Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
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やっぱり1日で話を書き切るもんじゃないですね(白目)。毎日ちょっとずつ書いていきたいのですが、中々アイデアが思い浮かばなかったりして、苦戦している今日この頃でございます。
まあそんな話はともかく、今回もRoseliaとのお話です。それではどうぞー。
リサさんと話した日から数日経った今日、俺達は学校が終わってからCiRCLEへと向かっていた。制服のまま、いつもの4人で楽器ケースを持って歩いている。
「~♪」
「貴嗣君、何だか嬉しそうだね」
「鼻歌まで歌って上機嫌だね~」
「そりゃ嬉しいさ。また今日からRoseliaの人達と一緒に練習できるんだから。穂乃花と花蓮だって、嬉しいだろ?」
結論から言ってしまうと、Roseliaは解散の危機を乗り越えた。
リサさんはあの後湊さんの家に行き、自分の気持ちを真っ直ぐに伝えたそう。見守るだけではない、ちゃんと湊さんと向き合うと決めたリサさんの行動は、確かに湊さんの心を動かすきっかけになったはずだ。
それだけじゃない。あこちゃんと白金さんも、素晴らしいファインプレーを見せてくれた。これまで振り返り用として撮ってあった動画、その中でも最近録画したものを5人で共有した。動画の中の湊さん達は、心から笑っていた。5人で演奏することが、いつしかあの人達にとってかけがえのない時間になっていた。
「最初は恐ろしく細かいところまでミス指摘されてビビっちまったけど、今となってはもう慣れちまったな。それにRoseliaの人達が厳しくチェックしてくれることで、俺達の演奏も前より良くなってきてる。ありがたい話だな」
「そうだな。大河の言う通り、俺達のレベルもこの短期間で上がった。それは間違いなくRoseliaの皆さんのおかげだ」
だから俺は、俺達を鍛えてくれた人達とまた練習できるのが、すごく嬉しい。
「さあ、着いたことだし、受付してスタジオ入るか」
気が付くとCiRCLEの前まで来ていた。今日はRoseliaが先に練習している。早く練習に参加しよう。
受付でスタッフさんに一言入れてから、俺達は5人が待つスタジオへと向かった。
◇◆◇◆
時は進んで、練習の合間の休憩時間。CiRCLEのラウンジで、俺はあこちゃんと白金さんの3人で話していた。
「それでね、その時あこがダウンしちゃったんだけど、ボスのターゲットが外れた瞬間を狙ってりんりんが蘇生スペルかけてくれたの! あこはその隙にボスの背中に攻撃してクリティカルヒット! 見事レイドボスを倒したんだー!」
「おおっ、すげえ。白金さん超ファインプレーじゃないですか。やっぱりその時ってあこちゃんのターゲットが外れるのを待ってたんですか?」
「はい……背後からの攻撃は……攻撃倍率が高いクリティカルヒットになります……。ボスの体力も残り少なかったので……私が注意を引いてからあこちゃんにスペルをかけたんです……」
「自分の周囲を常に見て適切な判断を下すってのは、誰でも出来ることじゃないです。流石白金さんですね」
「えっ!? い、いえ……! ぜ、全然そんなすごいことじゃ……」
「それでも俺は凄いことだと思います。なあ、あこちゃん?」
「うん! りんりんは凄いよ!」
「ううっ……ふ、2人とも……///」
紗夜さんもそうだけど、Roseliaには真正面から褒められた時の反応が可愛らしい人が多いみたいだ。
「そう言えばさ、たか兄ってゲームするの?」
「ああ。父さんがゲーム好きで、家にゲーム機があるんだ。結構色々やってるよ」
「ほんとに!? じゃあたか兄もあこ達と一緒にNFOやろうよ! すっごい面白いからさ!」
あこちゃんはテンション高めでそう提案してきた。
「でも俺、NFOみたいなMMORPGってやったことないけど、今からでも大丈夫かな?」
「だ、大丈夫ですよ……今丁度新規サポートキャンペーンというのが行われていて……初心者の人が始めやすいように……レアアイテムや限定品が入手できるんです……」
「あこ達もサポートするからさ! たか兄も一緒にやろうよー!」
「あははっ。そこまで言われるとやりたくなっちゃうな~。今度の休みに出かける予定あるから、ちょっとゲーム屋さん寄ってみるよ」
「ほんと!?」
2人にここまで強く勧められると、やっぱり興味が湧いてきた。NFOをチェックしてみると伝えると、あこちゃんはパアっと顔が明るくなった。
「じゃあその時あこも行ってもいい?」
「もちろん。他のおススメのゲーム教えてくれ」
「やったー! りんりんも一緒に行こうよ!」
「わ、私も……!?」
あこちゃんに誘われた白金さんは顔を赤らめて目を泳がせた。ううっ……っと声を漏らして、こちらをチラッチラッと見ている。
「い、いいんですか……?」
