Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
一体誰のお手伝いなのか……それではどうぞ!
第7話 お手伝い
ハア、ハアという息遣いが誰もいない商店街に響く。
いくら毎日走っているとはいえ、長時間ぶっ通しは楽じゃない。今日は普段の家の周りのコースとは違い、少し商店街のほうまで遠出している。いつも賑わっている商店街だが、流石に朝の5時半では人はいない。
さあ、そろそろ休憩を入れようかと思い、商店街を抜けたところにあるベンチを目指す。1人でゆっくり休憩しようと考えていたのだが、よく見るとそのベンチに誰か座っていた。
男の人だ。40代くらいだろうか。
「すいません。お隣いいですか?」
「ええ。構いませんよ。どうぞ」
親切にその人は俺が座れるスペースを空けるために端に寄ってくれた。どうやらこの人もランニングをしていたようだ。着ているジャージに汗が薄ら滲んでいるのが見える。
「君も朝早くから走っているのかい?」
「はい。朝は空気が澄んでいて、走るのが気持ちいいので。あなたもトレーニングですか?」
「ははっ、トレーニングというか、ダイエットというか。この年になってくると、油断するとすぐに太ってしまってね」
参ったねえ、と笑いながらそう話す……俺の目には太っているというよりむしろ筋肉質に見えるのだが。
「確かに、体型維持は大変ですもんね。……っと、すいません、そろそろ行きます。ありがとうございました」
「こちらこそ、話し相手になってくれて助かったよ」
挨拶をしてからその場を後にする。
親切な人だった。またランニングをしていたら会いそうだと思いながら、家に向かって再び走り始めた。
◇◆◇◆
「いやあ、ほんとにビックリしたよ。まさかうちに来るお手伝いさんが山城君だったなんて」
「俺もだよ。まさか、俺達のお母さん同士が知り合いだったとは」
授業が終わり、普段なら家に帰ることが多いのだが今日は違う。
今日から1か月の間、俺は山吹ベーカリーで働くことになったのだ。この経緯は1週間前にさかのぼる。
~1週間前~
「貴嗣~、ちょっといい?」
「いいよー。どうしたの?」
「実はお母さんのお友達が商店街でパン屋さんをやってるんやけど、この時期忙しくなるから人手が欲しいんやって。どう貴嗣、1か月だけ手伝ってあげてくれへんかな?」
「へえ~パン屋ね。俺でいいんやったら、もちろんええよ」
「ありがと~!」
「何て言うお店?」
「お店? “やまぶきベーカリー”よ」
「…………マジで?」
~回想終了~
どうやら俺達の母同士が同級生らしく、卒業してからも交流は続けていたそうな。こっちに引っ越してきてからまた関わることになるとは、これもご縁というものだろうか。
そんなこんなでお店に到着。山吹さんの両親に挨拶をしに行く。
「はじめまして。山城貴嗣です。今日からよろしくお願い致します」
「はじめまして。山吹千紘です。
山吹さんのお母さんである千紘さんとご挨拶。ちなみに真愛っていうのは俺の母さんの名前だ。
やはり親子なだけあり、山吹さんと千紘さんはよく似ている。外見もそうだが、優しい雰囲気がそっくりだ。
「いや~すまんね。少し手が離せなくって……ってあれ? 君はもしかしたら今朝の?」
「……あれ? あなたは今朝のランニングの時の……」
……まさか本当に、しかもこのような形で再会するとは思わなかった。これもご縁というものだろうか。(2回目)
◇◆◇◆
「ありがとうございました」
レジで会計を終え、お客さんを見送る。あの後これから俺がするべき仕事の内容を説明してもらった。
基本的にはレジやパンの搬入、商品陳列だ。レジならうちやバイトで慣れっこだし、パンを運ぶのも難しいことではないので、今の所問題は無い。
「「……」」ジーッ……
「(……ん? 誰かに見られてる?)」
お客さんの波が収まり一息ついていると、ふと後ろから視線を感じた。
千紘さんかなと思って振り向くと、壁から顔だけ出して、俺の方をジーッと見つめている小さな顔が2つ。小学生くらいだろうか?
