東方万事屋録 The Fantasm of Silver soul 作:曙光
インフィニット・ストラトス 篠ノ之束
パチュリー「口で平等を謳うやつほど、誰よりも格差に拘るのよね」
銀時「楽して金が手に入る方法ないかな?」
アリス「働けェェェ!」
西行寺幽々子は暇を持て余していた。
彼女の従者、魂魄妖夢が不在だからだ。
庭師の仕事をこなし、自己鍛錬も怠らない妖夢を評価している。
しかし今朝から出かけて書き置きに、
"博麗神社に泊まります"
なんて書かれたら拍子抜けしてしまうだろう。
真面目だがどこか抜けた妖夢をからかうのが幽々子の楽しみの一つだ。
いない者のことを考えても仕方がないと緑茶を啜る。
友人の八雲紫は最近姿を見せない。
原因は最近噂になっている侍、坂田銀時の事だ。
彼の元の世界を探すのに忙しいそうだ。
坂田銀時。あの男は中々面白い。
妖怪や神相手に物怖じしない破天荒な性格。
人里の男達には無い、益荒男の気概が感じられた。
あと、どうやら彼はお化けの類が苦手なようだ。
宴会の時、微妙に態度が変わった
所から察したので、妖夢と同じくからかいがいがある。
最近万事屋なる便利屋を作ったらしいので、近々依頼をしてみたいと幽々子は思う。
"依頼内容は、妖夢と手合わせなんてどうかしら?盛り上がるし、あの子にもいい経験になるわ"
そんな事を考えながら幽々子はふふふと笑う。
"妖夢と言えば…"
最近様子がおかしい所があったなと思い返す。
何かを隠しているようなそんな感じ。
自分も深く聞かなかったが、
鍛錬と食事の量を増やしたので何かやらかすのではないかと。
"案外、既に銀時さんと決闘してたりして"
いやまさかそんなことしないだろうと、幽々子は空になった湯呑みに茶を注いだ。
無縁塚に戦いの刃鳴が散る。
「アアァァァァァァァァァァァァ!」
「ウオォォォォォォォォォォォォ!」
交差する刃。
互いに繰り出した武器は相手の体を捉えんとするが届かない。
戦闘は拮抗していた。
坂田銀時と魂魄妖夢。
この二人は実に対称的な戦いをしていた。
片や暴風と形容すべき荒々しい剣技。
片や疾風と形容すべき流麗な剣技。
銀時が木刀を振るえば妖夢は捌き、妖夢が刀を振るえば銀時は弾く。
捌き、受け、躱し、弾き、いなす。
両者の剣技は互角だ。
だが妖夢は腑に落ちないという気分に駆られたのだ。
”この男の剣ははっきり言って我流の類だ。
こんな無茶苦茶な戦い方でなぜ自分の剣についてこれるのか”
銀時の木刀が頭上に上げられた。
それを見た妖夢は胴を断とうと踏み込む。
だが───
「オラァッ!」
上段は囮。彼の本命は前蹴りだ。
「ぐうっ!」
とっさに体を固めて防いだが、
衝撃で妖夢の小柄な体が後方に飛ぶ。
とっさに受け身を取って体勢を立て直した。
両者の距離は、再び開いた。
”やりにくい…”
妖夢が思った事はそれだった。
型も何も無いデタラメな戦い方。
だがある種合理的な動き。
状況に合わせて形を変える水のように。
無形。
武術のある種の理想形。
”この男は型を持っていない。おかしな話だが、型が無いことが型なんだ”
坂田銀時は剣士ではない。
剣術で己が真理の到達を目指す剣士と違い、己の守るモノの為に剣を振るう侍だ。
持って生まれた身体能力と幸運、未来予知染みた勘の鋭さ。
必要とあらば他の武器を手に取り相手の技量を模倣し、人数、地形、その他を踏まえて臨機応変に対処する経験の豊富さ。
それが坂田銀時という
対して妖夢は地道な鍛練と弾幕ごっこによる経験を有する。
弾幕ごっこ、スペルカードルールは、言ってしまえばパターンを見つけることが重要だ。
一定のパターンを組み込んだ弾幕を安全に、リスクなく避ける方法を見つけることが勝利の鍵となる。