「はい。俺はウェルカムですよ」
「そ、それじゃあ……私も……」
「やったー! ありがとりんりん!」
白金さんは嬉しそうに笑った。
あこちゃんも白金さんとお出かけできるのが嬉しいのだろう、さっき以上にニコニコとしている。
「山城君」
突然後ろから名前を呼ばれた。振り返ると、湊さんが立っていた。
「湊さん。お疲れ様です」
「ええ。お疲れ様。今時間あるかしら?」
「はい。ありますけど、どうしました?」
そう尋ねると、湊さんは表情を変えないまま、いつもの凛とした声で言った。
「あなたと少し、話がしたいの」
◇◆◇◆
「今日はリサさんと一緒じゃないんですね」
「リサは今紗夜と話しているわ。それに……」
「?」
「あなたとは2人で話したいから」
湊さんと一緒に、CiRCLEの周りの道を歩く。ラウンジから離れて大丈夫ですか? と聞くと、「大丈夫。それに今は気分転換に歩きたい気分なの」という答えが返って来た。
「それで、話というのは? さっきの練習についてですか?」
「いいえ。その……」
湊さんにしては珍しく、言うのを躊躇っていた。その様子から、話の内容は大方予想がついた。
「この前のスカウトの話ですか」
「……相変わらずこっちの考えていることを先読みするのね」
歩きながら、湊さんは言った。
「リサからこの前の話を聞いたわ。リサを助けてくれてありがとう」
「いやいや、助けたなんて大袈裟な。話を聞いただけですよ。誰でも出来ることです」
「でもリサの気持ちに共感しながら話を聞くのは、誰でも出来ることじゃない」
湊さんの言葉に、俺はうむ……と唸ってしまった。何とも中途半端な返事だ。
「リサは昔からそう。相手に迷惑をかけまいと、自分の悩みを打ち明けることはあまりない。そんなリサの心を開くなんて、やっぱりあなたは不思議な人」
「うーん……ありがとうございます?」
これは褒められているのだろうか?
「少し話が逸れたわね。……リサから私がどうしてRoseliaを結成したか、どうして私が歌い続けているか、聞いたわよね」
「はい」
「どう思った?」
「えっ?」
「私が音楽を続ける理由……F.W.Fを目指す理由を聞いて、どう思った?」
恐らくこれを聞くために俺を呼んだのだろう、湊さんの真剣な声を聞いてそう思った。
湊さんは顔を少し傾けてこちらを見ている。けれどその瞳には、どこか不安が混じっているようだった。
「どうも何も、『なるほど。だから湊さんは音楽を続けているんだ』って思ったくらいです」
「……それだけ?」
本当にそれだけなのか? もっと他に何かあるんじゃないのか? そう聞かれているような気がした。
「はあ……別に軽蔑したとか、がっかりしたとか、全然そんなこと思ってないから安心してください」
「……っ」
「確かにちょっと驚きましたけど、『ああ、こういう想いで一生懸命音楽をしている人がいるんだ』って思っただけです」
「私は自分の目的のために、皆を利用したのよ? スカウトのことも秘密にして、皆に迷惑をかけて……傷つけた。……それなのにあなたは私を肯定するの?」
「……そりゃあ細かいこと1つ1つについては、褒められない言動があったかもしれません」
でも、と言って話を続ける。
「どれだけ頑張っても、人間はミスをしてしまいます。大切なのはミスを責めることじゃなくて、ミスをしてからどう行動するかだと思うんです。しっかりと向き合って反省して次に繋げる、それが大切だって。バンドの練習と一緒です」
湊さんの顔を見る。彼女はじっとこちらを見つめていた。
「湊さんはあの後皆の前でちゃんと謝ったんでしょ? 自分が悪かったって認めて、紗夜さん達の前に立って謝罪をした。そしてしっかりと反省して、今また5人でフェスに向かって頑張っている。それでいいじゃないですか」
自分の考えを伝えると、湊さんはスッと視線を正面に動かした。
暫しの沈黙の後、湊さんは言った。
「不思議な人。こんな私のことも、肯定してくれるのね」
「悪口言って人を傷つける人間にはなっちゃダメだって思いますから」
「……そうね」
湊さんはそう言って、ふんわりと笑った。とても優しい笑顔だった。
「やっぱりあなた、リサに似てる」
「……へっ?」
「あなたの温かい雰囲気、リサにそっくり」
「そ、そうですかね……?」
自分にはそんな実感が無く、微妙な返事をしてしまった。うーんと唸っていると、湊さんはクスリと笑った。
「あなたがバンドメンバーに慕われている理由が、今分かった気がする。私はあなたのように他人を真っ直ぐ受け入れられないかもしれないけれど……これからの為にも、あなたのメンバーとのコミュニケーションを参考にさせてもらいたいわ」
「ありがとうございます。俺も湊さんの音楽に対する真剣な姿勢、もっと見習いたいと思ってます」
「ありがとう。これからもよろしくお願いするわ」
「はい。こちらこそ」
気が付くと、俺達はCiRCLEの前に来ていた。休憩時間は残り10分弱。良いタイミングだ。
