Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
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お待たせしました。Chapter 2.5のラストの回でございます。今までとは少し違った主人公の一面を描けたので、そこを楽しんでいただけると嬉しいです。
それではどうぞ!
「あの……2人のこと、つけたりしてすいませんでした……」
「ええよええよ~! 別に悪いことしてへんのやし! 気にしてへんから安心してー!」
お昼3時過ぎの、少しゆったりした時間帯。あの後ポピパの5人と貴嗣、そして貴嗣の姉である山城愛貴の7人はフードコートに移動し、アイスを食べながら雑談をしていた。
「なあ姉ちゃん」
「んー?」
「もう一回自己紹介したほうがええんちゃうの? ほら、さっき名前言うただけやしさ」
「確かにー」
ストロベリーアイスを食べながら、愛貴は貴嗣の提案に賛同する。スプーンを置き、丁寧に座り直してから、愛貴は香澄達の方を向いた。
「じゃあ改めて……
元気な声で自己紹介をする貴嗣の姉である山城愛貴。
肩にかかるくらいの長さの綺麗な髪を、サイドで三つ編みにしている。妹の真優貴と比べると少し暗めの茶色だ。
高校生と言われても分からないその顔は、大人の女性の雰囲気を持ちながらもどこか幼げだ。非常に整った、可愛らしい顔だ。
そして貴嗣、真優貴と同じく、その瞳は神秘的な銀色だ。貴嗣の優しそうな垂れ目とは対照的に、愛貴の目はキリッとしており、活発な女性という印象を与える。
「すごーい! 心理学! もしかしたら心とか読めちゃうんですか!?」
「ふふ~ん、気になる~? じゃあ香澄ちゃんの心を読んじゃうぞっ☆」
「きゃー!」
「(何この会話)」
黙々とアイスを食べながら、貴嗣は隣で騒いでいるテンションMaxの姉を横目で見ていた。波長が合うためか、香澄は愛貴の謎テンションに普通についてきていた。
「じゃあ、私が今思ってることを当ててみてください!」
「うーん……」
「(当てずっぽうで言うんやろなあ)」
「『今食べてるサワークリームのアイスが美味しい!』でしょ!」
「な……なんで分かったんですか!?」
「(当たるんかーい)」
心の中で1人ツッコミを入れる貴嗣。愛貴は勝ち誇ったようにドヤ顔をし、香澄は驚きと同時に感動で目をキラキラさせている。
「じゃあ、今度は私、いいですか?」
「いいよ~おたえちゃん! おたえちゃんはね……『今日の夕飯ハンバーグが良いなー』やな!」
「……! 本当に心が読めるんですね……!」
「(2回とも当たるとはたまげた)」
珍しくたえが驚いている。どうやらドンピシャだったらしい。
たえに関しては頑張ったら想像できそうな内容だったが、それでも答えを当てた愛貴に、貴嗣は心の中でわずかながらの賞賛を送っていた。
「ふふーん……ドヤっ!!」
「当てずっぽうでドヤ顔するんか……」
「むー! 当てずっぽうちゃうで! ちゃんと根拠はあるよ!」
「えっ、そうなんですか?」
りみが愛貴の発言に反応する。
「そうやでー。香澄ちゃんは今ちょうどすっごい幸せそうにアイス食べてるでしょ?」
「な、なるほど……!」
「それでおたえちゃんは……ほら、さっきレストランでハンバーグLLサイズ頼んでたし、皆と話してる時に『夕食もハンバーグがいいなー』って言ってたやろ?」
