Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 今回はたえ編です。おたえの独特のペースを表現できたか不安ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。

 それではどうぞ!


第13話 美少女の照れ顔は、やっぱりずるい

 

 

 トコトコトコっと短い脚を一生懸命動かして、俺との散歩を楽しんでくれているのは、我が家の愛犬ホープ。時折俺のほうをみてニパっと笑うホープを見て、「犬は生物学的に笑うことはない」という研究成果が嘘のように思えてくる。

 

 

「ふ~んふふ~ん~♪ ……おっ? なんだこの店……ウサギのペットショップ?」

 

 

 鼻歌を歌いながら散歩をしていると、ウサギの看板を掲げたペットショップが現れた。窓から店の中を見ると、可愛らしいウサギさん達がたくさんいるではないか。

 

 どうやらペットも同伴可能らしい。折角なので、俺はお店に入ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~……か、かわええ……」

 

 

 思わず声が漏れてしまう。

 丸々とした体、クリクリの目、長い耳……可愛い以外の何物でもないだろう。ホープも興味津々だ、ガラス越しではあるものの、クンクンと臭いを嗅ごうとしている。

 

 

「あれ? 貴嗣だ」

 

 

 ガラス越しにウサギたちを眺めていると、聞いたことのある声に名前を呼ばれた。

 

 振り向くと、腰まで届く綺麗な黒髪と、落ち着いた雰囲気をもつ女の子がいた。その性格を知らない人からすると、“大和撫子”や“クールビューティー”という言葉を連想させる、あの天然少女だ。

 

 

「……おたえ?」

「うん。やっほー。こんなところにいるなんて珍しいね」

「ああ。愛犬と散歩中にたまたま前を通って、そのまま入っちまったんだ。……ほら、ウサギが可愛すぎてさ」

「そうなんだ。……わあっ、ほんとだ、可愛いワンちゃん。なんて名前なの?」

ホープ(希望)だよ。ミニチュアダックスフンドの2歳で……おっ? どうしたホープ?」

 

 

 俺に抱っこされていたホープは、そのつぶらな瞳でおたえを見つめた後、俺に何かを伝えるように、ちょいちょいと前足を出して甘えてきた。

 

 

 ふむふむ……ほうほう……おーなるほど~!

 

 

「ホープ君、なんて言ってるの?」

「おたえと仲良くなりたいんだって。よかったら撫でてあげてくれる?」

「もちろん。……わあっ、毛並み気持ちいいね。オっちゃんみたい」

 

 

 俺に抱っこされたままおたえに撫でられるホープ。気持ちよさそうに目を細めている。こんな美少女に撫でられるなんて、よかったな~ホープ。

 

 ホープを撫でてくれているその様子を見て、おたえは本当に綺麗な女の子だと感じた。実は入学式の日、初めておたえをクラスで見た時は、「この人モデルさんなのだろうか?」と勝手に思い込んでいたくらいだ。

 

 おたえとはフォークダンスでも踊ったし、ポピパの練習にも行ったことがあるので、全然普通に話せる。でも大河や穂乃花、花蓮のように常に一緒にいるわけでもないので、意外にも、おたえがどんな女の子なのかをあまり知らない自分がいた。

 

 折角ここで会えたんだし、もっと会話をしたいと思った俺は、何かいい話題は無いかと考えたところ、先程の会話の中に出てきた“オっちゃん”というワードを思いだした。

 

 

「そういえば……オッちゃん? って何だ? おたえの家にも犬いるの?」

「ううん。オッちゃんはウサギだよ」

「おお、ウサギ」

「うん。うちウサギ飼ってるんだ。20羽」

「に、20羽!?」

「いっぱいいるよ。ちょっと待ってね、写真見せるよ」

「どれどれ……おおっ! 可愛い! すげえ! なんだこの可愛さは!?」

 

 

 おたえが見せてくれた写真に、俺は興奮を抑えられなかった。

 ご飯を食べていたり、おたえの膝の上でお昼寝をしていたり、部屋で大運動会をしていたり……そのほのぼのとした写真達に、柄にもなく騒いでしまった。

 

 

「あっ……す、すまん。1人で騒いじまった……」

「大丈夫だよ。貴嗣、動物好きなんだね」

 

 

 おたえはニコッと笑ってそう言ってくれた。その笑顔からは、とても嬉しそうな気持が伝わってきた。

 

 

「ああ。基本動物なら何でも好きだよ……それにしても、ほんと可愛いな……実際に触ってみたくなるよ」

 

 

 今までウサギと触れ合ったことは一度も無い。ついこの間までいたイギリスは、かのピーターラ〇ットが生まれた国なのだが……どうしてだろうか?

