Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 新たにお気に入り登録をしてくれた皆様、☆10評価をくださったファイふぁい様、ありがとうございます!! ☆10と温かいコメントでアーナキソ……

 記念すべき(?)Afterglowキャラエピソード一番手は……ひまりちゃんです!

 かなり話が長くなってしまいました(8000字程度)上に、少し読みづらいかもしれません……。ですがAfterglow編のメインヒロインということで、気合を入れて書かせていただきました。

 それではどうぞ!


P.S 途中のあるシーンでの服装は、W〇GOとのコラボ服をイメージしてもらえると分かりやすいと思います!


第21話 リーダーのカタチ

 スマホの充電……よし。

 

 集合場所……よし。

 

 服の組み合わせ……多分よし。

 

 時間……よし。

 

 

「(楽しみ過ぎて早く着すぎちゃったよお……。でも待たせるのは申し訳ないし、これくらいがいいよね! でも流石に30分前に来たのはちょっと早すぎたかな……)」

 

 

 今日は待ちに待った、貴嗣君とのデート! ……なんだけど、緊張がヤバい……。

 

 

 ううっ……さっきから心臓バクバクだし、ちゃんと貴嗣君と話せるかなあ……?

 髪型と服気合入れたけど……気づいてくれなかったらどうしようかな……泣いちゃいそう……。

 

 

「(あれ……あそこに誰か……?)」

 

 

 あそこでこっちに手を振ってる人……! た、貴嗣君だ……!!

 

 

「ひまりちゃんおはよう。ごめん、待たせちゃったかな?」

「う、ううん! 全然! 今来たばっかりだから大丈夫だよ! 決して30分前から待ってたとかじゃないから安心してっ!!」

「さ、30分……?」

「あっ……い、いや、その……」

 

 

 ななな、何言っちゃったの私のバカ!! これじゃあ貴嗣君気にしちゃうじゃん!!

 

 

「まじか……待たせちゃってごめんな?」

「あ、いや、その……大丈夫だから気にしないで!」

 

 

 ほらぁ……やっちゃったよぉ……。貴嗣君優しいし、絶対気にしてるよね……。

 

 

「長い間待っててくれてありがとう。ここ、駅の入り口でなんか結構風強いし、今日涼しいからその服だったら寒かったんじゃない?」

「そ、そうかな? 別にそんな……ひゃうっ!」

 

 

 か、風が冷たいー!!

 

 この前買ったばっかりの服だけどこれちょっと生地が薄いから、今日みたいに涼しい日にはちょっと寒い……。服選び失敗しちゃったかな……。

 

 

「寒いのに待っててくれたんだよね。お詫びの気持ちになるか分からないけど……はい、どうぞ」

「えっ……」

 

 

 あれ、なんかあったかい……なにこれ、上着……?

 

 これ、貴嗣君の……っ!?

 

 

「おっ、さすが紺のカーディガン。どんな色にも合いますなー」

「えっ、ちょ、えっ……!?」

「そのカーディガンいいでしょ。今寒いだろうから羽織っといて。大分マシになると思う」

 

 

 わ、私に自分のカーディガン掛けてくれた……!! こ、これって、一昨日見た恋愛ドラマで主人公がヒロインにやってたのと同じやつ……!!

 

 

「!?!?///」

「あはは、サイズ大きいから袖の所結構余っちゃってるね。そこはこう、めくってあげると……」

「ひゃう!?///」

「! わ、悪いっ。急に触られると嫌だよな。すまん、迂闊だった……」

「う、ううん……大丈夫……だよ……///」

「……そ、そっか。えっと、もう片方もこうやって……ほら、良い感じだ。上は白で下はデニムスカートだから、カーディガン羽織っても違和感ないね」

「そう、かな……? えへへ、ありがとう! この上下、この前Afterglowの皆で遊びに行った時に買ったんだよ」

「そうなのか。いいよな、その組み合わせ。俺も好きだよ。やっぱ明るめの色似合うね」

「ほ、ほんと!? やったー! ありがとー!」

 

 

 やったあー! ファッション褒められたー! 嬉しいな~!

