Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 先日の文化祭編最終回からアクセス数&お気に入り登録の数が急激に増えております……い、一体どういうことなのだ……。

 見てくださった皆様、登録をしてくれた方、新たに評価をしてくださったくりとし様、本当にありがとうございます! ☆10くださるってマジっすか……。(感動による震え声)

 そして、第10話の誤字報告ありがとうございました! 何回も確認したのに、大事な話で、しかも超冒頭の誤字見逃すとか……確認ガバガバじゃねえか……。(自己への戒め)

 さて、今回からはポピパのメンバーとのエピソードです。前回の続きということで、沙綾編から進めて参ります。

 それではどうぞ!


第11話 積極的に動くに越したことはない

 お客さんから商品を受け取り、レジに値段を打ち込み、お金を受け取って会計をする。トレーに置かれている美味しそうなパンを見ると、一瞬食べたくなる衝動に駆られてしまう。

 

 

「「ありがとうございました!」」

 

 

 沙綾と一緒に、お客さんに感謝の言葉を述べる。文化祭が終わってからは、沙綾に笑顔が戻った。前まで悩んでいたのが嘘みたいに元気で、そんな沙綾を見ているこっちまで嬉しくなる。

 

 

「(……今日でお手伝いはおしまい、か)」

 

 

 花咲川の文化祭はこの辺りのお祭りイベントらしく、その影響でいつもより人がたくさん来る時期だそうだ。俺がお手伝いを依頼されたのは、そんな忙しくなる時期に1人でも人手が欲しいから、ということだった。

 

 お客さんが多く来るようになるのは、文化祭のだいたい1ヶ月前から。そして文化祭が終わって数日経った今日は、そんなお手伝いの最終日だ。

 

 

「今日もありがとうね~貴ちゃん」

 

 

 おばちゃんにそう声を掛けられる。今パンを買ってくれたお客さんだ。

 

 前に沙綾から教えてもらったのだが、このおばちゃんは昔からこの店のパンを買いに来てくれているらしい。レジに立つことが多い俺も必然的に話す機会が多くなり、“貴ちゃん”という呼び方から分かるように、親切にしてもらっている。

 

 

「ほんとに貴ちゃん男前だねぇ~」

「あははっ、毎回言ってくれますね。ありがとうございます」

「男前だし、話も上手だし、仕事もテキパキするし、モテモテなんじゃないかい?」

「いや~そんなことないですよ? 現実は厳しいってもんです……って、ごめん沙綾、レジの紙袋切れちゃったから取ってくる。ちょっとレジ頼んでもいい?」

「うん! もちろん!」

 

 

 確か裏の部屋の2段目の棚にあったはずだ。もう店も閉める時間だし、お客さんもおばちゃん以外にいないから、問題が起こることはないだろう。

 

 ありがとうと沙綾に行ってから、俺は裏の備品が置いている部屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと、沙綾ちゃん達は息ぴったりだねえ」

「そりゃあ、貴嗣とは1か月くらい一緒に働いてるからね」

「仲良しだねぇ~」

 

 

 

 

 

 

 

「あたしからみたら夫婦みたいだよ」

 

 

「え、ええっ!?/// ちょっとおばちゃん、いきなり何言いだすの……!?///」

「何って……付き合ってるんじゃなかったのかい?」

「つ、付き合ってないよ……!! 友達だよ! 友達!」

「はははっ、そうかいそうかい。でも貴ちゃんと話してる時の沙綾ちゃん、ものすごく楽しそうだよ」

「あっ……いや、それは……その……///」

「あたしの経験上、ああいう男の子は本当にモテるよ。積極的に行動しないと、周りにすぐ取られちゃうよ?」

 

 

 

 

 

「ごめん沙綾待たせた……って、どうした、顔赤いぞ?」

「だ、大丈夫だよ!!」

「??」

 

 

 少々手間取ってしまったが、無事に袋を手に入れレジに戻った。戻ったのはいいのだが……そこには顔をほんのり赤くした沙綾と、満面の笑みを浮かべてるおばちゃんが。

 

 ……どういう状況?

