Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
今回は主人公のバンドのお話なので、第3話を予め読んでおくと、話が分かりやすいと思います。
ところで今回の話のタイトルを英訳すると……? それではどうぞ!
休日のお昼過ぎ。暑すぎず寒すぎずで過ごしやすい今日は、バンドメンバーでの初練習の日だ。
次の文化祭の有志発表に出場する予定なのだが、どの曲を演奏するかはもちろん、まだバンド名すら決まってない状態だ。練習というよりは、打ち合わせや会議の方が近いかもしれない。
「さあ、みんな入って。ここがうちのスタジオだよ」
「「「おおー!!」」」
大河と穂乃花、そして花蓮の3人を、落ち着いた雰囲気のスタジオに招き入れる。
今俺たちがいるのはうちのカフェの地下にあるスタジオだ。それなりに広く、機材もしっかり整っている。
「すごいね。下にこんな場所があるなんて」
「うちはライブするときは基本1階じゃなくて、この下の階でやるんだ。さすがに1階は近所迷惑になるかもしれないからね」
「それに対して、ここは防音もしっかりしてるし、どんちゃん騒ぎしても大丈夫ってことか」
「その通り。練習はこの部屋使って、本番はさっき通ったステージでやるってこと」
この階はカフェっていうよりバーみたいな構造をしている。席付きのカウンター、テーブル席が複数、そして小さめのステージといった感じだ。
「じゃあまず、文化祭でどの曲弾くか皆で決めようよ!」
穂乃花の提案を皮切りに、今日のバンド練習(?)が始まった。
◇◆◇◆
「オッケー、じゃあ一旦まとめるね。2曲演奏するとして、最初は貴嗣のあの声で皆をビックリさせたいから、この前のカラオケのバラードを1曲目に持って来る。そして2曲目でドカンと派手な曲を持ってきて1曲目とのギャップと皆の演奏技術で盛り上げる! って感じかな」
「うん。構成はこれでいいと思う。あとは2曲目で何を演奏するか、だね」
「確か今年の後夜祭は、このバンド発表の後にフォークダンスがあるんだよな。どうせやるなら、できるだけ盛り上げたいよな」
そう。今大河が話したように、今年は文化祭の後に行われる後夜祭で、フォークダンスが開催されるのだ。
折角今年から共学になったのだから、高校生たちの思い出作りのために、ということらしい。グラウンドにキャンプファイヤーを設置して、その周りを曲に合わせて男女で踊る予定だ。
「なあ、それに関してなんだが、俺から1つ提案があるんだ」
「おおっ? 貴嗣おすすめの曲か? 期待できるな」
「今丁度俺が練習してる曲でさ……ちょっと待ってなー、スマホに入れたのを流すわ」
そう言って俺はテーブルにスマホを置いて、その曲を再生する。
~再生中~
「……いいじゃんこれ! えっ、これ最高じゃん! 俺これ弾きてえ!」
「これ弾けたら絶対盛り上がるよね! 私もこの曲皆で演奏したいな!」
「そうだね。確かに簡単な曲じゃないけど……これから練習すれば大丈夫」
どうやら皆も気に入ったらしい。よし、演奏する曲は決まった。最初の課題である“演奏曲を決める”、無事にクリアだ。
そしてこの後、休憩ということで上の階のカフェに皆で行くことにした。
◇◆◇◆
今日はカフェが休みなので、俺たちの貸し切り状態だ。俺は皆の分のコーヒーを入れ、ついでにラテアートも描く。糖分摂取ということで味は甘めにしてある。
「おまたせ。さあ、これ飲んで休憩しようぜ」
「わあ~! ラテアートだ! イン○タ載せよっと!」
「このハートのラテアートいいね。なんか飲むのが少しもったいなくなるね」
この光景を見てると、香澄達が来てくれた日のことを思い出す。
香澄達も今日は練習しているらしい。文化祭に出るために花園さんや牛込さん、市ヶ谷さんと一緒に頑張っている。
「……それにしても、今日はずっと曇りだねー」
「ああ。今にも雨が降りそうなくらいだ」
大河と穂乃花の言う通り、今日は天気があまりよろしくない。昼からずっと曇り空だ。
雲はそこまで厚くなく、天気予報ではこれから晴れてくる……らしいのだが、一向にそんな気はしない。
「曲は決まったのはいいけど……やっぱバンド名が決まらないな」
大河の言う通りだ。実はカラオケに行ってからLI○Eのグループで意見を出し合っているのだが、これがまた曲者で、皆がこれだ!! と納得できる名前が出てこないのだ。
ちなみに今のL○NEのグループ名は適当にそれぞれの名前をとって“
「できればバンドらしく、かっこいい名前がいいよね」
そう花蓮が呟く。何かいい名前は無いかと思いつつ、コーヒーを飲みながら窓から空を見る。
視界に入ってくるのは、当然ながら曇り空、どんよりとした雲だ。
雲は英語で……cloud……。
cloud……cloud……――
「――Every cloud has a silver lining……」
「……えっ?」
