ノリの良いスタンド使いの奇妙な幻想入り   作:仁堂六華

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スタンドパラメータ

スタンド名:ファッションモンスター

能力:スタンドを纏った部分を絶対無敵の透化。


パワー:E
スピード:C
成長性:E
精密動作性:E
射程距離:E
持続力:B



25人里バトルロワイヤル…その⑤公正なる死闘

ここにバケツ一杯分の水があるとする。

バケツの中では水が表面にはり、覗き込んだ者の顔を映し出す。

では、ここに墨汁を一つ垂らしてみるとどうなるだろうか?

 

答えは考えるのにそうそう難しい事では無い。

垂らした場所から水の表面には波紋が広がり、中心から外側に向かって水は徐々に黒く濁っていく。

 

幻想郷をこのバケツ一杯分の水と表現するなら、程度の能力を目覚めさせる矢とはまさに、このたった一滴の墨汁なのだ。

ほんのちっぽけなたった一つの存在が、徐々に徐々にこの幻想郷を侵食していく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「ここよ。ここに矢が一本あるわ…」

 

 

譲信「へぇ………え、マジ?」

 

 

紫の後を着いていって譲信が辿り着いた場所は、大きな屋敷の門前だった。

頑丈そうな分厚い木製の門が、高々と紫と譲信を見下ろすように閉まっている。

 

 

譲信「やれやれこいつぁ予想外だぜ…」

 

 

譲信は門に近付くと軽く叩く。

 

 

譲信「早朝にすいませぇ~ん!!誰かいませんかー!?」

 

 

そして大声で人を呼んでみるが、何の反応も無く、まるで中には誰もいないかのような嫌な静けさが返ってきた。

 

 

紫「……反応が無いわね」

 

 

譲信「留守なんすかね?」

 

 

紫「それなら都合が良いわ。中の人間達とはなるべく出会わないに越した事は無いものね」

 

 

そう言うと紫はスキマを開き、門の先にある中庭へと繋げる。

 

 

紫「さぁ行くわよ。この屋敷の何処かに矢は確実にある……。それと一応警戒しておきなさい…何かの罠がある可能性も高いわ」

 

 

譲信「うっす!」

 

 

紫と譲信がスキマを越えると、2人は整えられた広い庭へと降り立った。

松やら何やら、これぞ日本庭園!!とでも言うような立派に整えられた庭だった。

 

 

譲信「へぇ~。滅茶苦茶金持ちの家じゃあないか。こんな所に矢があるのか~…」

 

 

関心しながら譲信は呟く。

 

 

紫「ここは人里でも有力な商人の家よ。家族構成は姉、弟の2人で、数十人の使用人がここで働いているわ」

 

 

譲信「ふぅん。姉弟かぁ…しかし、数十人の使用人が働いている割にはやけに静かだよなぁ」

 

 

紫「そうね……朝から誰もいないと言うのもおかしな話ね…。………何かあると考えた方が良いわ」

 

 

譲信と紫は互いに視線を合わせる。

口調こそは普段と変わらない2人だったが、互いに目は本気になっていた。

しばらく2人は無言だった…そして最初に譲信から口を開いた。

 

 

譲信「…それでも行くしかないんすよね?霊夢じゃあなくて俺を連れてきたあたり……その気なんでしょ?」

 

 

紫「えぇ…。何があろうと矢の回収は絶対よ…放置しておく事は出来ないわ」

 

 

紫が今回、霊夢ではなく譲信を共に連れてきたのには理由があった。

今回の矢の回収は急を要する物であり、何が待ち構えているのかも皆目見当付かない…そして何があろうと、どんな手段を使おうと矢を回収する事が紫の目的である為に霊夢は連れてこれないのだ。

 

状況によっては残虐な手を使うことも紫は視野に入れており、そこに博麗の巫女を巻き込んでは博麗の巫女の信用が危うくなるのだ。

 

だが何より紫が譲信を選んだ一番の理由…それは譲信が現状では霊夢より戦力になると判断したからだった。

 

