Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
お気に入り登録をして下さった皆様、ありがとうございます。
今回の話なのですが、キリの良いところで区切った関係でとても短いです。ご了承ください。
それではどうぞー。
「やっぱり氷川さんも最初はフレーズ練習からなんですね」
「はい。準備運動は大切ですから」
山城君と話し合った結果、時間も少ないので、とりあえずお互いが最初にする準備運動を見せ合うことにした。
私は練習に入る前に、いくつかのフレーズを弾く。それは彼も同じようで、私の近くの席に座り、1音1音をゆっくり丁寧に弾いている。
「さっきの目隠しですが、いつもああいった練習をしているのですか?」
「いつもって訳じゃないですよ。自主練の時くらいです。傍から見たらヤバイ奴なので」
山城君は笑いながらそう答えて、私の方を向いた。
「いつもは今みたいにフレーズを弾いてウォーミングアップ。ある程度続けてから、その日の練習メニューに移るって感じです」
「なるほど」
別に変ったところは何もない、ごく普通というか一般的な練習の流れだった。彼から聞かされたそれは、Roseliaでの練習と大差はなさそうだった。
「自主練はどれくらいの頻度でするのですか?」
「そうですねー、時間は決まっていないですけど、毎日練習するようにはしてますね。氷川さんは?」
「私も同じです。毎日弾かなければ上達は望めませんから」
「そうですね。氷川さんの弾き方を見れば、相当練習しているのが分かります」
「そうでしょうか?」
私が尋ねると、山城君は首を縦に振った。
「運指がとても正確で、まるでお手本みたいです。左手の動かし方だけでなく、ピックの当て方から力加減まで……今まで努力を積み重ねてきた証拠です。とても素晴らしいと思います」
彼は穏やかな声で私の腕前を褒めた。
「俺も氷川さんみたいに正確に弾けるように頑張らないとなー、なんて思ってました。今回の合同練習で、氷川さんから色々学びたいです」
「……私こそ」
「?」
「……私こそ、山城君から学ばなければいけません」
「えっ?」
私は彼のギターと、ギターを抱えている手を見つめながら話す。
「先日のライブイベントでもそうでしたが、あなたの演奏はとにかく丁寧でミスが無い。それも歌いながらです。相当な練習量や努力を積み重ねてきたのは明白です」
ギターの技術だけならともかく、彼はボーカルも担当している。その歌唱力は湊さんも気に掛けるほど……それに加えてギターの演奏技術も高い。
「変に聞こえるかもしれませんが……あなたと私の演奏法はとても似ているように感じます。『精密さを重視する』という考え方も一致しています。ですが……」
「ですが?」
「何かが……何かが違うんです。山城君にはあって私にはない……その“何か”を見つけることができれば、より技術を高められるような気がするんです」
おかしなことを言っているのは重々承知だけれど、それでも山城君は嫌な顔一つせずに、しっかりと私の話を聞いてくれていた。
「山城君。折り入ってお願いがあります。聞いてくれますか?」
「はい。勿論です」
「RoseliaとSilver Liningの合同練習の日は、そこまで多くありません。皆さんの予定が合う日というのは限られています。ですから……」
私は彼の目を真っ直ぐ見つめる。自分のお願いを彼に伝える。
「合同練習とは別に、私とギターの練習をしてもらえないでしょうか? お互いの演奏について意見を出し合って、学び合いたいのです」
私がそう言うと、山城君はすぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「いいですよ。自分も氷川さんから学びたいので、俺でよければお引き受けします」
「ありがとうございます。それでは明日の放課後はどうでしょうか?」
「大丈夫ですよ。それじゃあ早速明日からギター練習始めますか」
山城君はすぐに鞄からメモ帳を取って、カレンダーのところに予定を書き込んだ。チラッと見えたそれには予定がビッシリと書かれてあり、彼の几帳面な性格が表れているようだった。
Prrr! Prrr!
「ああ、ごめんなさい。俺の電話です。……おっす~穂乃花。お疲れさん。……おう、もうスタジオ入ってるよ。こっちに着いたら、受付で一言入れてから皆で入ってきてくれ~……おう、んじゃまた後でなーバイバーイ」
さっきの電話……確かドラムの松田さんかしら?
「穂乃花達が途中でRoseliaの皆さんと会ったみたいで、一緒に来るみたいです」
「あっ……もうこんな時間……」
スタジオの中の時計を見ると、もうすぐ集合時間というところまで来ていた。もう彼との練習時間は終わりだ。
「山城君。今日は自主練に付き合ってくれてありがとうございました。明日のギター練習もよろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
コンコン!
貴嗣~! いる~?
「はーい! ちょっと待ってくれー! ……来ましたね」
「ですね。それでは、合同練習を始めましょうか」
「そうですね」
山城君がスタジオの扉を開けると、これから一緒に練習をするSilver Liningの皆さんと、Roseliaのメンバーが入って来た。
「皆お疲れさん」
「おう! 貴嗣もお疲れ!」
「お疲れリーダー!」
「お疲れ貴嗣君。自主練もお疲れさまだね」
「サンキューな花蓮。……Roseliaの皆さんも、お疲れ様です。今日はよろしくお願いします」
「お疲れ様。今日はよろしく頼むわ」
「お……お疲れ様……です」
「やっほーたか兄!」
「お疲れさま~山城君! 自主練なんてさっすがだねー♪ あっ、紗夜もいる!」
「はい。お疲れ様です。今井さん」
今井さんが私に近づいてきた。
「山城君と練習してたんだね~。どうだった?」
「はい。短い間ではありましたが、有意義な時間でした。そして合同練習とは別で、一緒にギターの練習をしてもらえることになりました」
「ほんとに!? いいじゃん紗夜! あっ、でも練習しすぎはダメだからね?」
今井さんはいつもこうやって私を気にかけてくれる。この優しい雰囲気は……彼とそっくりね。
「紗夜、なんか今表情柔らかいね」
「えっ?」
「珍しいね~! いつもこう、ピシってしてるのに。……あっ、もしかしたら……」
「な、何?」
今井さん……近い……。
「山城君とのギター練習、楽しみなんじゃないの?」
「べ、別に楽しみなんかじゃ……」
「もう! 素直じゃないんだから~☆ 男の子とスタジオで2人きりで練習なんて……なんだかドキドキするシチュエーションじゃん♪」
「……練習を始めますよ」
「はいはーい、りょーかい☆」
別に彼とは何もない。ただギターを一緒に練習するだけ。
……そうよ、私は彼から学ばなくてはいけない。
私は今よりもっと、技術を磨かなければいけない。一流の演奏をするために。
そのためなら……何を犠牲にしても構わない。
「紗夜。私達も準備しましょう」
「ええ湊さん。分かりました」
コンテストまで残り3週間。まだ時間はある。
絶対に……絶対に、今より腕前を上げてみせる。
ギターだけは……あの子に負けるわけにはいかない。
読んでいただき、ありがとうございました。
今回の字数が約2500字なので、前回の四分の一程……短い……。
次回は明日のお昼頃に投稿する予定です。よろしくお願いします。
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