「さあ、戻りましょうか」
「ですね。後半の練習も、頑張りましょう」
「ええ。あなた達も、私達にしっかりついてくるのよ」
「望むところです」
そう言い合ってから、俺と湊さんは再びCiRCLEへと戻った。
◇◆◇◆
数日後、F.W.Fコンテスト当日。
「う~ん、この会場の雰囲気、なんだかすっごいワクワクするね……!」
「まだコンテスト始まってないけど、熱気が伝わって来るね」
穂乃花と花蓮が楽しそうに話す。
俺達4人はRoseliaの応援の為、観客としてこの場に来ていた。他のバンド(どのバンドもレベルが高い)の演奏ももちろん楽しみだが、やっぱり一番応援したいのはRoseliaだ。
「……ん?」
「どしたー貴嗣?」
「真優貴から電話だ。ごめん皆、ちょっと外出てくる」
「おうよ。荷物は俺達が見とくよ」
「サンキュー」
大河達にありがとうと言ってから、真優貴からの電話に出るために観客席を後にした。
*
「ああっ、メンテ用のスプレー忘れちゃった……!」
「忘れ物には注意してって連絡したじゃない。……はい、これどうぞ」
「あっ……ありがと……紗夜」
「私も使いたいから、終わったら貸して……ん?」
「紗夜? どうかした?」
「い、いえ。何でもないわ。(今外に出ていったのは……貴嗣君?)」
*
「うん……うん……オッケー。じゃあ帰りにパンケーキミックス買ってくるよ。……ああ、じゃあな。仕事、無理せず頑張ってな」
真優貴からの電話は、フェスの帰りにパンケーキミックスを買ってきて欲しいという願いだった。メッセージで伝えればいいのでは? と思うかもしれないが、真優貴は電話が好きだ。丁度仕事が始まる前に、家族とちょっと話がしたかったみたいだ。
甘えん坊さんめ。
「貴嗣君」
「ん? ……あれ? 紗夜さん?」
電話を終えてうーんと背伸びしていると、後ろから紗夜さんに話しかけられた。その姿はいつもの私服や制服ではなく、白金さんが作ったRoseliaの衣装を身にまとっている。
「お疲れ様です。衣装、似合ってますね」
「そ、そうでしょうか……? ありがとう……ございます」
「いえいえ。それで、外に出てくるなんてどうしたんですか? 外の空気を吸いに来たとか?」
「いいえ。先程貴嗣君が外に出ていくのが見えたので。……コンテストの前に、少しあなたと話したくて」
紗夜さんはそう言って、壁にもたれかかっている俺の隣に来た。
「コンテストが始まる前に、貴嗣君に感謝を伝えたくて」
「感謝ですか?」
「はい。……貴嗣君には、今日まで本当に色々お世話になりました。ギターの練習にも付き合ってくれて……何より日菜と向き合う勇気を、あなたはくれました」
「あははっ。ちょっと大袈裟ですよ。……でも、紗夜さんが前よりも笑ってくれるようになって、俺も嬉しいです」
「それも貴嗣君のおかげです」
壁に2人もたれかかる。紗夜さんは静かに話し始めた。
「ギターの練習の日、あなたは毎回前日にスコアに沢山のメモを書いてくれて、それを元に一緒に練習をして……気が付いたら、コンテスト当日になっていましたね」
「光陰矢の如し、ですね。ほんと、あっという間でした」
「ええ。そんなあっという間でも、私は上達できたと思います」
「はい。間違いなく、良くなりました」
今までの練習の日々を振り返るように、紗夜さんとゆっくり話す。
「貴嗣君は私が1つミスを克服するたびに、『すごいです!』『流石です!』って言ってくれましたね。いつも喜んでくれて……貴嗣君と一緒に練習する時間は、とても心地よかったです」
「俺もです。紗夜さんにミスを指摘してもらって、改善案を出してくれて。おかげで前よりも上達できました」
そう。俺も紗夜さんと同じだ。
少しずつだけど、ギターが上手くなっていくのを感じられて、それがとても嬉しかった。
「貴嗣君。改めて、本当にありがとうございます。あなたが支えてくれたおかげで、私はここまで来れました。まだまだ未熟な私ですが、今日は今の私が出来る最高の演奏を披露してみせます。だから見ていてくださいね」
スッと壁から離れて、こちらを真っ直ぐ見る紗夜さん。俺を見つめるその目は、凛々しくて優しい目だった。
「はい。最高の演奏、楽しみにしてますね」
俺も壁から離れて、紗夜さんを見つめる。
夕日に照らされた紗夜さんは、とても綺麗だった。
その表情に以前までの邪気は無く。
紗夜さんの優しさが表れたような、柔らかい笑顔だった。
読んでいただき、ありがとうございました。
Roseliaのメインストーリーは次回で最後です。それに伴って、現在実施しているアンケートを8/21 23:59に締め切りたいと思います。沢山のご回答、ありがとうございました!
次回も頑張って来週中の投稿を目指します。よろしくお願いします。
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