霊夢はまだスタンド…について理解は浅く、スタンドに類似している能力を相手にするには少々経験が不足している。

何より相手は人間…能力を持った人間とは能力を持った妖怪とはまた違う戦い方をする。

それらの戦法は紫でも能力によっては時に対応が厳しくなる。

 

つまりはそのどれにも対応でき、かつ強みを生かせるような人材が必要だった。

そして、それに一番対応しているのは現状では空条譲信という存在だけだったのだ。

 

それと同時に譲信と紫の二人は組み合わせの相性が良い。

“境界”と“全スタンド”…この二つの能力は万能と言っても良く、状況によっていくらでも攻守を切り替えられ、互いに援護もしやすいのだ。

 

そして紫には“高い頭脳”と“圧倒的な経験”による強みがあり、譲信にも“凄すぎる判断力”と“高い洞察力、観察力、思考力”がある。

二人はまさに鬼に金棒と言っても良い組み合わせだったのだ。

 

 

譲信「決まりっすね。俺も既に覚悟は出来てるんで、ちゃっちゃっと終わらせましょうか!」

 

 

紫「えぇ。手早く済ませましょう」

 

 

譲信と紫は屋敷の縁側なら内部へと侵入する。

いくつもの障子と長い廊下が繋がっており、何のヒントも無く矢を探すには随分と骨が折れそうだった。

 

 

紫「二手に分かれましょう。私は西側、貴方は東側よ。何かあったらどんな方法でも良いから互いに合図を送ること……良いわね?」

 

 

譲信「了解!紫さんも気を付けて!」

 

 

紫「心配無用よ。さ、行動を始めるわよ」

 

 

紫と譲信はそれぞれ東西に分かれて、屋敷内の捜索を開始した。

紫はスキマで短距離をショートカットしながら、譲信は5秒ずつ時を止めながら、矢を探し始める。

 

互いに最大限の警戒と隠密行動を心掛け、足音一つにも神経を研ぎ澄ませる。

だが紫と譲信の予想通り、屋敷内は既に敵の懐の中となっていたのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(屋敷“西”側)

 

 

 

紫(人の気配が無い……あまりにも静かすぎるわね……)

 

 

譲信と分かれた紫は屋敷西側の渡り廊下を移動していた。

西側はどうやら、風呂場や調理場、洗濯場などのエリアなようで、部屋の数が少ない。

 

矢があるとすれば譲信の向かった東側である可能性が高かったが、それでも紫は片っ端から念入りに捜索を行っていた。

 

 

ススゥー……

 

 

紫は障子を一枚開けて、廊下を渡りきった先にあった一室へと入る。

90畳程あるとても広い部屋で、あまり物とかは置かれておらず、見渡しが良かった。

 

 

紫(…………)

 

 

部屋の中心まで歩いて行き、そこで紫は立ち止まった。

短く息を吐き、目に鋭い光が走り、途端に紫からは威圧感が放たれる。

 

その威圧感は一瞬、まるでこの部屋をまるごと揺らしたかと錯覚するほどに重みがあった…。

 

 

紫「……こっそりと人の背後に立ちたいのならもう少し殺気を抑えなさいな…。出て来なさい」

 

 

そう言うと紫は一発だけ弾幕を天井に向けて放った。

 

 

 

ガタンッ!!

 

 

紫「……!」

 

 

と、同時に天井から何か黒い物体が落ちてきた。

が、落ちてきたそれは物じゃないことに紫はすぐに気付く。

物体に見えた黒い何かは、ゆっくりと動き出し、やがて四本の棒が見えたかと思えば、うち2本で直立する。

 

どう見てもそれは人間の手と足であった。

そしてよく見れば、その物体に見えたのは黒い衣装を身に纏った人間である事が分かる。

………しかし、その姿はまるで……

 

 

 

 

 

 

 

紫「何が出てくるかと思えば…その姿………まるで“忍者”ね…」

 

 

???「………」

 

 