しかしそれこそが妖夢と銀時の差を縮める要因。
銀時の攻撃にパターンは存在しない。
徹底した喧嘩殺法。
パターンによる攻撃に慣れた妖夢からすれば、これ以上ないほどやりづらい相手になる。
「フッ!」
銀時が一息で詰め寄り、妖夢の頭に兜割りを叩き込む。
「ク───ッ!」
かろうじて妖夢は防ぐ。そこからは再び鬩ぎ合いに入った。
この時点で既に五十合以上。
戦局が動くなら頃合いになる。
「…………」
両者の戦いを見ていたレミリアは感嘆の声を吐く。
優雅の欠片も無いぶつかり合い。
しかし、なんと雄々しき戦いぶりだろうか。
何時もは気怠い眼を出している銀時が、いま戦う男の眼で剣を振るっている。
「やりますね。妖夢に引けをとってませんよ」
隣にいる咲夜も同じ意見だ。
やはり妖夢からの情報は真実なのか。
白夜叉。
坂田銀時のかつての異名。
攘夷戦争に参加していたのは初耳だったが、あの男は自分から過去をペラペラ喋る類ではない。
かつて恋したあの男曰わく、
「聞かれてもないのに勝手に喋る奴は単なるかまってちゃんだよ。そういう奴は大抵つまらん」
らしい。
このバカ騒ぎが終われば聞いてみようと思う一方で、
レミリアは一抹の不安を覚えた。
このまま何事もなく終わって欲しい。
しかし、妖夢をそそのかしたというしの男は、本当にこのまま終わらせてくれるのか。
”もしかしたら何かしてくるのかも…”
そんな不安がレミリアを渦巻いた。
「咲夜、呪符は剥がせる?」
「駄目です。どうやら貼った本人でないと剥がせない類みたいですね」
やはり無理かとレミリアは戦いに目を向ける。
「銀時…」
ここで観ているしか出来ない自分に歯噛みしながらも、無情にも戦局は動き出した。
「フンっ!」
横凪に払った一閃を妖夢はバックステップで回避する。
始まってから何分たった?
最初は小手調べと剣を合わせてきた。
そこから相手の太刀筋や体捌きを把握、分析していく。
でかい刀を苦もなく振り回せ、二刀流もこなす技量。
体捌きから相当な鍛練も積んできただろうと分かる。
しかし、こいつの剣は真っ直ぐ過ぎる。
邪剣の欠片も無い正当な剣術。
柳生の剣を彷彿したが、まだ向こうの方が応用があった。
”だからこそ解せねぇな…”
これほど真っ直ぐな剣を振るっているこいつは、何故疑いもなく信じたりするのか。
「なぁ。お前さん、何で信憑性も無い話を疑いもなく信じたんだ?普通に考えて可笑しいだろうよ」
それを聞いて妖夢は構えを解いた。
こちらに目を合わせ、やがて口を開いた。
「正直、半信半疑でしたよ。誰だって、訳わかんない人からいきなり言われたら困惑します」
「なら…」
「まぁ…二つ思惑もありましたから」
「思惑だぁ?」
そうよと頷いて妖夢は眼を鋭くする。
「剣士として、侍に挑みたいという個人的な願い。そしてもう一つは、真実を見るために」
言って手にした長刀、楼観剣を目の前に突き出した。
「あの男の話が本当か確かめる為です。真実は目に見えない、聞こえない、触れることも嗅ぐことも味わうことも感じる事も出来ない。斬ることで真実は掴めると私の師匠である祖父は仰ってた。ならば斬る。斬り捨てる。解らないことも迷う事も、斬れば解る。それが私の剣です」
「……」
───あぁなるほど。
パチュリーの言うとおりだわ。
こいつは真面目過ぎる馬鹿だって。
師匠とやらの教えを、そっくりそのまま実行してやがる。普通そういう教えって、自分なりの解釈をしたりするのに、こいつはクソ真面目にそのまんま受け取ってやがらぁ。
「そうかい。なら俺の真実の見極め方をおしえてやんよ」
だが、そういう奴は嫌いじゃねぇ。
俺はそんな馬鹿が好きさ。
