Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 オリキャラ設定等で寄り道しておりました。申し訳ないです。

 お気に入り登録をしてくださった皆様、そして☆10評価をしてくださったルビィちゃん推し様、本当にありがとうございます! これからも頑張ります!

 Afterglow編の続きです。タイトルは紫の花びらが特徴的な「カキツバタ」の学名(ラテン語)でございます。例のごとく、花言葉に沿った話になっております。

 それではどうぞ!


第18話 Iris laevigata

 スタジオにある席に俺と大河、穂乃花と花蓮が座り、Afterglowの演奏を見る。音に込められた熱意が部屋を満たし、真っ直ぐなサウンドが俺達の体に響いてくる。

 

 今日は頑張って予定を合わせて、4人でアドバイスをすることになった。皆部活やバイトで忙しいが、俺が事情を説明したら快く承諾してくれた。

 

 

「――ありがとうございました……」

 

 

 演奏が終わり、美竹さんがそう告げた。美竹さんもだが、長時間練習しているということもあって、皆の顔に疲労が見える。

 

 

「「「お疲れ様ー!」」」

「お疲れ様。じゃあ今日は折角4人いるし、担当を決めよう」

 

 

 そう言って俺は立ち上がり、大河達に指示を出した。

 

 

「穂乃花は巴に、花蓮はつぐみちゃんに、大河はひまりちゃんに、俺はギター組に。各々が思ったことを伝えてあげてほしい」

「「「了解!」」」

 

 

 Afterglow――幼馴染5人組で結成されたガールズバンド。その結束力が最大の武器だ。少々荒削りな部分はあるが、これに関しては許容範囲だろう。

 

 

 ただ、メンツが少々尖っていることは確か。

 

 

「今日はよろしくね、つぐみちゃん」

「うん! よ、よろしくお願いします!」

 

 

 羽沢つぐみちゃん。キーボード。バンドに店の手伝いに生徒会を掛け持つ頑張り屋さん。ただ自分と周りを比べてしまうあまり自己肯定感が高くないのが気になる。

 

 

「すっごーい! 巴って和太鼓やってたんだ! だからドラムなんだね~」

「そう! 今日はよろしく頼むぜ、穂乃花」

 

 

 宇田川巴。ドラム。面倒見が良い姉御肌。演奏技術も高い。ただしギターボーカルの美竹さんと衝突しがち。一旦怒らせると手が付けられなくなる可能性がある。

 

 

「よし! じゃあ始めますか! 上原さんからも遠慮なく言ってくれ!」

「はい! ご指導よろしくです!」

 

 

 上原ひまりちゃん。ベース兼リーダー。良くも悪くも今時の女子高生。その明るい性格で雰囲気を良くするムードメーカー。咄嗟のトラブルやメンバー内の対立といった場面に弱いか。

 

 

「貴さ~ん。今日もモカちゃん頑張ったよ~」

 

 

 青葉モカ。天才肌のマイペース少女。ギター。その雰囲気から想像もつかないほどのテクニック。掴みどころのない言動は長所にも短所にもなり、少々他人をからかいすぎる傾向あり。

 

 

「山城君……さっきの演奏、どうだった……?」

 

 

 そして美竹蘭さん。ギターボーカル。歌唱力、演奏力共にレベルは高い。だが少々好戦的。勝気な性格が裏目に出なければいいが。

 

 

「モカに関してはそうだな……。この前に送った部分は順調に上達してるから、このまま練習を続けてほしい」

「やった~。先生から褒められた~」

「そんで、美竹さんだけど……うむ……」

「……どうしたの?」

「ズバッと言われるか、オブラートに包んで言われるかどっちがいい?」

「……ズバッと……言ってほしい」

「オッケー。……前よりもミスが増えてる。それに、喉の調子が悪いのに無理矢理歌ってるでしょ?」

「……ッ……」

「悩み事があるなら聞くけど、このまま練習する?」

「だ、大丈夫……問題ないよ……」

 

 

 そして1人で悩みを抱える癖あり。このタイプは後で爆発するタイプだが、こっちからとやかく言うのは逆効果だろう。とにかく今は無理をさせないように注意しつつ、練習を続けよう。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 練習が終わり、つい先ほどAfterglowと別れた俺達。綺麗な夕焼けが住宅街を照らす中、4人で帰りながら今日の練習について振り返っていた。