 

 

「その髪型はえっと……サイドくるりんぱってやつか。やっぱ雰囲気変わるね」

「そ、そう? ちょっと変えてみたんだ~。どう……かな?」

「いいと思うよ。俺は結構好きかな」

 

 

 す、好き……!!??

 

 

「えへへ……/// やったあ……///」

「(ふにゃふにゃになっとるな)――あっ、もうこんな時間か。そろそろ切符買いに行こっか」

「うん! それじゃレッツゴー!」

 

 

 ふんふふ~ん! 頑張ってお洒落してきた甲斐があったよ!

 

 折角のデートなんだから、今日は目一杯楽しんじゃおっと!

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 2駅先で降りた後に歩くこと15分。今日の目的地である喫茶店に来ていた。最近SNS上で注目を集めている店だ。ここはうちや羽沢喫茶店とはまた違った、明るくて賑やかな雰囲気が特徴だ。

 

 

 さて、どうして人気を集めているのかというと――

 

 

 

 

 

「おまたせしました。本店特製のストロベリーパフェと、チョコバナナパフェでございます」

「わあ~美味しそう……!」

 

 

 それはこの店でしか食べられないパフェである。女の子なら無視することはできないスイーツ、その中でもスイーツピラミッドの高位に位置するであろう(?)パフェだ。見た目良し味も良しとなれば、もう若者の間で人気が出ないわけはないだろう。

 

 

「貴嗣君のチョコバナナパフェも美味しそうだね!」

「だね。まさかこんなにボリュームがあるとは思わなかったよ」

 

 

 これが今日のメイン、“巷で噂のスイーツを食べに行こうの旅”である。ひまりちゃんの要望で、今日俺達はこの喫茶店に来ているのだ。

 

 

「よし、じゃあいただこうか」

「うん! それじゃあ――」

「「いただきます(!)」」

 

 

 スプーンでチョコがかかったバナナを一口サイズに取り口に運ぶ。

 

 うん……! これ、美味しいぞ……! 食べる前はちょっと甘すぎるかなと思ったけど、チョコが少し苦めなおかげでバナナの甘さが際立っている。俺の大好きな優しい味だ。

 

 

 いかん、このままだと……

 

 

「あぁ~……めっちゃうまいぃ……」

 

 

 うますぎてとろけてまうわ……。

 

 

「(貴嗣君、すごい顔がふにゃふにゃになってる……!!)」

「……はっ! あかん、うますぎて意識が飛んでたわ……」

「(しかも関西弁出てる……!! 関西弁の貴嗣君もいい……!)」

 

 

 いかんいかん、さっきから気が緩み過ぎだ。恐らく今俺の顔は油断しきっていることだろう。相手が信頼できるひまりちゃんだから……というのが一番強いだろうが。

 

 

「(……ん?)」

 

 

 また1口食べようかと思ったのだが、そこで妙に視線を感じた。ひまりちゃんが俺の頼んだパフェをじーっと見つめていることに気が付いたのだ。まるでおもちゃ屋さんで欲しいおもちゃを凝視する子どもみたいに、俺と俺が注文したパフェを見つめていた。

 

 

「俺のパフェ食べる?」

「えっ!? いいの!?」

「もちろん。はい、どうぞ」

 

 

 俺はひまりちゃんに自分のチョコバナナパフェを渡した。だが――

 

 

「あっ……///」

「あれ? もしかしたら嫌いなものでも入ってた?」

「ううん!! そうじゃなくて……えっと……/// 1つ、お願いしてもいいかな……?」

「俺にできることなら遠慮なく」

 

 

 何故か遠慮がちに聞いてきたひまりちゃん。顔も赤いし、何か恥ずかしいことをお願いしてくるのかと考えていると、ひまりちゃんが口を開いた。

 

 だがそのお願いというものは、自分の想像を大きく超えるものだった。

 

 

 

 

 

「あ、あのね……打ち上げの時のモカみたいに……た、食べさせて……くれませんか……///」

 

 

 俯いて両手を膝の間に入れてモジモジしているひまりちゃん。そのせいで今まで気にしないようにしていた、彼女の持つ最大の武器――何とは言わないがその豊満なものが二の腕あたりでギュッと強調されることとなり、思わずそちらに視線が行きそうになる。

