Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
皆様大変お待たせ致しました。今回からChapter 3 Pastel*Palettes編に入らせていただきます。
言うまでもないかもしれませんが……ガルパでのPastel*Palettesのバンドストーリーを参考にしているので、今回からシリアスな描写が多くなってきます。特に今回並びに次回は読んでいて不快に感じる描写が多いであろうことを事前にお伝え致します。
ただずっとシリアスだと投稿者のメンタルが持たないので(豆腐メンタル)、原作のストーリーの雰囲気を大切した上で、コミカルな掛け合いや安心する場面を合間に入れて、メリハリのある章にしたいと思っております。
それではどうぞ!
第32話 最初の一歩は、いつも上手くいくわけじゃない
【数週間前。ガルジャム開催前の、とある日】
「それではお先に失礼します。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたー」」」
控室で制服に着替えてから、店長や大学生のアルバイトの人達に挨拶をする。
現在夜の9時。今日はAfterglowの練習の手伝い……ではなく、ファストフード店のアルバイトの日だった。学校から直で来たので、少しばかり体に疲労が溜まっている。
挨拶を済ませて店を出ようとしたところで、ある人に声を掛けられた。
「あっ! 貴嗣くーん!」
声のした方に振り向く。
女子の控室から出てきたのは、淡いピンク色の髪と、スピネルピンクのような綺麗な瞳、そして10人いれば10人が「可愛い」と答えるであろう顔立ちの先輩――丸山 彩さんだった。
「お疲れ様です、彩さん。彩さんも今日は9時上がりでしたもんね」
「うん! 貴嗣君はこれから帰り? 良かったら途中まで一緒に帰らない?」
「はい。よろこんで」
そう答えると、彩さんの顔がパアっと明るくなった。
「やったあ! じゃあ帰ろ!」
「あははっ、そんな急がなくても俺は逃げませんよ。……なんか今日ずっと元気ですね。何か良いことありました?」
「!? な、なんで分かったの!?」
思いついたことを伝えると、彩さんは大きな声で、そして中々のオーバーリアクションで驚いた。どうやら当たりだったらしい。
「そんなにソワソワしてたら、何かあったのかなーって皆思いますよ。そんなに嬉しいことだったんですね」
「その通り! すっごく良いことあったから、貴嗣君にも聞いてもらいたいんだー!」
「分かりました。じゃあ帰り道でその話、詳しく教えてください」
「うんっ!!」
その満面の笑みから幸せな気持ちを貰って、俺も笑顔になりながら彩さんと店を出た。
「――えっ……マジですか……?」
「うんっ! 昨日決まったの! 私、アイドルとしてデビューするんだ!」
街灯によって明るく照らされている道で、俺は衝撃を受けた。
アイドル研修生として3年間ずっと地道に頑張ってきた彩さんが……学校もアルバイト先も一緒の彩先輩が、ついにアイドルとしてデビューする……!!
「す……すっごいじゃないですか彩さん!! えっ!? ホンマっすか!?」
「えっ!?」
「そんな嬉しい話、なんでもっと早く言うてくれやんかったんですか!? 今日ずっとシフト一緒やったのに、なんなら入った時にでも言うてくれたら……いや、でもこんなええ話バイト前に聞いてもたら俺仕事できへんかったかもしれへんか……」
「た、貴嗣君……?(すっごい関西弁出てる……)」
興奮のあまり、俺は完全に標準語を使うことを忘れていた。
間接的にではあるものの、俺は彩さんがアイドル研修生として、今までずっと努力を積み重ねてきたことを知っている。彩さん本人からも聞いたし、真優貴からも詳しく聞いていた。
3年間……3年間だ……!! そんなに気の遠くなるような長い間、目覚ましい成果が出なくても諦めずに頑張ってきた彩さんが、ついに……!
