何故俺が魔女集会に 作:ジト目キャラはいいぞ
懐かしき我が故郷、日本を思えば遠く。
この世界に転移して8000年と数百数十数年。
転移した直後に、魔力溜まりに落っこちて、人外の化け物に変貌したものの何とか5000年くらいで人間同然の姿に戻れてから、このファンタジー世界にも居た、人々の営みと共に3000年ほど過ごして来た。
人の成長は早い。
かつては俺がなったような化け物だけが、普通の動物たちとは切り離された大陸で、高度な魔法を使っていたものだが、2000年前の大戦に急激に成長し、化け物を超え、化け物は数をめっきり減らし、動物、人の時代が来ている。
俺や一部の賢い化け物たちは、人や他の動物の姿を取り、魔人と自らを呼称して今を生きている……ちなみに、人じゃなくても魔人だ。
魔獣という呼び名は、世界に蔓延る、魔力と周りの素材なんかを使って、人や動物を真似て生まれた存在を言う。
そうして新しい時代を見て、進化していく文明を見ていると、地球を、日本を思い出すのだ。
魔結晶に蓄えた魔力で出来た冷蔵庫、コンロ、エアコン……そういった前世にあった、生活家電のような魔導具を見ていると、余計にそう思う。
特に、俺の今の暮らしは、風呂も、食事も、睡眠も無くても困らない身体で、そうでなくても便利な道具が増えてきたが、娯楽が少なすぎる。
ゲームなんか、それっぽいのが作れる技術力はあっても、発想力は無い。
今の人間の流行りは、演劇などではあるが、この世界は魔獣のせいで戦いが常に隣り合わせであるために、娯楽の発展が遅い。
武器の品評会、魔術学会、絵の展覧会、武道大会など……人々が楽しむには、足りているとは思うが、俺なんかは大昔にもっと高度な物を見て来た関係か、余程の事がないと心動かされることはない。
だから、最近は、普通の人間じゃまず入ったら気絶、魔力に富んだエルフでさえ酔ってしまうほど、魔力の一切無い生物か、自分だけで魔力回路を完結させられるほど魔力の保有量が多い者しか入れない森で引きこもりながら、ここの植物について研究……というほど崇高ではないが、そんなことをしている。
ここに来る前は、300年ほど前に、各地で魔窟と呼ばれる空間に浮き出る変異の力の強い魔力が発生し、魔獣が次々に現れ、この星の人口を上回りそうだったことから、久々に表舞台で暴れまわり、10年くらいかけて、一時鎮圧。
その際は、顔なじみの魔人たちや、魔人化してしまった人々の力無くしては、人口は1割になっていたに違いない。とはいえ、生き残ったのは6割だったが。
そこからなんだかんだ100年、発生原因と思われる地中の魔脈の研究のために、他の魔人たちと一緒に、一度身体を元の化け物へ戻して、特に地表に強く反応が出ていた場所……大魔窟があった場所で、自身を魔結晶に委ねて、なんとか根絶することに成功した。
それも懐かしいものだ……、俺は、人の頃から時間間隔が、他の魔人ほどは狂っていないので、だいぶ昔に感じる。
根絶おめでとう打ち上げ会では、それぞれの研究成果の発表もあり、今も話したがりな魔人が集まって、研究成果の発表とは名ばかりのお喋り会が開催されているらしいが、まだやっているのだろうか。
不死鳥の奴が、酔っぱらって俺に向かって死ぬほど灰をぶっかけてきたり、鬼が酒を文字通り浴びせて来たり、色々あって疲れすぎてしまうので、たまに招待状が来ても遠慮していたら、10年ほどで招待状がまばらになり、ここ50年は一度も来ていない。
案外、話す事がなくなってだんだんやらなくなったんだろうな……などと思いながら、引っこ抜いた魔ンドラゴラ(命名俺)がピャーピャー叫ぶのを見ていると、上からカラス(のような鳥)が降ってきた。
この森は危険生物がいないので、滅茶苦茶びっくりして横に飛び跳ねて木に埋まってしまった……。
