Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 新たにお気に入り登録をしてくれた方々、そして評価をしてくださった斉藤努様、ありがとうございます!

 そしてなんと……皆様のおかげで、評価バーに色が付きました!!(3/4時点) 本当にありがとうございます!!


 それではお待たせしました! 文化祭編最終回をどうぞ!


 ※今回の話めっちゃ長いです(1万字弱)


第10話 君の笑顔は誰かの幸せ

 

 

「よし、ただいま到着っと……山吹さん? 大丈夫?」

「う、うん! ……なんでも……ない……///

 

 

 なんとかPoppin’Partyの発表の前に到着できた。

 

 男子が女子を抱っこして猛ダッシュしているって状況を学校の誰かに見られるわけにはいかないので、校門からちょっと離れた場所で彼女をそっと下ろす。

 

 

「さあ、俺が一緒に行くのはここまで。ちょっと用事があるからね。……ほら、ポピパの皆が体育館で待ってるよ」

「うん……ありがとう、山城君」

「どういたしまして。……いってらっしゃい。楽しんできてね」

「うん……! いってきます……!」

 

 

 とびっきりの笑顔でそう言い、ライブが行われている会場に向かう彼女の背中を見送ってから、LI○Eのグループトークを開く。

 

 

 

山城貴嗣〈すまん皆、今終わった 今からそっちに向かう〉

 

タイガ〈おう! お疲れ! 会場すげー盛り上がってるぜ!〉

 

高野花蓮〈お疲れ様 貴嗣君の荷物も運んでおいたよ〉

 

ほのか〈おつかれー! じゃあ控室に来て! 貴嗣来てから着替えにいこっか!〉

 

山城貴嗣〈皆サンキュー すぐにいくわ〉

 

 

 

 事前に荷物運びまでしてくれた皆に感謝しつつ、控室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「皆またせた」

「おっ、来た来た! はい、これ貴嗣の荷物ね!」

「ありがとう穂乃花。じゃあ大河行こうぜ。男子の更衣室はあっちだ」

「おう! 2人ともまた後でな」

「うん。またあとでね」

 

 

 更衣室に到着し、ライブ衣装……もとい私服に着替える。この前皆でデパートに行ったときに購入したものだ。

 

 今回はモノトーンコーデをメインに、帽子やカジュアルネクタイ等を明るい色にすることでアクセントにしている。

 

 

「有志発表めっちゃ盛り上がってるな」

「おうよ。ほんとすごいぜ? 個人的にはGlitter*Greenがヤバかった」

「Glitter*Green……牛込さんのお姉さんがギタボやってるバンドか……あーすまん大河、髪型違和感ないか見てくれ~」

「うーい」

 

 

 更衣室で着替えた後、鏡を見てワックスで髪を整えながら、大河と雑談をする。

 

 

「牛込……ゆりさんだっけ?」

「そうそう。ゆりさん。超かわいい」

「ほえーマジか。気になる」

「ほうほう、貴嗣も年上お姉さんが好みですかい?」

「どうだろうな。でも魅力は感じる」

 

 

 思春期高校生らしい会話(?)をしながら、大河に髪を微調整してもらう。

 

 

「まあでも1年の男子の間では噂になってたよな。牛込先輩可愛いって」

「んだんだ。黒髪美女お姉さんが嫌いな奴なんていないってことよ……うっし、こんなもんだろ。終わったぜ、貴嗣」

「サンキュー大河。んじゃ、控室に戻るか」

 

 

 

 

 

 

 

「おお~! 2人とも似合ってる! 中々かっこいいじゃん!」

「ありがとう。穂乃花と花蓮も似合ってるよ」

 

 

 着替えが終わり再び控室に集合。皆よく似合っている。今どんな状況かを説明すると……

 

 

貴嗣……白シャツ、紺ベスト、黒スキニー、ショートオールバック

大河……黒ハット、黒シャツ、白カットソー、黒ジョガーパンツ、ショート七三分け

穂乃花……黒シャツ、白ワイドパンツ、サイドシニヨン

花蓮……白シャツ、赤ネクタイ、黒ベスト、黒スキニー、三つ編みカチューシャ

 

 

 という感じだ。

 

 

