Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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 お気に入り登録をして下さった皆様、ありがとうございます。

 今回の話なのですが、キリの良いところで区切った関係でとても短いです。ご了承ください。

 それではどうぞー。


第48話 邂逅

 

 

 

 

 

「やっぱり氷川さんも最初はフレーズ練習からなんですね」

「はい。準備運動は大切ですから」

 

 

 山城君と話し合った結果、時間も少ないので、とりあえずお互いが最初にする準備運動を見せ合うことにした。

 

 私は練習に入る前に、いくつかのフレーズを弾く。それは彼も同じようで、私の近くの席に座り、1音1音をゆっくり丁寧に弾いている。

 

 

「さっきの目隠しですが、いつもああいった練習をしているのですか?」

「いつもって訳じゃないですよ。自主練の時くらいです。傍から見たらヤバイ奴なので」

 

 

 山城君は笑いながらそう答えて、私の方を向いた。

 

 

「いつもは今みたいにフレーズを弾いてウォーミングアップ。ある程度続けてから、その日の練習メニューに移るって感じです」

「なるほど」

 

 

 別に変ったところは何もない、ごく普通というか一般的な練習の流れだった。彼から聞かされたそれは、Roseliaでの練習と大差はなさそうだった。

 

 

「自主練はどれくらいの頻度でするのですか?」

「そうですねー、時間は決まっていないですけど、毎日練習するようにはしてますね。氷川さんは?」

「私も同じです。毎日弾かなければ上達は望めませんから」

「そうですね。氷川さんの弾き方を見れば、相当練習しているのが分かります」

「そうでしょうか?」

 

 

 私が尋ねると、山城君は首を縦に振った。

 

 

「運指がとても正確で、まるでお手本みたいです。左手の動かし方だけでなく、ピックの当て方から力加減まで……今まで努力を積み重ねてきた証拠です。とても素晴らしいと思います」

 

 

 彼は穏やかな声で私の腕前を褒めた。

 

 

「俺も氷川さんみたいに正確に弾けるように頑張らないとなー、なんて思ってました。今回の合同練習で、氷川さんから色々学びたいです」

「……私こそ」

「?」

「……私こそ、山城君から学ばなければいけません」

「えっ?」

 

 

 私は彼のギターと、ギターを抱えている手を見つめながら話す。

 

 

「先日のライブイベントでもそうでしたが、あなたの演奏はとにかく丁寧でミスが無い。それも歌いながらです。相当な練習量や努力を積み重ねてきたのは明白です」

 

 

 ギターの技術だけならともかく、彼はボーカルも担当している。その歌唱力は湊さんも気に掛けるほど……それに加えてギターの演奏技術も高い。

 

 

「変に聞こえるかもしれませんが……あなたと私の演奏法はとても似ているように感じます。『精密さを重視する』という考え方も一致しています。ですが……」

「ですが?」

「何かが……何かが違うんです。山城君にはあって私にはない……その“何か”を見つけることができれば、より技術を高められるような気がするんです」

 

 

 おかしなことを言っているのは重々承知だけれど、それでも山城君は嫌な顔一つせずに、しっかりと私の話を聞いてくれていた。

 

 

「山城君。折り入ってお願いがあります。聞いてくれますか?」

「はい。勿論です」

「RoseliaとSilver Liningの合同練習の日は、そこまで多くありません。皆さんの予定が合う日というのは限られています。ですから……」

 

 

 私は彼の目を真っ直ぐ見つめる。自分のお願いを彼に伝える。

 

 

「合同練習とは別に、私とギターの練習をしてもらえないでしょうか? お互いの演奏について意見を出し合って、学び合いたいのです」

 

 

 私がそう言うと、山城君はすぐに柔らかい笑みを浮かべた。

 

 

「いいですよ。自分も氷川さんから学びたいので、俺でよければお引き受けします」

「ありがとうございます。それでは明日の放課後はどうでしょうか?」

「大丈夫ですよ。それじゃあ早速明日からギター練習始めますか」

 

 

 山城君はすぐに鞄からメモ帳を取って、カレンダーのところに予定を書き込んだ。チラッと見えたそれには予定がビッシリと書かれてあり、彼の几帳面な性格が表れているようだった。

 

 

 

 Prrr! Prrr!