「こーら2人とも。あのお兄さんはお仕事中なのよ? 邪魔しに行っちゃだめよ」
「ん?」
千紘さんが後ろから現れる。その子達から何かお願いをされた後、千紘さんはしょうがないという顔でこちらを見た。
「貴嗣君、少し時間ある? どうしても2人が貴嗣君とお話ししたいらしいの」
「ええ、もちろん。大丈夫ですよ」
「ありがとう。ほら、純、紗南、いっておいで」
俺がそういうと2人の顔がパアっと明るくなり、こちらに近づいてきてくれた。俺は目線を合わせるためにその場にしゃがむ。
「はじめまして。僕は山城貴嗣っていいます。純君と紗南ちゃんでいいかな?」
「うん! よろしく、貴兄ちゃん!」
「うん……よろしくね、お兄ちゃん」
やっば何やこの2人天使か。可愛すぎへんか?? しかもお兄ちゃん(貴兄ちゃん)って呼んでくれたで?? やばいお兄ちゃん頑張る。(知能指数低下)
◇◆◇◆
「貴嗣君の料理本当に美味しかったよ。あんなに上手にできるなんてすごいね」
「気に入っていただけてなによりです。……特に純君と紗南ちゃんはすごかったです」
「2人とも貴嗣君の隣に座って、ずーっと話してたもんね」
現在午後8時過ぎ。あの後お手伝いは無事終わり、千紘さんの提案でこちらで夕食をいただくことになったのだ。流石に何から何まで用意してもらうのはあれなので、今日の感謝の意を込めて、夕食を作らせていただいた。
そして今、俺と亘史さん(山吹さんのお父さん)で食器洗い、山吹さんは紗南ちゃんとお風呂、純君は千紘さんと遊んでいる。
「純と紗南に気に入られたみたいだね」
「みたいですね。会って初日なのにいっぱい話してくれて、俺も嬉しかったです」
「貴嗣君が優しいからだよ。子どもはそういうところ、とても鋭いからね」
「ははっ、それには同意です」
キッチンから離れたところで遊んでいる純君を見る。笑顔が眩しい、とても純粋でいい子だ。
「1つ聞きたいことがあるんだが、いいかな」
「はい。なんでしょうか?」
「さっきの食事、魚やお肉が多めだったのは何か理由があるのかい?」
「……ふふっ、さすが亘史さん」
横目で俺を見る亘史さん。この感じだと、もう分かっているみたいだ。
「貧血予防には食事で鉄分摂取が一番ですから。そこに果物や野菜でビタミンCを取ると尚良しです」
「……そうか。ちなみにどうして分かったんだい? 貴嗣君が貧血気味……というわけではなさそうだけど」
「経験則です。今まで色んな人と会ってきましたから……千紘さんの顔色を見たら、すぐに分かりました」
千紘さんと会った時、まず最初に気になったのは、やはりその顔色だった。
ほんの少し青白いあの顔色は、貧血気味の人の特徴だと思った。冷蔵庫に魚やお肉が多かったのを見て、その推測は確信に変わった。
「……沙綾が中学生の時に、貧血で倒れてしまったことがあってね。それからは大丈夫なんだけど、料理には僕も気を使っているんだ」
「そうやって千紘さんのことを考えられるのは、とても素晴らしいことだと思います」
「はははっ、人を褒めるのが上手だねえ。それも経験則かい?」
「はい。経験則です」
そんな感じで楽しく話しながら、俺は亘史さんと食器洗いを続けた。
さて、そろそろ帰る時間だ。荷物をまとめ、最後に挨拶だな。
「貴兄ちゃん、帰っちゃうの……?」
「お兄ちゃんともっと遊びたい……」
「ふふっ、ありがとう、純君、紗南ちゃん。俺もできればまだ2人と遊んでいたいけど、家に帰らなきゃいけないんだ。でも、また明後日来るからね。また会えるよ」
そういって2人の頭を撫でる。
ごめんな……お兄ちゃんにも家があるんや……。
「山城君、今日はお手伝いありがとうね。ほんとに助かったよ。純と紗南とも遊んでくれたし。紗南なんてお風呂でずっと山城君の話してたんだよ」
「ありゃ、それはうれしいな」
最後に山吹さんと話す。山吹さんはほとんど毎日こうやって店の手伝いをしているみたいだ。本当に尊敬する。
香澄達や友達と遊びに行ったりする時間はあるのかというのは……少しお節介と言うか、考えすぎだろうか。
「こちらこそ、楽しかったよ。ありがとうね。また明日学校で」
「うん。また明日ね」
山吹さんに感謝の気持ちを伝え、帰路に就く。辺りはもう真っ暗だ。
『今から帰るね』と母さんにメッセージを送り、家に向かって歩き始めた。
ありがとうございました。
Poppin'Party編では、主人公と沙綾を中心に物語を進めて参ります。2人がどのように関わっていくか、楽しんでいただけると嬉しいです。
それではまた次回お会いしましょう!
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