「……超能力?」
「耳が良いだけなんだよなぁ……」
「な、なんか貴嗣いつもと性格違うくね……?」
有咲の言う通り、今日の貴嗣は少々毒舌みたいだ。
貴嗣のドライなツッコミにすかさず愛貴は異議を述べる。
「耳だけちゃうもん! 耳から得た情報を処理して仮説を立てたのはこの頭なんやで」
「さすが主席入学っすねー」
「むむっ、褒められてるはずなのにイマイチ嬉しないな」
“それは心がこもってないからだよ”とは流石に言わなかった貴嗣であった。
だが貴嗣の代わりに……なのかは分からないが、サラッと出てきたパワーワードに香澄は反応した。
「愛貴さん、主席入学なんですか!?」
「うん! そうだよー! 頑張ったぞいっ!」
グッとサムズアップをする愛貴。さっきからドヤ顔してばっかりだが、顔が良いだけに全部可愛らしいポーズになっている。
「す、すげえ……大学主席……」
「主席入学の学生がこんなハイテンションな人間とは……ほんと、頭の構造どうなってんねんやろな」
「気になるなら覗いてみるー? こう……パカーって!」
「……酔ってんの??」
愛貴は隣に座る貴嗣に自分の頭を向けて、頭頂部で手を動かすことで蓋が開閉しているジェスチャーをする。面白いと思ってやったのだが、貴嗣には一蹴されてしまった。
「ひどい~! ってか、なんかさっきから貴全然私のこと褒めてくれへんやーん! もっと褒めてよ~!」
「真優貴でもこんな露骨にお願いしてこうへんぞ……。それに、なんかそれ言わせようとしてるやん。それって褒め言葉ちゃうくない?」
「……確かに」
「急に冷静にならんといてやちょっとおもろいやないかい」
腕を持たれてグイグイと引っ張られながら持論を述べた貴嗣であったが、それを聞いた愛貴は納得したのか、急に落ち着いた。
「もう……ほら、話しすぎて自己紹介進んでへんし。姉ちゃんのテンションについていけやんくて、皆ほったらかしやで?」
「それはよくないっ! 貴の友達をほっとくわけにはいかへんもんな! よーし、自己紹介さいかーい!」
「(このテンションに皆ついて来られるのか心配)」
そう宣言して自己紹介を続けようとした愛貴だった。しかし――
「……なに喋ろ?」
「えぇ……」
「教えて
「誰がドラ〇もんや。……そうやなー、誕生日と好きな食べもの、あと趣味でいいんちゃう? んで皆から質問してもらったら?」
「おおー! ナイスアイディア!」
なんだかんだ言ってアドバイスをあげる貴嗣はいい子だった。
「誕生日は5月10日で、好きな食べ物は……大体好きだけど1番はそぼろ丼かな。趣味も色々あるけど、最近は暑くなってきたし、サーフィンかな!」
「「「おお……!!」」」
「ん~こんなもんかな。何か質問あるかな? 何でも聞いてちょーだい!」
一通り自己紹介をし終えた愛貴は、ポピパからの質問をもらうことにした。
「じゃあ……私いいですか?」
「おおっ、トップバッターは有咲ちゃんかー! いいよん、カモ~ン♪」
「えっと、愛貴さんってピアノやってたりするんですか? 指長いので少し気になって」
「おおー! いい観察眼やね! 当たり! ピアノは幼稚園から続けてるよ~」
「そんなに前から!? すごいですね……」
愛貴の指はとても長く、そして綺麗だ。ピアノを続けていると指が長くなるというが、それは愛貴も例外ではない。
