Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 今回からAfterglow編です。タイトルは華やかで美しい花である「胡蝶蘭」の英語名です。胡蝶蘭の花言葉は……?

 それではどうぞ!


Chapter 2 Afterglow
第17話 Phalaenopsis


 

 以前と比べて日差しが強くなったなと思う今日この頃。外を歩いていると、半袖や生地の薄い服を着ている人がちらほら見られるようになってきた。

 

 小学校の頃、「夏は薄着になるから不審者に気を付けなさい」と先生によく言われたのを思い出す。あんな注意をされるのはどこも同じなのだろうかと、道行く人達を見て頭の片隅で考える。

 

 

「あ゛あ゛ぁ~……あっちぃ……」

「すげえ声出てるぞ……。貴嗣が暑いの苦手なんて意外だな。めちゃくちゃ運動してるのに」

「運動してる奴が全員暑いの大丈夫ってわけじゃないだろ? 雨降った後の晴れの日ってこう……湿度が高いせいか体がだるくてな……」

「あーな……それは分からんでもない」

 

 

 雨続きだった最近では珍しい、気持ちいいくらいの快晴である今日、俺と大河は休日を使って、“CiRCLE”と呼ばれるライブハウスに向かっていた。

 

 この間、そろそろ俺の店以外の場所で練習したいよなという話になり、そこでこのCiRCLEというライブハウスを大河達が紹介してくれたのだ。聞くところによると、利用客はガールズバンドの皆さんが多いそうだ。

 

 

「あっ、見えたぞ。あそこだ」

「あーあれか……いかんいかん、シャキッとしないと」

 

 

 暑さで若干ヘタリ気味の体に鞭を打ち、背筋をピンと伸ばす。

 

 

「おおー真面目モード」

「ファーストインプレッションは大事だからな」

 

 

 そんな他愛もない話をしながら、俺と大河は交差点を2つ越えた所に見えるCiRCLEへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――じゃあ、本当にガルジャム当日に臨時スタッフとしてお手伝いしてくれるってことでいいのかな?」

「はい。僕達4人だけではありますが、イベントのボランティアとして参加させていただきたいと思っています」

 

 

 ラウンジのテーブル席に座り、俺達はここの女性スタッフである月島まりなさんと話を進めていた。黒髪セミロングの親切な人だ。

 

 

 今日俺達がCiRCLEに来た理由は2つ。

 

 1つはこれからお世話になるであろうライブハウスの下見。そしてもう1つは、もうすぐ行われる「ガールズバンドジャム Vol.12」――通称ガルジャムの臨時スタッフボランティアの詳細を確認、応募することだ。

 

 ガールズバンドを募って行われる本格的なイベントで、レコード会社の人達も見に来るらしく、場合によってはスカウトされる、ということもあるらしい。それくらい規模が大きいライブイベントだ。

 

 

「では僕達は、お客さん及び出演バンドの誘導、事前準備及び当日における機材搬入――この2つが主な内容ということですね」

 

「うん! そのとおり! 他にも飲み物を持って行ったり、ゴミの回収とかの細かい雑務もあるけど、基本的には今大河君が言ってくれたことを手伝ってもらう感じかな!」

 

「分かりました。今日来ていない2人に説明した後に、参加の連絡は後日こちらからさせていただきます」

 

「おっけー! 連絡くれたら、CiRCLEからの臨時スタッフとして、私達が運営委員に参加登録をしておくから安心してね」

 

「はい! 何から何まで、ありがとうございます! ――じゃあ貴嗣、行くか」

 

「おう。月島さん。本日はありがとうございました」

 

「こちらこそありがとう! ……あっ、そうだ、今からCiRCLEを回るんだよね? 折角だし、私が案内するよ」

 

 

 これから休憩時間だというのに、月島さんは親切にも俺達を案内してくれるそうだ。この分は今後俺達がCiRCLEを利用することでしっかりとお返ししよう。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 時は進みお昼過ぎ。

 

 あの後大河と昼食にラーメンを食べに行った後、俺は「羽沢珈琲店」というお店の前に来ていた。なんでも、このあたりでは昔からある有名な店だそうだ。

 

 今日はもう何も予定がない日なので、ここでコーヒーをいただきながら、この前に買った小説を読むつもりだ。静かな店で読む本は中々良いもので、集中しすぎて気付いたら何時間も居たというのが結構ある。

 

 

「(……おおっ、いい感じの雰囲気)」

 

 

 店に入ると、落ち着いた雰囲気の景色が広がっていた。他のお客さんは……手前の席に大学生らしき女性が1人、そして少し奥の大きなテーブルに、同年代くらいの女の子たちが5人。これなら集中して本が読めそうだ。

 

 カランカランとドアベルが鳴り、5人グループの中から、エプロンを着けた女の子がこちらに来た。同年代くらいの女の子だ……バイトの子だろうか?

