Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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何だかUAがいつもより伸びてるなーって思ったら……バンドリ小説の週間総合評価で一番上に来るようになってました……!! いつも見てくださっている皆様、そして新しくお気に入り登録をしてくれた皆様、ありがとうございます! 本当は2、3日空ける予定だったんですけど……この勢いの乗っかるしかねえ!

 Afterglowのキャラエピソードの2人目は、つぐみちゃんです! タイトルもそうなんですけど、今回ちょっと哲学チックかもしれません。

 それではどうぞ!


第22話 「普通」って何だろう?

 

 

 ヨーロッパ風の建物を想像させる煉瓦造りの外観。大きな窓から見える店内には、綺麗な木製の床やテーブルが見られ、落ち着いた雰囲気を作りだしている。

 

 

 目の前のドアにはOPENの札、そして“Stern Hafen”の文字。

 

 

 前から来たいと思っていた、貴嗣君のお母さんが経営している喫茶店。自分の家の店とどこが違うのか気になるというのもあるけど、単純に1人の女の子として、このお洒落な喫茶店に行ってみたいという気持ちのほうが大きい。

 

 

 ドアを開けると、チリンチリンと涼しそうな鈴の音が聞こえた。

 

 

「ああ、つぐみちゃん。いらっしゃい」

「貴嗣君! こんにちは!」

「今はお客さん少ないから、お好きな席にどうぞ」

「うん!」

 

 

 出迎えてくれたのは、この前までずっと私達Afterglowの練習を見てくれていたSilver Liningの山城貴嗣君だ。今日は店の手伝いをしているらしく、髪を整えていてエプロンも着けている。ちょっと新鮮だ。

 

 

 小さな2人席に座り、メニューを見る。

 

 すごい……このメニュー、全部手書きだ……!

 

 それに、メニューのひとつひとつに写真が載っていて、飲み物とか料理の見た目が分かるようになってる! わあ~……このサンドイッチ美味しそう……。

 

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 

 頼もうとした瞬間に貴嗣君に声を掛けられた。こ、心が読めるのかな……?

 

 

「えっと、このホットコーヒーとサンドイッチをお願いします」

「はーい。すぐに作るから、ちょっと待っててね」

 

 

 そう言って貴嗣君は厨房に向かった。待っている間に、ぐるっと店の中を見てみる。お客さんが少ないっていうのもあるんだろうけど、口コミ通りの穏やかな雰囲気がすごくいい。流れているBGMも優しいテンポで、とても落ち着く。

 

 

「お待たせしました。ホットコーヒーとサンドイッチです」

「ありがとう。わあ~……良い香り……」

「甘い味のする豆を使って淹れたけど、苦かったら言ってね」

「えっ、いいの?」

「もちろん。つぐみちゃん、苦いの苦手でしょ?」

 

 

 遠慮しなくていいからねと笑って言ってくれる貴嗣君。私が苦いの苦手だって言ってないんだけど……。

 

 

「やっぱり……心が読めるの……?」

「……急にどうした?」

「う、ううん! ごめん変なこと言って! ……私が苦いの嫌いだって、どうして分かったの?」

「苦いの……? ああ、そういうことね!」

 

 

 貴嗣君はポンと手を叩く。

 

 

「ほら、打ち上げしたときに花蓮とコーヒーの話してるときにチラッと言ってたでしょ?」

「……あっ! 確かに花蓮ちゃんとそんな話した……」

「昔から耳はいいんだ。盗み聞きみたいになってごめんな?」

「ううん、大丈夫だよ! 覚えてくれててありがとう。それじゃあいただくね?」

 

 

 一口飲んでみる。

 

 ……!! なにこれ、甘くて美味しい……!!

 フワ~っと甘い風味が口の中に広がって、喉通りもすっきりしてる!

 

 

「お気に召したようでなにより。頑張って淹れた甲斐があるってもんだよ」

「えっ!? これ、貴嗣君が淹れたの……!?」

「うん。店の手伝いをするときは淹れるんだ。結構美味しいって評判なんだよ?」

「すごい……!!」

 

 

 結構どころか、すごく美味しいよ……!

 

 この味……はまっちゃいそう……。

 

 

「貴嗣~。そろそろ休憩よ~」

 

 

 コーヒーを味わっていると、店の奥から綺麗な女性が出てきた。

 

 

「えっ、もうそんな時間か。次はいつ入ればいい?」

「今日はもう大丈夫よ。手伝ってくれてありがとう。ゆっくりしてちょうだい」

「そっか。でも今日予定もないしなあ……」

「あら。じゃあお友達と一緒にコーヒーでも飲むのはどうかしら?」

 

 

 その人は私の方を見てニコッと微笑んでくれて、私は思わずペコっと座ったまま礼をしてしまった。

 

 

「ふふっ。ご丁寧にありがとう。貴嗣の母の真愛(あい)です。貴嗣のお友達かな?」

 

 

 お、お母さん!?!? す、すっごい美人……!!

