Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 今回はりみ編です。映画好きの方にとっては、ちょっとニヤリとできる部分があるかも……? それではどうぞ!


第14話 趣味が合うと距離一気に近づくやつ

 

 

「ふむふむ……おっ、このホラー映画もうレンタルしてたのか。どれどれ~」

 

 

 レンタルDVDのパッケージの裏を見て、ストーリーはもちろん、監督や出演してる俳優女優さんもくまなくチェックする。ホラー映画の場合はそれらに加えて美術スタッフの欄も見る。映画の中に出てくる異形達のビジュアルを現実世界に召喚するのは、彼らの手腕があってこそだ。

 

 

 有名なクリエイター達に尊敬の念を込めて「○○の魔術師」というあだ名がつけられることもあるが、恐らくそれは正しい。

 ゾンビや狼男、吸血鬼や宇宙人。今まで無数のキャラクターが誕生してきたが、常人の発想では作れないものばかりだ。やはり彼らは発想力・想像力において頭一つ抜けているのだろう、まさしく魔術師だ。

 

 

「(やっぱレンタルショップ最高やで)」

 

 

 父の影響で幼い頃から映画……特に洋画が好きな僕は、今みたいに頻繁に映画を借りてくる。毎週必ず観ると決めており、何ならさっきまで映画館でホラー映画を見ていたところだ。

 

 

 読書好きにとっての本屋さんがそうであるように、レンタルショップは映画好きにとっての楽園(エデン)であろう。どれを借りようかと悩むのすら至福のひと時である。

 

 

「……あれ?」

 

 

 DVDのケースに手を伸ばしていたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。その優しそうな声がした方を向くと、黒髪のボブヘアが印象的なあの子が、俺のすぐ近くにいた。

 

 

「ありゃ、牛込さんだ。お疲れー」

「お疲れ様。山城君も映画借りに来たの?」

「そうそう。そろそろ暑くなってくるし、この辺りでホラー映画を数本ね」

 

 

 ポピパのベーシストである牛込さんもレンタルショップに来ていたようだ。彼女の手にはいくつかのDVDがある。

 

 彼女が持っているDVDをよく見ると……非常に見覚えのあるタイトルのものだった。

 

 

「牛込さん、リ〇グ借りるの?」

「うん。すっごい怖いってネットで見てね……って、山城君もリン〇知ってるの?」

「もちのろんだよ。映画好きとして、その作品は欠かせない」

 

 

 子どもの頃にこの映画のパッケージ見て、怖すぎて寝れなくなったっけな……。

 

 

「そうなんだ。山城君は映画好きなんだね。よく観るの?」

「うん。必ず毎週1本は観るよ。今日も……ほら」

 

 

 そう言いながら、俺も借りる予定のDVDを牛込さんに見せる。

 

 

「わあ、本当だ……。いっぱい借りるんだね。えっと……遊星からの〇体X……?」

「ああこれ? これはすごいよ? 宇宙から来た生命体があらゆるものに擬態して、南極の基地っていう閉鎖空間で人々を襲うって映画。これは1982年版だね。とにかく宇宙生命体のデザインが最高なんだよ」

 

 

 まじでこの映画はすごい。いやすごいって言葉じゃ表せない。閉鎖空間で仲間に擬態する怪物、そしてそこから来る人間不信とストレス描写……この緊迫感がたまらない。

 

 CG技術が発達していなかった時代の怪物の精巧なデザインも、見逃せないポイントだ。クリーチャー造形を担ったロブ・ボッ〇ィン氏の才能には舌を巻くばかりだ。

 

 

 ……あっ、やっちまった。

 

 

「ああ、ごめん牛込さん……つい熱く語っちまった……」

「ううん。大丈夫だよ。本当に映画好きなんだね。今の話すごくおもしろかったよ」

 

 

 牛込さんはそう言ってニコっと笑ってくれる。前から思ってはいたが、本当に優しい子だ。

 

 

「そういえば、山城君は今やってる『ライブハウスの呪い』観た?」

「あっ、それ今さっき見てきたところだよ」

「え!? ほんと!? 実は私もさっき観てたんだ!」

 

 

 なんと。こんな偶然ってあるんだね。

 

 

 「ライブハウスの呪い」っていうのは、最近公開したホラー映画だ。おそらくガールズバンドの流行に乗っかったのだろう。

 

 主人公たちがバンドを結成し、練習にとあるライブハウスに行くのだが、実はそこは過去にとある事件があって……という、まあよくある設定だ。

 

 

「まじか。気づかなかったよ。……そうだ。牛込さん、この後時間ある?」

「うん。あるけど、どうしたの?」

「折角お互い映画観終わった後だしさ、下の階のス〇バで感想言い合うってのはどう?