 

 

「沙綾ちゃんとおしゃべりしてただけだよ。さあ、あたしはそろそろ帰るね」

「あっ、はい。ありがとうございました」

 

 

 何が何だか分からないまま、おばちゃんは帰った。

 

 その後はお客さんも来ず、閉店時間ということで、皆で一緒に片付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、山吹家。

 さて、いまさら言うのもあれだが、仕事終わりにはある楽しみがある。それは――

 

 

「貴兄ちゃ~ん!」

「お兄ちゃ~ん!」

「おー2人とも、元気にしてたかー?」

 

 

 純と紗南ちゃんと遊ぶことだ。仕事を終えた俺を見つけるや否や、トコトコとこちらに向かってくる姿はまさしく天使。

 

 山吹家のリビングに置かれているソファーに座らせてもらって、2人とおしゃべりをする。今日学校であったことや、楽しかったことを教えてもらうのが、今日までの習慣だった。

 

 

「ねえねえお兄ちゃん、うちに来るの今日で最後なの……?」

「ああ、そうだよ。一旦今日でおしまい」

「ええっ!? 貴兄ちゃん、もう来てくれないの!?」

 

 

 えーっ!? と驚いた表情を見せる純。少し誤解をしているようなので、すぐに説明する。

 

 

「いや、そういうわけじゃない。これからもお手伝いに来ることはあるけど、今まで見たいにほぼ毎日来るってことはなくなるんだ。2度と会えないってわけじゃないぞ?」

「……でもじゃあ貴兄ちゃんと遊べる日も少なくなるってこと?」

「お兄ちゃん……さーな、もっとお兄ちゃんと遊びたいよ……」

 

 

 チックショオオオ心が痛いいい!!!

 

 

「じゃあ、お泊り会をするのはどうかしら?」

「……へ?」「えっ!?」

 

 

 俺の気の抜けた声と、沙綾の驚いた声が同時に出てくる。

 

 

「お、お泊り会……?」

「明日から休みだし、丁度いいと思うのだけれど」

 

 

 千紘さんは笑顔でそう言う。休みとかそういう問題じゃないと思うのだが……。

 

 

「ちょ、ちょっとお母さん!?」

「あら、楽しそうじゃない? お父さんも乗り気よ」

「ええ……亘史さんマジっすか……」

 

 

 普通こういうのって、お父さんは賛成しないものなんじゃ……純と紗南ちゃんはまだしも、沙綾は俺の同い年なのに。

 

 そう困惑していると、両手に強い力がかかった。気が付くと、純と紗南ちゃんが、座って話を聞いている俺の腕をギューッと掴んで、涙目になりながらこちらを見ていた。

 

 

「お兄ちゃん……」

「貴兄ちゃん……」

「……あー、2人とも? 泊りに行きたいけど、ほら、お姉ちゃんの意見も聞かないとさ……?」

「私は……いいよ」

 

 

 ……へ?

 

 

「私も……貴嗣に泊りに来てほしい……かな……///」

「「やったー!!」」

「(あら、沙綾ったら……ふふっ)」

 

 

 沙綾の鶴の一声で、俺のお泊り会参加は決定となった。

 

 

 

 

 

 ……ってちょっと待て!! ほんまにええんか!?!?

 

 

 

 

 

 

 

『積極的に行動しないと、周りにすぐ取られちゃうよ?』

 

 

 ……お泊り会、勢いでオッケーしちゃった……

 

 私、なんであんなに焦ってたんだろ……? 

 

 貴嗣と私は友達なのに……

 

 どうしてあんなに胸の奥がざわついたんだろ……?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 翌日。俺達は近くのアミューズメントセンターに来ていた。最近できた施設で、純と紗南ちゃんが行きたいと言ったので満場一致で決まった。

 

 

「2人とも、まずはどこに行きたい?」

「「ボウリング!!」」

「純と紗南、前からボウリング行きたいって言ってたもんね」

「そうだったのか。じゃあ決まりだな。ボウリングの受付をしに行こう」

 

 

 わーい! といって、2人がダッシュでボウリングのブースに向かう。楽しそうな純と紗南ちゃんを見て、思わず顔が緩む。

 

 

「あれ? どうしたの貴嗣?」

「いや、子どもを見守る父親の気持ちが今分かった気がして」

「あははっ! なにそれ! いつからお父さんになったのー?」

 

 

 沙綾も楽しいのか、笑顔で俺の冗談を返してくれる。

 

 

「さあ沙綾、俺達も早く行こう!」

「そうだね……ふふっ、お父さんかと思ったら今度は子ども?」

「久しぶりにボウリングをしたくてさ! 昨日からウズウズしてる!」

 

 

 童心に帰るという言葉もある。楽しむときは、思う存分楽しもう。

 

 先に行った2人に追いつくように、俺達もボウリングのブースに向かった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 それからというものの、俺達はありとあらゆる施設を遊びつくした。

 

 

「ほいっと」

「うおー! 貴兄ちゃんすげえ! えっと、ストライク3回目だから……ターキーだ!」

「イギリスで鍛えられたこの技術……伊達じゃないぜぇ?」

 

 

 ボウリングはもちろん

 

 

 