「ついにデビューするんですね!! おめでとうございます!! 俺、めっちゃ嬉しいです!!」
「わわっ!? た、貴嗣君!?///」
俺は嬉しさの余り、思わず彩さんの手を握ってしまった。
「ほんっっっとおめでとうございます! 俺、何があっても彩さんを応援しますから!」
「……!!」
どんなことがあっても彩さんを応援し続けるという気持ちを伝えるために、手を握りながら、彩さんの目を真っ直ぐ見つめる。
「……あうっ……///」
「えっ? どうかしましたか?」
「その……貴嗣君……て、手……///」
「……! あっ……ご、ごめんなさい……!」
「あっ……」
顔を真っ赤にしながら彩さんが言ったその言葉で、俺は思いっきり現実に戻された。
付き合ってもない女性の手を軽々しく握ってしまった。留学先ではこういうスキンシップが当たり前だったがために、日本だとセクハラまがいなことをしてしまった。
急いで手を離した後、かすかに聞こえた彩さんの声は、どこが名残惜しいというか、寂しそうではあったが。
「……ふふっ。そんなに喜んでくれるなんて……私、ちょっとビックリしたな」
「す、すみません……柄にもなく、俺だけはしゃいじゃって……」
「ううん! ……えへへっ♪」
「?」
セクハラで訴えますよとか言われるかと覚悟していたのだが、彩さんは何故かとても嬉しそうに顔を綻ばせていた。
「私ね、昨日デビューが決まってすっごく嬉しかったんだ。もうすっごい喜んだんだよ? でも、昨日の私よりも……今の貴嗣君の方が喜んでくれてて……私、今それが凄く嬉しいんだ」
「……は、はあ……」
「私の喜びを、貴嗣君がまるで自分のことみたいに喜んでくれたのが、本当に嬉しいの。……それに……」
「……それに?」
彩さんはそう言いかけると、今度は俺から目をそっと逸らして、ほんのりと頬を赤く染めながら言葉を続けた。
「――『何があっても彩さんを応援しますから』って言ってくれたのが……一番うれしかった!」
「……ふふっ。なら良かったです」
恥ずかしがりながらも笑顔で自分の気持ちを伝えてくれた彩さんは、まるでドラマのヒロインみたいだった。
「あっ……」
「どうしたの?」
「……良いこと思いつきました。彩さん、このお店に寄ってもいいですか?」
「いいけど……アクセショップ?」
帰り道を歩いていると、この間のアクセサリーショップの前に来ていた。
戸惑っている彩さんの手を引いて、俺は店に入る。ネックレスやシュシュ、ブレスレットは勿論、他の雑貨も置いている、お洒落だけどどこかカジュアルなお店だ。
「彩さんのデビュー記念ってことで……何か1つ俺からプレゼントさせてください」
「えっ!? いいの……?」
「はい。今まで頑張ってきたことのご褒美と、これからのアイドル活動でのお守り、そして……俺を幸せな気持ちにさせてくれたことのお礼です」
「……!!」
「幸い、お金なら溜まってます。彩さんが欲しいと思ったものを、プレゼントさせてください」
「……うんっ! ありがとう、貴嗣君!」
彩さんは嬉しさMAXといった様子で、お店の商品を見始めた。あれでもない、これでもない、う~ん……と一生懸命悩んでいる彩さんを見て、思わず頬が緩む。
「貴嗣君。これなんかどうかな?」
「おっ、銀のネックレスですか。おおー……シンプルでいいですね。夏でも違和感ないですし、もうちょっと涼しくなったら、他のアクセサリーとも組み合わせできそうですね」
店内をぐるっと回って見たところ、この銀のネックレスが一番しっくりきたそうだ。ごちゃごちゃしていないシンプルなもので、これからの暑い季節でもお洒落で付けられるだろう。
「じゃあこれにしますか」
「うん! じゃあ、お願いします!」
「りょーかいです。ちょっと待っててくださいね~」
「はーい! 待ってまーす♪」
彩さんの了承を受け、俺はレジに向かった。
値段を見ていなかったというのもあるのだが、存外に安くて驚いた。全然安物に見えないし、もう少し高くても納得なのだが……お手頃な値段設定も、このお店が人気な理由の1つなのだと思った。
「プレゼント包装にしますか?」
「はい。お願いします」
「……ふふっ」
「?」
店員さんがプレゼント包装を提案してくれたので、折角だししてもらおうとお願いしたところ、その店員さんがニコッと笑った。
「一緒にいらっしゃった方、何か良いことがあったんですか?」
「はい。とびっきりの良いことがあったんで、そのお祝いに」
「そうなんですね~! それでネックレスをプレゼント……いい彼氏さんじゃないですか。彼女さん、絶対喜びますよ」
「…………ん??」
若干気が緩んでいたことで、店員さんの彼氏発言を聞き流しそうになった。
「お待たせしました! 包装終わりましたよ」
「あっ、はい、ありがとうございます……おおっ、すっげえ丁寧な包装」
別に彼氏じゃないですよーと言う前に、店員さんはネックレスを渡してくれた。女子高生が喜びそうな(?)、パステルピンクの箱にホワイトのリボンが付けられているものだった。
「はい、お会計ちょうどいただきました。レシートはどうされますか?」