 

 

「……ああ、もちろん。このくらいでいいかな……。はい、あーん」

「!!/// あ、あーん……///」

 

 

 ギュッと目を瞑り小さな口を開けて待っているその姿を見て、可愛らしいと思うと同時に、ほんの一瞬とてつもなく扇情的な何かがこみあげてくるが、そこは冷静に抑える。

 

 

「……どう?」

「うんっ……/// お、美味しい……/// (うぅ……味なんて分からないよお……///)」

「よかった。もう一口食べる?」

「……お、お願いします……///」

 

 

 再度パフェをとり、ひまりちゃんに食べさせる。

 

 別にあーんなんて香澄にもおたえにもやったことあるんだし、なんなら家で真優貴に毎日ねだられてるんだ。だから別に焦ることはない。大丈夫だ。

 

 

「そうだ。ひまりちゃんのストロベリーパフェも食べてみていいかな?」

「私の……? う、うん……! 大丈夫だよ!」

「ありがと。じゃあ、ちょっと失r――」

「あっ、ちょっと待って!」

 

 

 俺がパフェをこちら側に持ってこようとしたら、すごい勢いで止められた。

 

 

 そして、ひまりちゃんは自分のスプーンでパフェをすくって――

 

 

「は、はい……あーん……///」

「……! あーん」

「ど、どう……?」

「……! おお、このいちご、めっちゃうまい!」

「そ、そうだよね! いちごの何とも言えない甘さがたまらないよね!」

「そうそう! それにクリームもついてるし、甘さ全開だな」

 

 

 まさかのあーん返しである。流石に一々狼狽えていては進まないので、気持ちを切り替えてパフェをいただく。

 

 このいちごのパフェもめちゃくちゃうまい。バナナパフェとは違った甘さがたまらない。

 

 

「もう一口もらってもいい?」

「うん! はい、あーん!/// (なんかカップルみたいでドキドキする……///)」

「あーん……ああ、この甘さも好みやなあ~」

「だよねー! 貴嗣君って甘いもの好きなの?」

「ああ、大好きだよ。特に冷蔵庫で冷やしたチョコが一番好きかも」

「あーそれ私もやる! 冷やしたら美味しいよねー!」

 

 

 そして気が付いたら甘いものについての話に。色々あったものの、お互いいつもの調子を取り戻すことができた。

 

 共通の話題で話も弾み、俺達はパフェを食べながら(時に食べさせながら)のんびり雑談を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「――でね、私がいっつも言うんだけど、皆『えい、えい、おーはちょっとね……』って言ってくるんだよ! ひどいと思わない!?」

「あははっ。確かにそれ使うのって子どもの時が多いから、蘭達がそう言う気持ちは分かるかも」

「うーん……やっぱりそうなのかなあ……」

「でも俺は良いと思うよ」

「ホント!?」

「うん。気合入るし。少なくともうちのメンバーは皆好きだと思うよ」

「やったー! ……でも、あれだよね、Silver Liningって本当に仲良しだよね」

「ははっ、ひまりちゃん達には負けるかもね。それにしても『えい、えい、おー』か。リーダーの意見なんだし、一考してくれてもいいのにね~」

 

 

 彼のリーダーという言葉に少しドキッとしてしまった。

 

 正直、私はリーダーとしてしっかりできてるかと聞かれると……自信を持ってはいとは言えない。貴嗣君を見ていると尚更そう思う。

 

 

「貴嗣君って本当にすごいよね。リーダーって感じ」

「そう? ありがとう……でも急にどうしたの?」

「私もAfterglowのリーダーだけどさ……ちゃんとリーダーできてるのかなって。蘭と巴が喧嘩したときも止められなかったし、つぐが倒れたときも怖くて、巴に言われるまで何もできなかったし……」

 

 

 少し前の出来事、スタジオで練習してた時に喧嘩になって、蘭が飛び出していっちゃった日のことを思い出す。

 

 あの時は貴嗣君の指示で、穂乃花ちゃんが私達の話を聞いてくれたから落ち着いたけど……もし2人が来てくれてなかったら……私、多分何もできないまま泣いてたかもしれない。

