Silver Lining ~ BanG Dream Story~ 作:おたか丸
お気に入り登録をしてくださった皆様、ありがとうございます!
そして誤字報告、ありがとうございました! 卒業論文を書いていた時も思いましたが、第三者の方のチェックは本当に大切でありがたいものです……。
今回は内容がちょい薄いかもです……。
休日の昼の3時頃、今日は家の手伝いもないし、バイトもないしで俺は日課のランニングをしていた。丁度この商店街の近くに来たので、クールダウンも兼ねて立ち寄る。
商店街の中の本屋さんに入る。読書好きからすれば、ずらっと本が並んでいる光景はたまらないものがある。
「……? これは……これシェイクスピアか」
ふと目に入った本を手に取る。多くの人が一度は耳にしたことがあるであろう、“ロミオとジュリエット”だ。
映画では何度も見たことあるが、そういえば原作を読んだことは無かった。店内を回っていたところで偶然見つけた本ではあるが、これも何かの縁だろうし、他の本と一緒に買うことにした。
◇◆◇◆
半分衝動買いみたいなことをしてから本屋を後にすると、遠くの方で大きな人の集まりができていることに気付いた。
そして、何か音楽が聞こえる。デカくて、賑やかな音楽が聞こえる。
「ハッピー! ラッキー! スマイル! イエーイ!」
なんと商店街の近くで、路上ライブを行っているバンドがいた。路上ライブというか、マーチングというか……中々にド派手なバンドが演奏をしていたのだ。
イギリスにいた頃は、よく友達に誘われてこういった路上ライブを見に行った。広場のど真ん中で毎日誰かが演奏している光景は、俺にとっては全然珍しいものではなかったりする。
だが、それでも今目の前で行われている演奏を、俺は足を止めて見入ってしまっていた。演奏技術云々というより、そのメンバーである。
「(……先輩ドラムやってたんですか)」
どっからどう見ても、ドラムを叩いているのが松原さんなのだ。普段の大人しい雰囲気を感じさせつつも、楽しそうにドラムを演奏している。
松原さんにも驚きだが……それ以上に驚きを禁じ得ない光景が目の前に広がっていた。
「(……クマがDJやってる……)」
クマのぬいぐるみを着た人が、器用にターンテーブルを回しているのだ。ぬいぐるみを着て演奏するというのも中々斬新だが、あの太い腕(というか指)で操作ができているというのがすごすぎる。
本を買ってそのまま帰ろうかと思っていたが、結局そのままこのバンドのライブに見入ってしまった。
◇◆◇◆
演奏が終わった。滅茶苦茶パワフルな演奏で、途中参加の俺でも楽しむことができた。
さあ、いいパフォーマンスも見れたし、今度こそ帰――
「あっ、そこのあなた!」
――ることにはなりませんでした。
「あなた、確か学校で見たことがあるわ!」
「学校……ってことは花咲川の人か。初めまして。1年A組の山城貴嗣です」
「あら、同じ1年生なのね! はじめまして! あたしは弦巻こころ!」
先程ボーカルをしていたこの金髪の女の子は、弦巻さんと言うらしい。すごく笑顔が明るい子だ。元気いっぱいな彼女を見て、こちらも笑顔になる。
「あら! 今のあなたの笑顔、すごく素敵だわ!」
「弦巻さんのおかげだよ。弦巻さんのほうこそ、今いい笑顔してるよ」
「ふふ、そう言ってくれると嬉しいわ! あたしは笑顔が大好きなの!」
満面の笑みでそう答える弦巻さん。全身からポジティブなオーラが溢れ出ている。
「こころーん! 誰と話してるの……って、あれ、山城くんだ!」
「あっ、北沢さん。おつかれさま。ライブ、楽しかったよ」
同じクラスの北沢はぐみさんだ。香澄と同じくらいいつも元気な子だ。
……北沢さんがベースを演奏できるということにさっきまで驚いていた。ソフトボールを続けていると聞いていたので、そのイメージしかなかったのだ。
「ああ、こころ……! 今日も君のパフォーマンスは素晴らしかった……! ……ん?君は……」
「あっ、薫くん! この子は山城貴嗣くん! はぐみのクラスメイトで、今日のライブみてくれたんだよ!」