「あっ、ポピパの撤収もうすぐ終わるみたい。そろそろ行こう」

「だね! じゃあレッツゴー!」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 楽器も運び終わった今、俺達は舞台の裏にいる。照明とプロジェクターはあと数分でセッティングが完了するようだ。

 

 

「よし、みんな、ちょっと集まってくれ」

 

 

 最終チェックのために皆を集める。

 

 

「あと1分ほどで本番だ。……まず最初に、練習もできる範囲で十分やった。本番は、演奏を、聞いてくれる人たちと一緒に楽しむつもりで行こう」

 

「そして、俺達の演奏には本当に色んな人たちが関わってくれている。実行委員の人達、先生方、照明や音響を手伝ってくれている放送部の人達……数え始めたらキリがない。その人達への感謝の気持ちを忘れずに、本番を楽しもう」

 

 

「「「おう(うん)!!!」」」

 

 

「みなさん、こちらは準備オッケーです! いつでもどうぞ!」

「はい、ありがとうございます!」

 

 

 さあ……準備は整った。

 

 

「――よし! 行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、私達の後のこの、えっと……シルバーライニング? って誰なんだろ!」

「確か、チラシには名前だけで、メンバー書いてなかったんだよね?」

「そうそう! チラシすっごくカッコいいのに……それに、貴嗣君がどこにもいないんだよね」

 

 

 ライブの跡、次のバンドの準備を待っていると、隣に座っている香澄がそう口にした。

 

 “山城君”という言葉を聞いて、私はふと周りを見渡した……けど、この体育館にはいっぱい人がいる、山城君だけを見つけるのは難しそうだ。

 

 

「山城君もだけど、須賀君と穂乃花もいないよね? りみりんは知らない?」

「うん。私も知らないんだ……有咲ちゃんは?」

「右に同じく……なんなら、うちのクラスの高野さんもいないんだよ」

 

 

 おたえとりみりん、そして有咲もそう言って首を傾げる。

 

 

「……あっ! 開演ブザー! みんな、始まるよ!」

 

 

 閉まっていた幕が開き、暗転していた舞台に光が戻る。

 

 それと同時にいつの間にあったのか、舞台の巨大スクリーンに映像が映し出されて、そしてそこには――

 

 

 

 

 

「「「……山城(貴嗣)君!?」」」

 

 

 今日、私をここに連れてきてくれた男の子が立っていた。

 

 

「……山城君……」

 

 

 舞台の上に立っている彼を見つめていた中、耳に入ってきたのは、優しいピアノのメロディと、彼の透き通った歌声。

 

 頭の整理が追い付かないまま、彼らの演奏が始まった。

 

 

 

 

 ~♪♪~

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「――ありがとうございました」

 

 

 演奏が終わると、一瞬の静寂の後、大きな拍手や歓声が俺達を迎えてくれた。

 

 俺と大河はマイクを持って前に出て、タイミングを合わせてMCを始めた。

 

 

「「みなさん、こんにちは! Silver Liningです!」」

 

 

 ワアー!!

 

 

「まずはメンバー紹介です! ドラム、松田穂乃花!」

 

「キーボード、高野花蓮!」

 

「そして、今回MCを務めます、ギターボーカル担当の山城貴嗣と」

 

「ベース担当の須賀大河です! 今日はよろしくお願いします!」

 

「1曲目は、ジェイ〇ブ・ラティ○アさんの“Heartbreak heard around the world”をお送りしました。いかかだったでしょうか?」

 

 

 ウオー!!

 

 

「いやー皆さん、貴嗣の歌、ヤバくなかったですかー? もう俺なんかベース弾きながらうっとりしちゃいましたよ」

「ありがとうございます! 次もこの調子で行きたいと思いまーす!」

 

 

 イエーイ!!

 

 

「ところで、次の曲といえば、僕らは超盛り上がる曲を選んだんですけど……貴嗣さん、なんで僕たちはあの曲を選んだんでしたっけ??」

「そりゃあもちろん……この後に行われる本日最後のイベントのためっすよ……」

 

 

 オオ? オオ?

 

 

「おお? 会場がざわついてきましたねえ~もう皆さんお気づきでしょうから、答え言っちゃいますか!」

「そうっすね!」

「「せーの」」

 

 

「「フォークダンス!!」」

 

 

 ウオーフォークダンスゥー!!

