Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
今回は香澄編です。それではどうぞ!
――じゃあ明日ねー!
――今日もバイトだー
――一緒に帰ろうよ~!
――ねえねえ、今日の小テストヤバくなかった~!?
放課後の喜ぶ声が教室中から聞こえるHR終わり。窓から入ってくる風は涼しいが、文化祭が終わったのを境に気温が上がっているようで、制服の上着を着ると、ほんの少しだが暑く感じる。
クラスメイトの声をBGMにして、俺は学校を出るために教科書を鞄に詰め込んでいた。今日はファストフード店のバイトなので、家には帰らず、このままバイト先まで向かう。
今日は松原さんと丸山さんとシフト被ってたっけなと思い出していると、少し遠くの方から名前を呼ばれた。
「貴嗣くーん!」
そんな元気な声がした方を向くと、ギターケースをもった香澄がいた。香澄は俺と目が合うと、嬉しそうに笑ってこちらに駆け寄ってきた。
「今から一緒にギターの練習しようよ!」
「今からか? ポピパのメンバーは?」
「さーやはお店の手伝いで、おたえはバイト、りみりんとありさは用事!」
ほうほう、皆何かしらの用事があるのか。でも――
「ごめん香澄。俺今からバイトなんだ。だから今日は無理かな」
「!? そう、なんだ……そうだよね……貴嗣くんも忙しいもんね……」
香澄は目に見えて元気がなくなり俯く。
「久しぶりに貴嗣くんにギター教えてもらいたかったけど……ごめんね? いきなり誘って……」
青菜に塩とはこのことだろうか。相手が誰であれ、こうやってしょんぼりしている姿を見るのは心が痛い。いつも元気で明るい香澄なら尚更だ。俺はすぐに今週の予定を頭に思い浮かべ、予定が空いている日を探し出した。
「今週の日曜日なら1日空いてるけど、どうだ?」
「日曜日? ……あっ、私も空いてる!」
「その日でいいのなら、練習付き合うよ」
「ほんと!? うん! 日曜日に練習しよっ! 貴嗣くんありがとー!」
一転して満面の笑みになり、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。おいおい香澄さん、そんなことしたら周りの視線を集めてしまうぞ……ってそんなの気にしてないか。
集合時間と場所を決めてから、今日は解散ということになった。
◇◆◇◆
さて、1週間とは案外早いもので、あっという間に日曜日となった。
この間決めた通り、ギターの練習を一緒にするために、俺と香澄は――
「ん~おいひい~!」
――ショッピングモールでお昼を食べていた。
これにはちゃんとした理由があるので説明する。
1時間前まで香澄の家にお邪魔させてもらいギターを教えていたのだが、ある問題が発生した。
『……わわっ!』
『どうした? 大丈夫か?』
『弦が切れちゃった! ど、どうしよ~! おたえに教えてもらったけど、えーとまずは……』
『ちょっと待て香澄。代わりの弦持ってるか?』
『もちろん持って…………あ、あれ、無い! 無くなってる!』
どうやら代わりの弦がなくなるほど練習していたようだ。ちょうど俺も買いたいものがあったので、気分転換も兼ねてこのショッピングモールに来たのだ。ちなみに香澄が欲しかった弦は購入できたので一安心だ。
「このオムライスほんとに美味しいな……そういや最近作ってないな」
「えっ、貴嗣くんオムライス作れるの?」
「ああ。俺料理するのが好きなんだ。弁当も自作だよ」
「あ、あの美味しそうなお弁当が自作……!?」
目を大きく開いて驚く香澄。いつも俺は大河達と一緒に昼食を食べるのだが、この前中庭で食べた時に、香澄達は俺の弁当を見たそうだ。
「俗に言う料理系男子ってやつだねっ! ……でも、なんで料理するようになったの?」
「ああ、それは……真優貴だな」
「真優貴ちゃん?」
料理に興味を持ったきっかけは、妹の真優貴だった。この前も話した通り、真優貴は小学生の頃から芸能活動をしている。仕事の関係で、必然的に家でご飯を食べる時間が少なくなり……特に夕食を現場で食べることが多くなった。
「もちろん現場で美味しいお弁当が配られることもあったんだけど……真優貴は家での料理の方が好きだった。でも父さんと母さんは仕事で忙しくてさ。なら俺が弁当を作って、それを持って行ってもらおうって思ったんだ」
「じゃあ真優貴ちゃんのために料理の練習したってこと?」
「そういうことになるな」
そう言いながら、オムライスを口に運ぶ。卵のふわふわ具合が絶妙だ。
「……うぅ……」
「えっ、香澄どした?」
「貴嗣くん……いいお兄ちゃんすぎるよぉ……私感動しちゃった……」
「はははっ、泣くほどか~? でもありがとな」
香澄は目をウルウルとさせてそう言ってくれた。
純粋な反応を見せてくれる香澄に、思わず笑ってしまった。本当にコロコロと表情が変わるので、そこがとても可愛らしい。
「ねえねえ、今度一緒にお昼ご飯食べようよ! それでお弁当交換しよ!」
「あははっ、いいよ。何かリクエストとかある? 大抵のものは作れるけど」
「玉子焼き! 最近はまってるんだー!」
ポピパの皆とお昼を食べることになった俺。また大河と穂乃花、花蓮にも連絡しておかないとだな。
「あっ、皆から返信来たよ! 皆楽しみにしてるだって!」
「ねえやっぱ行動速すぎん?」
「あと、オムライス食べてる貴嗣くん可愛いって!」
「それはうれし…………んん??」
えっ……なんで皆俺がオムライス食べてること知ってるの?