「山城貴嗣……良い名前だね。私は瀬田薫。羽丘学園の2年生だ。よろしく」
「瀬田さんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」
ワーオ美形&高身長。170くらいあるんすかね。
「ん? 山城君、君が持っているその本は?」
「これですか? ロミオとジュリエットです。さっきそこの本屋さんで買ったんですよ」
「……!! 君、もしかしたらシェイクスピアに興味があるのかい……!?」
グイッと俺の方に近づいてくる瀬田さん。もしかしなくても、シェイクスピアが好きなのだろう。
「はい。これを機に読もうと思って」
「ああ……! シェイクスピア……儚い……! 次に会ったときに、君の感想を聞かせてほしい。シェイクスピアについて、ともに語ろう……!」
もちろんいいですよ、と返答する。この人も結構癖が強いと言うか、話していて面白いというか。
色々3人と話していると、黒スーツを着た人たち(黒服さんというらしい)が弦巻さんを呼び、そして瀬田さんと北沢さんも一緒に行ってしまった。
……やっぱり弦巻さんはお金持ちだったらしい。
◇◆◇◆
「あ、あの……山城君?」
後ろから声がかけられたので振り向くと、そこには例のクマさんと、クマさんの後ろに隠れて顔だけこちらに出している可愛らしい女の人が。
「はい。お疲れ様です。ドラム、上手でしたよ」
「う、うん……ありがとう」
松原さんはニコっと笑う。バイト先でもそうだが、最近は緊張も解けたのか、松原さんから話しかけてくれることが多くなった。
「あの、さっきからなんで隠れてるんですか?」
「えっと……その……こ、この衣装を知り合いに見られるのが……恥ずかしくて……///」
「衣装? ……ああ、なるほど……」
「ふ、ふえぇ……恥ずかしぃ……///」
松原さんが今着ている衣装は、腕や肩の露出度が高い。あまりジロジロ見るわけにもいかないと思って、俺はクマさんの方に視線を移す。
するとクマさんも俺の方を見つめてきた……ぬいぐるみ故の無表情が、正直怖いと言うか何と言うか。
「確か、A組の山城君だよね。今日は来てくれてありがとね」
「ああ、どういたしまして。こちらこそありがとう……えっと……クマさん?」
「そっか、ミッシェル知らないのか。ちょっと待ってね。んしょ……っと」
そのクマ、もといミッシェルが頭部のパーツを外す。
「あたしはC組の奥沢美咲。よろしくね」
「あっ、同じ1年なのか。クラス違うから初めましてだね。よろしく」
ハロハピの最後のメンバーであるミッシェル、もとい奥沢さんとも挨拶。
ふうーっと一息つきながら、その太いクマの腕で汗を拭おうとする……が、可動域も問題で当然上手くいかない。
汗びっしょりのままでは風邪をひく恐れがある。俺は予備として持ってきた綺麗なタオルをバッグから取り出した。
「奥沢さん、これ使って」
「えっ? ……いいの?」
「もちろん。汗はしっかりと拭いとかないと。それにめっちゃ気持ち悪いでしょ? いいパフォーマンスを見せてくれたお礼ってことでさ、遠慮せず使って」
「あっ…………そ、そっか。じゃあ……使わせてもらうね?」
「じゃあ、私が拭いてあげるね」
「ありがとうございます花音さん……助かります」
松原さんが丁寧に奥沢さんの汗を拭いていく。この2人はバンドの中でも大人しいグループなのだろうか。
「ふうーっ……ありがとうございます花音さん」
「うん。どういたしまして」
「山城君も、タオル貸してくれてありがとね。……また洗って返すね」
「オッケー。まあいつでもいいから、俺か真優貴に……あれ?」
「? どうかした?」
そう言いかけたところで、奥沢さんがC組だということを思いだした。
「……C組ってことは、真優貴と同じクラスか」
「ああ、真優貴ちゃん? そうだよ、一緒のクラス。いつもお昼一緒に食べてるんだ」
「おお! それはそれは。妹と仲良くしてくれてありがとう」
そう言えば家でも「美咲ちゃんっていう子と一緒にお昼食べてるねん♪」と話していた。奥沢さんのことだったんだな。