「あっ……うん……! 私も誰かとあの映画について話したいと思ってたんだ」

「そりゃナイスタイミングだね。じゃあ早速行こうか」

「うん!」

 

 

 そんなわけで、共に映画に対する愛を語り合うべく、俺達はスタ〇に行くことになった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 休日の〇タバは本当に人が多い。あんまり長時間立ちっぱなしで待たせるのは悪いので他の店も提案したが、牛込さんはここの新作が飲みたかったらしく、映画の話をしながら待つことにした。

 

 そして待つこと15分、注文した商品が完成し、やっと店の中で座れたというところだ。

 

 

「――そうそう、あそこのカメラワークは上手だったよな。出てくるって分かってるんだけど、うまーく登場人物の影に隠してるから、どこから来るのか身構えちゃうんだよな」

「うん! それに、あのシーンでbgmが止まるのもよかったよね! 一気に緊張感が上がってこう……息が詰まる感じがリアルだったよね」

「間違いない。映画の登場人物が息止めるとさ、見てるこっちも息止めちゃうよな」

 

 

 一緒に新作のストロベリーフラペチーノを味わいながら、今日見た映画の話をする。いつもの穏やかな雰囲気と打って変わって、自分の意見や感想を熱く語ってくれる牛込さんに、いい意味でまた違った印象を受ける。

 

 

「そういえば、あの映画って元ネタがあるんだって」

「ん? 元ネタ?」

「うん。映画のロケ地がね、実際にある大阪のライブハウスらしいんだ。そのライブハウスに昔からあった幽霊が出るっていう噂が、今日の映画の元ネタなんだって」

「そうなのか。……でも幽霊が出るってなったら、あんまり人が来なくなりそうな気が……それ風評被害なんじゃ?」

「それがね、逆にそのライブハウスを利用する人が増えてるらしいんだ。映画のおかげで知名度が上がったし、怖いもの見たさで来るお客さんが来るって、SNSに載ってるの」

「マジかよ……。あっ、ほんとだ。しかもここ俺知ってるわ。昔友達と大阪に遊びに行ったときに見たことある」

 

 

 調べてみると牛込さんの言う通り、結構な量のネットの記事がある。

 

 俺達がホラー映画を見たいと思うように、怖い噂であっても、やはり惹かれるところがあるのだろう。映画の影響で観光客や利用客が増えたという現象は、以前上映されていた犬〇村を思い出す。

 

 

「山城君、和歌山出身だもんね。大阪とかにはよく行ったの?」

「うん。位置的にも隣接してるし、遊びに行くってなると、よく大阪に行ってたかな」

「そうなんだ。でも標準語上手だよね。関西弁話してるところみたことないかも」

「関西弁というか、和歌山弁かな? 結構気を付けてるけど、たまに出るよ?」

「ふふっ。私も関西出身だから、別に無理しなくていいよ」

「そう? じゃあお言葉に甘えて……」

 

 

 確か牛込さんも関西出身なんだっけか。沙綾から聞いたが、興奮するとつい関西弁が出るらしい。

 

 

 

 

 

 話は逸れるが、この前大河と昼食を食べてた時に、2人で「方言萌え」なるものについて熱く議論を交わしたところだ。大河が言うには、関西弁のギャップも来るものがあるらしい。

 

 自分が関西出身なので、大河の感覚にはあまり共感できなかったのだが、普段標準語を話している人が急に関西弁を話すとなると……また違うのではと今思い始めた。

 

 

「(牛込さんが関西弁を話すと、やっぱりグッとくるものがあるのだろうか……)」

 

 

 我が同士大河よ。今日は水泳の練習に精を出している大河よ。

 

 

 今ここで、お主が立てた仮説を検証するとしよう……。

 

 

「方言出るかもしれへんけど、そん時は許してな?」

「ふふっ、ええよ。……山城君の関西弁、なんかええな」

 

 

 待ってこれめっちゃ可愛いかもしれやん。

 

 

「牛込さんの関西弁もええな。新鮮やわ」

「ほんま? えへへ……なんか嬉しいわ~」

 