 

 

「いらっしゃいませ! お1人様……です……か……」

 

 

 真面目そうなその子はすぐに俺の元に来たが、俺の顔を見た途端、言葉が途切れ途切れになった。

 

 

「? どうかされましたか?」

「……えっ!? ああいいえ、すみません! えっと……お、お好きな席にどうぞ!!」

「はい。ありがとうございます」

 

 

 受付をしてくれた茶髪の女の子は、何故か驚いていた様子だった。どうかしたのかと一瞬思ったが、まあ考えても分からないかと自己解決し、俺は日差しが入ってきている窓際の席についた。

 

 上着を脱いでからメニューを見る。コーヒーや紅茶はもちろんだが、結構料理の種類も豊富だ。このサンドイッチなんかすごく美味しそうだ。

 

 

「すみませーん」

「あっ、は、はーい! ……えっと、ご、ご注文はお決まりでしょうか?」

「はい。ホットコーヒーを1つお願いします」

「か、かしこまりました!」

 

 

 ……この子さっきから何故か緊張している。もしかしたら実はバイトして日が浅くてまだ接客に慣れていないのだろうか。そんな風には見えないのだが。

 

 

「お待たせしました! ホ、ホットコーヒーですっ!」

「ありがとうございます」

 

 

 そうだ、やはり働き始めて日が浅いのだろう。もしかしたら今日が初めてかもだし。

 

 

 んん……おお! このコーヒー美味しいぞ! 俺の好きな味だ!

 

 この香り……豆はキリマンジャロだ。焙煎深度はハイローストだろうか。とても丁寧に淹れられている。

 

 

「(これなら読書も捗りそうだ)」

 

 

 さあ、美味しいコーヒーを片手に、楽しい読書を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえつぐ……どうだった……?」

「うん……多分間違いないと思う」

「おぉ~。まさかこのタイミングで遭遇するなんて、これは運命ですな~」

「運命は言い過ぎだろ~。……なあ、どうするんだ?」

「声かけたいけど……今本読んでるよね、あれ。今あたし達が行ったら邪魔になりそう……」

「わぁ~……ほ、本物だ……! 読書してる姿もカッコいいなあ……」

「ひーちゃん、声かけてきなよ~」

「えぇ!? わ、私!? む、ムリムリムリ!!」

「ええ~なんで~? 折角推しが店に来たんだよ~? あたし達と同い年なんだし、仲良くなるチャンスだって~」

「ひまりちゃん? わ、私行ってこようか?」

「う……ううん……! 私、行ってくる……! だってリーダーだし……!」

「おお! さすがひまり! アタシたちはここから応援してるぞ!」

 

 

 

 

 

「(……めっちゃあの子ら俺のこと話してるな。なんかやらかしたかな……?)」

「あ、あのぉ……」

「はい?」

 

 

 声をかけられたので本を閉じ、桃色の髪の女の子の方を見る。

 

 

「あの……間違ってたらごめんなさい……! Silver Liningの山城貴嗣さん……ですか?」

 

 

 緊張しているのだろう、その子はガチガチになりながら話しかけてくれている。何かの弾みでどこかに飛んで行ってしまいそうだ。

 

 

「はい。そうですよ。初めまして、ひまりさん」

「は、はい!! 初めま……あれ……? どうして私の名前……」

「ああ、ごめんなさい。自分昔から耳が良くて……」

 

 

 自分の耳を指差しながらそう伝える。

 

 

「えっ……? じ、じゃあ……さっきの私達の会話も……」

「そういうことです。盗み聞きしたみたいでごめんなさい」

 

 

 申し訳ないと思いつつ、俺はひまりさんにあるお願いをした。

 

 

「もしよろしければ、俺も皆さんとお話させてもらってもいいですか?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 あの後俺は席を移動し、現在店の奥の方にある大人数用の席に座っている。さっきの女の子5人組に囲まれるような形になっているが、入学式の日に真優貴が言っていたハーレムというやつだろうか。

 

 自分でもくだらないことを考えてるなーと思っていると、先ほど受付をしてくれた茶髪の子が話しかけてくれた。

 

 

