Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
そしてむら₂₄_(๑˃̵ᴗ˂̵)و♥♥♥様、評価ありがとうございます! 嬉しさがぶち上がっております……(感涙)
「お前はほんまかわええなあぁ~」
俺の膝に乗っかっている
ついさっきギターの練習が終わり、温かいカフェオレを飲みながらリビングのソファでゆっくりしていると、愛犬のホープが膝の上に乗ってきた。
ホープを撫で、そのクリーム色の綺麗な毛並みを堪能していると、携帯が震えた。どうやら誰かからメッセージが来たようだ。
Kasumi〈明日のギターのご指導、よろしくお願いします!〉
という戸山さんからのメッセージが、「よろ!」というスタンプと一緒に送られていた。明日の放課後に、前回言っていたギターの練習を見ることに。
山城貴嗣〈まかしといて~〉
こちらもスタンプと一緒に送る。
この相手の同じようなメッセージを送るっていうの、心理学用語でミラーリングというそうな。人間は自分と同じような行動や仕草をする者に好感を抱くらしい。友達が水を飲み始めたら自分も自然とコップに手を伸ばしていた……といった感じである。
モテる男が使うテクニックとして、ネットにはよく書かれている……が、本当に効果があるかは分からない。もし皆さんに現在仲を深めたい人がいるなら、相手の仕草を観察し、ほんの少し真似してみてはいかがだろうか。
◇◆◇◆
そして次の日。ただ今ギターを持って登校中。
気が付けば学校のすぐ近くに来ていた。現在朝の7時半過ぎ。こんな早い時間に来る生徒はほとんどいない……と思っていたのだが、門のそばにはとある人物が立っている。
「(……あの先輩、入学式の時も見たな)」
綺麗なエメラルドブルーの髪にキリっとした表情、そして腕には風紀委員の腕章。いつも校門で服装チェック等を行っている、風紀委員の先輩だ。
校門に近づくと、先輩の方から挨拶をしてくれた。
「おはようございます」
「おはようございます。朝早くからお疲れ様です」
そういって挨拶し、ペコリと一礼する。
自分のことを棚に上げておいてなんだが、この風紀委員の先輩もこんな朝早くから学校に来て、こうやって風紀委員の仕事に励んでいるという事実に、少し驚いていた。
「……」
「(ん? ギターケース……?)」
ふと、先輩が俺のギターケースを何も言わずにジーッと見つめていることに気が付いた。
怪訝そうなその眼差しは、俺にある大切なこと――“日本の学校の校則は厳しい”という事実を思い出させた。
「あの、ギターもって来るのってダメでしたか……?」
「えっ? ……ああいえ、そういうことではなくて……いつもはギターを持ってきていないのに、どうして今日は持ってきているのですか?」
良かった。校則違反ではなさそうだ。
「今日は放課後クラスメイトにギターを教える予定なんです。授業が終わってから直接練習する場所に行くらしいので」
「そうなんですね……ギターはいつから?」
「本格的に練習し始めたのは小学5年の時からですね」
「なるほど……ということは、演奏技術は高いものなのでは?」
「あははっ、上手だとは自分では言いづらいですけど、ある程度は弾けるって感じですね」
「……それだけ昔から練習して“ある程度”ですか……」
そういうと先輩は、難しい顔のまま黙ってしまった。何かを思い悩んでいるみたいだった。
「先輩? どうしました?」
「……ああ、すみません。なんでもありません。引き留めてしまいすみませんでした。放課後の練習、頑張ってください」
「ありがとうございます。それと、話しかけてくれてありがとうございました。先輩と話すの、楽しかったです」
「……えっ?」
「風紀委員の仕事頑張ってください。それでは、失礼します」
そういってまた一礼。ギターケースを背負い直して、校舎に向かおうとした。
「あの……っ!」
「はい? どうしました?」
「……あなたの名前を教えてもらえませんか?」
どうして名前を? と一瞬思ったけど、別に断る理由もない。俺は振り向いて、先輩に自分の名前を伝える。
「僕は山城貴嗣っていいます。
「山城……貴嗣君」
先輩は噛みしめるように、俺の名前を復唱する。
「私は氷川紗夜と申します。あなたの1つ上の2年生です」
「氷川紗夜さん……綺麗な名前ですね。また話しましょう。それでは俺はこれで」
そういって今度こそ校舎に向かう。先程の先輩――氷川紗夜さんの悩んでいた姿が頭から離れないまま、1年A組の教室に向かった。
階段を上がって教室の前に来た。さすがにこの時間帯だと1人かなあとか思いながら教室に着くと人影が。どうやら先客がいたようだ。
「おはよう、
「おお、おはよう貴嗣! いやさ、宿題のプリント机の中に入れたまんまでさー。こうして早く来てやってるわけですよ」
彼は