 

 関西弁ってこんな可愛かったんか……。

 

 

「なんか関西弁言うたの久しぶりやわ。イギリスじゃもちろん使うことないし」

「中学3年間イギリスにおったんよな? ほんますごいな~」

「ありがとう。最初は苦労ばっかりやったけど」

「英語って難しいもんな。……そうや、なんでイギリスに行こうって思ったん?」

 

 

 まじで関西弁牛込さんギャップがすごい。

 

 大河、お前は天才やったんやな……。

 

 

「色々理由はあるけど……今日の話題で言うたら、英語を勉強したかったってのが1つやな。子どもの頃から映画好きやったし」

「そうなんや。……でも、怖くなかったん?」

「そりゃあ怖かったで? でもそこは勇気出して一歩前に、ね?」

 

 

 勿論行く前にしっかり英語を勉強したが、実際に話したり使うとなると、途端に難しくなる。本当に周りの友達とか家族に助けてもらった。

 

 

「すごいな~……うちはどうしても怖くなっちゃうことが多いから……」

「それが普通なんちゃう?」

「そうやけど……。うち、最初香澄ちゃんに誘われたとき、断っちゃったんよ。引っ込み思案なのを変えたいって思ってたけど、やっぱり怖くなっちゃって……」

 

 

 1回断ったのは知らなかった。

 だが無理もないと思う。香澄にも言ったが、新しいことに挑戦するというのは、言うのは簡単だけど本当に怖い。牛込さんのように、自分を変えようとしていたなら尚更だ。

 

 

「でも、牛込さんは今バンドやってるやん。それでええやん」

 

「……ほんまに?」

 

「うん。大きく飛ぶためには、まず助走がいるやろ? それと一緒で、一回断ったっていう助走があったからこそ、今バンド活動ができてるってことなんちゃうんかな」

 

「……!!」

 

 

「バンド活動をしてるしていないに関わらず、俺からしたら、自分を変えたいって思うだけでもすごいことやと思うで?」

 

「思うだけでも……すごい……?」

 

 

「まあ俺が楽観的過ぎるのかもしれやんけど、何事も良いように捉えようや。そのほうが楽しいやろうしさ。ポジティブシンキングってやつよ」

 

 

 俺からすれば牛込さんは十分立派だと思うし、これから色んなことを経験して、自信をつけていってほしい。自分を変えたいと思い、しかも行動に移せている牛込さんは、お世辞とかではなく本当にすごいと思う。

 

 

「……なんか山城君って、香澄ちゃんと似てるなあ」

「香澄と?」

「うん。ポジティブなところが特に」

「ポジティブに考えるのは意識してるで。……香澄の場合は無意識やろうけど」

「そうやね。……ありがとう。めっちゃ元気でたで」

「ふふっ……そっか。どういたしまして。さあ、そろそろまた混んできたし、出よか」

「うん! そうやね」

 

 

 注文もしないで長居するのは、他の人に迷惑だ。

 

 しっかりとゴミを片付けてから俺達は店を後にした。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 カア、カアとカラスの鳴き声が橙色の空に響く。いつ見ても夕方の空は美しい。

 

 今俺は牛込さんを家まで送っている。あの後牛込さんは夕食の食材を買いに行ったのだが、これが結構重くなってしまい、家の方向も大体同じなので、家まで荷物を持つことにした。

 

 

「一緒に運んでくれてほんまにありがとね」

「全然大丈夫。これくらいどうってことない」

 

 

 1人だと両手いっぱいになる量の荷物を持たせたまま自分だけ帰るっていうのは……俺には厳しい。

 

 

「……やっぱり優しいなあ。香澄ちゃんの言う通りやね。香澄ちゃん、最近ずっと山城君のこと話してるんやで」

「へえ~まじか。ちなみにどんなこと言ってるん?」

「えっと……『貴嗣くん今何してるのかな~?』とか『貴嗣くんに今日の練習成果報告しよ!』とか『貴嗣くんとお話したいな~……そうだ! 今から電話しよ!』とか」

「……この前の突電はそれか……」

 

 

 最近香澄から写真が送られて来たり、急に電話かかって来たりするのはそれか。この前バイト中に電話かかってきてびっくりしたんだよなあ。後でちゃんと掛け直したけど。

 

 

「香澄ちゃんの話におたえちゃんも乗ってきて、練習から逸れて有咲ちゃんに怒られるっていうのが、最近は多いんちゃうんかな?」

「……申し訳ないっす」

 

 

 市ヶ谷さんが息してなさそう。また会ったときに謝ろう……。

 

 

「でもね、なんか面白いんよ。ポピパの練習やのに『貴嗣~貴嗣~』って、山城君の名前がいっぱい出てくるの」

「……練習の邪魔になってへんかな?」

「うん。大丈夫。皆楽しそうやで」

 

 

 自分の知らない所で自分の名前を連呼されている光景を想像すると、何とも不思議な感覚になる。一体どんな話をしているのだろうか?