 

 

「なるほどなー。でもそうやって過去の出来事を受け止められる人は、必ず成長できると思う」

「成長……?」

「うん。そうやって悩むのって、自分はどうしたらいいのかって考えてる証拠じゃない?」

「あっ……」

 

 

 ちょっと難しいけど、なんとなく貴嗣君が言っていることは分かる。

 

 

「過去と向き合うのは、とても勇気がいることだからね」

「過去と……向き合う……」

 

 

 貴嗣君は窓の外を見ながらそう言う。

 

 表情は良く見えないけれど、なんとなく、ほんの少しだけ、寂しそうな声だった。

 

 

「それに、俺はAfterglowのリーダーはひまりちゃんじゃないとダメって思うな」

「……えっ?」

 

 

 貴嗣君はミルクを混ぜ終わったコーヒーを飲みながらそう言った。そして私の方を見ながら優しく笑ってくれた。

 

 

「常に元気で明るく、気立てがいい。良い意味で癖の強いAfterglowのメンバーをしっかり理解して、思いやりを持って行動できる」

「思いやり……」

 

 

 低く落ち着いた声が、すうっと私の中に入って来る。

 

 

「リーダーって言っても色々あると思うんだ。先頭に立って皆を引っ張るのがリーダーって皆思いがちだけど……皆と手をつないで一緒に走るっていうのも、1つのリーダーの形だって俺は思う」

 

 

 温かくて、優しい声。

 

 この前まで練習でいつも聞いていた声だけど、こんなに近くで、しかも2人きりだからか、私はいつもよりドキドキしていた。

 

 

「ひまりちゃんはその元気でポジティブな性格で、皆と一緒に頑張るリーダーなんだって思ってる。一生懸命皆のために頑張ろうとするその姿は、紛れもなくリーダーだよ」

「……!!」

「それはとても素敵なこと。だから自信持ってね」

「……うん……!!」

 

 

 そっか……! 

 

 前に出るんじゃなくて、皆と一緒に走るリーダーっていうのも……いいんだよね!

 

 

「貴嗣君! ありがとう!」

「おう。やっぱひまりちゃんは元気一杯なのが一番だよ」

「えへへ……///」

「お互いリーダー同士、頑張ろうな」

「うん! ――あっ、もうこんな時間!」

「ありゃ、ほんとだ。じゃあ次の目的地に行きますか」

「はーい!」

 

 

 さっきの沈んだ気持ちが嘘みたいに楽しい気分で、私達は喫茶店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「ひまりちゃん。これなんかも合うんじゃないかな? ピンクのチェック柄シャツだけど」

「わあ~……! これいいかも! 試着してきてもいい?」

「もちろん」

 

 

 あの後俺達は、この街のショッピングモールの中にあるWEG〇に来ていた。うむ、やっぱり服はどれだけ見てても飽きない。

 

 

「じゃーん! どうかな?」

「……すげえ」

 

 

 目の前にいるのは、ベージュの帽子にこれまたベージュ色のシャツ、その上にピンクのチェックシャツを羽織り、デニムスカートに茶色のブーツを纏ったひまりちゃん。もうどっからどう見ても美少女だ。

 

 

「いや、ほんとに似合ってるね」

「もちろん! だって貴嗣君が全部選んでくれたんだよ!」

 

 

 どうやらひまりちゃんは満足してくれているようだ。クルクルと回って色んな角度から鏡を使って自分の姿を確かめている。

 

 

 それにしても夏服だからしょうがないのだが、やはり生地が薄い。そのせいで彼女の色気の象徴であるそれ(・・)がさらに強調されることになり、否が応でも意識してしまう。首から掛けているネックレスもあり、その谷間のラインがよりはっきりしている。

 

 

「(一緒に遊んでくれてる女の子に対して何考えてるねん……失礼すぎるやろ……)」

 

 

 自分の下心に内心あきれていると、新しいコーデを満喫し終えたひまりちゃんが話しかけてきた。

 

 

「じゃあ今度は貴嗣君の服選んでもいいかな?」

「えっ? いいのか?」

「もちろん!」

 

 

