Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
以前の更新から大分期間が空いてしまいました……申し訳ないです。
今回からハロハピ編に入ります。ハロハピ編は以前までと違い、オリジナルのお話で進めさせていただきます。素人が考えたストーリーなのでクオリティはお察しの通りです。ツッコミどころが満載ですが、あまり深く考えずに読んでいただけると幸いです。
第67話 異空間からのお誘い
コツン、コツンと、革靴の足音が広々とした空間に響き渡る。俺は弦巻さんに案内されるがまま、とんでもなく大きな豪邸の中を歩いていた。今は応接間に向かっているところだ。
「ん? 貴嗣、さっきからソワソワしてどうかしたの?」
「いや、弦巻さんの家がすげえなって思ってさ……」
彼女の家は、家と言うよりは城のようだった。中には巨大な絵画や石造りの彫刻がズラリ。一体いくらくらいするのだろうか?
「『弦巻さん』はなんだか距離を感じるわ。こころって呼んでちょうだい!」
「ん。りょーかい。それでこころ、あとどれくらいで皆の所に着くんだ?」
「もうすぐそこよ! ほら、あそこの扉!」
こころが指差した先には、これまた巨大な扉があった。あの先にハロハピのメンバーと、俺と同じように連行された大河達がいるはず。皆無事だろうかと考えていたところで、前を歩いていたこころが勢いよく扉を開いた。
「みんなお待たせ! 貴嗣を連れてきたわよ!」
扉が開かれ、中の様子が目に入って来た。
高級そうな長机と椅子が置かれた室内。そこにいたのはハロハピのメンバー、そして、
「おおっ! このコロッケうめえ!」
「でしょー! うちのお店のコロッケは絶品だからね! まだまだあるよー!」
「流石にこの量食べたら晩飯キツイぜはぐみちゃん……」
「穂乃花が描いているそれは、鳥かい?」
「そうだよ薫さん! 薫さんをイメージしてササッと描いてみたんだけど、どうですか?」
「この紫の翼で羽ばたいている鳥が私……ああ、素晴らしいよ穂乃花……! 私の儚さが余すところなく表現されているよ……!」
「この写真に写ってるフェレットって、花蓮ちゃんのペット?」
「そうですよ花音さん。真っ白で可愛いでしょ?」
「うん。アルビノの子なんだね。ちなみに名前は何て言うの?」
「“うどん”です」
「……えっ?」
「真っ白で細長いから、うどんです。ほら、ニュルニュル~ってすり寄ってくるんですよ、なんだかうどんみたいじゃないですか?」
「う、うん……そうだね……あはは……」
突然連れてこられた割には、驚くほどこの空間に馴染んでいた大河に穂乃花、花蓮だった。
◇◆◇◆
用意されていた席に座ったところで、俺はこころに話しかけた。
「さてと……そろそろ俺達がここに連れてこられた理由を教えてもらってもいいか?」
「ええ! あなた達を今日ここに呼んだのはね、あたし達に協力してもらいたいからよ!」
「「「……ん?」」」
ニコニコ顔のこころとは対照的に、俺達4人は首を傾げてしまった。そのやりとりを見て、1人の女の子がため息をついた。
「ハア……それじゃあ全然分からないよこころ。あたしが皆に説明するから、そこ座っといて」
「そう? それじゃあよろしくね、美咲!」
こころにそう話したのは、ハロハピのDJ担当であるミッシェルの中の人、真優貴と同じC組の美咲ちゃんだった。
「はいはい。てなわけで……まずはSilver Liningの皆さん、突然連れてきてしまって申し訳ないです……事の経緯についてはあたしから説明するね」
美咲ちゃんはそう言って、今日俺達がここに連れてこられた理由を説明し始めた。
*
数日前、あたし達の元に一通の手紙が届いた。送り主は、あかりちゃん。以前ハロハピと関わったことのある女の子だ。手紙には、あかりちゃんからのお願い——『あかりちゃんと同じクラスの女の子を笑顔にしてあげてほしい』というお願いが書かれていた。