 

 

「皆さんが楽しみにしているフォークダンスを盛り上げたいと思って、2曲目はすごく盛り上がる曲を演奏しますので、是非楽しんでくださいね」

 

「……ところで貴嗣さん、さっきのフォークダンスの話なんですけど」

 

「はいはい」

 

「……貴嗣さんは誰かと踊ったりするんですかぁ?」

 

「それはバンドメンバー以外でってことですよね?」

 

「もちのろんちゃんです」

 

 

 オオッ!?!?

 

 

「……誰とも踊る予定ないんすよぉ」

 

 

 アハハ!!!

 

 

「あれっ?? この前皆で買い物行ったときに……『○○ちゃん誘うか考えとく』って言ってた件については……どうなったんですかぁ??」

「「そうだそうだー!!」」

 

 

 ナニィ!?!?

 

 

「それに関してはね、ちゃんと自分の中で答えを出したので……この場で言うのは避けたいということで……」

「ほほう……まあ貴嗣がこう言ってるんで、このくら――」

 

 

 

 

 

「ああちょいまって! あたし聞きたいことがある!!」

「おおっとここにきてドラムの穂乃花の猛襲だぁ!!」

「貴嗣に1つ質問があります! その子は可愛いですか!?」

「可愛いと思います(即答)」

 

 

 キャー!!

 

 

「キャー! なにこれ最高(笑) あたし達は誰だか分かってるから余計に面白いねぇ♪ あー笑った笑った、そろそろお開きn――」

 

 

 

 

 

「貴嗣君、私からも~」

「アッハァ~まさかのうちのバンドの良心キーボードの花蓮も奇襲攻撃ときたァ! さっすが恋バナ、女性陣の食いつきが尋常じゃねえぜ!!」

「――その子のこと、どう思ってる?」

「ねえ皆実は俺に内緒で仕組んでたでしょ??(笑)」

 

 

 アハハ!!!

 

 

「そうやなあ……『心を許せる人』ですかね~」

「本当に答えるのか……(困惑)」

 

 

 キャーステキー!!

 

 コレハ恋ノ予感ヨー!!!

 

 

「ハハハ……よし次いくどー

「「「はーい」」」

「さて、次でラストです! 今度は貴嗣がギター弾きますよー!!」

 

 

 ウオータカツグーガンバレー!

 

 

「ありがとうございます……それでは聞いてください! PENG○IN RESEAR〇Hさんから“決闘”です!」

 

 

 

 

 

 ~♪♪~

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「皆さん、今日はありがとうございました!」

「これで文化祭は終わりじゃないです! 最後まで楽しみましょう!」

「あっ、そうだ! 貴嗣君と一緒に踊ってくれる人大歓迎でーす!!」

「「でーす!!」」

「おいおい勝手に決めないでくれたまえ」

 

 

 アッハッハッハ!!

 

 

 

 

 

 

 

「「「「よっしゃー!!」」」」

 

「やっべえやりきったぜ! うわ、興奮が収まんねえよおおお」

「うわー超楽しかった!! あんなにドラム叩けたの初めて!」

「私も皆と演奏できて楽しかった。でも、今日の主役は貴嗣君だね」

「だな! それについては異論はない!」

「ありがとう。皆のおかげだよ」

 

 

 本番が終わった。すさまじい達成感と興奮がまだ冷めない中、俺達はライブの余韻に浸っていた。

 

 ……ほんと、最高の演奏だった。

 

 

「さあ、俺達もグラウンド行こうぜ。もう始まってるぜ」

「だな」

 

 

 皆で笑いながらグラウンドに向かうと、外は丁度日が沈みかけて、薄暗くなってきた校舎にキャンプファイヤーの火が映っていた。パチパチ、と音を鳴らして燃えるそれは優しい光で、曲が始まるのを待ち望んでいる生徒達を照らしている。

 

 

 少し肌寒くなってきて暖を取るために火に手をかざしている人、カメラ回しといてよ! と友達にお願いしている人、一緒に火を見ていい雰囲気になっている男女ペアなど、色んな人達が集まっている。

 

 

 そして意外なことに、男女ペアが思っていたより多い。男子は1年生しかいないのだが、同学年はもちろん、中には思い切って先輩を誘いオッケーをもらっている男子も。

 

 なるほど火の魔力とはこのことだろうか、普段は無意識に作っている心の壁をも、いい具合に溶かしてくれるようだ。

 