 

 

「――なるほどな。お父さんとすれ違ってるのが原因か。そうなると練習中のミスとか態度含めて、全部辻褄が合うな」

「だなー。俺達は部外者だからあんま干渉するのは良くないけど、あのタイプの親とのすれ違いは、想像しただけで辛いもんだなあ」

 

 

 大河がやりきれないといった気持ちを漏らして空を見上げる。

 他のメンバーがつぐみちゃんや巴、ひまりちゃんやモカと話した際に得た情報により、あることが分かった。

 

 美竹さんの父が華道の美竹流の家元らしく、娘である美竹さんには華道の道を歩ませるつもりなのだが、当の本人はそんな気はなく、それよりもバンドを続けたい。この考え方の違いによるすれ違いが美竹さんを苦しめている、ということだ。

 

 

 そりゃ練習に身が入らないはずだ。家族とのすれ違いなんて、想像しただけで心が痛む。

 

 

「なあ皆。こんなこと言って良いのか分かんねえけど、俺美竹さんの親父さんが悪いって思えないんだよな。確かに客観的に見れば子どもに道を強制してる親なんだけど、話を聞く限りだと、ただバンドっていうものの考え方が2人で違うだけでさ。もういっそのこと腹割って自分たちの気持ちをぶつけるのもありなんじゃねえかな?」

 

 

 大河の言うことは間違っていない。少なくともお父様は、娘である美竹さんを嫌っているわけではない。

 

 ただ昔から子は親の鏡というように、お互い不器用なのかもしれない。華道の道に進ませようとするのは、あの人なりに娘を想っての行動のはず。

 

 

「うーん。私も大河君の言うこと分かるな。確かに厳しい人なんだろうけど、悪い人じゃないと思う。多分バンドっていうものが何なのか分からなくて、その分からないものにのめり込む蘭ちゃんを見るのが怖いんじゃないかな?」

「なるほど~。あれだね、親が子どもにゲームを禁止する理由と同じだね。知らないからこそ怖く感じるっていうのは経験あるし」

 

 

 花蓮と穂乃花もそれぞれ意見を言う。そうだ、確かに腹が立つところもあるが、ここでお父様を責めても何も変わらない。

 

 そう――美竹さんのお父様の中の“バンド”という概念の定義を変えることができれば……美竹さんがお遊びではなく、本気で打ち込んでいるものだと分かってくれれば……。

 

 

「――よし。分かった」

「おお? さすがリーダー。いつものひらめきですかな?」

「ひらめきっていうか、さっきの大河が言ったことをほぼ丸パクリする感じになるけど」

「ん? 腹割って話してみるってやつ?」

「そう。不器用で素直になれない人同士には、下手な小細工考えるより、いっそ真正面からぶつけた方がすんなりいく。そこで、美竹さんのバンドにかける想いを分からせるために、1つ策を思いついんだが……聞いてくれるか?」

「うん。言ってみて」

「ありがと。それは――」

 

 

 花蓮達の了解を得て、俺は自分の考えを皆に伝えた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 そして数日が経った。今日は穂乃花と一緒に練習を見る予定で、今学校から直接CiRCLEに向かっているところだ。

 

 最近は制服の上着を着ていると少し汗が出てくるくらいの気温になった。隣にいる穂乃花も暑いのか、制服を指でつまんでパタパタと動かし空気を送り込もうとしている。

 

 

「ねえ貴嗣」

「どした?」

「今日の練習、なんか起きそうじゃない? つぐみちゃんの件もあったしさ」

 

 

 つい最近、つぐみちゃんが学校で倒れてしまったらしい。過労によるもので命に別条はないとのことだ。やはり無理をしていたんだろう。こうなる前に事前に対処すべきだった。

 

 

「否定はしきれないな。悪いことって重なるもんだし。でも、俺達はできることに全力を尽くすだけだろ?」

「うん! さっすが! 頼りになるぅ~!」

 

 

 マイナスのことを考えても仕方がない。できることから着実に、だ。

 

 さあ、CiRCLEに着いたし、スタジオに行こう。さっきモカから送られてきたメッセージによるともう練習は始まっているらしいし、俺達も急ご――

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

「「……美竹さん(蘭ちゃん)!?」」

 

 

 バンッ!! とスタジオの扉が開き、美竹さんが飛び出してきた。美竹さんはそのままCiRCLEを出て行ったしまった。

 

