仮面ライダー鎧武外伝 デート・ア・バロン   作:神咲胡桃

9 / 15
季節外れのブリザード

 

「――ああ、来たわね三人とも。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」

 

琴里の指示に令音は自分の席へと向かう。

クラックの報告などがあった昨日から一夜明け、今日も今日とて学校へと通っていた戎斗たちだったが、突如として空間振警報が鳴った。

士道と令音と共に<フラクシナス>に回収された戎斗は、現れるであろう精霊を待っていた。

 

「あまり時間をあげられなくて悪いのだけれど。腹は決まったのかしら、士道」

「……っ」

 

琴里の問いに士道が声を詰まらせる。

ただこの場において、戎斗はその原因を察していた。

 

「(この男、未だに覚悟が決まっていないというのか。危ういな)」

 

とは言え、戎斗もそれは想定内だ。先日のあれは、いわゆるその場凌ぎでしかない。

本当の覚悟というものは、そんな簡単に決まるようなものでもなく、様々な苦悩があってしかるべきなのだから。

 

「非常に強い霊波反応を確認! 来ます!」

 

クルーの声が聞こえたと同時に、街の様子を移していたモニターに変化が現れる。

何もなかった街の空間に波紋が出来た瞬間、その歪みが大きくなり爆音とともに画面が真っ白になった。

 

「空間振……っ」

「これが空間振か」

 

回復したモニターには、瓦礫の山と化した街の惨状が映し出される。

それを見た士道は空間振の恐ろしさに震えるが、戎斗は別の反応を示した。

 

「なるほど。確かにASTが精霊を殺そうとする理由もわかるな」

「なっ!? どう意味だよ!」

 

まるで精霊の死を肯定する戎斗の言動に、士道は詰め寄る。

 

「お前はあれが分からないのか? 事前に察知することは出来ても、それを防ぐことは出来ない。唯一の方法は、精霊を殺すことだけだと」

「それは……!」

「戎斗の言う通りよ。だけど、その解決方法を”唯一にしない”ために、私たちがいるの」

 

言い返せない士道だったが、既に見慣れているためか、挿して動揺していない琴里が口を挟んだ。

 

「今回現れたのは<ハーミット>ね」

「<ハーミット>ならばこの程度のものでしょう」

「まあ、精霊の中でも気性の大人しいタイプだしね」

「これで、小規模……」

 

琴里と神無月の会話に、士道は絶句する。

 

「司令、<ハーッミト>を発見しました」

「オッケー、拡大してちょうだい」

 

琴里の指示に、女性クルーが手元の機器を操作すると、モニターの一つが拡大される。

いつの間にか外では雨が降っており、発生したクレーターの中心に、一人の少女が映っていた。

 

「あ、れは……」

「……? どうしたのよ士道」

「俺、あの子に会ったことある」

「はあ!? いったいどこで!?」

「琴里、悪いがこっちも大変だ。インベスが現れた」

 

士道を問い詰めようとした琴里を、令音の報告が抑えた。

士道の方も気になったが、司令として次々と命令を出していく。

 

「ちっ! 後で聞かせてもらうわよ。戎斗はインベスの対処に行って。士道は隙を見て、<ハーミット>と接触するわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『転送完了しました』

『戎斗、そこからまっすぐ進めばインベスと接敵する。ただし、どうやらASTがこちらにも戦力を回しているらしい』

「面倒な事を……。分かった。インベスを殲滅する」

 

令音との通信を切り、戎斗はバナナロックシードを取り出して起動する。

 

「変身」

《バナーナ!》

 

手元で回転させ、戦国ドライバーにロックシードをセット。カッティングブレードを下ろすと同時に走り出す。

 

《ロックオン!》

《カモン!》

《バナーナアームズ! ナイト・オブ・スーピアー!》

 

バロンへと変身した戎斗は、初級インベスに襲われているAST隊員を見つけた。

すぐさまバナスピアーでインベスを攻撃する。

 

「お、お前は……」

「下がっていろ。邪魔だ!」

 

何かを言おうとしていた男を置き去りに、戎斗は次々とインベスに攻撃していく。

 

「グシャァ!」

「はあ!」

 

真正面から突撃してきたインベスの突進をかわし、バナスピアーで切り裂く。

どうやら初級インベスしかいないらしく、戎斗は特に手間取ることなく優勢に立ち回っていた。

決着をつける為、カッティングブレードを下ろそうとした時、インカムから琴里の焦った声が聞こえてきた。

 

『戎斗、大変よ!』

「……?」

『<ハーミット>がそっちに向かってる!』

「何……ッ!? ぐぁ!」

 

通信の直後、戎斗とインベスを季節外れの猛吹雪が襲った。

 