黒い頭巾の忍び装束。そして明王のような鬼の仮面。

そして背中に1本の小刀。

巻物や本などでよく見る、まるで大衆のイメージ通りの忍者だった。

 

 

紫「何か言ったらどうかしら?……私が何者で、何故ここに来たのか…を知っているからこそ、“奇襲”をかけようとしていたのでしょう?」

 

 

紫は目を細めて、鋭い殺気を放った。

………が、目の前に立つ忍者は全く微動だにせずにいた。

 

 

紫(……私の殺気を受けてこの余裕………中々の実力は持っていそうね……)

 

 

人間だかと言って、油断したり下に見るつもりは今の紫には無い。

むしろ、そこらの妖怪と対峙するよりも遥かに警戒をしていた。

何しろ一度、人間であり見下していた譲信には痛い目に合わされている。

本気の戦闘では無かったにしろ、それでも遥かに予想を越える痛手に紫は“油断大敵”という言葉を痛感していたのだ。

……そして八雲紫に同じ過ちは絶対に無い。

 

 

???「……我が潜伏を見破るとはお見事…。流石は幻想郷の賢者。感服しました」

 

 

その時、忍者の男はいきなり話し始めた。

 

 

紫「あら…フフフ。中々口が達者なようね…」

 

 

???「いえ本心です…。我は元々、貴女のことを尊敬していました…。故に我が潜伏も見破られる事は当然と思っておりましたとも……が、失礼を承知で貴女を試すような行為を行った事については謝罪させて頂きます」

 

 

忍者は片膝をつくと、紫に向かって頭を垂れた。

 

 

紫「なら貴方は今、自分がどのように振る舞うべきか当然心得ているわよね…?矢の在処について…私の質問に答えてくれるかしら?」

 

 

???「それは出来ません」

 

 

紫「……ほう?」

 

 

キッパリと言い切った忍者に、紫は冷えた視線を送る。

 

 

???「この屋敷の主より、我は貴女の足止め、そして討伐を任されております故…我が今からすべき行動は貴女の殺害……そのただ一つだけに御座います」

 

 

忍者は立ち上がると、再び直立して紫と対峙した。

 

 

???「しかし…先程も申し上げた通り我は貴女の事は尊敬している……。よってここはフェアに行きましょう。文句の出る隙の無い…公正な戦いを行うために…」

 

 

紫「……フェアですって?」

 

 

紫の聞き返しに、忍者はゆっくりと頷いた。

 

 

飛山「我の名前は“飛山(ひざん) 蒼紅(そうく)”。能力名は“ニンジャリバンバン”…この身に纏っている黒い忍び装束が能力であり、分身、火遁、水遁、風遁、の4つを扱える……そんな能力」

 

飛山「フェアというのは互いの能力を理解しあった上で、殺し合う事……公正さは人の精神を神聖な高みに導き、勝利した時必ず成長させてくれる」

 

 

紫「…随分と高尚なのね。何が貴方をそこまで駆り立てるのかしら?」

 

 

飛山「何が…ですか……。そうですね…八雲紫殿、貴女には理解して頂けるか分かりませんが…これが“飛山蒼紅の生き様”なのです」

 

 

紫「生き様……ねぇ…」

 

 

飛山「ご存知のとおり、我々人間の一生は短い。だからこそ人間はその短い人生を満たすため、少しでも色濃くし、長く感じるようにしたがる。絶えず未知への挑戦だとか、敢えて苦痛を我が身に課すだとか、家族を作り共に過ごす…だとか、それらは全て短い人生をより良くする為」

 

飛山「そして、人は最終的に何かを残したがるのです。次の世代に受け継いでいく為…または自分の存在を大きくこの世に残し、死への不安を取り除く為に。…我もまた同様にこの世に自分の存在を残したい。“生き様”を残すことは“自分自身”を残す事と同義と我は考えています。それこそが我が自分の一生を最も良くする物だと信じてやまぬ全て…真理。誰にも侵すことの出来ない“神域”!!」

 

 