その子の名前は、かなでちゃん。黒髪ショート、ブラウンの目をした可愛い女の子。幼い頃から体調を崩しがちで入退院を繰り返しているらしく、つい最近も入院してしまったとのこと。お見舞いに行った時に見たかなでちゃんの寂しそうな顔が、あかりちゃんは忘れられないみたいだった。
手紙を受け取ったあたし達は、すぐにかなでちゃんが入院している病院へと向かった。あかりちゃんの時みたいにかなでちゃんの好きなものについて質問したんだけど……
「ねえかなで! あなたの好きなものを教えてちょうだい!」
「えっ……? わたしの……好きなもの……? あの……お姉さん達だれ……?」
「あっ! ソフトボールはどう? はぐみはソフトボール大好き! かなでちゃんは?」
「あっ……その……」
こころとかはぐみがグイグイ迫って色々聞こうとしたせいか、彼女を怯えさせてしまった。楽しくお話しなんてできるはずもなく、その日は成果ゼロで帰ることとなった。
そりゃそうだよね、知らない人達に囲まれて色々質問されるんだもん。第一印象は最悪だろう。……もちろん、後で2人のことはキッチリと叱っておいた。
面会後、看護師さんはあたし達に「大丈夫。かなでちゃん、ちょっとびっくりしただけですよ」と言ってくれた。心の底からそうであってほしいと思った。
*
それから数日後、これからどうやってかなでちゃんを笑顔にしようか自分なりに考えていた。でもそう都合よく良いアイデアなんて出るわけもなく、うーんと1人で唸っている時だった。
「あれ? あそこにいるのって……かなでちゃん?」
病院のすぐ近くにある公園のベンチに、かなでちゃんが座っていた。かなでちゃんはスマホで何かを見ていた。
「(うわっ、すっごい集中してる……今スマホで見ているものが、かなでちゃんの好きなものだったりするかも……)」
あたしは後ろからこっそりとかなでちゃんが座っていたベンチに近づいていった。そしてそーっと上からかなでちゃんのスマホを覗き込んだ。
「あっ、この動画……貴嗣君達だ」
Silver Liningのライブ映像だった。かなでちゃんは貴嗣君達の演奏(多分バラード曲だったと思う)を見て……ほんの少し笑っていた。
「あっ……この前のお姉さん?」
「……えっ!?」
気が付くと、かなでちゃんがあたしの方を向いていた。こっそり見ていたことがバレてしまって、あたしは驚いてしまった。
「あっ、あははー……こ、こんにちはかなでちゃん……ぐ、偶然だね~」
これはヤバイ、絶対怖がらせてしまう。それどころか怒らせてしまうなんて思い焦っていると、かなでちゃんは困った顔で私に話しかけた。
「えっと……ちょっとびっくりしたけど、別に怒ってないよ……?」
「えっ?」
「だからそんなに焦らなくても……大丈夫。怖がってもないから……大丈夫」
かなでちゃんはそう言って、寂しそうな顔をした。
……怖がらせちゃうかもってあたしが思ってたの、どうして分かったんだろ?
「お姉さん……このお兄さん達のこと知ってるの?」
「う、うん。Silver Liningっていうバンドだよね? 皆同じ学校だし、知ってるよ」
「そうなんだ……いいなぁ」
そう言って、かなでちゃんはスマホを見つめた。
「かなでちゃんはこのお兄さん達の音楽が好きなの?」
「うん……わたし、この人達の歌が好き。優しい音が……好き」
かなでちゃんはあたしの方を見て言葉を続けた。この前みたいに辛そうな様子じゃなくて、どこか安心しているような感じだった。
「怖くなったり辛くなったりしたらね、お兄さんたちの歌を聞くんだ。そしたらギュって優しく抱きしめられてるみたいになって……胸の痛みが少しずつ無くなっていくんだ」
「胸の痛み?」
「そう。胸の痛み」
かなでちゃんは胸に手を当ててそう言った。
胸が痛くなるってことは、心臓の病気とかなのかな?
「心臓……じゃないんだ」
「……えっ?」
「心臓じゃなくて……心だと思う」
えっ、なんで今あたしの考えていることが分かったの?