 ひまりちゃんは満面の笑みでそう言ってくれた。断る理由もないので、早速コーデを考えてもらうことにした。

 

 

「あっ、このVネックいいかも! これに開襟シャツと……そうだ! ワイドパンツ! 貴嗣君って上品なコーデ多いよね? 今日も下はスキニーだし」

「そうなんだよねー。どうしてもカジュアルから離れちゃうんだ。ひまりちゃんは逆にカジュアルすごく合うから、良い感じのを選んでくれると嬉しいかな」

「まっかせといてー!」

 

 

 あれもいいなー! これもいいなー! と店の中を回りながら、俺に合いそうな服を選んでくれた。それを持って試着室に向かった。

 

 

「どうかな? 違和感ない?」

「!!」

「ど……どした……?」

「すっごい似合ってるよ! すごい! キレイめのコーデもいいけど、こっちは親しみやすいって感じかな!」

「おお……。確かに、俺もこれめっちゃ好きかもしれん」

 

 

 ひまりちゃんが選んでくれたのは、白のVネックにオレンジの開襟シャツ、黒のワイドパンツだ。ワイドパンツは楽で気持ちいいし、シャツのオレンジがアクセントになってなんかこう、すごくいい感じ。

 

 

「オレンジの服は持ってなかったなあ。明るい色でハマるかも」

「うん! 結構合ってると思ったんだー!」

「さすがだね。じゃあ選んでくれたの買うわ。ありがとね、ひまりちゃん」

「うん!/// じゃあ一緒にレジに行こうよ!」

「そうだね。行こっか」

 

 

 お互い相手に選んでもらった服を持ってレジに向かった。丁度セール期間だったので、思ったより安く買うことができた。

 

 

「よし。じゃあ駅に向かおうか」

「うん! そろそろ夕方だしね!」

 

 

 パフェも美味しくいただいてファッションも楽しんだ俺達は、帰るための電車に乗るためにショッピングモールを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 ――皆と手をつないで一緒に走るっていうのも、1つのリーダーの形だって俺は思う

 

 

 ――皆をしっかり理解して、思いやりを持って行動できるのがひまりちゃん

 

 

 ――それはとても素敵なこと。だから自信を持ってね

 

 

 

 

 

 ガタンゴトンと揺れる電車の窓から流れていく景色を眺めながら、今日隣に座っている憧れの男の子に言われた言葉を思い出す。

 

 

 初めて貴嗣君のことを知ったのは、花咲川の友達がSNSに上げていたライブ映像。ステージの上でギターを弾きながら歌っている姿を見て、すごい人だと思ったのが最初の印象。

 

 

 それでその友達に彼の写真を見せてもらったときに、一目惚れ……はちょっと大袈裟だけど、それに近いものを経験した。短髪でキリッとした顔に優しそうなたれ目。完全に私のタイプだった。

 

 

「(……貴嗣君に会ったのは、それからすぐだったっけ……)」

 

 

 つぐのお店に貴嗣君が来た時はびっくりしたなあ……。だって推しが目の前にいるんだよ!? すごくない!?

 

 

 それでAfterglowの練習を見てもらうことになって、彼と話す機会も増えた。

 

 

 その真面目そうな雰囲気からは想像ができない程、本当にフレンドリーで話しやすい男の子だった。私達が抱える問題にも真剣に向き合ってくれて、練習初日に言っていた通り、最後まで責任を持って私達の面倒を見てくれた。

 

 

 

 そうやって彼と過ごしていく中で、いつからか、カッコいいなあと思うようになった。

 

 

 いや、元々カッコいいって思ってたよ? 外見じゃなくて、性格の話だよ!

 

 

 いつも堂々としてて、優しくて……。ガルジャムが終わっちゃって、学校も違うし会う機会が減るのが嫌で、勢いに任せてデートに誘っちゃった。すごく楽しかったし、なんならずっとこの時間が続けばいいのになって思う。

 

 

 初めはただの憧れだったけど……今日一緒に沢山笑ってくれて、励ましてくれて……パフェを食べさせ合ってるときなんてバカップルにしか見えなかったし、そう見られたらいいなー……なんて思ってる自分がいた。

 

 

 多分もうこれって……ただの憧れじゃないよね……? 