 

 

「おたえのうちには20羽もいるんだろ? モフモフに囲まれて皆と遊ぶとか……実際にやってみたいよ」

「じゃあ、うちに来なよ」

「マジで!? じゃあ行かせて…………えっ、おたえ今なんて?」

 

 

 勢いで言葉が出そうになったが、寸前のところで何故か冷静さが勝り、間抜けな声で聞き返してしまった。

 

 

 

 

 

「うちに遊びに来てよ。私と一緒に、オッちゃん達と遊ぼうよ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「お邪魔します」

「いらっしゃい。どうぞ上がって」

 

 

 休日。断る理由もなかったし、俺としてもウサギと戯れたかったので、おたえの家にお邪魔させてもらった。

 

 玄関で靴を脱いでいる最中に、ガチャっとリビングのドアが開き、これまた綺麗な女性が現れた。おたえのお姉さんだろうか?

 

 

「はじめまして。山城貴嗣です。本日はお招きいただきありがとうございます」

「あら、ご丁寧にどうも。たえから話は聞いています。今日はゆっくりしていってね」

「はい! ありがとうございます」

「じゃあリビングに荷物置きに行こうか。貴嗣、こっちだよ」

「オッちゃん達を連れてくるね」

「うん。ありがとうお母さん(・・・・)

 

 

 …………お母さん!?

 

 

「……マジで?」

「あら、どうかした?」

「いえ……すみません……てっきりその……たえさんのお姉様かと……」

「うふふ、ありがとう。お世辞でもうれしいわ」

 

 

 そう笑って答えてくれる、たえのお母様。正直まだ頭の整理が追い付いていない。

 

 

「あはは……お世辞とかじゃなくて、本当にお綺麗ですよ」

「うん。そうだお母さん、今度高校の制服着てみようよ」

「あらいいわね。少し恥ずかしいけど、たえと並んで姉妹コーデも良いわね」

「それで2人で一緒に写真を撮って、高校生に見えるか貴嗣に判定してもらおうよ」

「名案ね! 貴嗣君、そのときはよろしくね?」

「は、はい……」

 

 

 家に来て3分ほど、未だ玄関でこの会話が繰り広げられていることに、驚きを隠せない。

 

 前にも言った通り、俺はおたえのことをあまり知らない。綺麗な女の子で、マイペースな性格だとしか思っていなかった。だがそのマイペースさがどれほどのものか、俺はまだ完全に理解していなかったのである。

 

 そして予想外だったのが、おたえのお姉……じゃなかった、お母様の存在だ。まさかのおたえと同じ性格である。

 

 

「(此の親にして此の子あり……ってやつか)」

 

 

 天然マイペースの人間が2人以上集まってしまうとどうなるか? 彼らおよび彼女らだけの世界が構築される。絶対不可侵の領域の出来上がりだ。今回は花園ワールドといったところだろうか?

 

 

 そう、俺は花園家という名の城に迷い込んだ、無知でか弱き存在。無事に生きて出られるだろうか?

 

 

 

 

 

 ところでおたえのお母様の制服姿……一体どんな感じなんやろか?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 玄関で強烈な衝撃と洗礼を受けた後、俺はおたえにリビングに連れて行ってもらい、オっちゃんを始めとしたウサギ達と戯れていた。

 

 

「ほら、おいで~」

 

 

 おたえから貰った餌を使って、まずは危険な存在ではないということを彼らに教える。警戒心を解くためだ。

 

 

 基本的に動物というのは、自分の知らない人物に対しては、大なり小なり“警戒”する。その子の性格にもよるが、こっちは仲良くなりたいのに向こうは近づいてきてくれない(離れてしまう)という経験をした人もいるだろう。

 

 

 もし仲良くなりたいときは、まずはリラックスし、向こうから近寄ってくるまでは何もしないで、目を合わさずにじっと待つことが大事だ。意外と効果があるのは、「飼い主と仲良くしているのを見せる」ことだ。これが結構効果的で、警戒心が解けるのか、自分から近づいてきてくれることが多い。

 

 

「ははっ、そう、おたべ。……あっ、手の匂い嗅いでくれてる」

「さすが貴嗣、慣れてるね。皆集まってきたよ」

「ほんとだ。皆俺の手嗅ぎまくってる」

 

 

 色んな方法を試して近づいてきてくれたら、においを嗅がせよう。その際に急に姿勢を変えたりしたら、驚かせてしまうのでダメだ。

 

 

「ほんとウサギって可愛いな……あっ、また来てくれた。ほら、お近づきの印に……おたべ~」

「……おたべ……」

「ん? おたえ、どうした?」

 