「真実は解らねぇ見えねぇ。ならば己の目で、魂で、真実を見るんだよ。少なくとも、お前さんみたいに何でもかんでも斬るなんて物騒な事はしねぇさ。要するにーー」
一度止めて静かに呼吸する。
多分これ言ったら怒るだろうな。
「お前、考えたりするの苦手だろう」
「何…?」
「だからよ、お前さんは難しい事考えんのが苦手なんだろう。俺も同じだからよ~く分かるさ、理屈抜きで行動するし」
言いながら洞爺湖を肩に担ぎ直す。
飄々と装った振りをして相手の攻撃に備えた。
「でも本当に疑わしい事ならちったぁ考えるぜ。お前みたいに考えずにすぐ斬るなんてしねぇさ。そのこと指摘してくれるやつがいなかったんだろう?だったら俺が代わりに言ってやんよ。───木偶の剣だな、芯が無いってな」
瞬間───空気がピンと張り詰めた。
「……」
大気が重量を持ったような感覚。
この現象を起こしたのは妖夢だ。
「貴様…!」
妖夢から溢れ出る怒気が、無縁塚の空間を浸食する。
自分の剣が木偶なんて言われたら誰だってキレるわな。
「いいでしょう。その侮辱、兆倍にして返してあげますよ。覚悟はよろしいですか?」
「剣士が易々とキレるってどうなんだろうね~?」
「やかましい!」
言って懐から取り出したのは一枚のカード。
「来るか…」
幻想郷の闘法、スペルカードルール。
しかしあのカードが弾幕を自動で出すわけでは無い。
パチュリー曰わく、
「カードを出すのは、これからこの攻撃をするぞって合図なの。弾幕を出すのはあくまで自分の力よ」
スペルカードはその人物の特徴や特技、伝承を表した弾幕。
アリスなら人形、早苗なら神道の秘術、レミリアなら吸血鬼関連と言った具合に。
妖夢は無論、剣技の弾幕だろう。
あの二刀から弾幕なんて出るのかと思うが、パチュリーから聞いた話だと、瞬いた剣閃から射出するそうだ。
なにそれ羨ましい。俺もやってみてぇよ。
「獄界剣『二百由旬の一閃』!」
高らかに上げられた宣誓の後、妖夢の剣先が下がる。
そして、傍らにいた半霊呼ばれる白い塊から大玉が飛び出した。
妖夢が左脇構えの体勢から間を置くこと数瞬ーー、
「ツェアァァァッ──────!!」
振りきった左斬上げの剣閃が大玉を斬ると、
小粒の弾が飛び出した。
「うおッ!?」
なんとか横に飛んで躱す。
さながら散弾銃を撃ったかのようだ。
射出した弾は空中を疾走した後、溶けるように空中に消えた。
「まだまだぁッ!」
続けて斬った大玉から新たに射出。
だがこの時の俺は冷静だった。
「フッ!」
今度は余裕を持って回避する。
スペルカードは自分達と周りを楽しませる事を前提にしていると聞いた。
故に、少々芝居掛かった動作も入れている。
つまり、どこかしらに区切りや隙が必ず存在する。
「ウオオオオオ──────!」
地面を蹴り、妖夢に向けて走る。
向こうからすれば愚策としか言いようがない。
「貰ったァァッ!」
再び射出された弾幕が迫る。
弾が眼前に迫る刹那───
「どりゃあぁぁ!」
寸前で上に飛んで回避する!
「何!?」
妖夢は驚愕の声を上げる。
まさか跳躍で回避するとは思ってもなかっただろう。
地面に降り立ち、妖夢の目前に迫り────
「おのれッ──────」
「遅えッ!」
構え直す前に木刀を叩き込む───!
「きゃあッ!」
辛うじて防いだが妖夢は衝撃で吹っ飛んだ。
このスペル、射出するまで溜める動作が必ず入る。
だから射出から溜めの動作までが隙で、
それまでに相手の懐に飛び込んだ訳だ。
「これで一枚目撃破か?」
肩に木刀を担ぎながら聞くと、妖夢は頷いた。
あと四枚か…。
先は長ぇなぁ…。
「続けていきます───断命剣『迷津慈航斬』!」
宣言の後、妖夢の楼観剣に異常が起こる。
空気が楼観剣に集中し出した。
いやこれは妖気か?