 

 貴嗣君は黒髪だけど、お母さんは綺麗な茶髪だなあ……。でも目元とかほんとそっくり……。

 

 

「は、はじめまして! 羽沢つぐみといいます!」

「つぐみちゃんね。貴嗣と仲良くしてくれてありがとう。今日はゆっくりしていってね」

「は、はい! ありがとうございます!」

「ほーら、貴嗣もエプロンとって休憩しなさい。女の子を待たせるのは許さないわよ?」

「はいはい、そんな焦らなくても大丈夫だよ。――つぐみちゃん、相席してもいいかな?」

「うん! もちろんだよ!」

 

 

 そしてお母さんと楽しそうに話をしながら、貴嗣君は着替えるために控室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 さて、店の手伝いが終わりフリーとなった俺は今、本日うちに来てくれている羽沢つぐみちゃんと一緒にコーヒーを飲みながらのんびりお話をしていた。

 

 

 真面目で礼儀正しく、他人を常に気遣える心優しい女の子だ。そしてとても頑張り屋さん。頑張りすぎて無理をしてしまうこともあるが。

 

 

「貴嗣君っていつからお手伝いしてるの? 高校に入ってから?」

「いや、手伝いを始めたのは中学生からかな。今みたいに頻繁に手伝いをしてたわけじゃないけど」

「あれ? でも貴嗣君、中学の3年間は留学してたんだよね?」

「そうそう。向こうの学校の長期休暇の時にこっちに帰ってきてたんだけど、その時にね」

「へえ~……やっぱりその頃から頑張り屋さんだったんだね」

「つぐみちゃんみたいに?」

 

 

 俺がそう聞くと、つぐみちゃんの動きがピタッと止まった。

 

 

「わ、私? や、やだな~……私なんてまだまだだよ」

「バンドやってて、生徒会にも所属してて、おまけに店の手伝いもしてるんでしょ? めっちゃ頑張ってるじゃん」

「で、でも……貴嗣君だってバンド活動に店の手伝い、アルバイトもしてるんでしょ? 私よりもっとすごいよ!」

「ははっ。そんなに褒められるとは。ありがとね」

 

 

 さっき自分で淹れたコーヒーを味わいながら、次はどういったことを話そうかと頭を回転させる。

 

 

「俺がやってるのって、バンド・手伝い・アルバイトの3つでしょ? じゃあ、つぐみちゃんだってバンド・生徒会・手伝いの3要素持ってるよ? 同じようなもんじゃない?」

「そう……かな……でも、蘭ちゃん達のほうがもっと頑張ってるよ?」

 

 

 少し苦味を抑えるために、机の上にある角砂糖を1つ入れてかき混ぜる。自分の分だからいいものの、ちょっと失敗したなこれ。

 

 甘くなーれと思いながら、先ほどのつぐみちゃんの発言をもう一度頭の中でリピートする。そして、さっきからずっと気になっていることを聞いてみた。

 

 

「1つ質問してもいい?」

「えっ? うん、いいよ」

「――どうしてさっきから自分と他人を比べてるの?」

「……えっ……?」

 

 

 思いもよらない質問をされて、何を聞かれているのか分からないといったご様子のつぐみちゃん。

 

 

「気付いてる? さっきからつぐみちゃん、他人のことは褒めまくってるけど、自分のことになると『でも』って言って話切り替えてる」

「……えっ……その……」

「ああっ、ごめんごめん! いじめてるとか怒ってるとか、そういうのじゃないよ!」

 

 

 聞き方が悪かったと心の中で反省しながら、ゆっくりとつぐみちゃんに話しかける。

 

 

「他人と自分を比べるのが悪いっていうんじゃないけど、つぐみちゃんは自分を追い込みすぎじゃないかなーと思ってさ」

「……その……私は皆と違って普通だから……。蘭ちゃんやモカちゃん、ひまりちゃんや巴ちゃんみたいに、特別優れているものがないから……。皆の足を引っ張らないように、私は人一倍頑張らなきゃって……」

 

 

 俯いて、自分の想いを話してくれたつぐみちゃん。

 

 

