Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
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前回「メインエピソードはあと1話で終わり」とお伝えしましたが、「今回の話と次の話を合わせた2話で終わり」の間違いでした。キャラエピまであともう1話続きます。申し訳ありません。
「お待たせしましたー! 『スーパーやけ食いセット』でございまーす!」
店員さんの元気な声と共に、大きな丸型テーブルにお皿がいくつも並べられた。
どれもこれも恐ろしいくらいの量で、このファミレスのメニューの中ではトップクラスのボリュームだ。けれど、今日の打ち上げの主役であるRoseliaの皆さんには、これくらいのほうがいいのかもしれない。
「あれ? 紗夜さんのハンバーグセット……他のよりポテト多いですね?」
「はい。ポテトをLサイズで注文しましたから」
「あー、確かに注文の時言ってましたね。ポテト美味しいですもんね」
隣に座っている紗夜さんと話していると、また店員さんが料理を運んできてくれた。
「お待たせしましたー! ハンバーグステーキとフライドポテトでございます!」
「ああ、はい。ありがとうございます」
そして自分の前にも、お皿が1つ置かれた。ハンバーグステーキと、ポテト単品だ。
……ん? このポテトの量、写真より多くないか? まあ俺ポテト好きだからありがたいんだけど。
「ん?」
「(ジーッ)」
「……紗夜さん」
「えっ? な、なんでしょうか?」
「このポテト、良かったら一緒に食べます?」
「……いいんですか?」
「もちろん」
「それじゃあ……いただきます」
俺にだけ聞こえるように静かにそう言うと、紗夜さんは素早く手を動かしてポテトを口に運んだ。やっぱりこのポテトが欲しかったみたいだ。
「それで、どうだったかしら? 私達の演奏、あなた達にはどう映ったかしら?」
大きなハンバーグをフォークで切りながら、紗夜さんの隣に座っている人物、Roseliaのリーダーである友希那さん(この間下の名前で呼ばせてもらえることになった)が言った。
友希那さんの問いに、俺は答えた。
「こんな月並みな感想、失礼かもしれないですけど……もう最高でした。俺達全員、皆さんの演奏に夢中になってました」
「そう」
俺の答えを聞いて、友希那さんはスッと目を閉じた。先程の感想を噛みしめているみたいだった。
「山城君の言う通り、私達はコンテストで、今の私達が出来る最高の演奏ができたと思う」
「ええ。ですが……コンテスト入賞にはなりませんでした」
友希那さんの言葉に紗夜さんが続けた。
FUTURE WORLD FES.出場をかけたコンテストは終わった。友希那さん達だけじゃなく、出場しているバンドの全てが、とてもレベルが高かった。他の観客さんと同じように、俺達は4人で子どもみたいに盛り上がった。
一度はバラバラになりそうになったRoseliaの皆さんは、もう一度“絆”で繋がった。一生懸命練習したけれど、コンテストに入賞したバンドのリストの中にRoseliaの名前は無かった。
「『このジャンル、シーンのためには“今”じゃない』って……もぐ……今の私達の演奏では力不足ということかしら……もぐ……」
友希那さんは悔しそうな顔で不満を言いながら、もぐもぐと料理を食べている。何だかかわいい。
「やっぱり納得がいかないわ……もぐ……」
紗夜さんも自分の隣で、先程からパクパクとフライドポテトを食べている。と言うより、さっきからポテトしか食べていない。
「確かにすっごい悔しかったけど……それ以上に、あこ、楽しかった!」
「わたしも……今まででの練習してきた毎日含めて……楽しかった」
「2人とも……! うんっ、そうだね! アタシもすっごい楽しかった!」
そして2人とは対照的に、リサさん達3人は結果をポジティブに受け止めていた。
「確かにコンテスト入賞とはならなかったですけど、審査員の人達の反応を聞く限りだと、相当に認められているって考えてもいいと思いますよ?」
「……そうかもしれない。けどそれでも、私は自分を認められない。父さんの立てなかったステージで歌うまでは……私は今の自分に満足する訳にはいかないわ」