偶然当たったとか? いやいや、偶然ってレベルじゃないよねこれは……。
「……っ……も、もう病院に戻らなきゃ。バイバイ、お姉さん」
「! そ、そっか。じゃあね、かなでちゃん」
かなでちゃんはか細い声でそう言って、ベンチから降りた。そのまま大事そうにスマホを持って、病院に戻っていった。
「不思議な子だったなぁ」
誰もいない公園でそう呟いた。
何だか色々あったけれど、思いもよらない収穫もあった。
「貴嗣君達の音楽が好き、か。これは大きな手掛かりかも」
さっき音楽を聴いていたかなでちゃんは、確かに笑顔だった。前会った時は辛そうだったかなでちゃんが、嬉しそうに笑っていた。ほんのわずかな笑顔だったけれど……あたしはかなでちゃんの笑顔を、もっと大きい物にしたい。
「貴嗣君達に協力してもらう、ってのもアリかも?」
一緒に色々考えてもらったり、何なら合同ライブとか良い感じかも。
あっ、そういえば今貴嗣君達ってコンテストに向けて練習してるから、邪魔するのはダメか……でも貴嗣君達ってすっごい親切だし、頼み込めば案外手伝ってくれそう……って、それは甘えか。
またまた1人でうーんと唸りながら、いつものようにこころの家に向かった。
*
「——とまあ、ここまではそんなに問題は無かったんだけど……」
美咲ちゃんは苦笑いしながら言葉を続けた。
「今日のミーティングでうっかり『貴嗣君達に協力してもらうのもアリかもね』って言っちゃって……それを聞いたこころが『じゃあ貴嗣達を呼びましょう!』って言いだして……気が付いたら黒服さん達と一緒に飛び出してました……」
「俺達を連れてくるって決めたのはついさっきのことだったんだな……流石の行動力だな」
「もちろんよ! かなでの笑顔の為だもの!」
「今回皆が連行されたのはあたしのせいってわけなんです……本当に申し訳ない……」
「大丈夫だよ。最初はマジでビックリしたけど、説明してもらって事の経緯は分かったし」
割と本気で謝ってくる美咲ちゃんをなだめるために、大丈夫だよと答える。
「要はそのかなでちゃんって子が笑顔になれるよう、俺達に協力してほしいってことだよな?」
「その通りよ大河! あなた達の力があれば、きっとかなでは笑顔になれるわ!」
こころは満面の笑みでそう言った。
「だから貴嗣! 大河! 穂乃花! 花蓮! あたし達と一緒に、かなでを笑顔にしましょう!」
協力するべきか否かであれば、間違いなく協力するべきだと思った。かなでちゃんという子が自分達の音楽を好きだというのなら、何らかの形で俺達はこころ達に協力できるはずだ。
彼女達は本気でかなでちゃんを笑顔にしようとしている。それはとても素晴らしいことだと思うし、俺達も出来る限りのことはしたい。
「(……俺達だってこころちゃん達に協力はしたい)」
「(……でもそうしたらあたし達の練習時間が足りなくなっちゃうかも)」
「(……安易な判断はできないね。さて、どうするべきかな)」
でも今回は事情が違う。〈Next Era Contest〉の二次審査が近づいてきている。正直なことを言うとそちらに向けた練習に集中したい。
「? どうかしたの皆? どうしてそんなに唸っているの?」
「はぐみもSilver Liningの皆と一緒に、かなでを笑顔にしたいんだ! だからお願い!」
「君達と手を取り合うことで新しい世界が見られるはず……その儚い景色を私は見てみたいんだ。是非とも私達に協力してもらえないだろうか?」
こころに続いて、北沢さんと瀬田さんからもお願いをされる。顎に手を当てながら大河達の顔をチラッと見る。
こころ達への協力とバンドの練習を両立できるのか分からない——皆同じ考えだとすぐに分かった。この場でこころ達にどう返答するのが正しいのか、皆分からず悩んでいる様子だった。
「ちょ、ちょっと皆……! 貴嗣君達は大きなコンテストに向けて練習中なんだよ……? 私達に協力してもらえたらすごく嬉しいけど、それだと練習時間が減っちゃっていい結果が残せないかも……」
「だいたい今日も練習する予定だったのを無理やり連れてきてるんだし……花音さんの言う通り、今の貴嗣君は練習に集中したいの。あたし達の要求ばっかり押し付けるのはダメ」