飛山は迷い無く、悟りを開いたような澄みきった瞳で熱弁した。

…それを紫は関心したように、静に聞いていた。

 

 

紫「…成る程ね。私は貴方のような人間は嫌いでは無いわ。貴方の語る“人生論”…それもまたある種の真理。…けれど私にも背負う物はたくさんある…。そして私にも“八雲紫としての生き様”はあるのよ。………つまり、今この場において……私達のどちらが“死ぬ”事になるのは避けられない運命…という事ね」

 

 

飛山「……ご理解頂けたようで何より。そしてここからは……一手ミスった方が死ぬ…!!八雲紫殿、そのお命頂戴します…!!」

 

 

飛山は背中に携えていた小刀を抜き、刀身を露わにする。

冴えきった光を放っており、中々の切れ味があるだろうという事が分かった。

 

 

紫「その一手が貴方遅いわよ」

 

 

飛山「!!」

 

 

紫は即座に大量の弾幕を放つ。

躱せる隙間が見当たらない程の高出力の攻撃に、飛山は後退する。

 

 

飛山「ぬ!壁際…!!」 

 

 

しかし、すぐに壁際まで追い詰められた飛山は逃げ道を無くしてしまった。

だが焦ることは無く、飛山は素早く片手で何かの印を結んだ。

 

 

飛山「火遁:滅牙怖零阿(めがふれあ)

 

 

ゴウゥッ!!

 

 

瞬間、飛山の周りから火炎が巻き上がり、その火炎はまるで暴れ狂う竜の形となって紫の放った弾幕の雨に突っ込んでいく。

 

 

紫「それが忍術という訳ね…!!」

 

 

ドッグォォォーン!!

 

 

二人の攻撃がぶつかり合った瞬間、激しい爆発が起こり、部屋の襖が吹っ飛んでいく。

衝撃に飛ばされ、飛山は破れた壁の穴から隣の部屋へと後退する。

そして休む間もなくまた印を結び、攻撃を仕掛ける。

 

 

飛山「水遁:大樽撃鋭舞(だいだるうぇいぶ)!!

 

 

ズグァァァァッ!!

 

 

すると今度は飛山の周りに激流が現れ、それは高速旋回し巨大な水のチェンソーとなって広範囲に飛び散る。

壁や床を粉々に粉砕する水の力は一瞬で、辺り一帯を更地に変えた。

 

 

飛山「……気配が……消えた……!?」

 

 

ところが、攻撃が終わると手応え所か逆に紫の気配が完全に消えてしまっており、飛山は困惑する。

が、おちおち困惑しているほど猶予は飛山には与えられなかった。

 

 

紫「ここよ」

 

 

飛山「!!」

 

 

背後に開いたスキマから紫が現れ、咄嗟に飛山は飛び退く。

 

 

紫「そうすると思ったわ。これで詰みよ」

 

 

飛山「ッ!!こ…これはまさか…!!」

 

 

しかし、後ろにはまた別のスキマが更に開かれており、スキマに捕まった飛山はその場に固定される。

…そして

 

 

ズドドドドドォッ!!

 

 

飛山「ぬぅぐぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

再び放たれた大量の弾幕は今度こそ、飛山に命中した!

 

 

紫「一手ミスったようね…では御機嫌よう…」

 

 

全弾命中し、ボロ雑巾のようになった飛山を紫は無情の目で見下ろしていた。

だがまだ決着は着いていなかった…!!

 

 

ボン…

 

 

紫「ッ!!」

 

 

何と突然、飛山が煙となって消えたのだ。

完全に仕留めたと思ってた紫は慌てて辺りを警戒する。

 

 

飛山「忍法:幻実分身の術!!残念ながらそれは分身ですよ…!!」

 

 

紫「……さっきので既にすり替わっていたという訳ね…!!」

 

 

紫の頭上から現れた飛山は既に印を結び終わっていた。

 

 

飛山「風遁:裂空戯之逆鱗(れっくうざのげきりん)!!