「あ、あのっ……! さっきはジロジロ見てすみませんでした……!」

「あははっ。大丈夫。全然気にしてないよ」

「うぅ……すみません……眼鏡をかけていたので、本人かどうかわからなくて……」

「ああ、そういうことか。それじゃあ――」

 

 

 今日の朝から付けていた眼鏡を外し、皆の方を見る。

 

 

「これでどうかな?」

「「「わあ……ほ、本物だ……!」」」

「(本物ってなんだ……?)」

 

 

 まるで道端でハリウッド俳優とばったり会ったファンのような反応に、少し困惑してしまう。

 

 だが初対面の人にはまず挨拶、自己紹介だ。

 

 

「はじめまして。花咲川学園1年の山城貴嗣です。Silver Liningというバンドでギタボ兼リーダーをやらせてもらってます。山城でも貴嗣でも、好きなように呼んでください。よろしくです」

 

 

 そう言うと、皆はパチパチと静かに手を叩いてくれた。親切な人達だ。

 

 

「じゃあアタシらも自己紹介しようぜ。アタシは宇田川巴。Afterglowのドラムだ」

「同じくキーボードの羽沢つぐみです!」

「ギターの青葉モカちゃんで~す」

「ギターボーカルの美竹蘭です」

「ベ、ベース兼リーダーの上原ひまりですっ! よ、よろしくです……!」

 

 

 俺から見て時計回りにこの人達――Afterglowのメンバー紹介をしてもらった。ふむ……poppin' partyと同じく、最近流行りのガールズバンドというものだな。

 

 

「そんなにかしこまらなくていいよ。同じリーダー同士、仲良くしてくれると嬉しい。よろしくね」

 

 

 親愛の証である握手をしようと上原さんに手を差し出す。

 

 

「!?!? は、はいぃ……///(わわっ……手おっきいよお……///)」

「?」

「おお~ひーちゃん顔真っ赤だねえ~」

 

 

 プシューと顔から蒸気が噴き出るのではないかと思うくらい顔を真っ赤にしながら握手をするひまりちゃん。さっきは緊張してたかと思えば今度は照れる、コロコロと表情が変わる面白い人だ。

 

 それからはAfterglowについて色々教えてもらった。この5人は幼馴染らしく、ずっと同じクラスだったらしいのだが、中学2年生の時に美竹さんだけが別のクラスになってしまったらしい。そこでまた5人で集まれる場所――Afterglowを結成したということだ。

 

 

「(――幼馴染……か)」

 

 

 その言葉を聞いて黙り込んでしまう。俺にとって“幼馴染”という言葉は、とても懐かしくて、それでいて寂しい言葉だった。

 

 

「? どうした?」

「……ああ、ごめん。いや、皆良い人なんだな~って思ってさ」

「あはは。サンキューな。そういう貴嗣達はどういう経緯でバンド組んだんだ?」

 

 

 巴にそう聞かれて、俺は記憶を呼び覚ます。どうやって俺達がバンドを組んだのか。それは――

 

 

「たまたまカラオケにあの4人で行って、なんか滅茶苦茶波長が合って、他の3人が丁度ギター探してて面白そうだから流れで俺が参加して結成」

「い、勢いがすごいね……」

「もっとこう、山城君が他のメンバーをスカウトしたみたいな感じだと思ってた」

「そうだね~。蘭の言う通り~」

「むしろ俺は一番最後だよ。軽いノリって言うか、勢いで参加したところもあるけど……今すっごい楽しいし、バンド組んで良かったって思うよ」

「!! そう! それがSilver Liningの魅力なんだよ!」

 

 

 今まで俺の隣で顔を真っ赤にしてショートしていたひまりちゃんが、今度は目をキラキラさせてバッ! と起き上がった。本当に表情豊かな子だな。やっぱ面白い。

 

 

「演奏はすっごいカッコいいのに、皆いい意味で緩いっていうか! ノリがすごく良くてびっくりしたよ!」

「俺達は普段あんな感じだよ。練習も自分達のペースでやるし、ライブ前だからって……うん、緩いな。文化祭ライブの2日前とか普通に皆でゲーセン行ったし」

「ラ、ライブ前にもかかわらずその余裕……すごい……」

「ガチでバンドやってる人達から見たら、カチンとくるような光景だけどねー。……そういえば、皆は近々ライブとかに出るの?」

「……!! そう、実はそれで山城君に相談したいことがあるんだ」

 

 

 美竹さんがそういったのを合図に、皆の顔が真剣なものになった。

 

 

