Silver Lining ~ BanG Dream Story~   作:おたか丸

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第50話 思惑

 

 

 

 

 

 すっかり暗くなった帰り道を、私はリサと一緒に歩く。10月の初め、時々吹いてくる風はひんやりと冷たい。

 

 なんとなくポケットに手を入れると、何か入っていることに気づく。取り出してみると、それは山城君から貰った、パイン味ののど飴だった。

 

 

「あっ、のど飴だ。それ貴嗣から貰ったやつ?」

「そうよ。少し多めに貰ってしまったわね」

「でも喉のケアは大事でしょ? 貴嗣も言ってたんだし、無理しちゃダメだよ?」

 

 

 私の幼馴染はいつものように、私のことを心配してくる。相変わらず世話焼きね。

 

 

「でもなんで貴嗣、あの時友希那が練習しすぎてるって分かったんだろ?」

「……それよ」

「えっ?」

 

 

 リサの問いかけで思い出した。

 私は彼ら……彼と話してから、ずっと気になっていたことがある。

 

 

「山城君について、今日はっきりしたことがあるの」

「貴嗣について?」

「ええ」

 

 

 今日一緒に練習して、確信した。

 

 

「彼は鋭い観察力を持っている。あんなに多くの音を同時に聞きながらでも、私の不調や紗夜のミスに気づいていた。それも、非常に細かいレベルで」

 

 

 そう。これだ。彼についてはまだ分からないことだらけだが、これは確かだ。

 

 

「観察力?」

「そうよ。特に紗夜のギター。あの後ミスをしていた部分を全て当てていたわ」

 

 

 山城君達は私達の演奏を、動画と録音で記録してくれていた。

 

 彼らの演奏の後に、私達の演奏について細かい分析をしたのだけれど、録音のチェックで明らかになったミスの部分と、山城君が事前に指摘した紗夜のミスの部分は完全に一致していた。

 

 

「彼だけじゃない。須賀君も松田さんも高野さんも、私達のミスを的確に見抜いていたわ」

「言われてみれば……特に花蓮はすごかったね。燐子の性格まで当ててたし」

「そうね。燐子から聞いたけれど、燐子と高野さんは知り合いらしいわ。ピアノ繋がりのね」

「そうだったんだ!?」

「燐子曰く、高野さんは幼い頃から一際目立つ存在だったらしいわ。燐子がそう言うだけの実力は確かにあった」

 

 

 数多くのコンクールに入賞したこともあるとも聞いた。お互い知り合いということもあり、燐子は今日あまりオドオドせずに話せたそう。

 

 

「あのバンドは、個々の演奏レベルが高い。そしてそんなメンバーを1つにまとめているのが、山城君ということよ」

「確かに皆すごかったもんね。貴嗣に至っては、なんか何でも見抜いてそう」

「ええ。……それこそ、心が読める(・・・・・)んじゃないかってくらいにね。そんな冗談みたいに鋭い観察眼を、彼は持っている」

 

 

 彼に関する謎は数多いが、その中に新たに今日、あの読心術に近い観察眼が加わった。

 

 

「山城君を含め、彼らの意見やアドバイスは有用なものだったわ。フェスを目指す私達には、彼らの協力が不可欠よ」

「うんうん! 皆に感謝しないとだね!」

 

 

 まだ1日練習をしただけ。それでも学べたことは多かった。

 彼らの必要性を再度確認しながら、私達は2人で人通りが少ない道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「……あぁーっ……今日も弾いた弾いたー」

「なんだ大河? 疲れてるのか?」

「ん~……まあ疲れてないって言ったら嘘になるな」

 

 

 いつもの4人でCiRCLEから帰っている途中、隣を歩いていた大河が伸びをしながら声を出した。その声からは疲れが感じられる。

 

 

「変に緊張してたっていうか? Roseliaの人達上手すぎて、なんかビビっちまった」

「大河らしくないねー? いつもイケイケドンドンなのに」

「いやいや、俺だってビビるときくらいあるぞ」

 