「そう……そうやって右手をまっすぐ後ろに……そしてパッと離してごらん」

「……! やった、当たった! ねえお姉ちゃん! 当たったよ!」

「すごいね紗南! 真ん中にヒットだね!」

 

 

 アーチェリーをしたり

 

 

 

「きゃあああああっ!!!」

「さ、沙綾……怖いのは分かるけど、そんなにしがみつかれたら俺動けない……」

「うぅ……貴嗣……怖い……」

「あー、よしよし。ほら、もうすぐ出口だよ」

 

 

 お化け屋敷で涼しくなったり

 

 

 

「よっしゃあ140キロォ!」

「貴兄ちゃん! 俺、今当たった!」

「おう! ちゃんと見てたよ! やるなー純!」

「お兄ちゃん、さーなにも教えて!」

「オッケー! 沙綾は……って、それ、動画か?」

「うん! 皆のバッティング、撮っとこうって思ってさ!」

 

 

 バッティングセンターも外せない。

 

 

 他にも、ゲーセン、バドミントン、ダーツ、ビリヤード、釣り、セグウェイ(!?)と、俺達は休日をこれ以上ないほど満喫した。

 

 

「「「「ただいまー!」」」」

 

 

 そして皆で仲良く帰宅。いっぱい遊んだ1日でした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 さて、美味しいご飯もいただき、お風呂も使わせてもらって、いよいよ寝る時間になった今、俺達は布団を敷いて横になっている。はしゃいだのもあって、純と紗南ちゃんは今にも寝てしまいそうだ。

 

 ちなみに布団の位置は純→俺→紗南ちゃん→沙綾となっている。2人とも俺の隣で寝たいと言ってくれたのが幸いだった。流石に付き合ってもいない高校生の男女が隣で寝るのには、色々問題がある。

 

 

「ねえ、貴兄ちゃん……」

「ん?」

「……また今日みたいに遊んでくれる?」

「ああ、もちろん。また行こうな」

「うん……おやすみ貴兄ちゃん……」

「うん。おやすみ」

 

 

「お兄ちゃん、手握ってもいい?」

「もちろん。はい、どうぞ」

「えへへ……お兄ちゃんの手、おっきいね……」

「ありがと。……さあ、もう寝る時間だよ。おやすみ、紗南ちゃん」

「うん、おやすみ……お兄ちゃん」

 

 

 2人とも俺と手を繋いだまま寝てしまった。

 

 今日はいっぱい遊んだもんな。ゆっくり休むんだよ。

 

 

「あっ、2人とも寝ちゃった?」

「ああ。見ての通り、ぐっすりだよ」

 

 

 歯磨きをし終わった沙綾が戻ってきた。いつもと違い髪を下ろしている沙綾を見て、その姿に少しドキッとしてしまう。

 

 それに加えて寝巻だ、いつもしっかりしている沙綾が無防備な姿をしている、そのギャップで心拍数が上がる。

 

 

「……どうしたの? そんなにジーッと見て」

「ああすまん。いつもと雰囲気違うからさ。……髪、下ろしてるのもいいな」

「そう、かな……ありがと……///」

 

 

 嬉しそうに笑う沙綾。はにかみながら頬を赤くしている沙綾がとても可愛くて、自分も顔が熱くなっていくのを感じる。

 

 

「……貴嗣も、髪下ろすと印象変わるね」

「ああ……最近はずっと上げてたからな。変かな?」

「ううん。優しいお兄さんって感じかな。いいと思うよ?」

「そっか……サンキュー」

 

 

 お互いいつもと違う雰囲気に戸惑い、会話も少しぎこちなくなる。

 

 

「ふあぁ~……」

「ふふっ、おおきなあくび。そろそろ私達も寝よっか」

「ああ、賛成。それじゃあ……おやすみ、沙綾」

「うん……おやすみ、貴嗣」

 

 

 恥ずかしながら俺も子どもみたいに全力で遊んだこともあり、相当睡魔が来ている。睡眠欲は人間の三大欲求の1つだ。この強大な力に抗うことは無謀だし、体に悪い。

 

 沙綾におやすみを言ってから力が抜けたのか、糸が切れた人形のように布団に倒れこみ、そのまま深い眠りについた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 パッと、突然目が覚めた。

 

 携帯のロック画面は午前2時を表している。どうしてこんな時間に起きたのだろうかと思いながら、私は部屋を見渡した。

 

 

「……ふふっ、貴嗣の寝顔、可愛い……」

 

 

 紗南を挟んでその向こうで寝ている貴嗣を見る。

 普段のしっかりした姿とは正反対の油断しきった様子に、思わず可愛いとこぼしてしまう。前髪を下ろしているのもあってか、いつもより幼く見える。

 