 やっぱりそうだ。この子は周りと自分を比べすぎている。自分と周りを比較してしまい、皆のために努力するのだが、それが結果的に自分を傷つけてしまっている。

 

 

 本当にこの子はいい人なんだろう。

 

 

「なるほどな。皆のために自分を奮い立たせて頑張れる……それは本当にすごい」

「そう……かな……」

「そう。誰かのために努力するって、誰でもできることじゃない」

「……」

「それに、つぐみちゃんが自分のことを普通って思うんだったら、俺も普通の人間だな」

「えっ?」

 

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。

 

 

「例えば店の手伝い」

 

 

 手元にあるコーヒーのカップを指さす。

 

 

「俺はお店に来てくれるお客さんたちを喜ばせたいから、お母さんの手助けがしたいから店の手伝いを始めた。始めはホール、接客だ。……敬語は滅茶苦茶、メニューなんて全然覚えられない、注文が多いとパニックになる。それが中学1年の時の俺」

「中学1年の時の……貴嗣君……」

 

 

 つぐみちゃんは集中して話を聞いてれる。本当に真面目なんだなーと思いながら、俺は話を続ける。

 

 

「そんな俺を周りの人達は、家族は、いつも励ましてくれた。『大丈夫だよ』、『頑張ってるね』って。俺はなんとかして皆に恩返しがしたかった。皆のために、俺は必死に努力した。敬語はネットとか本を読み漁り、メニューは紙に何回も書きながら口にだして覚えた。どうしたらパニックにならないか、母さんや真優貴にも聞きまくった」

 

 

 窓に映っている自分の顔を見ながらそう話した後、またつぐみちゃんの目を見る。

 

 

「それを今までずっと続けてきたのが今の俺。ギターと歌も一緒。始めは何にもできなかった。だから必死で努力して、その甲斐あってここまで来た」

「必死で……努力……」

そういう視点で見たら(・・・・・・・・・・)、俺は紛れもない普通(・・)じゃないかな?」

 

 

 つぐみちゃんは難しそうな顔をして考え込んでいる。多分このまま話を続けても、彼女は悩み続けるだけだろう。アプローチを変えてみよう。

 

 

「オッケー、じゃあちょっと切り口を変えて……お絵かきターイム」

「お、お絵かき……?」

 

 

 そう言って俺は紙とペンをテーブルの上に出した。

 

 

「この紙にいちごケーキを書いてくれる?」

「いちごケーキ?」

「そう。いちごケーキ。自分が思ういちごケーキを書いてみて。書き終わったらお互い見せ合おうか」

 

 

 お互いに紙に自分の想い浮かべるいちごケーキを書く。

 

 

「書けたよ」

「おっけー。じゃあ、せーの――」

「「どん」」

 

 

 紙を裏返して、自分の書いたいちごケーキの絵を見せあう。

 

 

「……あれ……?」

「……いいねえ。ばっちり」

 

 

 つぐみちゃんは真ん丸の大きなケーキを書いてくれた。でも俺は――

 

 

「……貴嗣君のは、ショートケーキ?」

「そう。いちごケーキ。つぐみちゃんのも、いちごケーキ」

「同じものを書いたはずなのに……」

「ここで問題が出てくるんだ。『同じものを書いたはずなのに、どうして絵が違うのか?』ってね」

 

 

 さて、この問題の答えに気付けるか……。

 

 

「うーん……絵は違うけど、私達が描いたのはいちごケーキ……っていうことは同じもののはずだよね?」

「おっ、いいね。そこまでは合ってるよ」

「……でも絵は違う……でも描いたものは同じはず……なのに違う……あ、あれ……? 何が何だか分からなくなってきた……」

 

 

 目をぐるぐるさせて混乱し始めた。

 

 

「オッケーオッケー! ……まさかそんなに真剣に考えてくれるは思わなかったよ。ほんといい子なのな」

「そ、そう……?」

「うんうん。ちょっと難しかったかな? これの答えなんだけど……『捉え方が違うから』なんだ」

「捉え方……あっ……!」

 

 

 どうやらつぐみちゃんは気付いたみたいだ。

 

 

「気づいたかな? 俺達は同じ『いちごケーキ』を書いた。でも書いたものは全く違うよね。当たり前だよな。“俺とつぐみちゃんは違う人間”なんだから」

「確かに……!」

「俺達は確かに同じものを考えた。けど形は違った。つまり、捉え方が違うんだ。心の中にあるイメージ・印象は人によって違うってこと。じゃあさっきの『いちごケーキ』を『普通』に置き換えてみると……?」

「……! 同じ『普通』でも、人によって捉え方が違う……?」

Exactly(その通り)