 

 どうやらRoseliaとの練習で緊張していたみたいだ。学校から直接来たと言うこともあって、疲れが溜まっているんだろう。

 

 

「あれが噂の『ガールズバンドの頂点』ってやつかーってずっと思ってた」

「頂点かぁ……確かにあたしもそんな印象かな。今まで色んな人達と会ってきたけど、頭一つ抜けてる感じはあったなー」

「ずば抜けた演奏技術に、独特のダークな世界観……注目されない訳が無いよね」

 

 

 大河に穂乃花、そして花蓮がそう話す。Roseliaとの初合同練習を終えての感想は、どうやら皆似たようなもののようだ。

 

 

「ところで……合同練習やって見てどうだった、花蓮?」

「えっ? 私?」

「だって、最初はあんまり気が進まなかったんだろ? Roseliaと一緒に練習するの」

「……やっぱりバレてたんだね」

「「えっ!?」」

 

 

 花蓮の返事に、穂乃花と大河が驚く。

 無理もない。湊さん達と初めて話した時、花蓮は賛成だと言ったのだから。でもその際に、花蓮は大河達のように即答しなかったのを見逃してはいけない。

 

 

「じゃあ花蓮、今日の練習あんま乗り気じゃなかったってことか?」

「ううん。そういうわけじゃないよ。ただ、最初湊さんが練習に参加したいって言ってきたでしょ? あの時にちょっとね」

「何か嫌な事でもあったの?」

「……2人はさ、貴嗣君が湊さんに言ったこと覚えてる?」

 

 

 静かな夜道を4人で歩きながら、花蓮は静かに話し始めた。

 

 

「貴嗣君はあの時、湊さん達に『自分達の間には方向性の違いがあると理解した上で、一緒に練習をして欲しい』って言ったの」

「ああー! 確かに言ってたね! ……んで、それがどうしたの?」

「なんで貴嗣君はわざわざあんなこと言ったと思う? 相手に何か頼まれた時に、こっちから要求するなんて、貴嗣君らしくないと思わない?」

「確かに普段なら二つ返事でオッケーするしな……」

「「う~ん……」」

 

 

 2人は分かりませんという感じでうなり声をあげている。そんな姿を見て、俺と花蓮は苦笑する。

 

 

「えっとね2人とも、貴嗣君がああ言ったのは、Roseliaの人達と私達がトラブルになるのを防ぐためなんだ」

「「と、トラブル!?」」

 

 

 突然のネガティブワードに、大河と穂乃花は後ろに退く。

 

 

「私達が大切にしているものは“お互いの絆”。どれだけ面白いことをするか、そして見てくれる人と一緒に楽しめるか……そして、それはRoseliaとは正反対だって、あの日話してて思ったの」

 

 

 俺達とは違い、Roseliaが大切にしているものは“如何に優れた演奏ができるか”だ。そこに妥協は無く、仲間の絆といった類のものは、技術に関係ないとして(いと)う人達だと、花蓮は感じ取っていた。

 

 

「そこでこの隣のエスパーさんが私の考えてたことに気づいて、先手を打ってくれたってこと。お互いが嫌な思いをせずに練習できるように、予めルールを決めておこうってね」

「エスパーって何だよ」

 

 

 俺はポケ〇ンじゃないぞ。

 

 

「でも間違ってないでしょ?」

「……否定はしない」

「よくそこまで考えてたな……。でも確かに、今日の練習でも雰囲気は全然違ったよな」

「だねー。特にあこちゃんが私語で注意されてることが多かったような」

「俺達なんて話しまくりだけどな」

 

 

 大河に言われて思い出した。控えめではあったけれど、今日も練習中は普通に喋ってたなぁ。……多分湊さんと氷川さんは良く思ってなかっただろうな。

 

 

「でも私はRoseliaの人達の練習は観たこと無かったし、何も見ないで決めるのも良くないって思ったんだ。それに湊さん達みたいに高い実力を持ってる人達と練習したら、私達も成長できるかなって」