 

 

「ああ、ごめんなさい。俺の電話です。……おっす~穂乃花。お疲れさん。……おう、もうスタジオ入ってるよ。こっちに着いたら、受付で一言入れてから皆で入ってきてくれ~……おう、んじゃまた後でなーバイバーイ」

 

 

 さっきの電話……確かドラムの松田さんかしら?

 

 

「穂乃花達が途中でRoseliaの皆さんと会ったみたいで、一緒に来るみたいです」

「あっ……もうこんな時間……」

 

 

 スタジオの中の時計を見ると、もうすぐ集合時間というところまで来ていた。もう彼との練習時間は終わりだ。

 

 

「山城君。今日は自主練に付き合ってくれてありがとうございました。明日のギター練習もよろしくお願いします」

「はい。こちらこそ」

 

 

 コンコン!

 貴嗣~! いる~?

 

 

 

「はーい! ちょっと待ってくれー! ……来ましたね」

「ですね。それでは、合同練習を始めましょうか」

「そうですね」

 

 

 山城君がスタジオの扉を開けると、これから一緒に練習をするSilver Liningの皆さんと、Roseliaのメンバーが入って来た。

 

 

「皆お疲れさん」

「おう! 貴嗣もお疲れ!」

「お疲れリーダー!」

「お疲れ貴嗣君。自主練もお疲れさまだね」

「サンキューな花蓮。……Roseliaの皆さんも、お疲れ様です。今日はよろしくお願いします」

「お疲れ様。今日はよろしく頼むわ」

「お……お疲れ様……です」

「やっほーたか兄!」

「お疲れさま~山城君! 自主練なんてさっすがだねー♪ あっ、紗夜もいる!」

「はい。お疲れ様です。今井さん」

 

 

 今井さんが私に近づいてきた。

 

 

「山城君と練習してたんだね~。どうだった?」

「はい。短い間ではありましたが、有意義な時間でした。そして合同練習とは別で、一緒にギターの練習をしてもらえることになりました」

「ほんとに!? いいじゃん紗夜! あっ、でも練習しすぎはダメだからね?」

 

 

 今井さんはいつもこうやって私を気にかけてくれる。この優しい雰囲気は……彼とそっくりね。

 

 

「紗夜、なんか今表情柔らかいね」

「えっ?」

「珍しいね~! いつもこう、ピシってしてるのに。……あっ、もしかしたら……」

「な、何?」

 

 

 今井さん……近い……。

 

 

「山城君とのギター練習、楽しみなんじゃないの?」

「べ、別に楽しみなんかじゃ……」

「もう! 素直じゃないんだから~☆ 男の子とスタジオで2人きりで練習なんて……なんだかドキドキするシチュエーションじゃん♪」

「……練習を始めますよ」

「はいはーい、りょーかい☆」

 

 

 別に彼とは何もない。ただギターを一緒に練習するだけ。

 

 

 ……そうよ、私は彼から学ばなくてはいけない。

 

 

 私は今よりもっと、技術を磨かなければいけない。一流の演奏をするために。

 

 

 そのためなら……何を犠牲にしても構わない。

 

 

「紗夜。私達も準備しましょう」

「ええ湊さん。分かりました」

 

 

 コンテストまで残り3週間。まだ時間はある。

 

 

 

 

 絶対に……絶対に、今より腕前を上げてみせる。

 

 

 

 

 ギターだけは……あの子に負けるわけにはいかない。

 

 

 





 読んでいただき、ありがとうございました。

 今回の字数が約2500字なので、前回の四分の一程……短い……。

 次回は明日のお昼頃に投稿する予定です。よろしくお願いします。

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