「……ああ、ごめん。ちょっと英語のことわざ思いだしてさ」
無意識の内に口に出ていたらしい。隣に座っていた花蓮が、コテンと首を傾げる。
「シルバー……? それどういう意味なの?」
「Every cloud has a silver lining. 『どんなに苦しい時でも必ず希望はある』って意味。silver liningっていうのは、直訳すると『銀の裏地』……このことわざだと、雲の後ろから指す光のこと」
俺は空に浮かんでいる雲を指差して、言葉を続けた。
「転じて――“希望の兆し”って意味」
「希望の……兆し……」
花蓮は俺の言葉を復唱し、少し考えこんだ後、ふと顔を上げた。
「……私、ピンときた」
「「「えっ?」」」
「バンド名だよ。シルバーライニング。私はいいと思うな」
花蓮は優しそうに笑う。その笑顔には、嬉しさはもちろんだが、どこか楽しそうな気持ちが感じられる。
「だって希望の兆しだよ? 名前の響きもいいし、意味もいいと思う。皆はどう?」
「シルバーライニング……希望の兆し……なんかカッコいいかも!!」
「確かに言われてみれば……! めちゃくちゃカッコいいじゃん!」
花蓮の問いかけに、穂乃花と大河も目を輝かせている。
「貴嗣君はどう?」
隣に座っている花蓮がそう聞いてくる。
Silver Liningか……なんかこう、言い出しっぺの俺がこんなことを言うと、何だか自画自賛のようになってしまうが。
「……ああ。俺もいいと思う。Silver Lining……なんか、俺達らしい」
どうしてかは全く分からないけど、そう感じた。俺の言葉をきっかけに、皆の顔に笑みが浮かぶ。
「じゃあこれからは、あたしたちはシルバーライニング、だね!」
「おお! なんかバンド名決まると雰囲気出るな! シルバーライニング!」
「「イェーイ!!」」
大河と穂乃花は2人仲良く盛り上がる。そんな2人を、俺は花蓮と一緒に見つめる。
「いいセンスだね、貴嗣君」
「そうか? あんま自覚は無いけど」
「ふふっ。もっと自信持っていいと思うよ?」
「ほら2人も! 記念に写真撮ろうよ! バンド名決定記念に!」
穂乃花がスマホを持って写真を撮ってくれるそうだ。皆で固まってピースをしてパシャリ。
「うっし! じゃあバンド名も決まったことだし! 残り時間少ないけど、練習しようぜ!」
大河はベースを弾きたくてウズウズしてる様子。
“バンド名を決める”、2つ目の課題完了だ。
◇◆◇◆
時は進んで夕方。なんだかんだ言って結構練習できた。
3つ目の課題、“練習をする”、完了。楽器の片付けも終わり、いつでも帰れる状態だ。
「よし、じゃあ今後の予定と各々の役割について、最後にもう一度確認するぞ。次の練習は来週の日曜日。時間は今日と同じ昼の2時からこのスタジオで」
「「「はーい!」」」
「んで、各々の役割なんだけど、まずは大河。大河は文化祭の実行委員会に出場の申し込みと、体育館のプロジェクターとスクリーンの使用申請を頼む。その高いコミュ力を活かして実行委員の人たちと交流を深めておいてくれ。恐らくこれからもお世話になる人たちだからな。それが終わったら、穂乃花の手伝いに回ってくれると助かる」
「おう! まかせとけ!」
「次は穂乃花だな。穂乃花にはバンドの名前のデザインを考えて、グループで共有してほしい。穂乃花の好きなようにデザインを考えてくれ。元美術部のセンスで、俺達をビックリさせてくれ」
「うん! まっかせといて! 皆がビックリするほどカッコいいデザイン考えるからね!」
「そして花蓮には、ライブ中の演出のアイデアを出してほしい。さっきも言ったけど今回俺達は体育館のスクリーンを使う予定だ。照明の色やタイミングと、盛り上げるための歌詞の映し方……この2つを主に考えてほしい。コンクール入賞経験で培った表現力を存分に発揮してくれ」
「わかった。皆の力になれるように頑張るね」
「最後に俺なんだが、俺は今回演奏する2曲のそれぞれのパートのスコアを作る。これに関しては出来次第皆に送るから、皆の感想や改善案を余裕がある時でいいから伝えてほしい。感じたことを気軽に言ってくれ。これに加えて、実際に練習していく中でも修正していくつもりだ。……それじゃあ、これから皆で頑張っていこう」
「「「了解!」」」
バンド名も決まって、曲も決まった。後はひたすら練習するだけだ。
こうして俺達<Silver Lining>は、文化祭に向けて最初の一歩を踏み出した。
小説タイトル回収完了です。
投稿を始めて1週間ですが、お気に入り登録や評価、そしてたくさんの方に読んでいただいており、驚くと同時にと嬉しさでいっぱいです……。(感涙)
さて、今回の第6話で序章が終了です。お疲れ様でした。次回から主人公は、1人の優しい女の子と深く関わっていきます。
それではまた次回お会いしましょう。
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