 

 

 勘違いしないでほしいのだが、花蓮はRoseliaが嫌いというわけではない。寧ろ尊敬している。客観的に見て、俺達と湊さん達の間には考え方の違いがあり、それによってトラブルが起こるのではないかと考えただけだ。

 

 仮にトラブルが起こってしまったら、お互いが嫌な気持ちになるのは容易に想像できる。花蓮なりに俺達と湊さん達のことを想っての考えだ。

 

 

「まとめると……私は最初、Silver LiningとRoseliaは相性が悪いからトラブルになると思って合同練習にはすぐに賛成できなかった。でも貴嗣君が上手く言ってくれたおかげで安心できたってところかな」

「なるほどなあ……色々考えてくれてたってことか」

「ありがとねーリーダー!」

「どういたしまして。……とにかく今はRoseliaとの合同練習に注力しよう。今月末の審査に向けて、頑張っていこう」

「「「おー!」」」

 

 

 真っ暗な空の下、俺達は4人でいつものように雑談をしながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 Roseliaとの合同練習から1日後の今日。今日は氷川さんと2人でギターの練習だ。

 

 一旦家に帰ってから私服に着替え、荷物を整理してからCiRCLEで氷川さんと合流することにした。そして今は家からCiRCLEに向かっている途中……ではなく、行き道の楽器屋さんに向かっている。

 

 

「ありがとうな真優貴。買い物ついてきてくれて」

「だいじょーぶ! 今日はお仕事休みやし、ちょっとでもお兄ちゃんと話してたいし」

「そっか。しかもギターまで運んでもらって……重くないか?」

「全然! ノープロブレムだよ~♪」

 

 

 そしてなんと(?)隣には真優貴もいる。買い物に付き合ってもらっている上にギターまで運んでもらっている。

 

 

「今日は2年の氷川さんと練習なんだっけ?」

「そうそう。ギター上手すぎてビビった」

「へえ~! なんかギターやってるような印象無かったから、意外だね」

「俺も最初はビックリした」

 

 

 確かに初めて校門の前で話した時にギターのこと聞かれて、この人もギターやってたりして……とは思っていたが、本当に経験者でしかも本格派ガールズバンドの一員だとは予想できなかった。

 

 

「ザ・真面目って感じだよね。……なーんか我慢してるっていうか、無理してるような気もしないことないけど」

「だよなぁ。ちと真面目すぎる気がする」

「だねー。ちょっと心配」

 

 

 真優貴が氷川さんと会うタイミングと言えば朝の登校の時くらいだが、氷川さんは常にこう……ムスッとしているため、無理をしていないか心配なんだろう。

 

 

「紗夜さんって、日菜さんの双子のお姉さんらしいよね」

「ああ。髪の長さが違うだけで、顔そっくりだよな。やってる楽器も一緒ときた」

「2人ともギターだもんねー。やっぱり家で一緒に練習とかしてるのかな?」

「う~ん、それはどうだろうなぁ」

「?」

 

 

 隣を歩いていた真優貴は首を傾げる。

 

 

「この前日菜さんにショッピングモールに強制召喚された日のこと、話しただろ?」

「あーあれね。噂の美少女天才アイドルとデートした日ね。彩さんと千聖さんじゃ我慢できずに日菜さんにまで手を掛けるなんて……私が知らない間にとんだプレイボーイになっちゃって……」

「そんなんちゃうわい……!」

 

 

 思わずツッコミを入れた後、ゴホンッ! とわざとらしく咳き込んで話を戻す。

 

 

「その時に俺聞いたんだよ、『お姉さんと一緒にギター弾いたりするんですか?』って」

「うんうん。日菜さんは何て?」

「……何にも。すっごい答えにくそうにして、困り顔になっちゃってさ」

「ありゃりゃ……その反応はこっちも声掛け困っちゃうね」

 

 