 

 

紫「結界!!」

 

 

バチィィィッ!!

 

 

 

のたうち回る風の暴龍を纏った飛山の突撃を紫は結界で防いだ。

博麗の大結界を張ることの出来る紫であれば、自分一人を守るための結界ならいくらでも容易く張ることが出来るのだ。

 

 

飛山「天晴れ紫殿!!我の不意打ちを防ぐとは!!」

 

 

紫「フフフ…その称賛は素直に受け取らせて貰うわ。尤も…貴方に褒められた所でこれっぽっちも嬉しくなんか無いのだけれどね…」

 

 

飛山「これは手厳しい。…しかしこの状況、有利なのは我だと言うことをお忘れ無く…!!」

 

 

紫「…へぇ?」

 

 

飛山「我の能力は元々、近距離パワータイプ……つまりこの状況は我にとって最も真価を発揮できる独壇場なのですよ!!」

 

 

そう言うと飛山は小刀で結界に連続斬りを仕掛けた。

 

 

飛山「SEYYYAAAAAAAAAAAA!!

 

 

 

ギィン!!ギギギギギギンッ!!

 

 

 

するとどうだ、僅かではあるが紫の結界は少しずつ削られていく。

 

 

紫「私が大人しく攻撃をさせるとでも思っているのかしら?」

 

 

だが当然、紫がそれを大人しくさせる訳が無い。

 

 

紫「無駄よ無駄!!そうそう…やっぱりこいう時に使うセリフよね。さてと…邪魔だから離れなさい」

 

 

 

紫は結界の外側に張り付いている飛山に向けて弾幕を放った。

だが……

 

 

飛山「いつから分身は一人だけだと錯覚していた?」

 

 

紫「……まさか!?」

 

 

瞬間、天井から数十体もの飛山の分身が現れた。

そして彼等は一斉に紫の結界に向かって物理攻撃や忍術で破壊を試みる。

 

 

ドゴドゴドゴォォォォォォ!!

 

 

紫は弾幕で対抗するが、分身達の連携が上手く、一体とて中々削ることが出来なかった。

 

 

紫(さて…少し考えなくちゃいけなくなったわね。本体を見つけさえすれば容易いけれどこの数の分身達の中から、バカ正直に探し出すのは時間も掛かるし、何より敵の思うつぼね。…けれどスタンドには必ず決定的な弱点がある。この程度の能力もスタンドと酷似しているという事は必ず何処かに弱点がある…という事…。それを見極めさえすれば良い……)

 

 

紫は結界が破られるまでの僅かな時間を、全て飛山の観察に使うことにした。

境界を操り無効化するにはまず、本体を見つけないと意味が無い。

分身に能力を使った所で、所詮分身なのだから蚊ほどの意味も無い。

 

 

紫(……うん?…何か……変ね)

 

 

その時、紫は何かの違和感に気付いた。

結界にはヒビが入り、もう決壊寸前だったが、その違和感についての疑問が、紫を非常に冷静な思考へと誘っていた。

 

 

紫(ワンパターン過ぎる……何があっても、同じ忍術、同じ物理攻撃しか使わない)

 

 

弾幕を対処していた彼等の姿を見て紫が感じた疑問。

それは余りにも無駄な動きが多く、ワンパターンだった事だ。

 

例えば近距離組は弾幕を忍術で相殺した方が効率が良いのに、刀と動き回った躱す事しかしない。

対して忍術組は躱せば良い程度の弾幕にもド派手な忍術をかましていたのだ。

 

あまりにも効率が悪く、とてもワンパターンだった。

 

 

紫(まさか…分身は決められた一定の役割しか行う事が出来ない…!?となると本体とは……多彩な動きの出来る一体のみ…!!そして…彼自身が言っていた“近距離パワータイプ”……“近距離”という事は射程距離がそんなに無いという事…つまり、分身を維持するには余り遠くにはいられない……間違いなくこの中にいるわね…!!)

