Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

50 / 76
 
 皆様どうもです。おたか丸です。

 お気に入り登録をして下さった皆様、ありがとうございます。

 今回からRoselia編スタートです。かなり長い章になると思いますが、よろしくお願いいたします。

 それではどうぞー。


Chapter 4 Roselia
第46話 開幕


 

 

 

 

 スタジオが音と熱気で満たされる。

 ギターにベース、ドラムにキーボード、そして皆の歌声が聞いていて気持ちいい。テンションが上がって思わず走りそうになるが、そこは自制心でしっかり抑える。

 

 そして演奏が終わり、最後の余韻に皆で浸る。

 

 

「——今のすっげえ良かったくね?」

 

 

 最初に口を開いたのは大河だ。

体はベースを持ったまま少しも動かさず、口だけを動かして皆に問いかける。

 

 

「うん。私も、今の演奏が一番良かった気がするな」

 

 

 花蓮が大河に賛同する。

 今日は10月の1週目。涼しい気候だが、長い時間練習していたのもあって体が熱くなっているのだろう。彼女の首にうっすらと汗が流れている。

 

 

「あたしもー! 今までも良かったけど、今のは最高だった! 貴嗣は?」

 

 

 ドラマーの穂乃花も上機嫌だ。

 茶髪のポニーテールを揺らしながら、彼女は俺の感想を聞いてきた。

 

 

「皆の言う通り、今のが一番音が合ってたと思う。聞いた限りだとミスも殆ど無かった。中々早い曲だし、練習も2時間ぶっ通しだから疲れも溜まってきてるはずだけど……そんな状態でこのクオリティでできたから、自信を持っていいと思う」

 

 

ピックを持っていた右手をビシッと素早く振る。力を抜くためにやっているこのスナップは、ギターを本格的に始めた頃からの癖だ。

 

 俺が動いたのを皮切りに、大河達も体の力を抜く。ギターを弾いていたときは分からなかったが、部屋が暑くなっている。きっと俺達の熱気だろう。

 

 

「んじゃ、今日の練習はここまで! 片付けてから、ラウンジでゆっくりしようか」

「やったー! それじゃあ恒例のコーヒー牛乳タイムだ~!」

「早くグビッといっちゃおうぜ~!」

「あー2人とも……って、もう片付けてるし」

 

 

 そう言うと大河と穂乃花はパパっと楽器を片付け、勢いよくスタジオから飛び出した。そして俺は花蓮と2人きりになる。

 

 

「ふふっ。あんなに元気なのに、2人とも手際良いよね」

「それはいいんだけど、せめて汗拭いてからのほうがよかったんじゃないか? 皆結構汗かいてるし」

「皆熱入ってたもんね。そういう貴嗣君も……ほらっ」

 

 

 花蓮は俺を見ながら自分の首を指さす。そのジェスチャーを見て、俺も自分の首を人差し指と中指でなぞる。

 

 

「ありゃ、結構汗かいてる」

「自分じゃ意外と気付かないよね。……それじゃあ貴嗣君、こっち来て」

「えっ?」

 

 

 振り向くと、そこには柔らかそうな白いタオルを持った花蓮が。

 

 

「汗、拭いてあげるよ」

「……でもそれ、花蓮のだろ?」

「私は気にしないよ」

「じゃあ……頼むわ」

「はーい、頼まれました♪」

 

 

 ニコッと嬉しそうに笑いながら、花蓮は俺のすぐ傍に来た。

 柔らかい白のタオルを使って、俺の首回りを丁寧に拭いてくれる。

 

 

「~♪」

「楽しそうだな」

「まあね。……はい、おしまい。これでいいかな」

「ああ。最高だよ。本当にありがとな」

「うん。どういたしまして」

 

 

 花蓮は丁寧に汗を拭きとってくれた。心優しい花蓮に感謝だ。

 

 

「なんかお返しするよ」

「えっ、いいの?」

「おうよ」

「それじゃあ……外にあるカフェの新商品、お願いしようかな?」

「りょーかいした。それじゃあ俺達も行こうか」

「うんっ!」

 

 