「そういう有咲ちゃんもピアノやってるんでしょ? 指すっごく綺麗」
「ええっ……確かにやってますけど……その、別に綺麗とかじゃ……」
「きゃー!! これはツンデレですなあ!! かっわいいー!!」
「かっ……可愛くないです!!///」
有咲はいつものようにツンデレをかますが、愛貴はそんな有咲を微笑ましげに見つめている。ニコニコしながら自分を見ている愛貴を見て、有咲は「うぅ……///」と顔を赤くして縮こまってしまった。
「でもほんとに手綺麗やね~。バンドで沢山練習してるやろうにそんなに綺麗ってことは、ちゃんとケアしてるんやね。えらいえらい!」
「へっ……!? あ……ありがとうございます……///」
有咲の影の努力を優しく褒めた後、愛貴はスッと手を差し出した。
「同じピアノ経験者同士、仲良くしてくれたら嬉しいかな! こうやって会ったのも何かの縁だし、よろしくね、有咲ちゃん♪」
「へっ……! は、はい! よろしくお願いします……!/// (優しい……いい人なのかも……)」
あまり正面から褒められることに有咲が慣れていないことに気付き、愛貴は優しい口調で話していた。そんな彼女の気遣いもあって、有咲は自然と愛貴に心を開いていた。
「じゃあどんどん行っちゃおー! 次は誰かな~?」
「それじゃあ、次私が聞いてもいいですか?」
「いいよ! りみちゃんだね!」
2番手はりみだ。
「大学生活って、どんな感じなんですか? 私、お姉ちゃんが来年大学に行くので、どんな場所なのか興味があるんです」
「わーお、いい質問! そっかーお姉ちゃんも来年大学生なんだ。そうだね、大学って一言で表すの難しいけど……マジで楽しいよ!!」
満面の笑みで愛貴は答える。
「まず今までと違うのは、授業は自分で組むってことだね。まああらかじめ決まってる部分も多いけど、それでも面白そうな講義があったら自由にとれるよ!」
「す、すごい……!」
「だから朝からの日もあれば、お昼からの日もあるんだ。逆にお昼以降は授業ない日とかもあるし、その時はお昼寝したり、友達と遊びにいったり! 最高だよー!」
「お昼から!? そんなことできるんですか!?」
「やろうと思えばね! そんな香澄ちゃんは朝苦手だな~?」
「はっ! また当てられた!?」
香澄だけではなく、朝早く起きなくても良いというのは、全国の中学生高校生が望むことだろう。
ちなみに愛貴は授業が午後からの日でも早起きする。体の調子が良くなるかららしい。
「講義も色々で、真面目に聞いてる講義もあるし、スマホさわり放題な講義もあるし♪」
「ええっ!?」
「あっ、でも私はちゃんと授業は受けるようにしてるよ。確かにスマホ触ってる時もあるけど、折角大学に行かせてもらってるんだから、しっかり勉強しないとやからね」
「……ほんと、姉ちゃんってなんだかんだ真面目よな」
「ふふーん♪ もっと褒めてもいいんやで~?」
「あぁ~バニラアイスうめえ~」
「あーんいけずぅ」
「あ、あはは……」
またもや貴嗣に振られた愛貴であるが、すぐさま話を戻す。
「休みの日は皆と一緒かな! 友達と遊びに行ったり、家でゆっくりしたり、趣味に打ち込んだり」
「そうなんですね。なんだかとっても楽しそうですっ!」
「ほんと楽しいよー! 是非お姉さんにも教えてあげてね」
「はい! ありがとうございました!」
りみからの質問タイムは終了した。さあ、次は誰だろうか?
