Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 Chapter1ラストでございます。

 ポピパ編でのメインヒロインとのちょっとしたお話。今までの話の流れで、多分誰かは想像がつく……かも?

 エピローグということで、今回は短いです。それではどうぞ!


第16話  Epilogue of Chapter 1

 

 

 いつも通りの放課後。

 

 鞄に教科書を入れ、上着を羽織って、すれ違うクラスメイトにバイバーイと言ってから階段を下りる。

 

 1階に着き、靴箱から自分の革靴を取って、靴を履き替える。今日はバイトも無し、店の手伝いも無し、バンドの練習も無しなので、珍しく1人で帰る日だ。

 

 話し相手がいないことに少し寂しさを覚えながら靴を履き替えていると、後ろから馴染みのある声が聞こえた。

 

 

「貴嗣」

 

 

 振り向くと、鞄を持った沙綾が。どうやら沙綾も1人みたいだ。

 

 

「お疲れ沙綾。今日も店の手伝い?」

「ううん。今日は手伝いじゃないんだ。たまには休みなさいって、お母さんに言われちゃった」

 

 

 ちょっと困り顔の沙綾。今までずっと手伝いをしていたので、いきなり1日自由になると、何をしていいのか分からないという感じだった。

 

 

「貴嗣は? 今日は用事あるの?」

「いいや、沙綾と一緒。今日は何もない」

「そうなんだ! ……じゃあさ――」

 

 

 一歩こちらに近づいた沙綾は、俺の顔を覗き込んでこう言った。

 

 

 

 

 

「久しぶりに……一緒に帰ろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふっ♪」

「嬉しそうだな。何か良いことあった?」

「う~ん、あったって言うより……今起こってるよ♪」

「……ああ、そういうことね」

「うんっ、そういうこと♪」

 

 

 放課後。学校帰りの学生たちで賑わう町中を、俺と沙綾は一緒に歩く。

 

 隣を歩いている沙綾は、さっきからニコニコ顔だ。嬉しそうな彼女を見て、俺も同じ気持ちになる。

 

 

「なんか久しぶりだね。こうやって一緒に帰るの」

「だな。文化祭終わってから、今度は俺が忙しくなったからな~」

「結構バイトのシフト入ったんだよね? いつもお疲れ様」

「ありがと。沙綾にそう言ってもらえると、ちょっとは癒されるよ」

 

 

 感謝の意を込めてそう言ったのだが、沙綾の反応は、俺の予想とは違うものだった。

 

 

「ん~? “ちょっと”なの?」

 

 

 首をこちらに傾げ、少し悪戯っぽく笑いながらこちらを見てきた。

 

 だから俺もそれに応えるために……わざとらしく沙綾の目を見つめて言った。

 

 

「――“超”癒される!」

 

 

 数秒間、お互いをジーッと見つめ合う。

 

 

「……ふふっ……!」

「……っ……!」

 

「「あははっ!」」

 

 

 そして笑いが堪えられなくなり、2人とも同時に吹き出した。

 

 

「あははっ! ちょっと、“超”は言い過ぎだって~!」

「言い過ぎなもんか。本当に癒されたんだから、ありのままの気持ちを伝えただけだよ」

「ふふっ……! ……でも、貴嗣らしいかも。ありがとね、貴嗣」

「どういたしまして」

 

 

 文化祭の時は何度繰り返したか分からない「ありがとう」と「どういたしまして」のやり取りも、何故かとても久しぶりのように感じた。

 

 

「ふう~……こんなに思いっきり笑ったの、久しぶりかも」

「そっか。これからは今みたいに笑えること、増えると思うぞ」

「……うん。今なら……心からそう思える」

「おっ、いいねえ。良い感じにポジティブできてるじゃん」

「ほんとに?」

「おう。前の沙綾からは考えられないくらい、成長してると思う……って、上から目線で失礼か」

「そんなことないよ。前の私なら……今みたいに笑うのって、難しかったと思う」

 

 

 沙綾は昔を思い出しているのか、少し寂しそうな顔を見せる。でもすぐにその顔は、明るい笑顔に変わる。

 

 

「でも今は違う。なんだか毎日楽しいなーって思えるんだ。これも貴嗣が私の背中を押してくれたからだよ」

「……そっか。そんなに笑ってくれるなら、俺も嬉しいよ。俺にできることがあれば、遠慮なく言ってくれ」

「うん! ありがと! ……あっ、もうこんなところまで来てたんだ」

 

 

 気が付くと、向こうにやまぶきベーカリーが見えるところまで来ていた。

 

 

「ここを真っ直ぐ行けば私の家……」

「右に行けば駅……そして左に行けば――」

 

 

 

 

 

「「――繁華街」」

 

 

 声が重なる。お互いを見つめる。

 