 隣の紗南はスヤスヤ寝ているし、純は貴嗣の背中に抱き着いて気持ちよさそうに寝ている。

 

 

「(ちょっとお手洗いに行ってこようかな)」

 

 

 気分転換をするために外の空気を吸いに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 お手洗いから帰ってくると、途端に睡魔が襲ってきた。

 

 

「(ふあぁ……急に眠たくなってきちゃった……)」

 

 

 眠たくて頭がボーっとし、暗いせいもあって視界が悪い。ちょうどいいや、この睡魔があるうちに寝ちゃおう。

 

 

 ベッドに入って……うん、なんかすごくあったかい……なんだか妙にあったかい気もするけど、いいよね……。

 

 

 

 

 

 

 

「さ、沙綾……?」

「……あれ……? たか、つぐ……? なんで私の布団に……?」

「いや……ここ俺の布団なんだけど……」

 

 

 えっ……? だって私の右隣は紗南だし……ほら、紗南が私の背中に抱き着いてるし……。

 

 

 ……あれ? 紗南が私の後ろ(・・・・)にいる……?

 

 

 ……ってことは、ここは貴嗣の……!?

 

 

 

 

「……ええっ!?!?」

「シーっ……2人を起こしちゃうよ」

 

 

 貴嗣の人差し指で口を抑えられた。彼はその指を自分の唇に当てて、“静かに”とジェスチャーをする。

 

 ……こ、これって……

 

 

「か、間接キス……///」

「間接……? あ、ああ、すまん。嫌だったよな……?」

「だ、大丈夫……嫌じゃ、ない……///」

 

 

 か、顔が熱い……///

 

 うぅ……ばれてないかな……? でもこの部屋豆電球つけてるから、顔が見えそう……///

 

 

「ごめん貴嗣……紗南が私に抱き着いてるから、動けない……」

「……沙綾もか。俺も純に抱き着かれてるから動けない……」

 

 

 

 

 

『積極的に行動しないと、周りにすぐ取られちゃうよ?』

 

 

 

 

「ね、ねえ貴嗣……」

「ど、どした?」

 

 

 途端に頭に浮かんだ、昨日のおばちゃんの言葉。

 

 私は貴嗣の胸だけを見ながら、とんでもない提案をしちゃった。

 

 

「このまま……寝ちゃう……?///」

「!? おいおい、ちょっと冷静になれ沙綾……! 確かに俺達が動いたら2人を起こしちゃうけど、だからといってそれは――」

「貴嗣は……嫌……?」

 

 

 顔が熱いまま、私は思い切って彼の顔を見た。

 

 

 そしてそこには――

 

 

 

 

「…………嫌じゃ……ないけど……///」

 

 

 真っ赤な顔をした貴嗣がいた。目を逸らして恥ずかしそうにしている貴嗣は、とても新鮮だった。

 

 

「……貴嗣、顔真っ赤だよ?」

「……当たり前だろ? こんな……女の子と添い寝したことなんてないし。こんなん……ドキドキするに決まってるやん……」

「……ドキドキしてるの?」

「そりゃあもちろん……」

 

 

 

 

 

「……じゃあ、確かめてもいい……?///」

「た、確かめる? どうやって……」

「……えいっ」

「!?!? さ、沙綾っ……!?」

 

 

 私は彼の背に手を回し、彼の大きな胸板――心臓があるところに顔を当てた。

 

 貴嗣の言葉を……私でドキドキしているということを確認したくて。

 

 

「……すごい、ほんとにドキドキしてる……///」

「な、なあ沙綾……もうええやろ……? (沙綾……めっちゃ柔らかくて……いい匂いする……)」

「……このままでいたい」

「!?」

「ダメ、かな……?」

「……好きにしてくれ……///」

「ふふっ……やった♪///」

 

 

 やっぱり、昨日のおばちゃんの言葉が頭から離れない。

 

 

 もう今までみたいに貴嗣がうちに来てくれることはない。

 学校では話せるけど、彼にも店の手伝いやアルバイト、それにバンドの練習だってある。

 

 

 今まで傍にいて支えてくれていた貴嗣と一緒に過ごせる時間が減って、どこか遠くに行っちゃいそうな気がして……胸がキュッと締め付けられて……その痛みが嫌で、でもこうやって貴嗣の近くにいるとその感覚は無くなって、むしろ温かくなって……。

 

 

 

 

 あっ……

 

 

 

「……ねえ、貴嗣?」

「ん?」

 

 

 

 そっか……そうだったんだ……

 

 

 