 

「……穂乃花」

「うんっ! 行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達がスタジオに入ると、泣きそうになっているひまりちゃん、まずいことをしたと苦虫を嚙み潰したようにしている巴、悔しそうな顔をしているモカがいた。

 

 

「あっ……2人とも……」

「遅れて本当にすまない。この感じは……喧嘩か」

「……ああ。アタシのせいだ……」

「(こりゃあちとマズいな)」

 

 

 そんな皆の様子を見て、俺はすぐに隣にいる穂乃花を見た。

 

 

「穂乃花、皆を頼めるか? 一旦練習はストップして、落ち着いてきたら、聞ける範囲でいいから事情を教えてもらってほしい」

「オッケー! 任せて!」

「俺は美竹さんを探す。ついでにあの話もしてくる」

「うん! 作戦決行だね! そっちは任せたよ!」

「おう。そっちも頼む」

 

 

 俺は制服の上着とギターを穂乃花に預かってもらい、スマホだけを持って走り出す準備をする。

 

 

「モカ、羽丘の屋上以外に夕日が良く見える場所ってあるか?」

「……えっ? えっと……あっ……町を流れてる川を挟んでる道からは……良く見える」

「分かった。サンキューな。じゃあ行ってくる」

「ま、待って貴嗣君……! 蘭がどこに行ったのか、私達にも分からないんだよ……探し出すのは無理だって……」

 

 

 俺がスタジオを出ていこうとしたところで、ひまりちゃんに引き留められた。さっきの出来事が尾を引いているのか、若干涙声だ。

 

 

「無理かどうかはやってみないと分からない。物は試しだ」

「で、でも……!」

「ひまりちゃん。大丈夫だよ」

「穂乃花ちゃん……?」

 

 

 そんなひまりちゃんの肩を、穂乃花が優しく掴む。

 

 

「貴嗣なら絶対大丈夫。蘭ちゃんを見つけてくれるから。――貴嗣、お願いね?」

「貴嗣……。アタシからも、頼む。頼める立場じゃないけど、蘭を……助けてやってほしい……」

「おう。任せときな。――じゃあ、今度こそ行ってくるわ。穂乃花、頼んだ」

「まっかせといてー! いってらっしゃい!」

 

 

 穂乃花とお互いにガッツポーズを交わし、ライブハウスを出る。モカが教えてくれた場所に向かって、俺は全速力で走りだした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 目の前には、大きな川。綺麗な橙色の夕日が水面に映っている。

 

 

 本当なら5人で一緒に見るものだけど……今あたしの周りには、いつも支えてくれる皆はいない。

 

 

 ついカッとなっちゃって……ひまりやモカ、つぐみに巴……皆心配してくれてたのに、それを無碍にしてしまった。

 

 

 ごめんって、謝りたい。あたしはバンドを……辞めたくない。

 

 

 でも、一体どうやって謝ればいいんだろ……? それに、謝ったところで、皆が許してくr――

 

 

「美竹さん」

「!?」

 

 

 静かな声で名前を呼ばれた。

 

 

 振り向くと、あたし達の憧れのバンドのリーダ――最近、あたし達の演奏を見てくれている、親切なあの彼がいた。

 

 

「やっと見つけたよー。隣、座るね」

「えっ、あっ、うん…………あたしを……探してくれてたの……?」

「おう。ちょっとお節介しにきた」

 

 

 アッチィ~と言いながら制服のワイシャツのボタンを1つ外す山城君。ペタンと私の隣にへたり込む姿は、ライブ中の威厳に満ちたそれとかけ離れすぎて、別人のように錯覚してしまう。

 

 

「……綺麗な夕日だな。最高だ」

「うん……」

Afterglow(夕焼け・残光)ねえ……いいセンスしてるじゃん」

「……でも、あたしが皆を傷つけちゃった……。もう……あたしは皆の元に戻る資格は無いよ……」

「そっかー……。じゃあ、親父さんの跡を継ぐってこと?」

「……ッ……それは……違う……」

「ふむ……。でも、今手元にある選択肢はこの2つしかない思うんだけど」

 

 

 何も言い返せない。彼の言う通りだ。

 

 今のメンタルの状態に加えて、いつもと雰囲気の違う、どこか厳しさがある彼が怖くなり、目の前の夕焼けに視線を向ける。

 