 

 

 どうやら俺の意図が伝わったみたいだ。

 

 

「同じ言葉でも、それをどう捉えるかは受け取る人次第。つぐみちゃんにとっての『普通』は、誰かにとっての『すごいこと』になるわけだ」

「私の『普通』が……誰かにとっての『すごいこと』……」

 

 

 一言一句を噛みしめるように、俺の言葉を口にするつぐみちゃん。

 

 

「『普通とは何か?』の答えは、ネットには『他と比べて特に変わらないもの』って書いてある。これは間違っていないと思う。でも、この基準って人や時代、環境や社会情勢によって大きく変わるものなんだ。今でこそ当たり前に使っているスマホも、20年くらい前は無かったんだし、別にそれが普通だったでしょ?」

「た、確かに……!」

 

 

 普通という言葉は、あまりにも曖昧なんだ。普通=特徴がない、秀でた所がないと捉えている人は多い。

 

 別にそれは間違っていないだろうし、悪いとも思わない。けれど、“秀でた所があることは良いこと”という考え方が、「普通」をコンプレックスにしてるんじゃないだろうか。

 

 

「――俺は皆と比べて特別秀でた能力とかなくても、それが悪いなんて1ミリも思わない」

「えっ?」

 

 

 だからこそ、目の前にいる頑張り屋さんには、自分を好きになってほしい。

 

 

「多分つぐみちゃんはアフグロの皆と比べて、自分は普通って思うんだよね?」

「うん……皆と比べたら……そう思う」

「その気持ちは俺もすっごい分かる。じゃあ視点を変えよう。つぐみちゃんは皆に迷惑をかけないように頑張ってるって言ってたよね」

「うん……」

「でもさ、そう思ったからいっぱい努力して、お店のお手伝いもできるようになったんだし、皆とバンドできてるんじゃないのかな? 思い出してみて。アフグロの皆を、お店に来てくれる人達を、そして自分達の演奏を見に来てくれた人達を」

 

 

 自分だけが持つ、“羽沢つぐみだけの考え”を持つことが大事なんだ。

 

 自分という存在に自信を持てるように――例え荒波が来たとしてもびくともしない、確固たる自分を持つために。

 

 

「……皆、喜んでくれてた…………あっ!」

「そう。皆喜んでくれた。でもそれって、自分を普通だと思って、それ故に努力してきたからじゃない?」

「普通だからこそ……頑張ってこれた……!」

「その結果、つぐみちゃんは色んな人達を笑顔にすることができたってわけだ。もちろんその中には俺も入ってるよ」

「貴嗣君も……?」

 

 

 コーヒーを最後まで飲み切り、つぐみちゃんの目をまっすぐ見る。彼女の真っ直ぐな性格を表しているような、綺麗なブラウンの瞳だ。

 

 

「俺はAfterglowの演奏が大好き。真っ直ぐで熱い気持ちを感じるから。それは巴のドラム、ひまりちゃんのベース、モカのギター、蘭の歌、そしてつぐみちゃんのキーボードがあるからこそ」

「……!!」

「あと忘れちゃならないのが、つぐみちゃんの前向きなところだな」

「私の?」

「いつも練習の時に『がんばろう!』って言ってたでしょ? ……俺さ、誰かが頑張る姿ってすごく好きなんだ。俺も力がもらえるから。俺が君達と楽しく練習できたのは、つぐみちゃんがいつも前向きでいてくれたからってのもあるんだよ。だから……ありがとうな」

「……!! うん……!」

 

 

 さっきうちのコーヒーを飲んでくれた時のような笑顔を見せてくれて、俺も嬉しい気持ちになる。

 

 

「だらだら楽しくない話をしてごめんね。でもどうかな? 『普通』に対する見方、ちょっと変わったかな?」

「うん! 今まで普通だからもっと頑張らないとって思ってたけど……普通だからこそできることも、いっぱいあるんだよね……!」

「そのとおり。これからは、普通っていうものを色んな視点で見てみてね。色んな発見があるよ」

「うん! 貴嗣君、ありがとう!」

 

 

 満面の笑みを見せてくれたつぐみちゃん。つぐみちゃんの真っ直ぐな笑顔を見て、俺も嬉しい気持ちになる。

 

 

「どういたしまして。つぐみちゃんの『普通』は、つぐみちゃんだけが持つ『色』。自分だけの個性だから、自信を持ってな」

「うん! よーし、頑張るぞー!」

 

 

 つぐみちゃんはそう言って、笑顔とガッツポーズの最強コンビを見せてくれた。可愛い。

 