 

 

「……そういえば、皆から下の名前で呼んでもらえること多くなった気がする」

「確かに。クラスの皆も貴嗣君って呼ぶ子増えたよね?」

「言われてみれば確かに」

 

 

 文化祭が終わってから色んな人との距離が近くなったことと、ライブで名前を知ってもらったことで、色んな人から下の名前で呼んでもらえることが多くなった。

 

 

 そういえば牛込さんからはまだ山城君呼びか。今日はいっぱい話したし、仲良くなれた……はず。

 

 仲良くしてくれている人にはやっぱり下の名前で呼んでほしいし、頼んでみよう。

 

 

「牛込さんもさ、俺のこと名前で呼んでくれへん?」

「えっ……? ええん?」

「うん。友達には、やっぱ下の名前で呼んでもらいたいしさ」

「そ、そう? じゃあ……」

 

 

 食材が入った手提げ袋の持ち手を、小さな手でモジモジと触る牛込さん。

 

 しばしの沈黙の後、牛込さんは意を決したのか、顔を赤くしながら口を開いた。

 

 

「た、貴嗣君……///」

 

 

 恥ずかしそうにしながらニコッと笑う牛込さん。その可愛らしい甘い声でとろけそうになる。

 

 

「ありがとう。じゃあ俺も下の名前で呼んでええかな?」

「うん……お、お願いします……///」

「じゃあ……りみ」

「えへへ……/// やっぱちょっと照れるなあ///」

 

 

 大河、この前関西弁はあんまり萌えないって言ってごめん。めっちゃ可愛いです。 

 

 

「ほら、りみ。着いたよ」

「ほんとだ。貴嗣君、荷物ありがとうね」

「どういたしまして。さあ、これで美味しい夕食食べてね」

「うん……! それじゃあ、また明日ね」

「おう。また明日」

 

 

 笑顔のりみに見送られながら、俺は自分の家へと向かった。

 

 

 さてと、L〇NEを起動してっと――

 

 

 

 

 

山城貴嗣〈大河水泳おつかれい〉

    〈今日の夜時間ある?〉

 

タイガ〈あざっす!〉

   〈あるぞー。どしたー?〉

 

山城貴嗣〈この前言ってた関西弁は萌えるっての、今日理解できた〉

    〈この感動が冷めないうちに議論を深めたい〉

 

タイガ〈兄弟よ、やはりお前なら分かってくれると思っていたぞ〉

タイガ〈よし 今日も方言萌えについて、議論を重ねようじゃないか〉

 

 

 

 

 

 こんなしょうもないことを真面目に語り合える友人がいて本当に良かったと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

「りみ、おかえり~」

「あっ、お姉ちゃん! ただいま~!」

「わあっ、荷物いっぱいだね。重かったでしょ?」

「ううん、大丈夫だったよ。友達に手伝ってもらったから」

「……貴嗣君に?」

「……えっ!? お姉ちゃん、なんで……!?」

「実は窓開けてたから話声が聞こえてね~。ずっと見てました!」

「えっ……えーっ!?」

「ふふっ、お互い名前呼びだなんて……いつの間にあんなに仲良くなってたのかな~?」

「ううっ……///」

「あっ、実はもう付き合ってるとか?」

「つ、付きっ……!?/// ちゃうよ!! 付き合ってへんよ!!」

「その割には顔真っ赤だよ~?」

「ううっ……/// ほ、ほんまにちゃうからぁ~!///」

 




 ありがとうございました。りみのお話でした。映画の話は作者の趣味100%なので、あんまり気にしないでください……(元々映画好きでニヤリとできたって読者様がいれば嬉しいなーなんて)

 次は有咲とのエピソードです。その後は主人公のバンドのかる~い話をいくつか挟んでから、次のバンドとのストーリーを書かせていただきます。

 それではまた次回お会いしましょう!

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