 

「バンドを続けるか辞めるか。2つに1つだ。どれだけ泣き言言っても、この現状は変わらない。まあ今すぐ辛いことから逃れたいんだったら、辞めるって選択もありだわな」

「……! あたしは……バンド、辞める気なんかない……! けど……」

「……親父さんか」

「……うん」

「親父さんにはなんて言われてるんだ? バンド活動について」

「……父さんは、バンドなんかごっこ遊びだって……」

「ほほぉ~ごっこ遊びとな。その発想は無かった。そんなこと言われたら腹立つわな」

 

 

 彼は空に映っている夕日を見ながらそう言う。

 

 

 正直、「ごっこ遊び」の部分は否定して欲しかったと思う自分がいる。だから彼の肯定も否定もしない言い方には、一瞬心のどこかで不満を覚えた。

 

 

 その後の「腹立つわな」という言葉を聞いて、その苛立ちもすぐに消えたが。

 

 

「じゃあ、親父さんを納得させることができたら、あとは皆に謝って、ガルジャムに向けて練習しまくればいいだけだ」

「……そうだけど……。父さんがバンド活動を認めてくれるなんて思えない……」

「それについてなんだけど、俺から1つ提案がある」

「提案……?」

 

 

 そう言って彼はポケットからチケットを取り出した。

 

 

「これ……ガルジャムのチケット……?」

「そう。先入観によって固まってるイメージを手っ取り早くぶっ壊すには、実物を見せるのが一番だ」

「実物を……見せる……」

「これは俺が運営さんから貰ったチケットだけど、別に俺が出場するわけじゃないし、あげるよ。――これを親父さんに渡すってのはどうだ?」

「……あっ……父さんに、私達の演奏を見てもらうってこと?」

 

 

 あたしがそう言うと、山城君はニヤリと笑った。

 

 

「その通り。『バンドはごっこ遊びじゃない、私達は本気でやってるんだ』っていうのを、君達の音楽で伝えるんだ。多分これが、俺達が考えうる1番良い方法だ」

 

 

 そう言って山城君はチケットを私に差し出した。

 

 

「簡単じゃないし、辛くてしんどい思いをすると思う。なんなら、今親父さんと話すって想像しただけで怖いだろうしな」

「……」

 

 

 彼の言う通りだった。

 

 いい案だと思う。もしかしたら上手くいくかもって思う。

 

 

 

 

 

 でももし……もしそれでもダメだったら? 

 

 バンド活動も認められず、皆に謝れないまま、華道の道を進まなきゃいけなくなる。

 

 そう考えると……物凄く怖い。

 

 

「――でもな」

 

 

 そんな不安な気持ちを払うように、山城君は一呼吸置いて言葉を続けた。

 

 

「そんな辛くてしんどい先には……頑張った先には、今の自分じゃ想像できないような喜びが待ってる」

 

 

 優しそうに笑い、私をじっと見つめている。いつも練習で見せる、人を安心させる笑顔。

 

 

 君ならできる――そう言ってるような、優しさと共に力強さを感じるその表情に、私は勇気づけられた。

 

 

 本気の想いをお父さんに伝えるために、私はそのチケットを受け取った。

 

 

 

 

「……ありがとう。あたし、頑張ってみる」

「おう。――じゃあ、戻ろっか」

「うん。皆にも謝らないと」

「だな。今の美竹さんなら大丈夫」

 

 

 パッと立ったことで、私達の影が地面に映る。もちろん体の大きさが違うから、影の大きさも違う。

 

 

 でもそれ以上に、その器の大きさを表すかのように、彼の影は大きかった。

 

 

 夕日に照らされた川沿いの道を、2人分の伸びた影が歩き始めた。

 




 
 読んでいただき、ありがとうございました。

 カキツバタの花言葉は「幸福が来る」、「幸せはあなたのもの」です。花の姿が幸福を運んでくる燕を思わせることから、これらの花言葉がつけられたそうです。蘭、そしてAfterglowのメンバーへの、主人公からの応援の言葉という意味で、タイトルに選ばせていただきました。

 話は変わりますが、今回お気に入り登録者数が100を突破したこと、そしてそのお礼を活動報告に書かせていただきました。もしお時間がございましたら、見に来てくださると嬉しいです。

 それでは次回もよろしくお願いいたします。

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