 俺達は荷物をまとめ、2人がいるラウンジへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「——それで、レジで会計しようって思ってお客さん見たら、まさかのその2人だったの! もうちょービックリしてさ!」

「うへーまじか。確か2人ともD組だよな? やっぱ付き合ってんのかな?」

「私を見たら『あ、やばっ』って顔してたから……もしかするかもよ~!!」

「ははっ。でも、バイト中にそういう場面に出くわすとなんか気まずいよな」

 

 

 CiRCLE内にあるラウンジで、俺達は他愛もない会話を楽しんでいた。皆が好きな飲み物を飲みながらこうやって雑談するのも、大切な時間だ。

 

 そんな中、俺達の元に近づいてくる人がいた。

 

 

「あっ、月島さん。こんにちは」

 

 

 CiRCLEのスタッフ、月島まりなさんだ。この前のガルジャムボランティアの時に、色々お世話になった。

 

 

「みんなおつかれさま! 今日はもう練習おわり?」

「はい。2時間くらいぶっ通しでやってたんで、流石にもう無理ですねー。月島さんはまだお仕事ですか?」

「私は今休憩に入ったところだよ。そしたらここで皆が集まってたから声かけたんだ」

 

 

 俺達4人が揃って話しているのを見かけて、思わず声をかけたらしい。

 

 

「そうだ、月島さん。よかったら私達とお話ししませんか?」

「えっ、いいの?」

「もちろんですよ! あたし、月島さんといっぱいお話ししたいです! 皆もいいでしょ?」

 

 

 本日2本目のミックスジュースにストローを挿しながら、穂乃花は俺達にそう聞いてきた。勿論答えはYESだ。

 

 

「ほんと? ありがと! それじゃあ、お邪魔させてもらおっかな」

 

 

 月島さんを加えた5人で、俺達は雑談を再開した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 あれから20分ほど経った今、まりなさん(下の名前で呼ぶよう頼まれた)を加えて、俺達はライブについて話していた。

 

 

「——それじゃあ、そろそろライブやりたくなってる感じかな?」

「はい。色んなイベントを貴嗣が調べてくれていて、どれに参加するか皆で話し合っている最中ですね」

「なるほど! じゃあそんな皆に、私からも1つ提案だよ」

 

 

 まりなさんはそう言うと、手に持っていたチラシをテーブルの上に置いた。

 

 

「これは今度うちでやるライブイベントなんだ。今度の土日にあるんだけど……皆もどうかな?」

「「「おおー!」」」

 

 

 まりなさんの提案に、俺達は喜びの声を上げる。

 

 

「丁度いいじゃん! あたし達4人ともこの日予定空いてるしさ。あたしは出たいなー!」

「私もまた皆と一緒にライブしたい。2人はどう?」

 

 

 女性陣は賛成みたいだ。花蓮と穂乃花は大河と俺を期待の眼差しで見つめる。

 

 俺達はお互いの顔を見てから、ニヤリと笑った。

 

 

「やらないなんて選択肢は——」

「——ないよな?」

 

 

 俺達がライブ参加に賛成なことを伝えると、穂乃花と花蓮は嬉しそうに笑った。

 

 

「というわけで、まりなさん。俺達もイベントに参加させてもらってもいいですか?」

「もちろんだよ! Silver Liningが出るってなったら盛り上がると思うよ~! それじゃあ私、申込用紙もって来るね」

「ああ、ちょっと待ってください。まりなさんまだ休憩時間でしょ? 申し込むのは後でもいいですから、今は私達とゆっくりしておきましょうよ」

「ありがとう花蓮ちゃん。でも大丈夫! 善は急げって言うしさ! お姉さんに任せておいて!」

 

 

 まりなさんはそう言って、宣言通りにスタッフルームへと向かった。

 

 

 

 

 

「……なあ貴嗣」

「どした大河?」

「さっきまりなさん、自分のことお姉さんって言ってたけどさ」

「おう」

「まりなさん実際いくつ——」

「それ以上はいけない」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「紗夜」

「湊さん? どうかしましたか?」

「さっきから呼んでいたのよ。何か考え事?」

「……別に大した事ではないです」

 

 