幼い頃から水泳を続けている影響で、髪が日焼けして焦げ茶色に見えるが、元々は俺と同じ黒髪だったらしい。体育会系らしく体を鍛えており、かなり筋肉質だ。身長が180cmちょい(俺が175cm)なのもあって、滅茶苦茶体がごつく見える。
「……なあ貴嗣、それ、ギターか?」
「おう、そうだよ。エレキギター。戸山さんギター始めたらしくてさ、教えてほしいって頼まれた」
「へえ~、戸山さんがギターねえ……てか貴嗣、もしかしたらギター弾けるの?」
「小5からやってるからな。多少は弾けるよ……って大河、腕止まってんぞ?」
「へ? ……ってああやべっ! 宿題やんなきゃ!」
そう言いながら、チラッチラッと俺を見る大河。ウルウルとした目でこちらを見てくるその姿はまるで捨てられた子犬のようだ。
大河が何を訴えているのかを想像するのは、難しいことではなかった。
「…………俺のやった分、見せようか?」
「おおマジで!? さっすが貴嗣だぜその言葉待ってたよ!! サンクス! 今日の昼メシは奢るぜ!!」
奢るのはいいよと言っても大河は退かなかったので、昼休憩に俺の大好物のコーヒー牛乳を買ってもらった。
◇◆◇◆
時は進んで現在放課後。戸山さん、花園さん、牛込さんと一緒に練習所に向かっている。なんでも、流星堂というところで練習するそうだ。
「――んで、その流星堂っていうのが、学年主席の市ヶ谷さんの家ってことか」
「そうだよ! 有咲はね、すっごく面白い子なんだよ!」
市ヶ谷さんといえば、学年主席で新入生代表のあいさつをする予定だったけど、当日欠席していて先生たちが焦っていた……という記憶しかない。顔も見たことがないので、今日が完全に初対面ということになる
そんなこんなで流星堂に到着。日本庭園を思わせる大きな庭に、大小様々な盆栽が置かれている。肝心の屋敷もかなり大きく、“お金持ち”という言葉がすぐに思い浮かんだ。
「あーりさー! 来たよー!」
「うげっ、だからくっつくなって言ってるだろ!」
庭を見回している間に、戸山さんが金髪の子に抱き着き、そしてその子が必死に戸山さんを剥がそうとしていた。
滑らかな金髪のツインテールを揺らしている彼女を見て、「ツインテールなんてマジで久しぶりに見た」と心の中で呟いていた。イギリスでは、ポニーテールにしている女の子が多かったからだ。(ちなみにツインテールは和製英語。英語ではPigtailsと言う)
そんなことを考えていると、グイグイと迫ってくる戸山さんを引き離していた彼女と、ふと目が合った。俺の存在に気付いたみたいだ。
「……誰だ?」
「はじめまして。1年A組の山城貴嗣です。戸山さん達のお手伝いとして来ました」
自己紹介をして一礼。なんだが今日はこの流れが多い。
「山城……って香澄達が言ってた……っ! し、失礼しました!」
バッ! と姿勢を正して、綺麗な一礼を見せてくれた。
「ごきげんよう。1年B組、市ヶ谷有咲です」
「あーありさ、猫被ってる!」
「はあ!? う、うるせえ! 猫被ってねえ!」
この人が、市ヶ谷有咲さんみたいだ。
お嬢様のような、毒舌家のような市ヶ谷さんとの出会いは、想像よりもずっとドタバタしていたものだった。
◇◆◇◆
「さあ」「はやく!」
「「ギターみ・せ・て! み・せ・て!」」
「はいはい、そんな焦んなくても見せるよ」
花園さんと戸山さんが俺に早くギターを見せろと言ってくる。必死な様子の2人を見て笑いながら、ケースから俺のギターを取り出す。
「わあ~! これが山城くんのギター!! かっこいい!」
「うん。落ち着いたモノトーンだし、なんか、山城君って感じ」
2人はそういって目を輝かせながら俺のギターを見ている。
これは初めて買ったエレキギターだ。白と黒を基本に、ネックの木の色がいいアクセントになっている。「ギター、モノトーン」と調べたらすぐに出てくるくらいの、どのお店にも1つくらい置いている初心者用のギターだが、思い入れもあって今でも使っている。
「ねえねえ! 何か弾いてみてよ!」
「それいい。私も聞きたいな」
「私も聞いてみたいかな……」
そう3人が口にする。市ヶ谷さんも言わないだけで、少し興味はあるのか、こちらをチラチラ見ている。
「オーケー。じゃあ、ちょっとだけね」
そう言ってピックを持ち、たまたま頭に浮かんだ曲……“back num○er”さんの“わたがし”を演奏した。
~♪♪~
流石に全部弾くわけにはいかないので、一回目のサビが終わったタイミングで止めた。
「す……」
「す?」
「すっっっごいよ山城君!! ギターすごい上手!!」
「弾き方がすごく丁寧。予想以上に上手で結構びっくりしちゃった」
「本当に上手……なんていうんだろ、弾き方が優しかったね」
「(す、すげえ……)」
皆からお褒めの言葉を沢山いただいた。
「皆ありがとう。久しぶりに弾いたからちょい不安だったけど……気に入ってくれたみたいで何よりだよ」