 

 そして俺はというと、これから一緒に踊る花蓮と歩いている。

 

 

「貴嗣君、私と踊るより、“心を許せる人”と踊るほうがいいんじゃないの?」

「おいおい、またそれか? そもそも山吹さんは誘ってないぞ……それに花蓮と踊りたいし」

「ふふっ、それは嬉しいね……もしかしたら私、口説かれてる?」

「違うよ、そんなつもりない。今日まで一緒に頑張ってきたんだしさ。折角一緒にバンド組んで、ペア分けで一緒になったのも、何かの縁かなって。それとも俺と踊るのは嫌?」

「その質問はずるいよ。私は嬉しいよ? 貴嗣君みたいに誠実な男の子と踊れるの」

「あはは、誠実とは。お兄さん頑張っちゃうぞ」

「うん、期待してる。しっかりエスコートしてね、紳士さん?」

「おう、まかせとけ」

 

 

 花蓮は基本的に相手を称えることが多く、真面目で優しい性格だが、今の会話のように冗談も言うし、こちらが冗談を言うとしっかり返してくれる。見た目から大人しいと思われがちだが、案外ノリが良いのだ。

 

 そんな冗談を言いながら、花蓮と2人でグラウンドを歩く。

 

 

「……私達、結構見られてるね。カップルと思われてるのかも」

「ライブしたばっかりだし、着替えてないし、目立ってるだけじゃ?」

「私と付き合ってるって思われるのは嫌?」

「その質問はずるい……って、この流れさっきやった」

「あははっ、ごめんごめん。……あっ、見て、あそこに1年生の皆いるよ」

「ほんとだ……あれ? 香澄達どこだ?」

 

 

 

 

 

「たーかーつーぐーくーん!!」

「ゴハア!? ……って、香澄!?」

 

 

 背中に強い衝撃を受けこけかけるがなんとか持ちこたえる。振り向いてみると、背中に香澄がへばりついていた。そして香澄の後にはポピパの皆もいる。

 

 

「貴嗣君すごかったよ!! あんなにギター弾きながら歌えるなんて知らなかった!なんで弾き語りできるって教えてくれなかったの!?」

「いや、別に自分から言うもんでもな――」

「私からも聞きたいな。本当に上手だった。どこであんな演奏技術身に着けたの?」

「は、花園さん? あの、一気に質問されると――」

「あっ、名前の呼び方。香澄は名前で呼んでるのに私は苗字。おたえって呼んで。私も貴嗣って呼ぶ」

「花園さんお願いだから話を――」

「おたえ」

「…………おたえ」

「うん、よろしい」

「……じゃあ、順番に香澄の質問から答えていってもいい?」

 

 

 香澄と花園さん……じゃなかった、おたえから質問ラッシュ。さっきから2人とも距離が近い。

 

 

「おい香澄! おたえ! 山城君に迷惑だろ! 落ち着け!」

「2人とも……有咲ちゃんの言う通りだよ。ちょっと落ち着こう?」

「そうだ。有咲さっきね、貴嗣の演奏見て、『かっこいい……』って言ってたよ」

「は、はあ!? い、言ってねえ!!」

 

 

『まもなく、本日最後のイベント、フォークダンスを開催致します。参加する生徒のみなさんは、キャンプファイヤー周辺に集まってください』

 

 

「あーっ! フォークダンス始まるよ! 貴嗣君! 一緒に踊ろう!」

「貴嗣、香澄のあとに、私とも踊ろう?」

「ああ、それは大歓迎だよ……でもとりあえず、最初は花蓮と踊るからさ。その後でな?」

「うん! じゃあ私たち、カメラで撮っとく!」

「やった。ありがと、香澄ちゃん」

 

 

 香澄に感謝してから、花蓮はスカートの裾を持ちながら、少し頭を下げる。まるで舞踏会に出席しているお嬢様みたいだ。

 

 

「――では貴嗣様? 私と一緒に踊っていただけますか?」

「――ええ。喜んで。では、花蓮様、私の手を」

「はい。エスコート、お願いしますね?」

 

 

 なんて冗談を言いながら互いの手を取り、キャンプファイヤーの周りにできている輪の中に入っていった。

 

 