奴の妖気が楼観剣に集まっている。
妖夢は楼観剣を頭上に掲げ───
「ハアァァッ!」
地を砕かんとばかりに振り下ろした。
この時、俺と妖夢の距離はせいぜい五メートル。
どう考えても剣が届かない。
だからまた弾幕を撃つのかと思っていた。
縦に振り下ろす動作だから後ろに下がらず横に躱そうと飛ぶ。
この判断が結果的に俺を救った。
「──────!?」
避けたのはいい。
だが避けた後にあったのが、亀裂だ。
地面にスコップを突き刺して抜いた後のようだ。
妖夢を見る。
やつの楼観剣が、蒼い刀身を纏って巨大化していた。
どうやらこのスペルは剣を巨大化させてぶん回すようだな。
「いいなそれ。卍解みたいでかっけーな。今度俺にも教えてくんない?」
「…同じような事を早苗にも言われましたよ。流行ってんですか?」
同じ事言われたのかよ。
さすが早苗だ。ロマンを解ってやがる。
やっぱり友達にするならああいう奴だねぇ。
「いきますよぉっ!」
掛け声と共に、妖夢は叩きつけた剣を横に振るう。
姿勢を低くして躱し、後ろに飛んだ。
一般的に、長柄の武器は距離を取ると滅法強い。
相手に近づけさせないで一方的に攻撃出来るからだ。
だから普通なら懐に入り込むがあえて距離を取る。
「距離を取っても───無駄だぁっ!」
返す力で頭上に上げられた剣を見て───
「シイィッ!」
俺は真っ向から突っ込んでいった。
迫る巨剣。
まともに食らえば一刀の下に両断される事は自明の理。
防ぐ?いや駄目だ。衝撃でダメージを負う。
なら横に躱す?いい案だが、大きく躱すと隙が出来る。
ならどうするか。
簡単な話───
「チィィィッ!」
当たる寸前に半身になって必要最小限に躱す───!
「クゥ───ッ!」
叩きつけた際の衝撃が襲う。
危うくバランスを崩しかけた。
なんとか踏ん張り、巨剣の背に飛び乗る。
「──────!?」
驚愕の顔をする妖夢に向けて疾走。
剣の根元まで来たら頭上高く飛び上がり───
「ラアッ!」
すれ違い様に背中に叩き込む。
「ガッ───アァ…!」
その衝撃で妖夢は倒れた。
巨剣も元の大きさに戻る。
「うし、あと三枚!」
構え直して妖夢を見据える。
立ち上がった妖夢は刀を拾い俺と向き合った。
口元を拭いながら見せた顔は、
「ふふふ…」
悔しいというより楽しそうに笑っていた。
そのまま腰に差した短刀───たしか白楼剣だったかを抜き出して左手に持つ。
ここでようやく二刀か。
ようやく本気になって来やがったな。
「ハアァァッ───!」
迫る半人半霊の剣士。
鬼気とした表情の妖夢を正面から迎え入れる。
そこからはまた序盤と同じ鬩ぎ合い。
向こうは二刀流で回転率を上げたおかげか、怒涛のように迫る。
「ハァッ!」
「フンッ!」
互いの得物がぶつかる度に衝撃が走り、
無縁塚の空気を振動させる。
十合、二十合、三十合を越えたあたりで大分太刀筋が読めて来た。
「ハァッ!」
突き出された白楼剣を躱し、ガラ空きになった体に叩き込もうと振りかぶる。
だが───
「グウッ!?」
突如───背中に衝撃が走り、一瞬動きを止めてしまった。
「ハアァァァァ!」
その機を妖夢は逃すわけがなく、渾身の楼観剣を叩きこんできた。
「チィィ───ッ!」
寸でに木刀で受け、衝撃をそのままに後ろに飛び、お互いの距離がまた開いた。
「ハァ…ハァ…っ」
今のは危なかったな…。
しかし今の衝撃はなんだ?
完全に死角から攻撃してきやがった。
新手のスタンド攻撃か?
……ん?スタンド?
「ああ、そういや忘れてたわ。影薄いから気付かなかったぜ」
「この子は私の半身。いわばもう一人の私。自立する事も動かす事も出来ます」
妖夢の傍らにいる白いマシュマロのような物体。
半霊。
あのマシュマロが死角から援護してきやがったのか。
「魂魄『幽明求聞持聡明の法』!」
三枚目の宣言。
さあ今度は何が来やがる?