俺の家に当たり前のように住み着く動物はいるが、ここに住むのは草食動物か、魔力で生きる魔法生物くらいで、魔獣は全部速攻でぶちのめしているため、最近予想外の出来事に弱い。
「ゴアァーーーッ!!アッシの肩がァ!!レンさんなにするんですかァ!!」
「すまん!ちょっと待ってくれ!すぐ出て治すから!」
「あ!待った!ゆっくり出てくゴガァーーガバーッ!!」
突っ込んだ先は、木ではなくトレントだったらしい。
一瞬にして葉が禿げ上がったトレントに出来た大きな穴を、魔法で治しながら、落ちて来て、全身バキバキに骨が砕けながら、いまにも死にそうなカラスも治療する。
ちなみに本来、紫色をしたトレントは、いまは白くなり、枝がしょんぼりしている。
魔ンドラゴラは、俺がこの森で数年前に大量発生した植物を美味しくしようと改造したものの一つで、なんか周りの魔力がない生物にだけ効く、気絶の魔術を、引っこ抜かれるとしばらくまき散らすので、その影響でこのカラスが降ってきたのだろう。
この森に、魔力の無い生物が入れるとはいえ、下手な物を食べると、魔力を保有できるようになり、酔って気絶してしまうので、住み着くことはない。
つまり、このカラスは外部から迷い込んだか、送り込まれたもので……
「久々の招待状か……。」
やはり、とばかりに、魔ンドラゴラを埋めて、カラスのそばに落ちていた手紙を見る。
『招待状』と書かれているそれは、いつもとは異なり、『必読!!』と下手な文字で書かれている。
中身を読むと、これまでに来ていたような丁寧な字で書かれた招待状と、ミミズのような文字で、最早解読不能な手紙が入っていた。
「(最近外にも出てないし、久々に顔を合わせるのも悪くないか……。)」
必読と、謎の手紙(書いたのが誰かは分かるが)の事もあり、事は早い方が良いと、俺は旅支度し、気絶から寝息を立てるまでに落ち着いたカラスを毛布にくるんで、森を歩き始めた。
「ガレンディラの奴は来てくれるかねぇ。」
「来てくれなきゃ困るさ、アタイたちにゃ解決出来ないんだからね。」
亀の甲羅を背負った老婆と、長く、灼熱のように赤い髪の若い女が、大きな峡谷のそばにそびえ立つ、古城で紅茶を嗜む。
古城と言えど、デザインが古いのと、蔦で覆われつつあるというだけで、壁などは新品同然のそれは、峡谷の中にあって、それでも異質では無かった。
「あんた、いつも沸騰するまで温めるのやめなよ、風味ところか中身まで飛んでるじゃないのさ。」
「まだまだ温くて飲めたもんじゃないよこんなの!耐えられないお茶の方が悪いのさ!ヘヘヘ……あんたも飲むかい?」
「バカ!あたしでもそんなの飲めたもんじゃないよ!これ、小娘、こっちのミルクにしな。今朝、爆走牛から取れたばかりの新鮮なヤツさね。」
ある程度、魔法を扱う技術……魔術のレベルが高い魔術師でなければ見る事はおろか、触れる事さえ出来ないこの城は、人々の間では、魔女の居城と呼ばれている。
世界を救った救世主、唯一居場所が知れている魔人の一人……魔女アトル・アタールトが住むこの城は、古今東西様々な魔女が集まるとされていた。
「あっ!アタイも飲みたい!」
「あんたは自分で取ってきな!!!ガキのもんまで盗んじゃないよ!!!」
「アトルに比べたらアタイなんか赤ちゃんみたいなもんでしょ!実際今は4歳でちゅ~ママ~~へぶしっ!!痛ぇー!!」
古城の主、アトルは呆れながら、腐れ縁の親友の姿を見る。
こいつはこいつで、やる時はやるし、ある程度の礼儀と引き際は分かっているから憎めない。
それに、子供一人を笑顔にさせられるくらいには機転が利く……、自分には出来ない事だと、常々嫌になるが。
親友という名のバカを大杖でひっぱたき、自分の父ともいえる人物の来訪を願いながら、転がり込んだ悩みの種について、アトルは考えるのであった。
ジト目キャラはそれだけで老若男女問わず、一定の良さがある。
そうだろ、兄弟。