「あっ、今おたえが何か……って、ふふっ……! 何、これ……あははっ……!!」
香澄が急に笑い始めた。スマホの画面を見て、必死に笑いを堪えている。
「ねえ貴嗣くん……ふふっ……! おたえのこれ見て……」
「……なんやこれ一体……」
トーク画面にあったのは、香澄が張り付けた写真をおたえが編集したものだろうか……俺が頭にうさ耳のカチューシャのようなものを付けながらオムライスを食べているという、とんでもないコラ画像だった。
マジで全く似合っておらず、皆もツボに入ったのか、トーク画面も阿鼻叫喚だ。ピコンピコンと通知音が止まない。
「おいおい、俺はフリー素材じゃないんだぞ?」
「あはは! ……ご、ごめんねっ……悪気があってやったわけじゃ……ふふっ……!」
「……まあ、香澄がそんなに楽しそうならいいや」
そう言い終わると同時に俺のスマホが震えた。
「(通知か……ん? 沙綾から?)」
Saya〈香澄と2人で食べてるの?〉
山城貴嗣〈ああ 丁度用事あってさ〉
山城貴嗣〈このあと服を見に行ってからまた練習するつもり〉
Saya〈そうなんだ! 練習か!〉
Saya〈あのさ、良かったら今度一緒に服見に行かない?〉
山城貴嗣〈いいね! いこいこー〉
山城貴嗣〈あっ、そろそろ移動するから、また後で連絡するわー〉
メッセージを打ってスマホの電源を切る。……沙綾って何着ても合いそうだな。
「さあ、そろそろ行こうか。ちょっとばかり付き合ってくれ」
「うん! もちろん! 貴嗣くんと服見るの楽しみ!」
香澄の了承を得たことで、俺達はフードコートを後にした。
◇◆◇◆
それからは買い物タイム。
「おお~七分丈似合うね!」
「そうかな? じゃあ買おうかな。青色のシャツって持ってなかったし。ありがとな」
「えへへ~どういたしまして!」
涼しめの七分丈のシャツと、内側に着るTシャツ(今回は白)を選んでもらったり
「香澄、この帽子とか良いんじゃないか?」
「ほんと? ……わあ~! ほんとだ! 可愛い!」
「ちょっとかぶってみなよ、ほら……おっ、いいじゃん。似合ってるよ」
「やったー! じゃあこれ買ってくるね!」
「お、おう(……即決でいいのか?)」
帽子屋さんに寄ったり
「おまたせーって、それ、ギターのスコアか?」
「うん! 前から欲しいなって思ってたんだー! 貴嗣くんのは?」
「恋愛小説。最近はまっててさ」
本屋さんで色々見たり
「おお……これが例の『プリ〇ラ』という機械か……」
「あれ? プ〇クラやったことないの?」
「ああ……イギリスには無くてさ……実際に見るのは初めてかな」
「えーそうなんだ!? じゃあよかった! 早く撮ろっ!」
2人でプリク〇を撮ったりと、俺達はショッピングモールを満喫した。
……機械の中が結構狭く、香澄がくっついてくるのもあって、少し顔の温度が高くなったのは内緒だ。
◇◆◇◆
香澄の家に戻り、ギターの弦を張り替えて練習再開。
香澄の腕前は前よりも遥かに上達している。文化祭でライブを経験したことで自信がついたのか、香澄の出す音はとても活き活きしており、“ギターを弾くのが楽しい!”という感情が伝わってくる。
「(……こんなに上手くなってたんだな)」
練習を手伝うといった俺だが、ここ最近は全くと言っていいほど参加できていなかった。
言い訳といえばそれまでなのだが、自分のバンド練習、やまぶきベーカリーの手伝い、アルバイト、文化祭の準備etc……どうしても忙しくなってしまい、香澄のギターを見ることがあまりできなかった。
だからだろうか、以前と比べて別人のよう感じてしまう。
「――最近練習見れてなくて、ごめんな」
「えっ!? 急にどうしたの!?」