 

 

「ねえ貴嗣君」

「ん?」

「今日は一緒に遊んでくれて……ありがとう///」

「うん、どういたしまして。誘ってくれてありがとね。楽しかった」

「ほんと? えへへ……やったっ///」

 

 

 ほら、またこうやって楽しかったって言ってくれるんだもん。また顔熱くなっちゃう……。

 

 

 ほわ~っとした気持ちいい感覚を味わっていると、突然電車がガタン! と大きく揺れて、貴嗣君にもたれかかってしまった。

 

 

「ひゃあっ!」

「おっと……。結構揺れたね。大丈夫?」

「う、うん……///」

 

 

 貴嗣君の大きな体が私を受け止めてくれた。けど私達が座っているのは電車の2人席だ。ただでさえ距離が近いのに、今私が貴嗣君の方に寄って密着してしまい、彼の肩に頭を乗せている状態になっている。

 

 恋愛映画みたいなシチュエーションに、頭がボーっとしてくる。さっきからドキドキが止まらないけど、チラッと貴嗣君の顔を見上げてみると、いつも通りの落ち着いた顔をしている。

 

 

 だから思わず聞いちゃった。

 

 

「貴嗣君さ……その……結構女の子と遊びに行ったりしてるの?」

「急にどうした?」

「あ、あの……女の子に密着されても大丈夫なんだなーって思って……ほら、今みたいに……さ?」

「あー……そういうことね。ほら、俺中学の時留学してたって言ったでしょ? 海外って日本と比べて距離感すっごく近いからさ、3年もいたら何だかそっちに慣れちゃって」

「へ、へえ~……そうなんだ……」

 

 

 てことは中学生の時、こんなシチュエーションを沢山経験したから落ち着いて……うぅ……ちょっと胸の奥がチクチクする……

 

 

「でも誰とでも遊びに行くってわけじゃないよ」

「……えっ?」

「特に今日みたいに2人きりってなると、もっと仲良くなりたい人としか行かない……って当たり前か。まあその、何つーかさ……」

 

 

 少し歯切れが悪い貴嗣君。珍しいというか、今までこんな貴嗣君は見たことが無い。

 

 

「女の子となら誰とでも~……って軽い気持ちではないってこと。今日もそう」

「今日も……? じゃ、じゃあ私と……?」

「うん。折角誘ってもらったってのもあるけど、やっぱりひまりちゃんともっと仲良くなりたいなって思ってさ」

「……!!」

 

 

 貴嗣君……そんな風に思っててくれてたんだ……!!

 

 へへっ……やっぱり、敵わないなあ……///

 

 

「……私ね、今日貴嗣君と一緒にパフェ食べたり、リーダーのこと励ましてもらったり、服選んでもらったり……すごく楽しかったんだ。1日私と遊んでくれて……ありがとう」

「どういたしまして。俺も楽しかったよ」

「うん。……駅に着くまで、このままでも……いいかな?」

「いいよ。どうぞ」

「やった……! えへへ……///」

 

 

 貴嗣君の肩に頭を置いて、体重を少しだけかける。

 

 

 ただの憧れじゃなくなったこの気持ち。多分これからどんどん彼を想う気持ちが強くなってくるんだろう。そう思うと少し怖いけど、今はこのポカポカとした気持ちに浸っていたい。

 

 

 傍から見れば、今の私達は恋人同士。でも実際は違う。

 

 

 いつか、本当の恋人になれたらいいなーなんて甘酸っぱい願いを抱きながら、私は彼に密着する力をほんの少しだけ強くした。

 

 




 
 読んでいただき、ありがとうございました。Afterglow編のメインヒロイン、ひまりちゃんの話でした。

 「リーダーとしての在り方に悩むひまりちゃん」の描写に挑戦してみたのですが、如何でしたでしょうか? 悩む姿があるからこそ、デートを楽しむひまりちゃんがより可愛らしく見えたらいいなー……という想いをこめて、執筆させていただきました。

 これからは2~3日に1本のペースになります。ご了承ください。それでは次回もよろしくお願いいたします。

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