「もらっておきます。ありがとうございました」
「はい! またのお越しをー!」
店員さんに挨拶をしてから、彩さんの元に向かった。結局彼氏彼女の件については訂正できなかったが、まあいいか。
「おまたせしましたー。はい、俺からのプレゼントです」
「ありがとー! ……わっ、すっごい可愛い箱……プレゼント包装してくれたの?」
「はい。お祝いですから」
そう答えると、彩さんはネックレスの小さな箱をギューッと抱きしめて、嬉しそうに笑ってくれた。
「う~ん……! 貴嗣君のおかげでやる気出てきた! 頑張るぞ~!」
「おっ、流石ですね。これは応援しないわけにはいかないですね」
「ほんと!? じゃあ貴嗣君は、私のファン第1号だね!」
「えっ、いいんですか? そんな名誉な称号貰っちゃって」
「もちろんだよ! 応援するって直接言ってくれたの、貴嗣君が初めてだもん!」
「そうですか。じゃあファンクラブ作ったらすぐに連絡してくださいよ? ソッコーで登録しますから」
「うん! 絶対に連絡するね!」
これからのアイドルとしての未来に、ワクワクドキドキが止まらない様子の彩さん。
店の出た俺達を迎えてくれたのは、町の光達。それはまるでこれから彩さんが立つであろうステージのスポットライトのように、キラキラと彩さんを照らしていた。
◇◆◇◆
(現在。ガルジャム開催後の数週間後)
とある日の放課後、俺達Silver LiningはライブハウスCiRCLEで練習をしていた。Afterglowのお手伝いが終わってしまったことの寂しさを感じながら、4人でいつものように、楽しくのんびり演奏していた。
そして今は休憩中。各自のんびりと過ごしていると、花蓮が口を開いた。
「そういえばさ、今日は丸山彩さんがデビューする日なんでしょ?」
「あっ、そういえばそうだった! えっと……Pastel*Palettesだっけ! アイドルバンドとはまたすごいよねー!」
「なー。アイドルでかつバンドって、なんか色々やらなきゃダメで大変そうだよな。ほんと尊敬するよ」
そう。今日は彩さんがアイドルとして――Pastel*Palettesのボーカルとして、デビューする日なのだ。
数週間前からレッスンで忙しくなり、バイト先では会っていない。なので今彩さんがどんな状況なのか全く分からないのだが、俺達はいつも応援している。
「彩さんって貴嗣とバイト先一緒なんだろ? うらやま~」
「じゃあ大河も来たらどうだ? 募集はしてると思うぞ」
「スイミングスクールのバイトと掛け持ちは流石にヤバイ」
「ははっ、それもそうか」
大河の話を聞きながら、スマホで先程の練習の様子を見直す。身振り手振りや姿勢等、おかしい点は無いか、もっと改善できる点は無いかを確認する。
「今ちょうどテレビ出演してるんだよね? 初ライブがテレビで放送されるって、すごく緊張しそう」
「ああ。そんな俺達も、そろそろ次のライブに向けて色々考えていかないとだな」
「うん。イン〇タライブで演奏を配信するのは決まったから、次は何の曲を演奏するかだね」
「この前貴嗣が言ったみたいに、応援ソングをメインに演奏するっていうの、俺はやってみたい。アップテンポの曲も良いけど、たまには落ち着いた曲も――」
「――皆」
穂乃花の声で、俺達は静まり返った。
大河の声をかき消すように大声で俺達を呼んだこと、そしてそれ以上に、俺達を見つめる顔が、普段の明るい穂乃花からは想像できないほど深刻なものだったからだ。
「……どうした穂乃花? そんな深刻な顔して」
「……これ見て」
穂乃花は表情を変えないまま、俺達にスマホの画面――SNSのライブコメントを見せてきた。
「……!!」
「……は……?」
「……なに……これ……?」
その画面を見た俺と大河と花蓮は、そのショックで動けなくなった。
『あれ? 音止まったぞ?』
『機材トラブルなんじゃ?』
『え、もしかしたら口パクだったの?』
『ヤバくない? ていうか、演奏もしてなくない?』
『演奏はどうしたー?』
『千聖ちゃんが終わらそうとしてるけど、これで終わりなのー?』
『皆はけていった……まじで終わりなの? ライブはー!?』
「……穂乃花、ちょっと画面更新してもらってもいいか?」
「う、うん……!」
スクリーンを一番上にあげて、穂乃花はSNSを更新してくれた。
出てきたのは、1つのネット記事。
いつの間にか書かれたそれを見て――俺達4人は言葉を失ってしまった。
『パスパレ、大失敗か!? 口パク&アテフリがデビュー当日にバレる!』
読んでいただき、ありがとうございました。
初っ端から重い話で申し訳ないです。Pastel*Palettesのストーリーは現実・芸能界のリアルで生々しい描写が魅力だと思っているので、本小説でもその部分を取り入れていきたいと思っております。
次回は来週の水曜日あたりに投稿する予定です。第3章は投稿頻度が下がりますが、頑張って更新していきますので、よろしくお願いします。
それでは次回もよろしくお願い致します。
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