「手伝うって言っときながらできてないなーと思ってさ。……ほんと、上手になったな」
「ありがと! だって、貴嗣くんと一緒に歌いたいから!」
そうだよな、初めて一緒に練習した日の夜に約束したもんな。
「そのために、もっともっとギター上手くなりたい! だから貴嗣くん!」
ぐいっと俺の前に乗り出す香澄。そして真っ直ぐ俺を見つめて言った。
「これからもギター教えて! 時間があるときでいいから!」
「――ああ。できるだけ予定を合わせられるようにする。約束する」
「やったあ!」
香澄は嬉しかったのかぴょんと跳ねようとした。
だが、それがまずかった。
「……わわっ!?」
前のめりの状態で無理やり跳ぼうとするとどうなるか、その答えは難しくない。
バターン!! という衝撃音が家中に響き渡った。
「あっぶねえ……大丈夫か……香澄?」
「う、うん…………あっ……」
香澄はバランスを崩してしまい、俺に飛び込むような形になってしまった。
俺は咄嗟に香澄を受け止めて、武道で習う後ろ受け身のように、背中を丸めて可能な限り衝撃を逃がし、そのまま俺は仰向けに倒れこんだ。
「どうした香……澄……」
反射的に
当然だ。俺は香澄を受け止めたのだから。少し考えればこうなることは予想できるし、何も焦ることではない。
だが人間とは不思議な生き物だ。想定外のことが起こると、頭では分かっていても、存外にポンコツになってしまう。
目の前に、あと数ミリ近づけば鼻が当たる距離に香澄の顔がある。その事実だけで、俺の思考は麻痺してしまった。
「……///」
香澄の顔は徐々に赤くなっていく。それは俺も例外ではなく、顔に上っていく血の量が増していくのが分かる。いつもの元気一杯で常に笑顔の彼女とは違う、恥ずかしそうに照れているその姿に、どうも俺の頭はやられてしまったらしい。
整った顔立ちは、美少女といって間違いないだろう。アメジストのような紫の瞳は、彼女の純粋さを表すかのように透き通っており、思わず見つめてしまう。
パサっと、俺の頬に茶髪がかかる。それと同時にフワッといい匂いが広がる。女の子特有の甘い香りは、追い打ちとしては十分であった。
「……///」
「(か、香澄……? なんで離れないんだ……?)」
心なしか抱きしめる力が強くなった。柔らかい感触が俺の体を包み込み、普段は意識していない香澄のスタイルの良さが、問答無用で脳裏に焼き付く。
普通ならすぐに離れるはずだが、香澄はジッと俺を見つめたまま動かない。それどころか、少しずつ顔を近づけてくる。
本来ならここは止めるべきなのだろう。無論俺もそうしたいのだが、体が動かない。
このままでいろ、ほら、この子は満更じゃないみたいだぞ? ――頭の中の悪魔がそう呟く。
ああ、もうちょっとで唇がくっついてしまう。
これがファーストキスか、案外あっけないものだなと、だが香澄が望んでいることなら致し方無しだと思い、ついに意識を手放し――
「お姉ちゃんどうしたの? すごい音した……け……ど……」
ガチャっと音が鳴りドアが開く。中学生くらいだろうか、香澄とよく似た子が立っていた。
「おおおおお姉ちゃん……!? 一体何して……!?」
「……!! ち、違うの
「お、男の人と部屋で……ふふふ、2人きりで……!」
わなわなと声を震わせ、その“あっちゃん”という子の顔が、見る見る内に赤くなっていく。
「な、なな……何してるのおおお!?!?///」
……まあ、そりゃそうなるわな。
◇◆◇◆
「……本当にごめんなさい(土下座)」
「い、いえいえ! 事情は分かりましたから!」
「切腹以外ならどんなことでもいたします……逆さ吊りの刑でもむち打ちの刑でも喜んでいたします……なのでどうかお慈悲を……」