「なんだ、これは……!」

「グゥォォォオオオオオオオオッ!!」

 

訳も分からず困惑する戎斗に、今度は獣のような低い咆哮が聞こえた。

咆哮が聞こえた方向を見ると、そこから何か白い物体が迫ってきていた。

その物体がはっきりと視認できる距離になると、戎斗はその正体を見た。

 

「デカい兔、だと……! あれが<ハーミット>か」

 

巨大な兔は脇目も振らず戎斗の目の前を通り過ぎていく。

兔の眼の前にいたインベス達は、その全てが氷漬けにされ粉砕される。

やがて、兔は戎斗の視界からも走り去る。その間際、確かに戎斗の目は、兔の背後に乗る少女の姿をとらえていた。

 

『<ハーミット>ロスト……前途多難ね』

「インベスも、奴がすべて倒した」

『それはつまり、精霊ならインベスに対抗可能ということ?』

「さあな……とりあえず、回収を――」

『大変です! 戎斗さんがいるポイントで、()()()()()()()()()()()()()()

『なんですって!?』

 

戎斗が振り返ると、そこには氷漬けにされていたインベスがいた。

その氷の塊が震えると、インベスを包んでいた氷が、()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐぎゃぁぁぁあああ!」

 

それだけではない。蝶が蛹から羽化するように、初級インベスから全く違う姿のインベスが現れた。

 

「これは……!?」

『<ハーミット>の反応は、そいつから出ているわ! 気を付けて、戎斗!』

「シィェアアアアアア!!」

 

堅牢な角が生えた頭部に、肥大化した両手足。さらには体中から結晶の様な物が突き出ている。

インベスは、闘牛のように片足で地面を搔きはじめると、戎斗に向かって突撃してきた。

 

「速い!? ぐぅ!」

 

初級インベスの何倍も速い速度に、戎斗は避けきれずにふっとばされてしまう。

 

『司令、ASTです!』

『<ハーミット>を追撃していた部隊か!』

 

空を見れば、数人のASTの隊員が上空に滞空していた。

インベスもそれに気づいたようで、空に視線を向ける。そして地面に片手を叩きつけると、インベスの周囲に次々と氷の塊が現れた。

ASTに向けて氷塊が次々と撃ちだされ、ASTはまともな迎撃が出来ない。

 

「はあああ!」

 

無防備な背中に戎斗がバナスピアーを叩きつけるが、硬い表皮に阻まれ大したダメージが与えられない。

戎斗は次々と攻撃を当てるが、インベスにバナスピアーを弾き飛ばされてしまう。

そしてインベスの拳が何度も戎斗に叩きつけられ、殴り飛ばされた。

 

「う……ぐ……!」

『戎斗! 仕方ないわ。一旦引くわよ!』

「まだ、だ。奴が硬いというのなら、こいつだ!」

 

戎斗が取り出したのは、バナナロックシードと別のロックシード。

マンゴーの装飾が付いた『マンゴーロックシード』を起動すると、戎斗の上にクラックが開きアームズが現れる。

 

《ロックオン!》

 

バナナロックシードを外し、マンゴーロックシードをセットして、カッティングブレードを下ろす。

 

《カモン!》

 

バナナアームズが粒子となって消え、戎斗の頭に被さった新たなアームズが展開する。

 

《マンゴーアームズ! ファイト・オブ・ハーンマー!》

 

アームズが展開し終わると、戎斗の右手にはメイス型の武器『マンゴパニッシャー』が出現する。

 

「グモォォオオオオ!」

 

アーマードライダーバロン マンゴーアームズに、インベスは恐れる様子もなく襲い掛かる。

インベスの振るう剛腕に、戎斗はマンゴパニッシャーを振るい真っ向から激突する。

 

「グォォオオオ!」

 

ガァァアアン!と鈍い音を立てて、インベスの腕が弾かれる。

しかし戎斗は手を緩めることなく、マンゴパニッシャーをインベスに叩きつける。

 

「はぁ!」

 

マンゴパニッシャーを振り上げ、インベスは吹っ飛ばされる。

 

「これで止めだ」

『―-戎斗、逃げて!』

 

戎斗がカッティングブレードを下ろそうとした時、琴里の警告が耳朶を打った。

次の瞬間、戎斗とインベスの周囲に大量のミサイルが着弾した。

 

「くっ……! いったいなんだ!」

『ASTよ! 回収急いで!』

 

突然の攻撃に戎斗が怯んでいる中、インベスは近くに開いたクラックで逃げてしまう。

 

「……! 待て!」

『転送!』

 

インベスを追おうとした戎斗だったが、それも叶わず<フラクシナス>の転送装置によって転送される。

直後、大量の銃弾が戎斗の立っていた場所に降り注いだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。