 練習終わりの帰り道、湊さんに声を掛けられて、私の意識は現実に引き戻された。

 

 考え事をしていたのは事実、でも気にする必要はない——そう伝えたものの、湊さんは相変わらず鋭かった。

 

 

「また彼の事を考えていたの?」

「……っ」

「その反応は図星ね。他人の演奏を参考にするのは否定しないけれど、そんなに考えこむくらい彼の演奏はあなたにとって大切なの?」

「……自分でもはっきりとは分かりません。ですが彼の演奏を見ていると……何か学べるような気がするんです。今の私に足りない何かを……彼の演奏から見つけられるような予感がするんです」

「そう。ただ弾き方がそっくりという理由だけじゃないのね」

 

 

 私が自分の考えを伝えると、湊さんは納得したように小さく頷いた。

 

 

「あなたがそこまで言うのなら止めはしないわ。でもそのせいで練習が疎かになってしまうことはないようにね」

「勿論です。練習で手を抜くつもりはありません」

 

 

 全力で練習に打ち込まないなんて言語道断、論外だ。そんなことでは技術の向上は望めない。

 

 

「まあ、私も彼に興味が無いわけではないわ。ギターの演奏技術に加え、高い歌唱力を持っている。穏やかな雰囲気の彼だけれど、恐らく相当練習しているはずよ」

 

 

 驚いた。

 湊さんが自分以外のボーカリストを評価するなんて、今回が初めてだった。そのことを伝えると、湊さんは表情を変えずに言葉を続けた。

 

 

「別に彼のことを認めているわけではないわ。客観的に見て平均以上の能力があると思うだけよ。何より実際に彼らの演奏を見ないと、はっきりとした実力の評価は難しいわ」

「そうですね。そのために私達は今度の土日に、CiRCLEのライブイベントを見に行くわけですから」

 

 

 今週の土日にあるイベントに、Silver Liningが出場する——その情報を聞きつけた私達は、全員で彼らの演奏を見に行くことにした。

 

 彼のギターは、私ととても似ていて、でも違う。携帯のスクリーン越しに動画を見るのではなく、実際の演奏を見てみたい。成長するための何かを学べる気がするから。

 

 

 いいえ。

 

 

「……学ばなければいけない」

「? 何か言った?」

「いいえ。独り言です。お気になさらず」

 

 

 その“何か”を明らかにすれば……私はもっと……。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 ライブイベント初日。キレイ目の私服に着替えた俺達は、ステージの裏で呼ばれるのを待っていた。

 

 

「ねえ貴嗣ー、ライブ前に写真撮っとこうよ!」

「オッケー」

「はい、チーズ! ……う~ん、良い感じ!」

 

 

 俺達恒例の写真撮影。SNSに投稿するための写真や短い動画を、穂乃花は先程から沢山撮っている。

 

 

「さっきから貴嗣観客席の方見てたけど、誰か探してたの?」

「まあな。ポピパやアフグロの皆がどこら辺にいるのかなーって」

「なるほどね~」

 

 

 今日は誰が見に来てくれているのだろうかと、ステージの裏で考える。

 

 

 真優貴は変装して行くと言っていたから、どこかにいるだろう。

 

 ポピパの皆は来てくれているそうだ。CHiSPAも見に行くよと、ナッちゃんも学校で教えてくれた。

 

 そしてAfterglowの皆。5人で見に行くとひまりちゃんからL〇NEが来たのは、穂乃花がイン〇タでライブ出演の告知をしてからわずか1分後の出来事だった。チェックが恐ろしく早くてビックリした。

 

 パスパレの皆さんは、残念ながらお仕事でライブには来られないとのことだった。こればかりはしょうがない。「次は絶対見に行くからね~!」とエールを送ってくれたのは彩さんだ。

 

 

「Silver Liningの皆、準備はいい?」

「はい。いつでもいけます」

「オッケー! それじゃあスタンバイ、お願いね!」

 

 

 イベントシャツを着たまりなさんが声を掛けてくれた。さあ、演奏の時間だ。

 

 

「それでは皆さんお待ちかね! SNSを通じて人気急上昇中のあのバンド! Silver Liningの皆さんです!」

 