 

 

再度紫は分身達を見渡す。

 

 

 

 

 

 

すると……居た。

一体だけ、忍術や体術を多彩に扱っている本体と思わしき一体が。

 

 

飛山「これで終わりだぁぁぁぁ!!」

 

 

紫「えぇ…そのようね…!」

 

 

結界が砕けたと同時に、紫はその本体と思わしき一体へと能力を発動した。

 

 

 

 

 

バリィィン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「…………」

 

 

飛山「…………」

 

 

 

 

 

 

分身達は消え、二発の弾幕が飛山の左腕を吹き飛ばし、脇腹に穴を空けた。

 

 

 

 

飛山「ごぼ………っ」ドサリ…

 

 

 

飛山はその場に柱を背にして倒れた。

境界を操られ、飛山の全ての能力と、体の動きは紫に支配されたのだ。

 

 

 

飛山「み……見事……だ…。どうやら……弱点は見抜いたよう……ですね……!」

 

 

 

吐血しながら、飛山は擦れた声で紫に称賛の言葉を贈る。

飛山はこれ以上は戦いにならないと敗北を認めた。

 

 

 

紫「被害は最小限に…かつなるべく目立たずに…。そのようにせざるを得ない状況を作り、私への勝率を上げたのは良かったわ…。それでも格の差は埋まらなかった…それがこの結果よ」

 

 

紫はもはや虫の息となった飛山の前まで歩いて行く。

 

 

飛山「………どうやら……そのようですね……。我の負け……完全なる敗北です……」

 

 

飛山は自身の前に立ち、静に見下ろす紫を見上げる。

なんと華麗で優雅な方だろうか…そんな思いを飛山は抱いた。

まさに幻想郷の賢者たる者に相応しき風格と。

 

 

飛山「さぁ……トドメを……」

 

 

そして飛山は目を瞑った。

紫にトドメを刺されて死ねるなら本望だと。

……だが紫はすぐにトドメを刺そうとはしなかった。

 

 

紫「……貴方は殺すには惜しい。それほどにこの私が関心する人間性を持ち、尚かつ貴方からは微塵も悪意を感じなかったわ……“武人”と呼ぶに値する人間よ貴方は」

 

 

飛山「…………ゴフ…」

 

 

紫「生きなさい。貴方には生きる資格がある。これからその力は生き延びて、幻想郷の一員として使いなさい」

 

 

 

紫は飛山蒼紅という人間を高く評価していた。

悪意が無く、常に高見を目指す高尚な人間…飛山ならこの幻想郷の能力を持った実力者として新たに受け入れても良いと、そう判断していた。

 

 

 

飛山「…………やはりまだ…理解してはおられなかったか……」

 

 

だが飛山は、紫の言葉を受け入れずに薄笑いを浮かべてそう呟いた。

 

 

紫「……どういう事かしら」

 

 

飛山「我が目指す高見へと続く道は……もう我には無い……。たった一度…されど一度の敗北……それはこの飛山蒼紅にとっての“生涯の終わり”を意味する……」

 

 

紫「自分の命は惜しくないのかしら…?私がまだ貴方は生きても良いと…そう言ってるのよ?」

 

 

紫は愚か者でも見るかのように呆れながら飛山に尋ねる。

たった一度の敗北に何故そこまで諦めがつくのか…解しがたかった。

 

 

飛山「…それがこの飛山蒼紅の語る“神域”。残したかった“生き様”……だ。生き様を賭けた闘いの果ての……敗者に……未来は不要…。ハァ……我はこの屋敷の主様には……確かに忠誠を誓っているし……最後まで味方よ……。だが……我には忠義よりも通したい我が儘があるのだ………たかが使用人の身なりでおこがましいとしても………それでも最後までそれは守り抜きたい………。お分かりか……?八雲紫殿………それでも我は…愚者に見えるか……?」

 

 

紫は静に目を閉じて、やがてゆっくりと目を開けた。

 

 

紫「………いいえ。それが貴方の望む物なら私がとやかく言う筋合いは無いわね……ただ、それでも気に入らないわ。私の折角の好意を無下にすると貴方は言ってるのよ…?」

 