「私達、次のガールズバンドジャム……ガルジャムに出るつもりなんだけど……」

「おお、ガルジャムか。一応俺達も参加するよ」

「えっ? でもSilver Liningはガールズバンドじゃないよね?」

「俺達はイベントの臨時スタッフボランティアとして参加する予定なんだ。……すまん、話が逸れた。ってことは、今皆一生懸命練習してるって感じかな」

「うん。それでよかったら山城君達に……私達の演奏を見てアドバイスをしてほしいんだ」

「ほうほう、アドバイスね~」

 

 

 元々地元の小さなイベントに参加してきたという彼女達。最近頑張っているということで、CiRCLEのスタッフさんから出てみないかと提案されたことがきっかけらしい。

 

 そこでもっと成長したいということで、外部から意見やアドバイスをくれる人を探していたところに俺達が現れた、ということだ。

 

 

「俺達も忙しいから頻繁に見れるわけじゃないし、全員が集まることってあまりないだろうけど……それでもいい?」

「うん。それでも構わない」

 

 

 美竹さんを含め、全員本気の目をしている。ガルジャムにかける想いが伝わってくる。

 

 

「――皆は今日練習する予定はある?」

「えっ? う、うん。そろそろ練習する予定だけど……」

「そっか。じゃあ早く行こう」

「「「……えっ?」」」

 

 

 俺は席を立ち七分袖の上着を羽織る。会計をするために財布を取り出し、店を出る準備をする俺を見て、皆何が何だか分からないといった顔をしている。

 

 

「ん? どうした? アドバイスが欲しいんじゃなかったの?」

「そ、それってつまり…………!?」

 

 

 つぐみちゃんは俺の意図に気付いたようで、驚いた表情を見せる。

 

 

「――皆の演奏を見せてほしい。じゃないとアドバイスしたくてもできないでしょ?」

「「「……!! はいっ!!」」」

 

 

 善は急げだ。やると決めたら、あとは前だけ見て進むのみ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「――ふうっー……。ありがとうございました」

「ありがとうございました。……皆、お疲れ様」

 

 

 パチパチと手を叩いて、賞賛の気持ちを表す。皆も緊張していたのか、美竹さんの一言を皮切りに安堵の声をあげる。

 

 とりあえずまずは水分補給だ。俺はライブハウスに来る途中で買ってきたスポーツドリンクを皆に渡す。

 

 

「はい、皆、これでも飲んでまずは休憩してくれ」

「えっ!? これ、貴嗣君が買ってくれたの!?」

「なんとー貴さんの奢りとは~。モカちゃんポイント爆上がりですな~」

「おいモカ、仰々しいぞ! ……なあ貴嗣、ほんとにもらっていいのか?」

「もちろん。これは今日仲良くなってくれたのと、素敵な演奏を聞かせてもらった分。遠慮せず受け取ってくれ」

「(い、いい人すぎる……!)」

 

 

 感謝の気持ちはすぐに表さないと。これくらい安いもんだ。

 

 皆が休憩している間、俺は目を瞑ってさっきの演奏を思い出しながら、自分なりの意見や改善点をまとめた。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあそろそろ始めようか。まず初めに、素敵な演奏をありがとう。聞いていてとても楽しかった」

 

「アドバイスをする前に2つ注意点がある。1つ、今から話すのは俺の視点から見たものだ。どうしても主観が入ってるから、ただの一意見として捉えてほしい。もう1つ、今回は各パートの細かい部分に関しては指摘しきれないと思う。これに関しては次の練習までに俺がまとめておくってことで。オッケーかな?」

 

「「「はい!」」」

 

 

「じゃあまずリズム隊からね。ドラムは曲が盛り上がる部分、特にサビでテンポが早くなってる印象があった。テンションが上がるのは分かるし悪いことではないから、次からはサビ付近は早くならないように気を付けてみて」

 

「やっぱりか……そんな気はしてたんだよなー。ありがとう。次からは気を付けるよ」

 

 

「ベースはさっきの巴と被るところもあるんだけど、それに加えて所々メロディ隊に引っ張られちゃってたように感じた。これに関しては練習を重ねることで改善していく部分もあると思う。とにかく焦らないことが大事。すぐに上達はしないだろうけど必ず上手くなると思うから、焦らずに練習を続けてみて」

 

「焦らないように練習……が、がんばります!」

 

 

「さて、お次はメロディ隊だね。じゃあキーボードから行こうか。とにかく丁寧に弾いてるなーっていうのが感想かな。気になった点としては、ミスしたらそこから崩れちゃって、持ち直すまで苦労しているのが分かりやすかったこと……って言っても、これは俺も経験あるし偉そうに言えないけど。間違ってもいいから堂々と弾いてみても良いと思うよ?」