 俺の回答を聞くと、真優貴もすぐに俺と同じことを考えたのか、声が沈んでいくのが分かった。

 

 

「……あんまり仲良くないとか?」

「そうであってほしくないけどな」

 

 

 そんなこんなで歩いていると、目的地である楽器屋さんが目に入った。ここで色々購入してから、氷川さんとCiRCLEで合流する。

 

 

 そしてドアを開けて店に入った瞬間、とある人物の後ろ姿が目に入った。

 

 

「……ねえお兄ちゃん、あれ紗夜さんじゃない?」

「ああ。それに隣にいる人は日菜さ——」

 

 

 

 

 

 奥の方にいる2人を視界に入れた瞬間、ズシリと体が重くなった。

 

 

 今この2人に近づくのはマズい——そう直感した俺は、反射的に真優貴と一緒に一番近くの棚に隠れた。

 

 

 

 

 

「……お兄ちゃん」

「……ああ。ちょっと様子見しよう」

 

 

 傍から見たら異様な光景だが気にしない。幸い店内には俺達だけ、店員さんもレジにはいない。氷川さん達にも気づかれていない。

 

 突然の行動だが、真優貴は俺の意図を分かってくれている。俺達は耳を澄まし、2人の会話を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……くないわ

 

 

 えっ……

 

 

 ……かっこよくないわ

 

 

 でも、おねーちゃ——

 

 

 かっこよくないって言ってるの! ……私は1人で弦を見たいの。早く友達と遊んで来たらどうなの?

 

 

 ……うん……

 

 

 

 

 

 コツコツと足音が聞こえる。俺達はサッと別の棚の方に移動して、出ていく日菜さんの後ろ姿を見る。

 

 

「……日菜さん、出ていっちゃった……」

「ああ。……仲良し姉妹ってわけじゃあなさそうやな」

「……お兄ちゃん」

「ん?」

「……大丈夫?」

 

 

 ふと左手を握られる。優しく俺の手を包み込んでいる真優貴は、心配そうに俺の顔を見ている。不安そうな真優貴を少しでも安心させるために、俺はその小さな手を握り返す。

 

 

「大丈夫。こんな程度でしんどくなるほど、俺のメンタルは弱くないのは知ってるだろ?」

 

 

 店に入った瞬間感じたのは、とてつもなく強い負の感情。

 

 それに近づくのはまずいと感じ、思わず隠れてしまったが……まさかあの氷川さんだったとは。

 

 

「……無理したらダメだよ?」

「しないし、してない。てか無理したら、それこそ真優貴には分かるだろ?」

「まあね。……それでどうする? 声かける?」

「とりあえず、な。そもそも俺も弦買いに来たんだし。うまいこと振る舞おう」

「わかった。演技なら任せといて」

「おうよ」

 

 

 

 俺達は小声でそう話し合った後、奥の方でギターを見ている氷川さんの方へ向かう。ギターのブースをジッと見つめていて、俺達に気づく様子はない。

 

 

「氷川さん」

「っ!? ……や、山城君!? どうしてここに……?」

「ギターの弦を買いに来たんです。今は真優貴に運んでもらって……って、そうだ、多分妹とは初対面ですよね? 知ってるとは思いますけど……妹の真優貴です」

 

 

 真優貴はテレビやドラマ、映画によく出ている現役女優なので知らないことはないだろが、こうやって話したことはないだろうから、改めて紹介する。

 

 

「はじめまして、氷川さん。山城真優貴です。兄がいつもお世話になってます」

「……はじめまして、山城さん。2年生の氷川紗夜です」

「はい。今日はお兄ちゃんと練習なんですよね。私も応援しています。頑張ってください」

「あ……ありがとう……ございます……」

 

 

 氷川さんからまだネガティブなオーラを感じる。日菜さんとの間に何があるんだ?  