 なるほど、これがモカが言ってた「ツグってる」ってやつか。いや~ツグってますねえ~。

 

 

「ねえ貴嗣君」

「ん?」

「もし私がまた自分に自信を持てなくなったときは……またここに来てもいいかな?」

 

 

 真っ直ぐ俺を見つめて、つぐみちゃんはそう聞いてきた。

 

 そんなの、答えなんて1つしかない。

 

 

「うん。いつでもおいで。……そうだ。もし来るときは事前に教えといてよ。コーヒー豆の準備して、時間かけて淹れとくからさ」

「えっ、いいの!?」

「もちのろん。ゆっくりコーヒーを飲みながら、今日みたいに雑談しよう」

「うんっ!」

 

 

 ……うっわ、めっちゃ笑顔可愛いなおい。

 

 

「……ねえ貴嗣君……まだ時間ある?」

「時間? ああ、時間なら今日はいくらでもあるけど、どうした?」

「……もうちょっと、お話ししてても……いいかな?///」

 

 

 恥ずかしいと感じているのか、つぐみちゃんは少しだけ顔を赤くして、ちょっと申し訳なさそうにお願いをしてきた。

 

 そんな可愛らしい天使のお願いを断るなんて、だれが出来ようか。

 

 

「全然大丈夫だよ。そうだ、じゃあ次はパンケーキ焼いてこよっか?」

「えっ……あのとろける美味しさで評判のパンケーキ……! いいの……!?」

「もちろん。じゃあ作ってくるから、ちょっと待っててね~」

 

 

 前向きで頑張り屋さんな天使のために、俺は再び厨房に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「普通は悪いことじゃない、か……」

 

 

 さっき貴嗣君に言われた言葉を復唱する。

 そんなこと今まで考えたこともなかった……というか、考えられなかった、のほうが正しいかな。

 

 

 でも貴嗣君の言葉で、今日私の中の『普通』の捉え方は少し変わった。今ではコンプレックスだったけど、別の視点から見てみれば、これは紛れもない長所なのかもしれないって。

 

 

 そういえば貴嗣君が初めて私のお店に来てくれた時、ずっと本を読んでたっけ。だから色んな考え方ができるのかな。本を沢山読む人って、物事を色んな視点で見れるって言うし。

 

 

 前からも思ってたけど、貴嗣君ってすごくしっかりしてるよね。考え方が大人っぽくて、まるで先生みたい。

 

 

 今日私と話してた時も、しっかり自分の考えを持ってて、だからこそ堂々としてて……。ひまりちゃんがカッコいいって思うのも分かるなあ。

 

 

「(私も……カッコいいって思っちゃった……)」

 

 

 貴嗣君に「自分だけの個性に自信をもってな」って言われた時……私もドキッとしちゃった。嬉しかったし、それ以上に、そんな貴嗣君に応えたいって思った。

 

 

 いつか貴嗣君みたいに、自分に自信を持てるように……「普通の女の子」である自分を誇りに思えるように、これからも前を向いて頑張るね。

 

 

 だから――

 

 

 

「はーい。お待たせ。本店特製のパンケーキだよ~」

「わあ~……! 美味しそう……!」

「作り立てだから最高だよ。じゃあ食べようか。さあ、おててを合わせて~?」

「ふふっ。貴嗣君、なんだか子どもみたいだよ?」

「……つぐみちゃんならノッてくれるかなって思ったんだけど。ピカチ〇ウのモノマネの時みたいにさ」

「あははっ!! あれはずるいよ~! ほんと面白かったんだからね!」

「すごいだろ~? またいつでもやってあげるよ」

「うん! またやってね! ……はい、おててを合わせて~?」

 

 

 

 

 

「いただきます」「いただきます!」

 

 

 

 ――見守っていてね、貴嗣君。

 

 

 




 
 読んでいただき、ありがとうございました。つぐみちゃんのお話でした。なんか今回デレが書き足りない気がする……(投稿者の感想)

 如何でしたでしょうか? つぐみちゃんのように、普通なことに悩む人って多いような気がします。でも見方や視点を変えたら、物凄く素敵な個性に生まれ変わるとも思っていて、今回それを軸に物語を書かせていただきました。

 ご意見、ご質問、ご感想を随時受け付けております。皆様がいつもどんな感じでこの作品を読んでくださっているのか結構気になる(楽しんでいただけているかちょい不安)ので、一言でも下さるとめっちゃ嬉しいです<(_ _)>

 それでは、次回もよろしくお願いいたします(多分次回は2、3日空きます)。

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