次の瞬間───半霊の姿に変化が現れる。
丸まった形が少しずつ形を変え始めた。
やがて出来上がったのは───妖夢だ。
「…分身か」
ご丁寧に二刀まで装備してやがる。
色が薄い──というか透けている。
見分けるのは簡単だが、このスペルは恐らく…
「ハァァァァァ!」
分身と同時に攻撃して来るやつか。
「チィッ!」
向かってくる妖夢たちを正面から迎え撃つ。
今度は二人――実質二対一。
打ち合う。
四方八方に飛び回り、
同時に攻撃してくるのは厄介だ。
しかし、どうやら半霊の力は低いようだ。
子供が殴ったような軽さを感じる。
だが油断していると本命の妖夢の攻撃が通りかける。
まずは厄介な方から片付けるか。
「せやぁぁぁぁぁ!」
半霊の攻撃を流した時、後ろから妖夢が迫る。
繰り出された斬撃を躱し、隙が出来た体を掴み、
「おらあぁぁぁっ!」
片手で思いっきり投げ飛ばす。
彼方に飛ばされた妖夢を見送り、残った半霊に一瞬で詰め寄った。
半霊も迎え打たんと刀を振るおうとするが、
「おやすみ」
それより速く、ポーチから取り出した紙切れを額に貼り付けた。
「───!?」
紙切れを貼られた半霊は膝から崩れるように倒れる。
パチュリーから言われた対策の一つ。
「もし半霊が攻撃に参加し出したらこの札を使いなさい。霊の動きを拘束するありがたい御札よ」
対半霊用の札。
これを使わせて貰った。
「お前の相方の動きを止めたぜ。これ撃破扱いになるか?」
視線の先に妖夢。
多少口惜しそうな顔をしていたがこくりと頷いた。
これで三枚目突破。
それを確認すると、半霊の札を剥がす。
拘束から逃れた半霊は元の姿に戻り、逃げるように妖夢の下に向かっていった。
「……」
パチュリーから予めどんな弾幕がくるか聞いていたが、どれも度肝を抜くばかりだ。
何も聞かされず、対策もしてなかったらちょっとヤバかったよな。
「なるほど、想像以上の強さですね。初見でここまで食い下がったのは初めてですよ」
半霊を労りながら妖夢が口を開く。
褒めているのかもしれないが、若干上から目線が癪に障るがな。
「俺だけの力じゃねえよ。魔改造大好きな魔女のおかげさ。まぁそれだけのおかげだけじゃねえぜ」
「それは?」
「レミリアを救ってほしいっていう意思の受けたから」
言ってて恥ずかしくなるような事だが、戦う理由としては上等だろう。
勝負は、要するに意思の強さが決め手になると思っている。
自分の意思をどれだけ信じているか。
それが勝敗の分かれ目になると思っている。
「お子様吸血鬼にゃあ色々世話になってるし、その礼だ。ちゃっちゃと終わらせないとな」
「なるほど、あなたの意思は分かりました。ならば───」
言って妖夢は跳び下がる。
その距離はざっと十メートル。
「私も負ける訳にはいきません。残り二枚、全力でお相手します」
キッと顔を引き締め妖夢は懐に手を入れる。
その顔は、俺の疑いなどどうでもよくなり、
ただ勝負を楽しむように見えた。
「いきます───天上剣『天人の五衰』!」
宣誓。
四枚目の始まりは静かなものだった。
手にした二刀を構えた妖夢は呼吸を整える。
気を練り上げた二刀を振り上げて、
「はあぁぁぁぁぁ!」
目に留まらぬ高速の斬撃を放った。
放たれた斬撃は五つ。
あの一瞬で斬撃を五つ出すなんて驚きだが、それ以上に驚いたのは斬撃を飛ばしてきたことだ。
「チィッ!」
合間を掻い潜る。
距離が開いているおかげか、回避するなら問題ない。
問題があるとするならば、近づけないことだ。
近づく程に斬撃の密度が濃い。
しかも次に来るペースが早い。
たとえ掻い潜っても次の斬撃がすぐに来る。
「ここまでやってようやく気付きました。あなたの弱点、それは弾幕が出せない事」
視線の先には妖夢。
今や、ヤツは斬撃の砦に立て篭もる兵士にして指揮官。
それが勝ち誇るように言う。
「ここまで力業、身体能力で来ましたが、それもここで終わり。弾幕ごっこは、弾幕が出すことが前提条件。ごり押しでは突破出来ない壁が存在します」
「───」
そう。
スペルカードルールは弾幕が出せての勝負。
魔力。妖力。法力。或いは武器の類。
大量に出して撃ち合い相殺しあう。
俺は弾幕を出せる程の妖力などは無い。
かといって大量に投げつける武器も無い。
そこらの石を投げつければよいが、それではこのスペルは突破出来ない。