顔を少しだけ上げ、真っ直ぐな視線を送って来る友希那さん。その姿、その言葉からは、力強い覚悟のようなものを感じた。
友希那さんに強く惹きつけられる感覚。これが所謂カリスマ性、というものだろうか。
「友希那さんらしくていいと思います。その目標、絶対に達成できると思います」
「ええ。達成してみせる。……ところで」
「ん?」
友希那さんは料理を口に運んでいた手を止めて、俺達4人を見つめた。
「今月末にはあなた達の舞台があるのよね」
「はい。〈Next Era Contest〉——N.E.Cの1次審査が、来週の日曜日にあります」
今月の初めに参加させてもらったCiRCLEのライブイベント、その最終日に俺達が招待された音楽イベント、N.E.C。その最初の関門が、来週に迫っていた。
「Next Era ContestはF.W.Fと同様、ただのイベントじゃない。このジャンルを発展させるための人材を発掘するためのコンテストとされている。……あなた達なら分かっていると思うけれど、最初の審査だからと言って、向こうが手加減してくれるということはない」
「そうですね。だからこそ挑戦してみたいんです」
N.E.Cに出場する方法は、応募とスカウトの2種類。そしてスカウトするバンドを決める際は、運営委員さんが目星をつけたバンドの演奏を実際に何度も見に行き、最終判断を下すそうだ。
スカウトされるということは、審査側から期待されていると共に、試されていることの証である——この間友希那さんからそう聞かされた。
折角スカウトされたんだ。今の自分達の演奏がどこまで通用するのか、挑戦してみたい。
「たか兄達だったら優勝目指せるよ! あこ達も応援しに行くからね!」
「私も……皆さんの演奏……楽しみです」
「アタシも期待してるよ~♪ 頑張ってね!」
あこちゃんと白金さん、リサさんがそう言ってくれた。嬉しくなって、俺達も頬が緩む。
「この合同練習で、あなた達の技術も上達した。今のあなた達がどこまでできるのか……私達に見せてちょうだい」
「私も湊さんと同じです。皆さんの演奏、楽しみにしています」
友希那さんと紗夜さんも励ましてくれた。ここまで言われたら、やるっきゃない。
そう意気込んで、俺達はRoseliaの皆さんと一緒に、夕方まで打ち上げを楽しませてもらった。
◇◆◇◆
2日後。学校が終わり、家まで帰っている途中。信号が変わりかけていたところで、後ろから声を掛けられた。
「貴嗣君」
「? ……ああ、紗夜さん。お疲れ様です」
透き通った綺麗なこの声を、聞き間違えるはずはない。
「お疲れ様です。今は帰りですか?」
「はい。今日は予定ないので。紗夜さんは練習ですか?」
「いいえ。今日は練習が休みなんです。なので私も帰りです」
「そうなんですね。それじゃあ途中までご一緒してもいいですか? 帰り道、確か途中まで一緒ですし」
「ええ。喜んで」
紗夜さんはニコッと笑って、俺のお願いを聞き入れてくれた。
丁度信号が青になったので、横断歩道を渡りながら紗夜さんと話す。
「昨日は誘ってくれてありがとうございました。打ち上げ、すごく楽しかったです」
「それはよかったです。私達にとっても、いい息抜きとなりました。明日からまたフェスに向けて、練習をする予定です」
「流石ですね。ギターの練習なら、いつでも言ってください。お付き合いしますよ」
「ありがとうございます。私からもよろしく……ん?」
そう言いかけたところで、紗夜さんは怪訝そうな顔をしながら、ジーッと俺の顔を見つめてきた。
「紗夜さん? どうかしましたか?」
「……目の下にクマができていますよ。寝不足ですか?」
「おっと……これですか。今週末の事前審査に向けて自主練してたら、その……集中しすぎちゃって」
「寝不足は体に毒ですよ。何時に寝たのですか?」
「……あー、えっと……」
俺は紗夜さんに、夜中の2時まで練習してしまったことを告白した。そして今日の朝は、ホープの散歩当番だった。散歩当番の日は、朝4時に起きるようにしている。つまり今日の睡眠時間は……。
「に、2時間……!? だ、だめです! しっかり睡眠をとらないと、体調を崩してしまいます!」
「だ、大丈夫ですよ紗夜さん。ちょっと眠たいですけど、しんどくはないので」
「それでも体は疲れているはずです! 今日はしっかりと睡眠をとってくださいね!」