「じゃあ、今度は私達から」
「おっ、おたえちゃんに香澄ちゃん! 2人でいいの?」
「はい! 聞きたいこと、おたえと同じだったので!」
次は香澄とたえのペアだ。
「愛貴さんって、ピアノ以外に何か楽器やってるんですか?」
「やってるよー! バイオリンとチェロ!」
「す、すごい! バイオリンとチェロ……かっこいいなあ!」
「うん。愛貴さんのバイオリン、見てみたいです」
「いいよん♪ ちょっと待ってね~」
そう言って愛貴はスマホを操作し始めた。いくつもある写真ファイルの中から、1つの動画を選ぶ。そして香澄達が見えるようにテーブルの上にスマホを置いた。
画面をタップして動画を再生。そこには綺麗なドレスを着てバイオリンを弾いている愛貴と、上品なスーツっぽい服を着てピアノを弾いている貴嗣が映っていた。
「これって……貴嗣!?」
「おう。俺だな」
「貴嗣って……ピアノ弾けるの?」
「おう。姉ちゃんほどじゃないけど。この動画は2年前のうちの店でやったライブのときのやつか。確かこれRiver Flows in Youよな?」
「そうやでー。本番が一番良くできたよな」
「間違いない」
動画の中の貴嗣は、この美しい曲をとても上手に演奏している。ギターもだが、ピアノの技術も相当なものだ。
もちろん愛貴も忘れてはいけない。さっきまでの騒がしい(悪口ではない)彼女ではなく、どこから見ても大人しい淑女がバイオリンを弾いている。2人とも貴族のような雰囲気を纏っていた。
「この愛貴さんすっごく綺麗です。バイオリンもずっと聞いてたいくらいです」
「うんうん! こっちの愛貴さんはカッコいいです!」
「2人ともありがとー! 私としては、この貴がカッコよすぎて惚れちゃいそうやわ~♪ ピアノも上手く弾けてるし!」
「ギターだけじゃなくてピアノも弾けるなんて知らなかったぞ」
「まあ有咲達には言ってなかったし」
「ちなみに貴はバイオリンも弾けるよ~。私が教えてるのだ♪」
「バイオリンまで……! 貴嗣君ってほんと色々できるんだね」
「バイオリンはほんのちょっと弾けるくらいだけどな。でもそう言ってくれると嬉しいよ。ありがと、りみ」
ちなみに貴嗣はバイオリンを教えてもらっている代わりに、愛貴にギターを教えているそうだ。
「あれ~? ねえ貴、ちょっとデレてんの~?」
「嬉しいのは確かやな」
「それをデレてるって言うんよー。もうっ、可愛いやつめっ!」
「抱き着くなー」
からかいたくなったのか、愛貴は貴嗣の左腕に抱き着いた。もはや見慣れた光景だが、目の前で見ると2人が姉弟だということを一瞬忘れてしまう。
「じゃあこのまま沙綾ちゃんの質問聞くね!」
「え、ええ……いいのかな……?」
「ええよ。こうなったら姉ちゃん言うこと聞かへんし。なんかあれば聞いてやってくれ」
貴嗣はあきらめモードに入ってしまった。愛貴はこのまま沙綾からの質問を聞くつもりだ。
「じゃ、じゃあ私からも1つだけ……」
「いいよー! カモン!」
「あ、あの……貴嗣とはいつも……今みたいな感じなんですか?」
「? 今みたいって?」
「その……腕に抱き着いたりとか……///」
「(……! はは~ん……!)」
沙綾からの質問を聞いて、愛貴は何かを察した。
「……やっぱりねえ」
「な、なんでしょうか……?」
「……ねえ沙綾ちゃん。その服、とってもお洒落やね♪」
「服、ですか? あっ、はい……ありがとうございます……」
「うんうん。いいね~綺麗な紺のブラウス~。見たところ皺1つないし……新品みたい」
「は、はぁ……?」
突然服の話になったことで困惑している沙綾。そんな彼女に思いもよらない言葉がかけられた。
「――まるで昨日買ったみたいな服やなぁ♪」
「!?!?」
「ふふ~ん♪ だからその質問をしたんやね~☆」
さすがは主席。頭の回転速度が速い。
どうやら愛貴は沙綾が昨日貴嗣と買い物デートに行ったこと、そして貴嗣に対する気持ちを見抜いたらしい。
「質問の答えやけど……まあ私達はいつもこんな感じ。私がこうやってアプローチするんやけど、貴は振り向いてくれへんのよ~」
「俺達姉と弟なんやけど(ド正論)」