「い、いやいや! 本当に大丈夫ですから……!! お姉ちゃんを守ってくれたんですし、むしろ私が感謝をするべきであって……(っていうか逆さ吊りとかむち打ちって何!? 私どんな人だと思われてるの!?)」
まさか土下座をする日がくるなんて思ってもみなかった。
あのあとすぐにこの子――香澄の妹さんである“明日香ちゃん”に状況を説明、すぐに疑いは晴れた。
大きな物音がして心配になり見に来たら、自分のお姉ちゃんが見知らぬ男と抱き合ってる……下手なホラー映画よりも怖いし、びっくりするのが当たり前だ。
「……あれ?」
「…………なんでしょうか?」
「あの、顔を上げてくれませんか……?」
言われた通りに土下座の姿勢のまま顔だけ上げる。傍から見ればカエルの如し、なんとまあ間抜けな絵面だろうか。
「(……えっ、うそ……)」
「?」
「あ、あの……! ……もしかして……Silver Liningのギターボーカルの方ですか……!?」
「(きゅ、急にどうした?) ……はい……Silver Liningでギターボーカルやらせてもらってる……山城貴嗣です」
そうか……この前の文化祭ライブの映像や写真、色んな人がSNSに投稿してくれていたらしいから、別に知っててもおかしくはないのか。
「ほ、ほんとにあの山城貴嗣さんなんですか……!?」
「ええ……一応そのはずなんですけど……」
カエルの格好のまま、顔だけを明日香ちゃんに向けて話をする。絵面が酷過ぎる。
「あ、あのっ!」
「は、はい……?」
「もしよろしければ……サインくれませんか!?」
「……へ?」
戸山家のリビング。テーブル席に座らせてもらい、ボールペンで自分の名前を、明日香ちゃんのノートに筆記体で書く。
「これでいいかな?」
「は、はい……!! あ、ありがとうございます……!! わぁ……ほ、ほんとにサイン貰っちゃった……友達に自慢しちゃおっと……!」
ノートを見ながら、嬉しそうにニヤニヤしている明日香ちゃん。
ジャパニーズ土下座
どうやらこちらの明日香ちゃん、たまたま俺達のライブを見に来てくれていたらしいのだ。体育館での俺達の演奏をとても気に入ってくれたみたいで、ライブを見た感想を楽しそうに話してくれた。
「……なんか実感ないな。そんなに色んな人が……その、俺達のファンだって」
「もうすごいんですよ? 個々の演奏技術が物凄く高い上に、完全に音が調和している……とんでもないバンドが現れたーって、今山城さん達はとても注目されているんです」
明日香ちゃんが話してくれて初めて知ったのだが、我らがSilver Lining、SNSを通して今かなり注目されているとのこと。
めっちゃすごい腕前のバンドが現れたと……えーとなんて言ってたっけ……そう、
「特にギターボーカルの山城さんと、ベースの須賀さんが人気なんですよ?」
「えっ、マジで?」
「はい。この辺りは元々女子高ばっかりだったので……男性と接点がないところに、あんなかっこいいパフォーマンスを見せられたら……って感じです」
「ほえ~。そっか、確かに共学になったの今年からだもんな」
「はい。私の学校も今年から共学になったばかりなので。……ちなみ私達の間では、山城さん推しと須賀さん推しで、分かれていたりするんですよ」
先ほど明日香ちゃんが淹れてくれたお茶を飲んでいると、ふとある疑問が思い浮かんだ。
「明日香ちゃんはどっち派なの?」
「えっ!? ……わ、私ですか……?」
突然の質問に、見るからに明日香ちゃんは焦り始める。目が泳ぎまくっている。ちょっと意地悪な質問だったので、すぐに声を掛ける。
「ごめんごめん、ちょっとからかいたくなっちゃってさ。気にしな――」
「…………城さんです」
……ん?