「わ、わかりました……あの、紗夜さん……? ちょっと顔近くないですか……?」
「……っ!? す、すみません……っ!///」
思いのほかグイグイ来た紗夜さん。身長差もあって、上目づかいで迫ってくる紗夜さんに、俺の心拍数は上がっていた。
上目づかいがもたらす幼さと、紗夜さんの美しく整った顔立ちから感じる大人っぽさが生み出すギャップは、想像以上の破壊力であった。
「……///」
「心配してくれたんですね。ありがとうございます。今日はちゃんと寝るので、安心してください」
「はい……その、すみませんでした……///」
「全然大丈夫ですよ。……上目づかい、めっちゃ可愛かったなぁ……」
「えっ……!?///」
「っ!? ごっ、ごめんなさい! 声に出てましたかね……?」
心の中で呟いたつもりだったのだが、無意識のうちに口にしてしまっていたみたいだ。距離が近かった紗夜には、小声でもばっちりと聞こえていた。
紗夜さんからしたら、そこまで仲良くない男子から「可愛い」なんて言われても、気持ち悪いだけだろう。すぐに謝ったのだが、紗夜さんの反応は予想とは違うものだった。
「……///」
「(あ、あれ? 怒ってない?)」
「…………あ、ありがとう……ございます……///」
紗夜さんは顔を赤くして、か細い声で感謝を伝えてきた。
紗夜さんとこうやって話せるような関係になってそんなに経っていないが、それでも今まで見たことが無いほど、紗夜さんの顔はリンゴのように赤くなっていた。
「……///」
「……///」
俺達の間に沈黙が走る。変にお互いを意識してしまい、少し気まずい。
何か話せる話題は無いものかと、紗夜さんのことで一杯な頭を使って考える。そしてパッと出てきたのは、日菜さんの名前だった。
「そ、そう言えば……日菜さんとは最近どうですか? 個人的には最近の紗夜さん、前みたいに追い詰められている感じじゃないので、前よりは話せてるのかなーと思うんですけど」
「はい。まだまだ満足に、とはいきませんが、家でも日菜と2人で話すようにしています」
「うおっ、すごいじゃないですか。紗夜さんが一生懸命頑張ってる証拠ですね」
「べ、別にそんなに褒められるほどのことじゃ……」
俺から目を逸らす紗夜さん。人から褒められることには、やはりまだ慣れていないみたいだ。
悪口のつもりは全く無いが、ずっと自分と日菜さんを比較してきた影響で、紗夜さんの自己肯定感は低いのかもしれない。これからの経験や人との関わりを通して、どんどん自分を好きになっていってくれると嬉しい。
「そんなに謙遜する必要ないですよ。今までギター練習一緒にやって来たんですから、紗夜さんが何事にも頑張れる人なのは、俺が知ってます。日菜さんとの関係も、そんな紗夜さんなら大丈夫です」
「……そうでしょうか?」
「はい。俺はそう思います」
「……」
笑顔でそう答えた俺を見て、紗夜さんは何かを考え始めた。何か言いたいことがあるのだけれど言いづらい、といった様子だった。
「あ、あの……!」
「はい?」
そう言いながら俺の方を勢いよく向き、紗夜さんはその場で立ち止まって俺を見つめた。
「お願いがあるのですが……聞いてもらえないでしょうか?」
「急に畏まりましたね……そんな肩肘張らなくても、紗夜さんからのお願いなら断りませんよ。遠慮なく言ってください」
そう答えると、紗夜さんは不安そうな表情のまま言った。
「N.E.Cの事前審査が終わってから……貴嗣君と真優貴さんのこれまでを聞かせてもらえませんか……?」
紗夜さんのお願いの意図はすぐに分かった。
どうして俺と真優貴がすれ違ってしまったのか、元の関係に戻るために俺達はどうしたのか——それを知りたいのだと。
紗夜さんのお願いを断る理由はない。俺は紗夜さんの言葉に、二つ返事で頷いた。
読んでいただき、ありがとうございました。
前回の後書きにも書かせていただきましたが、アンケート「Roseliaでのあなたの推しは?」を締め切らせていただきました。沢山のご回答、本当にありがとうございました!
次回は投稿遅れるかもです。最悪でも再来週までには投稿しますので、よろしくお願いします。
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