 

 おたえは俺の言葉を復唱しながら、何か考え事を始めた。そして何か思いついたのか、ゆっくりと言葉を発した。

 

 

 

 

 

「……おたえを、おたべ……?」

「(……はい?)」

 

 

 まずい、さっきまで楽しく2人+20羽で遊ぶことができていたのに、おたえの天然スイッチを押してしまった。

 

 

 おたえがこうなるということは……やばい、早く何でもいいから反応をしないと――

 

 

「あら貴嗣君、たえのこと食べちゃうつもりなの?」

「すいませんそんなこと一言も言ってないです」

 

 

 やっぱりだめでした。

 

 

「貴嗣に……食べられる……きゃっ///」

「ええ……」

「あらあら、たえは満更じゃないみたいね~。お母さんは邪魔かな? お望みなら、今日は2人きりにしてあげるわよ?」

「マッハで家帰ります」

「……貴嗣……私じゃダメ?……///」

「ねえなんか変なものでも食べた? ウサギの餌食べたりしてない?」

「ウサギの餌なら食べたよ?」

「」

「キャベツだよ」

「……ああ、キャベツね……」

 

 

 ちょっと花園ワールドヤバすぎんよ~。

 

 それにしても、おたえが照れている姿を初めて見た。もちろんジョークなので本気ではないだろうが……天然な性格故に、こういった恥じらいや照れといった感情とは無縁だと勝手に思い込んでいた。

 

 そのギャップに加え、モデルのような端整な顔立ちだ。おたえが可愛らしく照れている様子は、ものすごくグッとくるものがあった。

 

 

「どうしたの? そんなに私の顔見つめて」

「ああ、おたえはモデルさんみたいだなって思ってさ。身長高いし、顔が整ってるし」

「そうかな?」

「ああ」

「じゃあ……私は綺麗ってこと?」

「そう思うよ」

「そっか……ふふっ♪ ありがと」

 

 

 おたえは嬉しそうに笑う。その独特の性格が注目されがちだが、こうやって話していると、素直で純粋な部分も強く感じる。

 

 そんな話をしながらも、俺達はウサギと遊んでいる。ふと、俺に体をくっつけていた子が、器用にぴょんと跳んで、俺の膝に乗っかってきた。

 

 

「オッちゃん達、貴嗣のこと好きみたい」

「まじか。やった。俺も皆が好きだぞー」

 

 

 俺の膝に乗っているオッドアイのオッちゃん。一番初めに俺に懐いてくれた子だ。ほら、もうこうやって撫でさせてくれるし、オッちゃんも目を細めて気持ちよさそうだ。

 

 他の子たちも俺に体をくっつけてくれていたり、肩や頭によじ登ったり……って、おっほう、俺の耳は食べ物じゃないぞ~……あ、ちょっ、やめ、俺耳敏感なんや……。

 

 

「貴嗣、やっぱり優しいね」

「急にどうした?」

「皆そう言ってるからさ。前から私も親切な人だなーとは思ってたけど、やっぱり本物だね」

「そっか。ありがとな」

「うん」

 

 

 突然おたえからお褒めの言葉をいただいた。

 

 おたえも言っていたが、動物たちの言葉(?)に嘘はないと思う。俺もホープと一緒に過ごしていて思うのだが、動物たちはストレートに気持ちを表現する。もちろん言語は話せないけど、表情や声、動きなどで一生懸命伝えてくれる。

 

 

「おたえも優しい人だよ。この子たちから、おたえの愛情を感じるよ。大事にされてるんだなーって」

「ふふっ。ありがとね。優しいって言われたのあんまりないかも」

「そうなのか? じゃあ普段なんて言われてるんだ?」

「うーん……天然?」

「あははっ、こりゃまた直球だな。市ヶ谷さんとかに言われたり?」

「当たり。昨日も有咲に言われたかな。『天然すぎてほんとついていけねえー!』って」

 

 

 それを聞いて、頭を抱えながら悶絶している市ヶ谷さんが思い浮かぶ。

 

 

「なんか想像できるわ。そん時ってもしかしたら、香澄と一緒に居たんじゃない?」

「すごい。正解だよ。さてはエスパー?」

「どうだろ? 実は魔術師だったり?」

「貴嗣が魔術師……ウォーロック・タカツグだね」

「おお。なんかそれっぽい」

 

 

 不思議なことに、俺はおたえのノリに順応しつつあった。確かに時折とんでもない発言が出てくるが、思い切ってそれにノッてみるとこれがかなり面白い。長時間一緒にいるのに加え、ウサギを愛でるという感動を共有しているためか、俺はおたえとの会話を楽しく思うようになってきた。