「そ、そうなんですね……(うぅ……なんなんだろ……2人は家族なのに……モヤモヤする……)」
「(むむっ、沙綾が悩んでいる。なんとかしなければ)」
貴嗣は考える。状況を好転させるにはどうすればいいのかを考え、沙綾に言葉をかける。
「なあ沙綾? 確かに姉ちゃんはいつもこんな感じだけど……これってその、俺達なりのコミュニケーションなんだよ。男女間の好意じゃなくて、家族としての愛情表現なんだ」
「な、なるほど……」
「傍からみたら異様ってのは十分理解はしてる。けどその……姉ちゃんからの愛情を無下にするのは、俺にはできないからさ。姉ちゃんが俺を好きなように、俺も姉ちゃんのことが家族として好きってわけ」
そう。なんだかんだ言って、貴嗣も愛貴のことが好きだし、何より尊敬している。時々辛辣になるのも、愛貴を信頼している証拠だ。もしかしたら愛貴に甘えている部分もあるのかもしれない。
「俺達は割と相手に感情をストレートに伝えるっていうか、隠さないんだよ。だから変に思えるかもだけど、俺達は家族として、お互いを想ってるってこと。……これで大体分かったかな?」
「うん。貴嗣も……愛貴さんのこと好きなんだ」
「まあな。尊敬のほうが近いかも。楽器の腕前ヤバいし、頭良いし、それに困ったらすぐ助けてくれるし。こんな騒がしいけど、その何百倍も良いところあるし、俺と真優貴からしたら一番の姉ちゃんなんだよ」
この場にはいない真優貴だが、もちろん彼女も愛貴のことが大好きだ。元々真優貴は家では甘えん坊なのだが、末っ子ということもあり、姉である愛貴にはそれが顕著だ。
「……なんかいいな、そういうの。良い家族じゃん」
「あはは。なんだかんだ、毎日楽しい……って、姉ちゃん? 何だまt――」
黙ってるんだよと言いかけたところで、その言葉を飲み込んでしまった。なぜなら――
「うぅ……っ……うわああん……たかぁ……!」
「!?!?」
「「「あ、愛貴さん!?」」」
愛貴は貴嗣の隣で号泣していたからである。
「ど、どうしたねん姉ちゃん!?」
「だってぇ……貴がいい子すぎて……こんなお姉ちゃんのことそんな大事に思ってくれてたんやって……嬉しくて……」
「それで泣くんかあああ!?」
想定外の状況に貴嗣は慌てている。まるで泣いている赤ちゃんをあやす父親のように、どうにかして泣いている愛貴をなだめようと必死だ。
「わ、悪かったよ姉ちゃん! ええっと……そ、そうだ! 俺のバニラアイスあげるからさ! 甘いもの食べて一旦落ち着こうや! な!?」
「うぅっ……たかが優しいよぉ……うえええん!」
「ぎゃああ悪化しちまったあああ!」
貴嗣の悲痛な叫びが響く。
「(どうすりゃええんや!? 考えろ貴嗣! ……ハッ!!) ……そ、そうだ! ね、姉ちゃん確かこの連休ずっとこっちにおるんやろ? 一緒に映画観にいこ! 久しぶりに真優貴と3人でさ!」
「……真優と3人で映画……?」
「そうやで! ほら、大学入ってから3人って行けてへんやん? 折角やし行こうや! (よし……少し落ち着いてる! このまま押し切るっ!)」
「……うん……っ……行きたい」
「……よっしゃ! じゃあ明日にでもいこ! 真優貴も喜ぶで!」
ハアハアと息を切らしながら、安堵のため息をつく貴嗣。別に貴嗣は悪くないのだが、責任感が非常に強いが故に自分に責任があると思い、必死になって愛貴をなだめた。
そんなお姉ちゃん想いの彼を見ていた沙綾達は、貴嗣に声をかける。
「ほんと貴嗣って、お姉さんが好きなんだね」
「でも貴嗣も焦る時あるんだね。すっごい必死でおもしろかった」
「おもしろかったって……でも、おたえの言う通りだな。なんていうの……普段落ち着いてる貴嗣でもあんな慌てるんだなーって。なんか……親近感湧いたよ」
「あ、あはは……それならよかったよ」
沙綾、たえ、そして有咲からの言葉に、苦笑いで答える貴嗣。
「2人とも仲良しだよねっ。見てて幸せな気分になったよ」
「りみりんの言う通りだね! いつもはお兄ちゃんって感じだけど、今日は弟って感じ! 新鮮でよかったよ!」
「ありがとな、2人とも。焦ったのなんてほんと久しぶりだけど、姉ちゃんには笑っていてほしいからさ……」
