全部現実なんでしょうね。クラックやインベスは実際に見ているし、ヘルヘイムの森も信憑性が低いとはいえ、嘘を吐く必要もないわけだし。あ、そうだ士道」

「ん? なんだ、琴里」

「今から、士道の訓練始めるから」

「え?」

「もちろん、罰ゲームあるからね」

「うそだろぉぉおおおおおッ!!」

 

明らかに八つ当たり名琴里の宣告に、士道の嘆きが五河家に響き渡った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。