何故俺が魔女集会に 作:ジト目キャラはいいぞ
「はいどうも!またいらしてくだせぇ!」
見える皮膚に無数の傷がある、たこやき屋のおっさんから、たこやき8個入りを5パックほど買って歩く。
たこやきとはいうが、たこは入っておらず、たこの代わりにバウンドスライムと呼ぶ、弾力があり、跳ねまわるスライムの欠片が入っている。
「ほっふっ、あつっ……ん~!スライムなんてどうよ、なんて思ったけど、思った以上にたこやきだ。たこがまず手に入らないこの街のアイデア勝利だな。」
アツアツのたこやきを頬張りながら、街を歩く。
ここは、目的地に近い、中立の町で、英雄の町『ガレン』と呼ばれている。
たこやきは俺の好物で、300年前の旅の仲間の料理人ハーフフェアリーに、なんとか再現してもらったもので、考案者として俺の名前が伝わっている。
たこやきと、この世界でも呼ばれているが、別にこの世界のたこは、たこという発音でもないので、『たこやき』の名前の由来は知られていないし、教えていない。
歩いていると、町の中心、英雄、大魔神の彫像が見えてきた。
最高硬度の魔結晶と呼ばれるオリハルコンで出来た彫像は、それそのものが、魔獣から町を守る防護魔法の触媒であり、余力のある住民から約1%ずつ魔力を吸って稼働している。
機能は立派だが、デザインに俺は不満がある。
この大魔神の像は、魔獣の素材を使い、ありあわせで作った装備で固められた姿で、洗練されたとは言い難い。
当時の大魔神の訴えは無視され、本当に魔界の神とでも言わんばかりの禍々しい姿の像が出来ている。
デザインにも力を入れることが出来た、戦いの終盤の装備は、民衆に触れる事があまりなく、伝わっていないのだ。
まぁ、これのおかげで、見た目が刺々しい、魔獣に近い人種への迫害が抑えられたなどという話もちらりと聞いた事がある。
それはそれで抗議など出来ようもあるまい、俺は悔しかった。
微妙な顔で彫像を見ながらたこ焼きを3パックほど食べていたが、ふと嫌な予感を感じて俺はその場を離れた。
「師匠!!!!……の気配がしたような気がしたんですけど、気のせいですかね……。」
「ねーちゃん待って!ハァッ……ハァッ……オレそんな長く強化魔法続かない……!」
「え?……あっ!おほほ……。ユウ、これも修行の一つですよ。そんな軟弱では、守りたいもの一つも守れませんよ。」
「誤魔化されないって!言い訳がヘタクソなんだよねーちゃんは!」
「ひぇっ!師匠と同じこと言うじゃないですか!……お仕置きと言いたい所ですが、明後日は集会の日なので、特別コース一周で勘弁してあげましょう。」
「都合が悪いとすぐそれだ!前にそれで自分でマズい飯作る事になって毒虫にあたってたのは誰だよ!大体そのコース、もう意味ないって言ってたじゃん。」
「うう……、弟子が立派になりすぎて私の立場が……─────
繁華街で、旅に便利な魔導具と、お土産を買った。
後は目的に行くだけである。
本来は旅なんぞ必要はないけどな。
これまで行った事のある場所には、見えない足跡が残っていて、俺は好きな場所にいつでも行けるが、移動のために魔法を使うと、ピンポイントで俺の魔法であることを探知する変態が居るから、基本は徒歩や使い魔で移動している。
街を出る際に、街中を巡回させていた、野鳥を一匹ずつ集めて情報を得る。
この辺りは、顎?というか下のくちばしが、刃のようになっている鳥が住んでいて、雑食で人懐っこく、人が小さな怪我をしてしまいがちな、見落としやすい小さな魔獣を食べてくれるため、生活にとけ込んでいる。
狩りの際や、危機が迫ると、巧みな身体使いで、縦回転しながら落下してきて、たまに石を投げるような子供が怪我をするが。
……やはり、早く出てきたのは正解だったようだな。
なるべく静かに過ごしたいタイプの俺だが、長生きなので魔人の知り合いも多い。
どうやら後ほど会う事になりそうだし、今、顔を合わせる必要もないだろう。
まばらに見える木漏れ日の美しい森へ、俺は足を踏み出した。
「ギルマスさーん。」
「はいはい、なんです?長くなります?」
英雄たちを慕う者たちが集い、中立の立場を貫くこの町でも町を管理する存在がある。