そしていつもの優しい顔に。やっぱり貴嗣はお姉ちゃんが大好きみたいだ。
一件落着と思った貴嗣であったが
「……うぅ……っ……」
「!?」
「いつも笑っててほしいって……っ……」
「ね、姉ちゃん……?」
「そんなこと言われたら嬉しくなってまうやあああん! うわああああん!!」
「ああああやっちまったああああ!!」
どうやら今の愛貴には、貴嗣の優しさは逆効果みたいだ。
「たかああああだいすきいいいい」
「うわっ!? ちょ、こけるこける!」
「みんなもだいすきいいいいうわああああん!」
「香澄らに抱き着くんは違うって……! って痛い痛い引っ張ったら痛いってえええええ」
「うぅ……みんなぁ……貴と仲良くなってくれてありがとおおおお!!」
「なんか感動的やけど泣いてるから台無しやんかよおおおお!!」
「「「あははっ!!」」」
1人の泣き声と1人の叫び、そして5人の笑い声が聞こえる。
本来の予定とは大きくずれたポピパであったが、結果的に、自分達が知らなかった貴嗣の色んな面、そしてそんな彼の姉である山城愛貴と出会えたことで、最高に楽しい1日となった。
何が起こるか分からない。人生万事塞翁が馬といったところか。
この後も愛貴は泣き続け、貴嗣はあの手この手でなだめ、その必死な様子を香澄達は楽しんだとさ。
【おまけ】
数週間前。
「ハア……ハア……よしっ! これで今日の自主練終わりっと……!」
夕日が差し込むレッスンルームに、練習着の少女が1人。
「今日もあんまり上手く踊れなかったなぁ……でも、こんなことでめげてたらダメだよね! また明日もがんば――」
ダッダッダッダ!! バタンッ!!
「彩!! いる!?」
「ひゃあっ!?!? ……えっ……と、トレーナーさん……!?」
「よかったぁ……まだ帰っていなかったのね……!」
「は、はい……ついさっきまでダンスの自主練をしてて……今帰ろうかなって思ってたところなんですけど、どうかしましたか?」
「……本当にあなたは頑張り屋さんね。そのがむしゃらな努力が実を結んだのね」
「えっ……えっと……? どういうことですか……?」
トレーナー、少女に1つの封筒を渡す。
「これは……?」
「開けてごらんなさい」
「は、はい…………――えっ!?」
「……おめでとう彩。これで研究生卒業ね」
「えっ……う、嘘……!?」
「嘘じゃないわよ。そこに書かれているのは全て本当。これから頑張るのよ」
「わ、私……!」
「ついに……アイドルとしてデビュー……っ!!」
【To Be Continued in Chapter 3】
読んでいただき、ありがとうございました。
主人公のお姉ちゃん、如何でしたでしょうか? これからも出てくる予定なので、チラッとお姉ちゃんのことを憶えておいてくれると嬉しいです。
そして皆様お待たせしました。次回から第3章、Chapter 3でございます。最後のヒントでもうどのバンドかお分かりですよね。Chapter 3では基本的に明るい作風だったこれまでとは違う雰囲気、そのギャップを楽しんでいただけたらいいなーと思っております。
次回は明日のお昼頃更新予定です。そこからは1週間に1本ないし2本のペースで投稿したいと思っております。投稿頻度は落ちてしまいますが、これからも頑張って参ります。
それでは次回もよろしくお願いいたします。
ハロハピでのあなたの推しは?
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弦巻こころ
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瀬田薫
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北沢はぐみ
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松原花音
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奥沢美咲