 期待を込めたそのアクアマリンの瞳が、とても綺麗だった。

 

 

 

 

 

「――寄り道、するか」

「……! うんっ!」

 

 

 90度回転、ルート変更。

 

 楽しい気持ちに包まれて、俺と沙綾は高校生らしく、放課後の寄り道をすることにした。

 

 

「わおっ、やっぱこっちは繁華街への道だから人多いな。はぐれないようにしないと……」

「……」

「沙綾? ……ん?」

 

 

 沙綾は前を向いたまま、俺の手を優しく握ってきた。

 

 

「……はぐれないように……///」

「沙綾……」

「繁華街に着くまででいいから……いい?///」

 

 

 横目で俺を見ながら恥ずかしそうにそう言う沙綾は、とても可愛くて。

 

 その気持ちに応えるために、俺は沙綾の手を握り返し――軽く沙綾をこちらに引き寄せた。

 

 

「……!///」

「……もうちょっとこっちに寄った方がいい。はぐれたらマズいからな」

「……うん……///」

 

 

 沙綾の顔がさらに赤くなる。少し軽率すぎたかと思ったが、続く沙綾の言葉で、その考えは消え去った。

 

 

こんなのズルいよ……ドキドキしないわけないじゃん……///

 

 

 小声だが、はっきりと沙綾の言葉が入ってくる。

 

 その言葉を聞いて、俺も顔の温度が熱くなっていく。

 

 

「……貴嗣……顔赤いよ……?」

「……お互い様だろ? 仕掛けてきたのは沙綾だし……」

「……でも握り返してくれたのは貴嗣だよ?」

「……ああ。俺の負けだよ……」

「……ふふっ……♪ やった……///」

 

 

 楽しそうに笑う沙綾。

 

 

 恋人じゃない、でもただの友達かと言われるとまた違うような、不思議な距離感。そんな沙綾との距離感――関係性に、どこか幸せを感じている自分がいる。

 

 

 この感覚に身を任せてもいいのかと自問するが、それでこの子が笑ってくれるなら……今まで他人を優先するがあまり自分を蔑ろにしてしまい、辛くて悲しい思いをしてきた沙綾が笑ってくれるなら……

 

 

「(とりあえず今は、この心地よさに身を任せよう)」

 

 

 そう決めて、現実に意識を戻す。

 

 ふと、手をギュッと握られて、温かさが増すのを感じる。

 

 

「……このまま……繁華街まで連れて行ってくれる……?」

「もちろん。楽しい寄り道にしよう」

「えへへ……ありがとう、貴嗣……///」

 

 

 腕にかかる力が少しだけ大きくなる。

 

 沙綾がこちらに寄りかかってきたのを感じながら、俺達は繁華街へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 同時刻 とあるライブハウスにて――

 

 

「あぁ~……かっこいいなぁ~……」

 

 

「ひまりちゃん、最近ずっとあんな調子だね」

「スマホ見ながらうっとりして……あれだろ? 花咲川の例のバンドの特集見てるんだろ?」

「あの人達凄いよねー。美男美女揃いでしかも演奏がすっごく上手とか~……ちょっと反則だと思いまーす」

「……美男美女はともかく、あの演奏技術は……ずば抜けてる。参考にしたいけど、上手すぎてそれどころじゃない」

「うーん……何回もあのライブ映像見たけど、レベルが高すぎてね……」

「どうしたんだよ2人とも! ネガティブに考えないで、アタシ達はアタシ達のできることをしようぜ!」

「おぉ~トモちんかっこいい~」

「そ、そうだよねっ! 今の私達にできることを頑張ろう!」

「うん……じゃあそろそろ休憩終わりにしよう。ひまり、練習再開するよ」

 

 

「はぁ~……ギターボーカルの人……ほんとカッコいいなぁ……キリッとしてて、声も低くてイケボだし、優しそうな垂れ目だし……はぁ~……♡」

 

 

「……ひまり?」

「ひいっ!? ご、ごめんなさ~い!!」

「ひーちゃん、罰ゲームで後でジュース奢って~」

「えぇっ!?」

「まあまあ。流石にそれは可哀想だろ? とりあえず、練習しようぜ!」

「ありがとう巴~! それじゃあ皆! えい、えい、おー!」

 

 

「「「……」」」

 

 

「み、みんなひどいよ~! ちょっとくらいノッて~!!」

 

 

 

 

 【To Be Continued in Chapter 2】

 




 読んでいただき、ありがとうございました!

 Poppin'Party編のメインヒロインである沙綾とのお話でした。

 さて、次回からChapter 2に入ります。彼女達とどう関わっていくのか、楽しみにしていただけると嬉しいです。

 それではまた次回もよろしくお願いいたします。

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