だが───
「フっ───フフフフフフフ。弾幕が出せねぇ、確かにそうよ。異能たぁ無縁のジャンル出身だからな」
「────?」
訝しむ妖夢。
なぜここで笑うのかと。
向こうは万策尽きたと自虐しているように見えたろうか。
「バカめっ!うちのブレインが、その程度対策してねぇワケねぇだろうが!」
レッグポーチから取り出したのは、
炎のように赤い小さな宝石。
俺は躊躇いなくそれを口に含んだ。
「何?」
噛む事は出来ないから、口の中で転がす。
そして呑み込んだ。
「うっ…おえ…」
吐き出しかけても我慢する。
これを突破するためには必ず必要なことだ。
やがて胃に収まったのを確認すると構える。
次の瞬間───
「ハアッ!」
横一閃に振り切った軌道が───斬撃となって飛び出した。
「なんだと!?」
驚愕した妖夢はすぐさま己の斬撃で迎え撃つ。
ぶつかった斬撃同士が霧散して消えた。
これこそがパチュリーの対策の一つ。
魔力を込めた宝石を呑み込む事で、一時的に俺にも魔力を使えるようにする事。
魔法の知識がないから魔法が使える訳ではないが、
飛ばすまでなら問題は無い。
これで───
「仕切り直しだ。さあいくぞ白髪の半分お化け。覚悟はいいな?」
「白髪なのはァ───あんたもだろうがぁぁぁぁ!」
「ツッコむとこそこかよ……」
撃ち合う斬撃波。
互いの攻撃が相殺しあう。
この攻撃が届けば良いがまだ届かない。
平行線だ。
均等を維持するシーソーのようだ。
「ハア───ッ!」
「オラ───ッ!」
それでも撃ち合う。
一粒で五分は出せると言われた魔石は二つ。
急だったからこれだけしか用意出来なかった。
このまま続けばジリ貧だ。こっちの魔力が切れる。
どうするか。斬撃だけでは相殺しあって妖夢に届かない。
向こうの方が剣速は速い。
あいつが一度に五を放つならこっちは速く振って四かそこら。
徐々に押され始めてきた。
突破するなら一点集中。斬撃じゃ駄目だ。
もっと何か、レーザーのような攻撃じゃないと─────
「あ……」
そうだなんで気付かなかったのか。
魔力が使えるなら、あれ出来んじゃね?
思い立って木刀を腰にしまう。
「!?」
妖夢は驚いて攻撃を止めた。
いきなり得物をしまえば当たり前な反応だろう。
「降参ですか?」
「いいや」
これが起死回生の切り札よ。
「かぁぁぁぁぁ!」
己の体内に流れる魔力を手に収束するようイメージする。
「めぇぇぇぇぇ!」
偉大な先人が編み出した必殺の技。
男なら誰もが一度はやった伝説の技。
「はぁぁぁぁぁ!」
だが出来ない。何度やろうと影も形も出せない。
密かに練習している所を見られた時のあの恥ずかしさ。
「めぇぇぇぇぇ!」
だが遂に俺はその本懐を遂げられる。
一点に集中。今こそ俺のーーいや俺達の夢を叶えさせてくれ!
「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ここに放たれた極光は約束された勝利の光。
直線となって妖夢に迫る。
「なにぃ!?───きゃぁぁぁ!」
完全に油断した妖夢は直撃し大きく吹っ飛んだ。
すぐに立ち上がったが膝をついたままだ。
「うぉぉぉぉぉやったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!苦節うん十年、遂にかめはめ波撃ったどぉぉぉぉぉ!!」
スペル撃破よりこっちの方が嬉しく、
俺は歓喜の雄叫びを上げた。
魂魄妖夢は喜びに身を震わした。
真実を見極める筈の戦いが、いつの間にか楽しくなってきていたからだ。
坂田銀時。
身体能力、経験、精神力、応用の幅広さ。
剣を使う物として、彼は自分の上にいる。
この男はいわば秘伝書。
この男を参考にすれば、自分はもっと高みにいける。
「どうだレミリア!撃ったぞ!かめはめ波撃ってやったぞぉぉぉぉっ!」
「でもそれってパチェのおかげよ。あんたの力じゃないわ」
「撃てたからいいんです~。大事なのは結果だ!今なら夜刀にだって勝てるぜ!」
「調子に乗るな!その程度で夜刀様に勝とうなんて片腹痛いわ!紅蓮に凍って逝きなさい!」
「咲夜のキレるとこそこ!?」
そんな妖夢の思惑など知らずにまるで子供のように喜んでいる。
その姿がちょっと可笑しくて、妖夢は笑ってしまう。
「ふふ…」
こんな堂々とした戦い振りをする男が殺人鬼?