「今日まで貴嗣はずっと傍にいてくれたよね。毎週必ずうちの手伝いに来てくれて、来てくれる日は一緒に下校して、家でご飯食べたり……」

 

「私、本当に楽しかったんだ。私にとって……貴嗣が傍にいてくれることが当たり前になってた」

 

 

 

 私……

 

 

 

「でも……明日からは、今までみたいにうちには来ないんだって……そう思うと、なんだか怖くなっちゃうんだ……」

 

 

 

 貴嗣が遠くにいっちゃうのが怖いんだ……

 

 

 

「沙綾……」

「ご、ごめんね、変なこと言って。気にしな――」

 

 

 言い終わる前に彼の大きな手が私の頭に置かれた。そしてそのまま、貴嗣は私の頭を撫で始めた。

 

 

「――じゃあ、こうしよう」

「えっ?」

「確かにお手伝いは終わったし、ほんとに時々しか店の手伝いはしないだろうけど……代わりに、できるだけパン買いに来る。そうすれば会えるだろ?」

 

 

 ゆっくりと優しく、私の頭を撫でてくれる。

 

 

「L〇NEもあるし、話したかったら電話してきてくれてもいいしさ……っていうか、しよう」

 

 

 

 

 

 

「……俺だって、めっちゃ寂しいんやぞ」

 

 

 

「……!? 貴嗣っ……!!」

「おわっ……」

 

 

 私はギューっと抱きしめる力を強くした。

 

 私と同じ気持ちだったのが、とても嬉しかった。

 

 

「……ありがとう」

「……おう。2度と会えなくなるわけじゃないし、大丈夫だよ」

「うん。……パン、買いにきてね?」

「もちろん。できるだけ毎日、顔出しに来るよ」

「うん。……夜、時々でいいから電話してもいいかな?」

「いいよ。電話しよう」

「……やった♪」

 

 

 貴嗣は撫でている方と反対の手を私の背中側に回して、背中をぽんぽんと優しく叩いてくれた。

 

 完全にお互いが密着している。恥ずかしいけど嬉しい、不思議な感覚。

 

 

 このぽんぽん、安心するなあ……。

 

 

「……頭撫でるの、上手だね」

「それはよかった。うちの犬を永遠撫でてる甲斐があったよ」

「ふふっ、そりゃあ上手になるね。……もう少し、このまま撫でてくれるかな?」

「仰せのままに」

「ありがとう……えへへっ……気持ちいい……///」

 

 

 頭のてっぺんから始まって、後頭部から髪へと手を動かしてくれる。頭の後ろを撫でられるの、気持ちいいな。

 

 

「ふあぁ~……」

「眠くなってきた? 寝てもいいよ」

「うん……おやすみ、貴嗣……これからも……よろしく……ね……」

「ああ……おやすみ、沙綾」

 

 

 貴嗣に頭を撫でられ、彼の温かい体温に包まれながら、私はゆっくりと意識を手放した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 あの日以降、当たり前ではあるけれど、私と彼の関係は変わることは無かった。

 

 

 確かに、前より彼と一緒にいる時間は少なくなった。けれど、いろんな話題でLI〇Eは続いてるし、私から電話をかけるときは必ず出てくれる。

 

 

 貴嗣のそんな優しさに、私は惹かれたんだと思う。

 

 

 彼と話すと胸が温かくなるし、今何してるのかな~と考えたり、返信が来ると嬉しくなったり、逆にいつもより返信が遅いと不安になったり……って、それはわがままだよね。

 

 

 もちろん寂しくなるときもある。けど、それでも大丈夫。

 

 

「いらっしゃいま……って、あっ、貴嗣! 今日も来てくれたんだ!」

「おつかれさま、沙綾。たまご蒸しパンってまだある? バイト前に食べたくてさ」

「ちょうど今出来立てのがあるよ。いつもバイトある日はこの時間帯だから、そこを狙って作っておいたよ!」

「おお! さっすが! いつもありがとな」

 

 

 こうやって貴嗣はいつもの笑顔で、私に会いに来てくれから。

 

 

 

 

 

 ねえ、貴嗣?

 

 この前までは、貴嗣が遠くに行っちゃうみたいで怖かったけど……でも、だからこそ分かったんだ。

 

 

 私ね――

 

 

 

 

 

 

 

 貴嗣のこと、好き。

 




 
 沙綾のお話でした。書いてて超楽しかった。(満足顔)

 ポピパ編と書きながら、ずっと沙綾との話で申し訳ないです……。またこの辺りの解説を活動報告に書くつもりなので、その際はお知らせします。次回からちゃんと他のメンバーと絡ませますので、ご安心を……。

 次は誰との話なのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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