「……」

「沙綾ちゃん? どうかした?」

「う、ううん! なんでもないよ、りみりん……」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「ありがと、貴嗣。楽しかったよ」

「ああ、こちらこそ……ありがとうおたえ」

 

 

 さあ、ちょっと休憩しy――

 

 

「あーっ! 貴嗣! やっとみつけたわ! 突撃ー!」

「グハア!? こ、今度は……弦巻さん!?」

 

 

 またもや後ろから突撃される。今度は誰かと思い振り返ると、満面の笑みの弦巻さんだった。後ろには北沢さん達もいる。

 

 

「さっきの演奏とってもすごかったわ! あたし、今とっても踊りたい気分なの! 貴嗣、一緒に踊りましょう!」

「こころんの次ははぐみとも踊ろ!」

「お、おう、踊るのは全然大丈夫だよ……」

 

 

 文化祭のカフェ、山吹さんを抱っこして猛ダッシュ、バンドの演奏、そして休憩なしのフォークダンス。

 

 ちょっと疲れたという言葉が出そうになったが、天真爛漫な弦巻さんと北沢さんを見てなんとかその言葉を飲み込む。

 

 そしてそんな俺を少し遠くから見ている女の子が2人。奥沢さんと松原さんだ。

 

 

「あっ、奥沢さんに松原さん、お疲れさまです」

「お疲れ様、山城君。ライブすごかったよ……見入っちゃった」

「山城君ってあんなに歌上手かったんだね。ほんとびっくりしたよ」

「ああ、ありがとう……それにしても、弦巻さんと北沢さんは元気だね……」

「ああ……うちのこころとはぐみがご迷惑を……」

 

 

 ハロハピの常識人枠2人と話していると、弦巻さんが口を開いた。

 

 

「そうだわ! 美咲と花音も一緒に踊りましょ! 絶対楽しいわ!」

「えっ……!?」

「こ、こころちゃん……!?」

「あ、あはは……2人とも、別に無理しなくても……」

 

 

 クラスが違う奥沢さん、学年が違う松原さん。

 

 あまり接点がなく、最近知り合った2人だから、いきなり俺と踊れなんて言われてもオッケーしないだろう。

 

 

「……まあ折角の機会だし……」

「わ、私も……」

「…………へ?」

 

 

 あるぇー反応が予想と違うぞ??

 

 

「やった! じゃあ貴嗣、行きましょ!!」

「え、うお、あ、ちょ、引っ張らない――」

 

 

 こうして碌な休憩を一切与えられないまま、さっき香澄やおたえ達の時と同じように、俺は弦巻さんに手を引っ張られて、フォークダンスの輪の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「あははっ、山城君、弦巻さんに引っ張られてる」

 

 

 花蓮に、香澄、おたえ、りみりん、有咲、穂乃花、そして今から弦巻さん達……大人気だね。

 

 そういえば山城君、花蓮と仲良かったんだ。花蓮とは中学の時に1回だけ同じクラスになったことあるけど、すごく優しいし、可愛いし、ピアノも上手だし、本当にいい子だよね。

 

 

「(2人は……付き合ってるのかな)」

 

 

 ふと、さっき山城君と花蓮が踊っていた光景を思い出す。お互い名前で呼んでるし、距離も近かったし、少なくともすごく仲が良いことは確か。

 

 

「(……私は……山吹さん呼びだし……)」

 

 

 それに踊ってた時の花蓮ちゃん、すっごく笑ってたなあ。なんか、見てるこっちまで嬉しくなっちゃった。

 

 

 ……嬉しくなると同時に、ちょっと胸の奥がチクチクしたのは、気のせいかな……?

 

 

「――山吹さん」

「――えっ?」

 

 

 耳に入ってきたのは、低くて落ち着いた声。

 

 

「……山城君?」

「お疲れ様。隣、座らせてもらっていいかな?」

「えっ……ああうん、もちろん。どうぞ」

 

 

 ありがとう、といって彼が私の隣に座る。

 

 

「今日は楽しかった?」

「……うん。すごく楽しかった。来てよかった」

 

 

 休憩用のベンチに座り、2人でメラメラと燃える火を見つめる。

 

 