彼らは名前を簡素に、魔人ギルドとして置いており、一般人には、他の国で言う魔術のギルドのような働き、魔人には、念話によって情報交換の場を設けるなどをしており、ついでに町の管理をする部署が存在している。
最近は専ら町の運営に奔走することになった、『平らの魔女』メリア・リアスは、意外と町の経営が楽しくなった結果、ここ10年で名領主として慕われているギルドマスターである。
平らの、というのは、彼女が重力を利用した圧殺を得意としているためで、別にその胸部ボディラインの薄さは関係が無いので、地面の染みにならないよう、口をつぐむのが正解だろう。
「なんか一時間前くらいまでの4時間、大魔神像にとんでもない量の魔力が入ってきたんですけど、故障ですか?急患もないみたいで。」
「え?……ほんとだ、魔欠乏症の人は出てないんですよね……、なんでだろう。……あっ。」
職員であり、養子でもある紫髪の少女から、資料を受け取りながら、発生した問題について、メリアは考え、ふと思い立った。
メリアは半私室と化している、ギルドマスターの執務室の、金庫上に投げ出された未開封の手紙を開けて、中身を見る。
「(未登録の魔人でこんな強いのが、ってことは……、やっぱり明後日か。)」
「なんかわかったんです?」
「1年おきに行ってる集会は覚えています?」
「あ、その手紙見たことあると思ったらそういう。じゃあこれ誰か魔人が来たんですか。」
「もう町を出てるみたいですけどね。開催は明後日ですし、立派な魔女を目指すなら貴女も行ってみますか?」
「いいんですか!?魔女集会って言ってるし、魔女じゃないと行けないんじゃ。」
「集会自体はそんな固いものでもないですよ、ロックパンサーを撃ち抜けるのが、私が決めてた条件でしたからね。」
「達成したの4日前じゃないですかそれ、間に合ってよかったー!憧れの砕杖のとか、群王のとか、すごい魔女が集まるんですよね、もしかして大魔神様も居たりしますか!?」
「ガレンさんを見たことはないですかね~。まぁ、今晩出ますから、準備しておいてください。仕事はこっちで終わらせちゃいますから。」
「了解です!あー楽しみだなぁ!あっ、何も持たずに訪ねるのは失礼だろうし──────
「クロロゥッ!キョアーッウッウッ……。」
「それは反抗期という奴では?」
「クァー……。」
目的へ続く場所にある森は、『群王アトル』を慕う知性ある動物がヒエラルキーの上位に存在する。
長い長い尻尾を持ち、くちばしの先から尻尾まで、合わせて12mにもなる、吸い込まれるような漆黒の、長く大きな身体を持つ怪鳥、ロコイスはこの森の実質的なトップであり、魔人である。
前にも言ったが、見た目が人でなくとも魔人である……が、別に彼は連続して3日間程度ではあるが、人にもなれるらしい。見たことはないが。
ロコイスがまだ、カラス(のような鳥)だった頃、特殊環境下でのみ発生する、魔水に落ちておぼれ、全身が魔素で爆発寸前だったのを助けてからの付き合いで、俺とは良き親友である。
俺とも付き合いの長い、群王アトルとも仲が良い彼は、俺が住む森では元同族も居ないので、平和な今はここで住んでいる。
16年ほど前に、素材集めに出かけた時に、世界中の至る場所にたまに生まれる、魔窟の小さい版、魔穴と呼ぶ、一ヶ月後に少しずつ魔獣が生まれ始めるようになる魔力溜まりの発生に巻き込まれたのか、かつての自分と同じように爆発寸前になっていた白鳥っぽい鳥を助けたようで、大事に育てているという。
「今日は居ないのかい?」
「クロロ、ロロァールルルル。」
「あ、ロコイスも明後日の行くのね、修行ついでに裏から現地集合?ホントに来てくれるのかね、それ。」
「キュオロロ、クアークォ。」
「アトルに憧れてるの?それで集会に出れるように人化状態で修行してんのね。あっ、アトルの城って人化出来ないと入れないから、ロコイスの初、人モードが見れるのか。」
「!!!!」
「いや、そんな顔しなくても……、なんでいつも見せてくれないんだ?」
「クロァ!アルロロア!キョアルル──────
どうしても人状態を見せるのを嫌がる親友と語らいながら、森を抜けた先の峡谷へと向かう。
常人では徒歩10日はかかる距離ではあるが、魔法使いにはどうにでも移動方法はある。
度々前とは異なる景色や生態に足を止めながら、進んでいった。