ちゃんちゃら可笑しいと妖夢は笑う。
拳で語り合うと聞いたが正にこれだ。
銀時は殺人鬼などでは無い。
剣を交えたからこそ解った。
もう戦う必要も無いように感じたが、
形式上あと一枚。
勝とうが負けようが関係ない。
全力で相手を───
”あ~駄目だよ。そんな事言っちゃ。君にはどうしてもあいつを殺して貰わないと”
「──────!?」
背筋が凍る。
酷く耳障りな声が頭の中に響いた。
妖夢はこの声を知っている。
「あの時の───?」
正確にはしゃべり方だ。
自分と銀時との決闘を仕組んだ影法師のような男。
それが今妖夢の頭の中に話しかけている。
”君の戦い振りは見事だよ。しかしあいつを仕留めるには至らなかったね”
「なんでこんな真似したの!?あの人は、お前の言ったような人じゃなかった!」
”そうだね。強いて言うなら、俺の計画の邪魔になるからかな”
「計画…?」
”あいつは俺と同じかと思ったけど違う。本物だ。直接俺が殺しに行ってもいいが、まだ表に出てはならないと言われてね。仕方がないから一番チョロい君に頼んだんだよ”
「──────!?」
吐き気がする。
己はお前の捨て駒だと言うのか?
妖夢は手にした楼観剣を握りしめる。
言いように踊らされた憤りと自分への自噴を込めて握りしめた。
”このまま終わるのは駄目だ。せめて二度と起き上がれない体にしてもらおう”
次の瞬間───妖夢の体に異常が起こる。
「あっ───あああああ!」
体が熱い。
中で火を燃やすような感覚だ。
それでもめげずに妖夢は虚空を睨んだ。
「何を…した…!?」
”いやなに、別れ際にちょこっと術を施したんだよ。俺の合図で発現するように”
頭から血が引くような感覚を感じた。
気付かなかった。そんな事をいつの間にされたか分からない。
やめろやめろ。自分が自分じゃ無くなってしまう。
何も聞こえず、感じず、見えない。
闇に墜ちる感覚に妖夢は止めてくれと懇願する。
”君の為に用意した物だよ。有り難く受け取って欲しい。そして───”
一拍置いて影法師の声が響く。
”我が悲願達成の障害───坂田銀時の抹殺を!”
「!?」
かめはめ波を撃てた喜びに浸っている時、
水を差すような衝撃が襲った。
膝ついていたはずの妖夢から凄まじい殺気を感じる。
「天照皇太神の宣はく 人は則ち天下の神物なり」
これは呪文?
立ち上がった妖夢が意味の分からない事を口走る。
「須くづまることをつかさどる心は 則ち神明の本主たり」
違う、これは祝詞だ。儀式に用いる祝福の詞。
だが、これが祝いの為なんて断じて無い。
「心神を傷ましることなかれ 是の故に 目の不浄を祓いて 耳の不浄を祓いて 鼻の不浄を祓いて 口の不浄を祓いて 身の不浄を祓いて 心の不浄を祓いて 此の時に清く 潔きことあり」
浄滅。
眼前の不浄を祓い落とし、無に帰さんとする浄化の祈りにしか聞こえねぇ。
「我が身則ち 六根清浄なり 無上霊宝 神道之加ァァ持!」
暴流する空気。
遂に詠唱を終えた妖夢の姿が変わる。
一見すると何も変わったように思えないが、
体から発する熱が陽炎のように揺らぐ。
そして───眼だ。
赤く染まった眼は不浄を祓い落さんと燃える。
「おい…?」
声をかけると焦点をこちらに向けてくる。
次の瞬間―――弾けるように飛び上がった。
「アアアアアアァァァァァァッ───!」
「ッ!?」
迫る斬撃を止めてもあまりにも重く紙のように吹っ飛んだ。
「ガッ───ハァッ…!」
受け身を取り損ね、肺の空気が全て出てしまう。
立ち上がり妖夢を見る。
「五穀豊穣 一念無量 妖魔降伏 急ヶ如律令ォォォォ!」
完全にイかれてやがる。
バーサーカーでももっと自制するわ。
いきなり豹変するってことは、
パチュリーの予想はこれか?