「それはよかった。山吹さんが頑張ったおかげだ」

「……でも、そのきっかけをくれたのは、山城君だよ? 山城君が迎えに来てくれたから……手を取ってくれたから」

「俺は手助けをしただけ。一番大事なのは、山吹さんが勇気を出したこと。自分を労わってあげるのも大切だよ?」

「……うん。そうだよね。ありがとう」

 

 

 もう……本当に優しいんだから。

 

 そんなこと言われたら、言い返せないや。

 

 

「……フォークダンス、もうすぐ終わるね」

「だね。次の曲で最後っぽい。山吹さんは誰かと踊った?」

「ううん。私は友達に頼まれて、ずっと写真撮影係だよ」

「そっか」

 

 

 

 

 

 

「ならよかった」

「……え?」

 

 

 そう言って山城君は立ち上がり、私の前に立って手を差し出した。

 

 

 

 

 

「山吹沙綾さん。僕と踊っていただけませんか?」

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 パチパチと木が焼ける音が聞こえる。もう太陽は沈みかかっており、空は暗くなってきてる。

 

 私は今、この1か月間、多分一番一緒にいた時間が長い男の子と、手をつないで踊っている。

 

 

「ねえ、さっきから思ってたんだけどさ」

「うん?」

「山城君、ダンス上手だよね。なんか、他の子と違う」

「ああ。男女で踊るイベントは初めてじゃないからね。中学の時はこういう行事、結構あったし」

「中学……ってことは、イギリスに留学してた時?」

「そうそう。俺の行ってた学校がさ、結構ダンスパーティーとかを頻繁に開催するところだったんだ。こうやって女の子としっとり踊ったり、クラブみたいに皆で騒いだり」

 

 

 山城君が……踊って騒いでる……?

 

 

「……ふふっ」

「どした?」

「ううん。なんか山城君が騒いでる姿、想像したら笑えてきちゃった。ちょっと見てみたいかも」

「おっ? じゃあまた見せるよ。スマホに一杯写真とか動画あるからさ」

「あっ、それいいね! また見せてね!」

 

 

 楽しそうに話す山城君を見て、私も笑う。こんなに笑ったの、久しぶりかも。

 

 

「あっ、今のいい」

「えっ?」

「今の山吹さんの笑顔、いい。いい顔してる」

「そ、そう? あ、ありがと……///」

「やっぱり、笑ってるほうがいい。最近、山吹さんが笑ってるところ、見てなかったからさ」

「そうだね……私が今こうして笑えるのは、山城君のおかげだよ?」

「どういたしまして。これからは、誰かを頼るってのも大事にしてね?」

「うん。じゃあ、困ったときはまず山城君を頼ろうかな?」

「全然大丈夫だよ。山吹さんのお願いなら、断る理由はないしね」

 

 

 

 

 

「……じゃあ、今お願いしてもいい?」

「もちろん。どーんと来い」

 

 

 私は山城君の目を見て――その綺麗な銀色の瞳を真っ直ぐ見て、お願いをする。

 

 

「……私のこと、名前で呼んでほしいんだ。沙綾って」

「えっ? そんなんでいいの?」

「うん。だから……名前で呼んでほしいな」

 

 

 想像していたものより軽いお願いだったのか、山城君は少し驚く。でもすぐに私を真っ直ぐ見て、笑いかけてくれた。

 

 

「沙綾」

「……うんっ///」

 

 

 優しい声で、私を名前で呼んでくれた。

 

 

「これでいい?」

「うん! ……山城君のことも、名前で呼んでもいいかな?」

「もちろん」

「じゃあ……貴嗣」

「おう。改めて、これからよろしく、沙綾」

「うん……! こちらこそよろしくね、貴嗣!」

 

 

 えへへ……嬉しい……///

 

 

 ……って、そうだ! 一番聞きたいことあったの、忘れてた!