 

 

 ……いや、今考えるべきことじゃない。切り替えて、現状に集中だ。弦を買って、CiRCLEに向かおう。

 

 

「真優貴。ギターもらうわ」

「えっ? でもライブハウスまで持てるよ?」

「後は弦買うだけだし、女の子にずっと持たせるっていうのは、なんか嫌だし」

「うわ~氷川さんの前やからってカッコつけて~♪」

「そんなのじゃないよ。ほら、折角仕事休みなんだし、たまには家でゆっくりしときな」

「……私はお兄ちゃんと話したいからついてきたんですけどぉ~?」

「いたいいたいグリグリすな」

 

 

 真優貴は不服そうに、その綺麗な指で俺のほっぺたを押してきた。結構な力が入っていて痛い。

 

 

「帰ってきてからいっぱい話してやるから。ホープの散歩もやっといてほしいし」

「むむ~……確かに家でお話はできるもんね……しょーがない。はい、ギターあげるっ」

「顔がフグみたいになってるぞ~」

「誰のせいですか~? そんな悪いお兄ちゃんにはグリグリの刑だぞっ」

 

 

 またほっぺグリグリが始まった。しかも片方の手でグリグリしながらも、背中のギターは俺にくれるという、中々に器用なことをやってのける。さすが俺の妹。

 

 そしてそんな俺達2人を見つめている人物が1人。

 

 

「……あの……」

「いたいいたい……ああっ、ごめんなさい氷川さん。すぐ弦買ってくるんで」

「い、いえ……その……」

「「?」」

「お2人は……双子ですよね?」

 

 

 てっきり苛立たせているのかと不安になったが、どうやらそうではないらしい。先ほどと同じように、不安そうな、悩んでいるような表情で俺達に質問をしてきた。

 

 

「はいっ。お兄ちゃんのほうが1分早く生まれたんで。正真正銘の双子です」

「……そうなんですね」

「どうかしましたか?」

「……お二人は仲良しなんですね」

 

 

 微かに震えた声でそう言う氷川さん。とても辛そうな氷川さんの様子を見て、真優貴はあるものを鞄から取り出した。

 

 

「氷川さん。これをどうぞ!」

「これは……クッキー?」

 

 

 真優貴が氷川さんに渡したのはクッキーだった。特にこれといった飾りつけのない、素朴な味の甘いクッキーだ。

 

 

「はい! 最近お兄ちゃんとよく作ってて、色んな人に渡しているんです。特にお兄ちゃんは練習の日、いつも持って行ってくれるんですよ」

「……このクッキーを?」

「なんでも、糖分をとることで集中力が高まるそうです。他にも雰囲気が良くなって演奏しやすくなったり……まあ甘くて美味しいっていうのが一番らしいですけど♪」

 

 

 真優貴は笑顔でそう言って、氷川さんにクッキーを渡した。

 

 

「氷川さんもどうぞ! 集中力が上がれば、ギターも弾きやすくなるかもしれないですよ?」

「……わかりました。ご親切にありがとうございます」

「はいっ! じゃあ私はこのあたりで失礼しますね。練習頑張ってください! お兄ちゃんもね!」

「はいよ。色々サンキューな。んじゃ、気をつけて」

「はーい! それじゃあいつもの……ハイタッチ!」

「はいよっ」

 

 

 俺と真優貴はハイタッチをする。俺が練習に行く時や、真優貴が仕事に行く時等にいつもする、“頑張ってね”のサインだ。

 

 そうしてニコニコ顔になった真優貴は氷川さんに一言入れた後、楽器屋さんを後にした。

 

 

「……妹さんは、優しいんですね」

「はい。自慢の妹です」

「……」

「すいませんね、ダラダラ話してしまって。すぐに弦を買ってきます。そしたらCiRCLEに向かいましょう」

「はい……分かりました」

 

 

 これはちょっと簡単にいかなさそうだ。

 

 さっきの日菜さんとの一件が練習に悪影響を及ぼさないように祈りながら、俺はギターの弦が売っている棚に意識を移した。

 

 

 

 

 





 読んでいただき、ありがとうございました。

 次回は早ければ明日更新しますので、よろしくお願いします。

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