『ワアアアア!!』

 

 

 スタッフさんの紹介の後、観客の歓声が会場を包み、その中を俺達は歩いてステージに立つ。

 

 

「皆さんこんにちは! Silver Liningです!」

 

 

 マイクスタンドに手を添えて、自己紹介。ステージを見渡すと、沙綾達やひまりちゃん達と目が合った。皆手を振ったり笑顔で反応してくれる。

 

 

「今日と明日の2日間、昼の部と夕方の部、それぞれ2回出場させてもらいます。短い間ではありますが、一緒に楽しんでくださると嬉しいです」

 

 

 姿勢を正してから、大河達の方を見る。自分達はいつでもいけるぞと、やる気に満ちた表情で俺に教えてくれた。

 

 

 さあ、ライブを楽しもう。

 

 

「それでは聞いてください。Shawn Me〇desさんより、“Treat You Better”」

 

 

 穂乃花のドラムを合図に、俺達の演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「「「ありがとうございましたー!」」」

 

 

 時は進んで、日曜日の夕方。俺達は無事に土日のイベント、計4回のライブを終えることができた。

 

 

「いや~! 流石にこれだけライブやったら疲れたなぁー」

「体力お化けの大河でも疲れちゃったか」

「まあな~。そういう穂乃花はどうだ? 疲れたんじゃないか?」

「あたしもヘトヘト~……。でもすっごい楽しかった!」

 

 

 ライブが終わり、さっきまでの盛り上がりが嘘のように静かになったライブハウス。俺達は人が少なくなったラウンジで、ライブの余韻に浸りながら体を休めていた。

 

 

「花蓮、大丈夫か?」

「うん……ちょっと疲れて眠いだけだよ」

「とか言いながらかなり眠そうだけどな……。明日の学校遅刻しないようにな」

「んー、どうだろ? ぐっすり寝っちゃって遅刻しちゃうかも……貴嗣君モーニングコールしてよ~……」

「あははっ、もう半分寝ぼけてるぞー?」

 

 

 モーニングコールくらいならお安い御用、なんて思いながら眠そうな花蓮と話す。するとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。

 

 

「よかった~! 皆まだここにいたんだ!」

「どうしたんですかまりなさん? そんなに慌てて……」

 

 

 足音の正体はまりなさんだった。走って来たからか、ハアハアと息を切らしている。

 

 

「突然ごめんね皆! これからちょっと時間ある?」

「は、はい……時間ならありますけど、どうかしたんですか?」

「うん。実はね……」

 

 

 まりなさんはそう言うと、すっと横に人1人分ずれた。すると後ろにスーツを着た女性が立っており、その女性は俺達を見てスッと礼をした。

 

 

「Silver Liningの皆様、初めまして。私、こういう者なのですが……」

 

 

 挨拶の後、俺は女性から名刺を渡された。

 

 そこには女性の氏名、そして——

 

 

「—— 〈Next Era Contest〉運営委員会係員……!?」

 

 

 12月の末に行われる大きな音楽コンテストの名前が記載されていた。

 




 
 読んでいただき、ありがとうございました。
 次回は明日のお昼頃に投稿する予定です。よろしくお願いします。


【余談】

 話は逸れるのですが……パスパレ編でのアンケート結果を勝手ながら発表させていただきたいと思います。

□Pastel*Palettesで好きなキャラクターを1人選ぶとしたら?

 1位:丸山彩  43pt
 2位:氷川日菜 35pt
 3位:大和麻弥 34pt
 4位:白鷺千聖 28pt
 5位:若宮イヴ 11pt

 となりました。投票してくださった皆様、ありがとうございました。個人的に日菜ちゃんが1位になるかな~……なんて勝手に思っていましたが、彩ちゃんが途中からグイッと伸びて1位となりました。

 また、今回からRoseliaについても同じようにアンケートを作っております。ストーリーには影響しないので、軽くぽちっと押してくれると嬉しいです。

ハロハピでのあなたの推しは?

  • 弦巻こころ
  • 瀬田薫
  • 北沢はぐみ
  • 松原花音
  • 奥沢美咲
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。