 

飛山「……ハハ…。確かに……だが…もう愚かと思われないのは……良かった……」

 

 

紫「私は貴方の息の根は完全に止めない……果てたいのなら…己でその喉を裂いて逝きなさい」

 

 

そう言うと紫はその場から立ち去ろうと、飛山に背を向けて歩き出す。

飛山は立ち去る紫の背中を一瞬だけ、悲しげに眺めていた。

だが、すぐに飛山の目は覚悟を決めた目になった。

そして、片手の小刀を手に取り、紫にそれを投げ付けようとする。

 

 

飛山「ならば死ぬのは貴女です!!貴女が死なねば我は生きては行けぬ!!」

 

 

紫「……そう…本当に残念よ…!!」

 

 

 

ゴシャァァァァッ!!

 

 

 

飛山「がっ………は……!?」

 

 

飛山が小刀を投げる直前、紫は弾幕の一撃を飛山に向けて放った。

……その一撃には少しの手加減も無く、完全に飛山を殺す為の一撃だった…。

 

大量に飛び散る自身の血液が、飛山にはスローモーションのように見えていた。

……そして、確実にこれで自分の命は終わりを向かえたのだと理解した飛山は、ようやく満足したように笑みを浮かべた。

 

 

 

飛山「まっこと天晴れ……我が一生…。これまでの生き様に……悔いは無し……!

 

 

 

 

 

 

 

そして……飛山は静かに息を引き取った……。

 

 

 

 

 

 

紫「馬鹿みたいに、理想だけに生きる人間……。面白い男だったわね……そして、そんな貴方を愚かだとは思わないわ………さようなら飛山蒼紅」

 

 

紫はただ静かに部屋から立ち去る。

余計な言葉は何も必要無い。

飛山の最後の死に顔は、とても清らかな笑みを浮かべていた…………。

 

 

 

 

 

飛山蒼紅 スタンド名:ニンジャリバンバン

 

~死亡~ 八雲紫との死闘の果てに、最後は八雲紫の手によって死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「さて……西側は何も無いようね……。東側へ行くとしましょうか……」

 

 

 

飛山の最期を看取った紫は東側へ向かって歩き出した。

……と、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「何っ!?」

 

 

 

東側から突然、誰かの叫び声が聞こえてきた。

屋敷中に響き渡ったかもしれないと、そう思えるほどの叫び声だ。

……そしてその声に紫は聞き覚えがある。

 

 

 

紫「この声は……譲信!?」

 

 

 

紫は急いでスキマを開き、声のした東側へと移動する。

最悪の事態を覚悟しながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(屋敷内 東側)

 

 

 

 

 

譲信「……ッゥ……ァァ…ッ……グゥァ……!!」

 

 

 

その頃の東側はまさに地獄絵図だった。

血塗れの床の上に譲信が、顔を押さえて呻き声を上げながらうずくまっていた。

 

…そして、その譲信の前には謎の女が立って譲信を見下ろしていたのだ。

…そしてその女の右手が血塗れだった……。

 

 

???「フフフフ…人の家に早朝から不法侵入するだなんて悪い子ね……。そんな子には……罰が必要だわぁ…」

 

 

 

譲信「ゥゥゥ………ァァ……ッッッッ!!」

 

 

 

女はゆっくりと握りしめていた右の手のひらを開く。

そこからは、溜まっていた譲信の物と思わしき血液が雫となって床にこぼれ落ちた……。

 

 

そして……その手のひらの上には……何かが乗っていた…。

 

 

少しずつ開かれていき、そしてやがて、その何かはハッキリと見えてくる……。

 

 

そこにあった何か……それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つの眼球だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUE………

 

 




スタンドパラメータ

スタンド名:ニンジャリバンバン

能力:分身、火遁、水遁、風遁の4つの忍術を使う。

パワー:A
スピード:A
成長性:E
精密動作性:B
射程距離:E
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