 

 

「ね、ねえ貴嗣……1つ聞きたいことがあるんだけど……」

「ん?」

「ライブの時に言ってた、誘う予定だった子は誘ったの?」

「あああれ? その子はもう誘ったよ」

「えっ、うそ!? もう踊ったの!?」

 

 

 

 

 

 

 

「もうっていうか、今踊ってる」

「……えっ?」

 

 

 彼がそう言うのと同時に曲が終わった。一瞬思考が止まり、足を止めてしまう。踊っている最中に動きを止めるとどうなるかは明白だ。

 

 

「わわっ……!」

 

 

 このままこけるのを想像し、反射的に目をつぶって、来るであろう衝撃に耐えようとしたけど――

 

 

「よいしょ。沙綾、大丈夫?」

 

 

 彼が優しく受け止めてくれた。

 

 それは良いのだが、前のめりになっているところだったので、傍から見れば、まるで彼の胸に飛び込んで抱き着いたように見える。

 

 

「ご、ごめん……///」

「あはは、ごめんな? びっくりさせちゃったか」

 

 

 やっぱり周りから見られてる……恥ずかしい……///

 

 

「俺、沙綾と踊りたかったんだ」

 

 

 私に抱き着かれたまま、貴嗣はそう言った。

 

 

「どうして私なの? 他に可愛い子、いっぱいいるのに……」

「えっと、可愛い可愛くないの問題じゃないんだけどな……」

 

 

 貴嗣は笑いながらそう言って、言葉を続ける。

 

 

「バンドのメンバーで話してた時に、沙綾を誘ってみたらー? って言われてさ」

「そうだったんだ……」

「でもちょっとそこで悩んだ。沙綾と踊りたいって気持ちは本心なのか、皆に言われたから思ってるだけなのか……ってね」

 

 

 グラウンドで燃えているキャンプファイヤーを見つめながら、貴嗣はそう話してくれた。

 

 

「そこで考えたんだ。この1か月弱、沙綾と学校から帰って、沙綾と一緒に店のお手伝いして、純と紗南ちゃんと遊んで、皆で夕食食べて…………なんか、めっちゃ楽しくてさ。多分そう感じるのは、沙綾が仲良くしてくれたからなんだなって思って」

 

 

 キャンプファイヤーの火から、貴嗣は私に視線を移す。

 

 

「沙綾といる時間、居心地良くて俺めっちゃ好きだなーって、そこでようやく気付いた。だから……そんな優しくて、頑張り屋さんな沙綾と一緒に踊りたいって、心から思った」

 

 

 ニコっと笑い、貴嗣は私を誘ってくれた理由を話してくれた。

 

 

 彼はいつもそうだった。一緒に話している時も、店の手伝いをしている時も、いつもニコニコしていた。そんな彼に知らず知らずのうちに、私は助けられていた。

 

 

「……貴嗣」

「ん?」

 

 

 私は、これから彼に恩返ししていきたい。

 

 だから、これからは私のやりたいことをやっていこう。

 

 私がやりたいことをやって、楽しんで、貴嗣と一緒に笑いたいから。

 

 

「……ありがとうっ!」

「……ああ」

 

 

 あったかい気持ちに包まれて、私は貴嗣と一緒に笑った。

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

 同日夜。山吹家。沙綾のLI〇Eにて。

 

 

 高野花蓮〈沙綾ちゃん。今日はお疲れ様。私の友達がポピパのライブの写真撮ってたらしいから、送るね〉

 

Saya〈ほんと!? ありがとう花蓮ちゃん!〉

 

 

 高野花蓮 が10件の写真を送信しました

 

 

 Saya〈わぁすごい! こんなにいっぱい! ありがとう!〉

 

 高野花蓮 〈どういたしまして!〉

 高野花蓮 〈あとこれ、私が撮った写真なんだけど、沙綾ちゃんにあげるね〉

 

 

 高野花蓮 が1件の写真を送信しました

 

 (花蓮、沙綾が貴嗣に抱き着いてる写真を送信。お互いを見つめ合ってるベストショット)

 

 

 Saya〈!?!?〉

 Saya〈ちょ、ちょっと花蓮ちゃん! これいつ撮ったの!?〉

 

 高野花蓮〈2人が踊ってるときだよ? いい写真でしょ?〉

 高野花蓮〈他にも貴嗣君の写真色々あるけど、見せようか?〉

 

 

 

 

 

 Saya〈……お、お願いします……///〉

 




 読んでいただきありがとうございました! 文化祭編最終回でした!

 さて、今回初めて活動報告のところに、評価バーの点灯とそのお礼の気持ちを書かせていただきました。もし暇があればチラッと覗いていただきたいです。

 それではまた次回お会いしましょう!

ハロハピでのあなたの推しは?

  • 弦巻こころ
  • 瀬田薫
  • 北沢はぐみ
  • 松原花音
  • 奥沢美咲
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