 

 

「私、貴嗣と話すの楽しいよ」

「そうか。それは嬉しいな」

「ちゃんと話最後まで聞いてくれるし、反応してくれるから、つい話しちゃう。貴嗣って聞き上手だよね。ポイント高いよ」

「ポイント?」

「うん。女の子からモテるポイント。女の子は話するの好きだから、聞き上手な人といると楽しいんだ」

「ほうほう。それがモテるポイントとな」

「そう。あと私的にポイント高いのは、動物好きかな。私は動物好きな人が好き」

「……そっか。ありがとな」

 

 

 今日おたえと過ごして1つ分かったことがある。それは、おたえという女の子は気持ちをストレートに表現するということだ。好きなものは好き。ごまかすことも、遠回しな表現を使うことなく、思ったことをそのまま相手に伝える。

 

 かといって空気が読めないのかというとそうではない。むしろ相手のことをしっかり見て、言って良いことと、そうでないことの区別はしっかりつけている。

 

 自分をしっかり持ちつつ相手のことを考えられる、素敵な子だ。

 

 

「素敵だな」

「素敵?」

「ああ。おたえは素敵な女の子だよ」

「素敵……。良いね。素敵って言われたのは初めて」

「いい言葉だろ?」

「うん。やっぱり貴嗣と話すの楽しい。――貴嗣、いつ帰る?」

 

 

 ウサギを撫でながら、おたえは俺に聞いてきた。腕時計を見て、今何時かを確認する。

 

 

「そうだなあ~……今4時前だから、夕方の5時くらいには帰ろうかな」

「そっか。よかった」

「?」

 

 

 俺がそう答えると、おたえは優しく微笑んだ。

 

 

「もうちょっと、お話しよ?」

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 ウサギたちと触れ合って、おたえと一杯話せた今日。あの後おたえが「そうだ、今度一緒にギターの練習しようよ」と誘ってくれたので、その日程を決めて今日はお開きとなった。

 

 最初は花園ワールドに振り回されたが、今となってはもう慣れたし、むしろ楽しい。両生類が爬虫類に進化する際に鱗を手に入れ、陸地の乾燥という環境に適応したように、俺もこの空間にある程度適応できたようだ。

 

 

「本日はありがとうございました」

「こちらこそ。またいつでも来てね」

「はい。ありがとうございます」

 

 

 おたえのお母さんに挨拶をする。ここだけ見ると、普通のお母さんなのが驚きだ。若いし綺麗だしでビックリした。あれで母はずるいと思う。

 

 

「貴嗣。見送っていくよ」

「いいのか? ありがとう」

 

 

 

 

 

 靴を履き、おたえと一緒に家の前まで行く。来るときも思ったが、最近ちょっと暑くなってきた。

 

 

「今日は誘ってくれてありがとう。すっごい楽しかったよ」

「こちらこそ。また遊びにきてね」

「そうさせてもらうよ。次は一緒に練習だな。――じゃあ、また学校で」

「うん。またね。――あっ、貴嗣。ちょっと待って」

 

 

 帰ろうとしたところを、おたえに呼び止められる。

 

 

「? どうし――」

 

 

 言い終わる前に、おたえの顔が俺の耳元に来た。

 

 

 

 

 

「素敵な子って言ってくれてありがとう。すごくうれしかった。貴嗣のそういうところ、好きだよ」(耳元ウィスパーボイス)

「……!?」

 

 

 ストレートな感謝と好意。

 

 もちろん友情の類ではあるが、不意打ちで、かつ弱点である耳元で囁かれたことで、一気に血流が早くなった。

 

 

 

 そしてなにより――

 

 

 

 

 

「……///」

 

 

 

 

 

 手を後ろに回して、顔を少し赤らめているおたえが、とても可愛かった。

 

 

 美少女の照れ顔は、やっぱりずるい。

 

 

 

 

「お、おたえ……?///」

「……ふふっ///」

 

 

 

 スッと離れ、正面に立つおたえ。

 

 そして身長差から来る、反則レベルの上目遣いで俺を見つめながらこう言った。

 

 

 

「バイバイ貴嗣。また明日」

 




 読んでいただき、ありがとうございました。おたえのお話でした。

 昨日は投稿ができなかったのですが、それでも色んな方がアクセスしてくれて、とても嬉しい気持ちになりました。本当に励みになります!

 さて、残すところ、まだ書いていないポピパのメンバーは有咲とりみになりました。次はどちらの話なのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。

 それではまた次回もよろしくお願いいたします。

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