「山城君すごいね、あの3バカを同時に相手取るなんて」
「3バカ? 弦巻さん達のこと?」
「そう。あの3人。あの人たち、あたしがミッシェルの中の人だって認識してないんだ」
「……マジ?」
なんやねんそれ面白すぎるやろ。
「あの3人の相手は応えたでしょ……ガンガン自分のペースで話すから……」
「あはは。まあでも俺は楽しかったよ。3人とも個性的でさ」
「あっ、それ真優貴ちゃんも言ってた。さすが双子。この前もさ、こころとはぐみ入れた4人でご飯食べたんだけど、真優貴ちゃんずっと2人の話聞いてたんだ」
真優貴と奥沢さんはまだしも、そこにあの2人が入るとなると……賑やかになりそうだ。
「『私が話してたほうが美咲ちゃん落ち着いて食べれるでしょ?』って言ってくれてさ、もう泣きそうになったよ。苦労が分かってくれる人がいるってだけでうれしいよ……」
ははは、と乾いた笑いをする奥沢さん。苦労人のオーラを感じる。
「別に俺は弦巻さん達と話すのはむしろ楽しいから、話し相手くらいならいつでも引き受けるよ」
「ああ……今あたしの前に仏がいる……」
「仏は大袈裟だなあ……」
「なんかね、最近バンドでいることが多くて、ずっとあの3人の相手してたから、花音さんと真優貴ちゃん以外に常識がある人と出会えたことが嬉しくて……」
「あはは。まあ折角今日会ったからこれも何かの縁だし、妹共々、これからよろしくね」
「うん。こちらこそよろしくね」
しばらく2人と話していると、真優貴から電話がかかってきた。どうやら晩御飯の食材を一緒に買いに行ってほしいらしい。
今日はとんかつにするらしく、お肉以外の食材も色々買う予定なので、荷物を持つのを手伝ってほしいとのこと。真優貴は家の近くのスーパーについているらしい。
「――というわけで、そろそろ俺は帰りますね」
「うん……今日はライブ見てくれてありがとう。またバイトで……」
「はい。またバイトで会いましょう。奥沢さんもありがとうね」
「うん。よかったらまた見に来て。……それでついでにあの3人の相手をしてくれると嬉しいかな……」
「ふふっ、りょーかい。いつでも呼んで。それじゃあね」
2人に別れの挨拶をしてから、ダッシュでスーパーに向かう。
あと5分くらいで着く、と真優貴にメッセージを送ってから、妹の待ち時間をできるだけ減らすために、俺は昼のランニングの時よりも気持ち速めの速度で商店街を後にした。
【おまけ】
次の日の昼休憩。学校食堂。
「(さーて、購買でコーヒー牛乳買ったし、お昼食べよっと)」
「あーっ! 山城君だー!」
「やっほー北沢さん。弦巻さんと奥沢さんも、おつかれさま」
「!! そうだわ! 貴嗣! 一緒に食べましょ! そうしたらもっと楽しくなるわ!」
「ちょ、ちょっとこころ、それは迷惑だって。山城君にも用事があるかもだし……」
「あはは。相変わらず元気だね。いいよ、俺でよければ、ご一緒させてもらうよ」
「「やったー!!」」
「ねえ山城君、ほんとにあたし達と食べて大丈夫だったの?」
「うん。もともと今日は1人で食べる予定だったし。それに 」
「それに?」
「助けてって顔に出てた」
「あ、あはは……やっぱり?」
「うん。俺がいたら、奥沢さんも落ち着いてご飯食べれるでしょ?」
「ああ……やっぱり仏だ……また今度お返しするよ」
「じゃあ俺がいる間は、奥沢さんはゆっくり味わって食べて。誰かがおいしそうに食べてるのを見るの、好きだし。それで手を打つってのはどう?」
「ううっ……泣きそう……心が清らかすぎるよ……山城君と出会えてよかった……」
「……やっぱりなんか大袈裟すぎん??」
その後は皆で話しながら美味しく食べました。
ありがとうございました。
本編と全く関係ないですが……ずっと観たいと思っていた『バタフライエフェクト』っていう映画を昨日観ました。マジでくっそ面白かったです。
それではまた次回もよろしくお願いします。
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