「……私の推しは……山城さん……です……///」
顔を赤くして、目を逸らしつつも答えてくれた。指先を胸の前で弄っている姿が愛らしい。
「ギターがとても上手だし……その……声が好きで……///」
「わおマジか。ありがとね。そう言ってくれると嬉しいよ」
明日香ちゃんはすごく真剣に答えてくれた。それが嬉しくて、俺も笑顔になる。
「あと俺のことは貴嗣でいいよ。皆にもそう呼ばれてるし」
「えっ……!? そ、そんな……いいんですか……?」
「もちろん」
「あ、ありがとう……ございます……た、貴嗣……さん……///」
「(そんな照れんでもええのに)」
そう思ったものの、憧れ(?)の人に会えて、しかも名前で呼んでもいいよと言われたら……そりゃあ照れるか。
「そんなに色んな人から注目してもらえているとは……今初めて知ったよ」
「……意外です。花咲川の人達は、皆イ〇スタとかにライブの様子をあげていたので」
「恥ずかしながらね……俺、あんまSNS見ないからさ」
SNSとなると、友達とLIN〇で話するくらいだ。
「そうなんですね。……そうだ! これを機に公式のアカウントを作ってみるのはどうですか? そこから情報を発信して、もっと知名度をあげるんです」
「おおーありだな。てか、名案だ。うん、絶対それ面白い。メンバーにも相談してみるよ。ありがとうね、明日香ちゃん」
「……!! は、はい! (今の笑った顔……かっこよかった……)」
公式アカウントか……こういうの俺得意じゃないし、だれが適任だろうか。
やはり穂乃花だろうか。確かイ〇スタのフォロワー数多かったし。今度相談してみよう。
……って、ん?
「むぅ~……」
「どうした香澄? 服の袖引っ張って」
「むぅ~……あっちゃんとばっかり話してずるい! 私とも喋ってよ!」
「(お姉ちゃん……?)」
どうやらほったらかしにされたことが嫌だったらしい。明日香ちゃんに説明してたときなんて顔が真っ赤だったのに、今ではもういつも通りの香澄だ。
「貴嗣くん! 私をほったらかしたバツとして、今日はうちで晩御飯食べていって!」
「それ罰っていうかご褒美なんじゃ……ってかごめん。今日は家族で外食する予定なんだ」
「え~!」
「ちなみにそろそろ家に帰らないとやばい」
「やっ! まだもうちょっといて!」
「やっ! って……子どもじゃあるまいし……っていてて、ちょ、引っ張らないでくれー」
「むー! さっきまであっちゃんと話してたじゃーん! 私も貴嗣くんと話したいのー!」
「うわちょ……」
席を立とうとする俺を阻止するために、俺の腕に抱き着いてきた香澄。その柔らかい感触で、ついさっきの抱き着き事件のことを思い出してしまう。
やだやだ行かないでー! と言って、香澄は俺の腕に抱き着きながら暴れている。香澄のスタイルの良さと甘い香りに惑わされながらも、俺は香澄に話しかける。
「じゃあ今日は夜電話するっていうのは?」
「電話!? いいの!?」
「ああ。12時までだったら――」
「やったー! 貴嗣くんと電話~♪」
俺が言い終わる前に、香澄は嬉しそうな反応を見せる。そんな香澄を見て、前に座っていた明日香ちゃんがため息をつく。
「お姉ちゃん……貴嗣さんの話聞いてあげて……」
「ははは……まあ、香澄らしいけどな……」
明日香ちゃんと目を合わせ、2人で笑う。明日香ちゃんも、毎日振り回されているのかもしれない。
「約束だからね!?」
「おう。だから俺の腕を放してもらってもいいか?」
「あっ……!! ご、ごめん……///」
「今更照れるんか」
「だ、だって……その……///」
「その~?」
「うぅ……貴嗣くんのいじわる……///」
「さっきのお返しだ」
予想通りの反応を見せてくれる香澄に、思わず笑いをこぼしてしまう。
ギターの練習をしていたら弦は切れるし、ショッピングモールで色々遊んで、また練習をしていたら今度はキスしかけるし、そこを明日香ちゃんに見られるし、香澄は帰してくれないし……ほんと、ドタバタな1日だった。
けど、めっちゃ楽しかったよ。
ありがとな、香澄。やっぱ香澄といると、俺も笑えて楽しいよ。
さあ、明日はポピパの皆とお昼ご飯だ。美味しい卵焼きを作っていけるように頑張ろう。
ありがとうございました。香澄のお話でした。
「なんか今回の貴嗣チャラくね……?」と編集しながら思っていました。香澄っていうか戸山姉妹を落としにいってるみたいやないか……(小声)
そして明日なのですが、1日予定が入っているので、次回は明後日の月曜日に投稿いたします。
それではまた次回もよろしくお願いいたします。
ハロハピでのあなたの推しは?
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弦巻こころ
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瀬田薫
-
北沢はぐみ
-
松原花音
-
奥沢美咲