「よーし! 私も山城君みたいに弾けるように頑張るぞ!」
「おっ、いいね。じゃあ練習がんばろっか。」
そして各々が担当楽器の練習を始めた。牛込さんと市ヶ谷さんは経験者ということもあり、自分で練習を進めている。
そして、花園さんが滅茶苦茶うまい。小学校の頃からギターを練習しているらしく、納得の熟練度だ。
戸山さんも頑張っている。俺たちの指導をしっかり聞き、頑張ってギターを自分のものにしようとしている。
こんな感じで楽しい雰囲気に包まれながら、夜の8時くらいまで練習を続けた。
◇◆◇◆
練習が終わり帰宅後、いつものように家族皆で夜ご飯を食べ、風呂に入って、寝る準備も完了。
そろそろ寝ようかと思いベッドに入ると、携帯が鳴った。
「(……ん? 電話? 戸山さんから?)」
スマホの画面に表示された“Kasumi”の文字、そしてこの特徴的な着信音で、LI〇E通話だとすぐに分かった。
「もしもし? 山城君? 今時間大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。どうかしたー?」
「えっとね、今日のお礼もう1回したくて」
そう感謝の言葉を伝えてくる戸山さんの声を聞いた瞬間、少し違和感を感じた。
「山城君、今日はほんとにありがとね」
「どういたしまして。楽しかったよ。こちらこそありがとう。また練習しよっか」
「……うん、また教えてね」
やっぱりそうだ。声に元気がない。
「戸山さん、声に元気ないけど、やっぱり今日疲れたんじゃない?」
「う、ううん! そういうわけ……じゃないんだけど……」
「……悩み事だったら聞くよ?」
そう言うと、少しの沈黙の後、戸山さんの声が聞こえた。
「……うん、あのね、今日は楽しかったんだけど、山城君の演奏見たら、すごいって思うのと同時に、できるようになるまでの道のりは遠いかなって…………私も、山城君みたいになれるかな?」
もしかしたら、練習中もずっと不安だったのかもしれない。ちゃんと配慮しておくべきだったと思いつつ、俺は戸山さんの問いに答えた。
「それはやってみないと分からないな。とにかく、何事にもチャレンジしないとね」
「だよね。でも、失敗しちゃうかもしれないって思っちゃうんだ……」
「うん。失敗するのって怖いよな。でもさ、別にいいじゃん。失敗しても」
「えっ?」
「何事もさ、成功するか失敗するかなんてやってみなきゃ分からないじゃん?」
「うん……」
「挑戦って、すごい勇気いるし、怖いし。でもさ、もし失敗しても、何が悪かったのか反省して、またやり直せばいい。そうやって成功に近づいていくんだし。要は失敗しても何かを得られるんだ。でも、何もしないままじゃ、何も得られないし、成長もしない」
「だから、とにかくチャレンジだ。失敗してもいい、『その失敗は私を成長させてくれるんだ』って考えてみて」
輝かしい活躍をしている人は、決して失敗しないわけじゃない。
彼らは失敗を恐れない。その経験が自分を成長させることを知っているからだ。だからこそ、彼らは何事にもチャレンジし、成長する。
「失敗してもいい……とにかくチャレンジ……」
「『チャレンジして失敗することを恐れるよりも、何もしないことを恐れろ』ってこと。だからさ、色々やってみようぜ。俺も手伝うよ」
「うん……うん……! そうだよね……! 私、山城君みたいに上手くなりたい……っ!」
「ああ。その気持ちがあれば大丈夫だよ」
戸山さんの声に元気が戻ってきたみたいだ。良かった。
「私、頑張る! いろんなことにチャレンジする! それでいつか、山城君と一緒に弾きたい!」
「おう。いっぱい練習して、一緒に弾こうな」
「うん! ありがとう、やまし……ううん!
突然の名前呼びに少し驚いたが、すぐに意識を会話に戻す。
「どういたしまして。さあ、そろそろ寝よっか。また明日も学校だし」
結構長い間話していたらしい。そろそろ寝ないと明日に響く。
「そうだね。じゃあそろそろ切るね。貴嗣くん、今日はほんとにありがとね!」
「ああ。また明日……おやすみ、
「……! うん! おやすみ、貴嗣くん! また明日ね!」
ピロンという音と共に、通話画面は終了した。
俺はいつものように、携帯のタイマーを“4:00”にセットした後、ベッドに寝転がり目を閉じた。
そして、学校でお互い名前呼びをしているのを大河に見られて、「貴嗣!? お前まさか……!?」と問い詰められるのは、また次の日の話。
ありがとうございました。
まだ投稿を始めて間もないのですが、色んな方に見ていただいており、とても嬉しいです! これを励みに、これからも頑張って参ります!
なお、勝手ながら次回から投稿時刻を21時以降に設定させていただきます。ご了承ください。
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