「でも、貴嗣達に協力してもらおうって最初に言ったのは美咲よ?」
「今日いきなり連れてこいなんてあたしは言ってない! こういうのって普通事情を聞いてからお願いするもんでしょうが……」
美咲ちゃんの呆れ声が耳に入って来る。そんな彼女に、俺はある提案をした。
「なあ美咲ちゃん。かなでちゃんは俺達のライブ映像を見て笑ってたんだよな?」
「うん。ほんのちょっとだけだけどね」
「……ふむ。よし、分かった」
姿勢を正して、自分の考えを皆に伝えた。
「一度かなでちゃんに会わせてもらってもいいかな?」
「えっ? かなでちゃんに会う?」
美咲ちゃんがそう聞き返した。その通り、と言って、俺は言葉を続けた。
「かなでちゃんがどうして俺達の音楽を聴いて笑ってくれたのか、そこの理由をもっと詳しく知りたい。それが分かれば、次の行動を決めやすくなると思うんだ。だからかなでちゃんに会って、実際に話してみたい」
それに、と言って話を続ける。
「話をするだけならそこまで時間もかからないだろうし、俺1人だけでもできる」
「俺1人だけって……貴嗣君、自分1人だけで面会にいくつもり?」
一旦俺が1人で話してみる。そう提案したところで、花蓮がすぐに反応した。真剣な声色で、俺にそう聞いてきた。
「あたし達も行くよ! リーダーにだけやってもらう訳にもいかないよ」
「最近貴嗣疲れてるだろ? これ以上やること増やしたら体壊しちまうぞ? 俺達も行くって」
花蓮に続いて、穂乃花と花蓮も一緒に行くと言った。
「なあ皆、さっきの美咲ちゃんの話を忘れたのか? ハロハピの5人でかなでちゃんに会いに行った時どうなった?」
俺がそう問いかけると、3人は「「「あっ……」」」と漏らした。
「大勢で押しかけたら、彼女をまた怯えさせてしまうかもしれない。逆に美咲ちゃん1人とはある程度落ち着いている様子だった。まずは俺が話をしてみて、かなでちゃんがどんな子なのか、どうして辛そうにしているのかを出来るだけ明らかにする。……大丈夫、何時間も話をするわけじゃないし、練習にも参加する」
俺がそこまで言うと、3人は顔を合わせて「はあ……」とため息をついた。
「またそうやって自分の仕事増やしやがって……でも、相手を理解するって分野については貴嗣が一番優れてるしなぁ」
「リーダーはこうなったら梃子でも動かないもんねー。……分かった、リーダーがやりたいって言うんなら、あたしはそれを尊重したいかな。花蓮はどう?」
「大河君の言う通り、心の距離を縮めるっていう場面では貴嗣君が一番上手く出来ると思う。他に良いアイデアも浮かばないし、私も賛成ってことで」
「ああ。皆ありが——」
「ただし!」
花蓮の大きな声が、俺の言葉を遮った。
「さっきも言ったけど、最近の貴嗣君は疲れてるように見える。……無理はしないって約束して」
「おいおい、何だよ花蓮。大袈裟だな。大丈夫、無理はしない。約束する」
「……分かった。じゃあ、その方針で行こうか。こころちゃん達もそれでいいかな?」
花蓮はそう言いながら、こころ達の方に顔を向けた。
「もちろんいいわよ! ありがとう皆! あなた達と一緒なら、とーっても素敵なことができる気がするわ!」
その後の話し合いで、明日の放課後、俺は美咲ちゃんと一緒にかなでちゃんが入院している病院に行くこととなった。ハロハピのメンバーは以前かなでちゃんの担当をしている看護師さんと話している。美咲ちゃんが一緒に来てくれることで、面会もスムーズに行えるはずだ。
ひょんなことからハロハピに協力することになった俺達。練習と両立するのは簡単ではないだろうけど、こころ達の為にも、そしてかなでちゃんの為にも、出来る限りのことをやっていこう。
読んでいただき、ありがとうございました。
オリジナルストーリーのハロハピ編、始まりました。キャラの口調は違和感あるし更新は遅いしで問題しかないですが、頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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