 

「あうっ……ばれちゃってた……。堂々と、だね……」

 

 

「次はギターのモカ。テクニックの話で言うと美竹さんと同じく完成度は高い。ミスタッチも無くはないけど少ない。けど走りすぎてるなーと思う所があったのも事実。ギターのメロディはお客さんを盛り上げるのに必要不可欠だけど、やっぱそこには適切な度合いってのがある。落ち着きすぎず、かつ派手にし過ぎずの絶妙なラインを探してみて。これに関しては俺も手伝うけどね。難易度は高いけどモカならできると思う」

 

「わーお鋭いですね~。りょーかいですセンセー、モカちゃんがんばりまーす」

 

 

「んで、最後に美竹さんね。美竹さんもモカと同じく演奏技術は高い。特に感情を伝える力が強い。こう、ガンッ! って来る感じは、個人的には気持ちよかった。改善点というか意見なんだけど、歌に力を入れてる時はギターのミスタッチが増えていた感じがした。俺も同じギターボーカルだから、これがどれだけ難しいことかってのは重々承知だけど、これはミスタッチが増える箇所を重点的に練習しまくるのが一番効率がいいと思う。精神的にきつい作業だけど、俺も一緒にやるから少しずつ改善していこう」

 

「うん……わかった」

 

 

「以上かな。腹立つこともあっただろうけど、皆じっくり聞いてくれてありがとうね。各々の細かい部分は後日連絡する。今回の録音と映像を俺が家で見直して洗い出すから……そうだな、3日後までにメッセージを送るようにする」

 

「――ということで、俺の主観ではあるけれど、アドバイスさせてもらいました。ありがとうございました」

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後は各自で練習することになった。その間俺が見回って、気になる部分があればその都度アドバイスをする、という形で練習は進んでいった。練習が終わったのはついさっきだ。

 

 アドバイスなんてバンド内でしかやったことなかったけど、他のバンドの演奏を見るのも、色んな発見ができてほんとに楽しかった。次はSilver Liningの皆で、Afterglowの演奏を見たいなと思う。

 

 

「あの……貴嗣君!」

「ああ、ひまりちゃん。どうしたの?」

 

 

 スポーツドリンクをがぶ飲みしていると、ひまりちゃんに声をかけられた。

 

 

「今日は練習見てくれてありがとう! 急なお願いだったのに、練習終わりまで見てくれて……」

「全然大丈夫。今日は1日フリーだったし」

「で、でも……私達が無理やり予定を埋めちゃった感じだよね……?」

 

 

 申し訳なさそうにするひまりちゃんに、俺は笑って答える。

 

 

「ああもう、そんな細かいこと気にしないの。最後まで見るって決めたのは俺だし。ガルジャム出場まで面倒みるつもりだよ」

「……本当にいいの? 忙しかったら途中でやめても大丈夫だよ?」

「んー……まあ、それはないかな。一度手を付けたんだったら最後まで責任を持つって決めてるからさ。途中で面倒くさくなったから止めますーってのは、あまりにも無責任だし、何より皆が嫌な思いをする」

 

 

 そう伝えるものの、ひまりちゃんはまだ後ろめたい気持ちがあるみたいだ。活発なだけではなく、とても親切な子なのだろう。

 

 

「よし、こうしよう。俺はアドバイスをする。皆はガルジャムに出場してすげー演奏をする。これでチャラってことでオッケー?」

「う、うん……」

「安心して。俺も楽しくてやってるんだし。お互い遠慮なし。気楽にいこう。――じゃあ俺、借りてる機材返しに行ってくるわ」

 

 

 そう言って俺はレンタルしていたスピーカーやアンプといった機材を返しにいった。

 

 さあ、帰ってからもやることがいっぱいだ。Afterglowの皆のためにも、気合入れて頑張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりカッコいいなあ……///」

「ひまり、大丈夫?」

「えっ!? う、うん! 大丈夫だよ蘭!」

「……? まあいいか。早く片付けしよ」

「うん……! そ、そうだね!」

 




 読んでいただき、ありがとうございました。

 タイトルの胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」。新しい人との出会いという意味があるそうで、主人公とAfterglowが新たに出会うという意味で、タイトルに選ばせていただきました。

 今回から毎日投稿は厳しくなりそうです……できる限り早めの更新を目指して頑張ります。

 それでは次回もよろしくお願いいたします。

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