妖夢が負けそうになったら何かして来るかも知れない。
それがこれだってのか。
「へっ。クライマックスに相応しいじゃねぇか」
武器を構え敵を見る。
さあ───
「いくぞオラァァァァァァ!」
「オン・コロコロ・センダリ・マトワギ・ソワカァァァァァァ!」
大地は震え、空を裂く。
戦いは今、終幕への序曲を刻み始めた。
グダグダ座談会 Act est fabula
銀八「そんなこんなで始まりました」
アリス「ねぇ、まだ出来てないけど息抜きで書きましたじゃないのよね?」
銀八「あたぼうよ。白神さんお墨付きで終了したぜ。今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲めよ」
早苗「あざーす」
レミリア「ほんと長かったわね。どのくらいかかったのかしら」
銀八「それを含めて今日は色々話そう。なに後書きは二万文字もあるんだからいけるいける」
アリス「身も蓋も無いわね」
銀八「じゃあお疲れ様でした」
三人「かんぱーい!」
詠唱制作裏話
銀八「始まりは五月の中頃。マイページにメールが来てますの文字を発見し見てみると、白神という方から「銀魂とデート・ア・ライブのクロス作品に使うDies iraeな詠唱を考えて欲しい」と依頼されたのさ」
レミリア「作者紹介のページでDiesネタやっちゃったからね」
銀八「最初は驚いたけど、面白そうだから引き受けたさ。最初が特に辛かったな」
アリス「詠唱もそうだけど能力をどうするのかが問題だったわね」
銀八「銀魂勢はまぁ特徴やらが異能として昇華したみたいな感じにしたけど、問題がデアラだよ」
早苗「なるべく境遇から能力考えてましたよね」
銀八「この為に古本屋行ってデアラ全巻買ったよ。折紙どうなっちゃうのかな~。頼むぜ士道君」
早苗「デート・ア・ライブ最新11巻は9月20日発売ですよ~」
アリス「ここで宣伝!?」
銀八「とまぁ着々と作っていった訳よ。途中で聖遺物や渇望を考えて欲しいって追加入ったけど、ようやく全て終わったよ。まぁデアラ勢若干人数減らして貰ったけど」
レミリア「デアラだけで11人いたけど、全部考えてたら地獄だったわね。絞ったおかげで5人して貰ったのは僥倖ね」
銀八「色々合ったけど、色んなネタ拾えたし、楽しかったな。今ストーリーどうするかでやり取りしてるし」
アリス「いつからやるって聞いたの?」
銀八「pixivでやってるぜ」
アリス「あれ?ハーメルンじゃなくて?」
銀八「今試験運用中だってさ。ストック溜まったらこっちに来るってさ」
早苗「作者に取って白神さんは何でしょう?」
銀八「覇道神と自滅因子みたいな?切っても切れぬ関係」
アリス「どんな関係ぇぇぇぇ!?」
銀八「そんな訳で、白神さんのデート・ア・シルバーソウルは、pixivで連載中ですのでよろしく~」
最近の流行りやら好きな奴
銀八「最近やってるゲームはブレイブルークロノファンタズマと新桃太郎伝説なんだよ」
アリス「やっぱりやってたのねブレイブルー」
銀八「ハマったキッカケは、ハクメンのアストラルヒートに一目惚れしたから」
早苗「カッコイいですよね!悪滅って!」
レミリア「あいつストーリー分かればいいやってスタンスだからそんなやり込んでないわよね?」
銀八「暇潰しにちょくちょくやる程度だな。よくて中級レベルかな」
アリス「桃太郎伝説は?」
銀八「部室の物置に入ってたのを見つけたんだ。桃鉄やったことねぇけど面白そうだからやってみた。これがハマるハマる!取りあえず夜叉姫がかわいい」
アリス「取りあえずが夜叉姫なのね」
銀八「いつかさ、桃太郎伝説ネタの話も書こうかなって思ってる。因みに配役が、俺が桃太郎、アリスが金太郎、早苗が浦島太郎、レミリアが夜叉姫みたいな感じで」
アリス「なんで私が金太郎!?嫌よ!元ネタ的にあんたがやればいいじゃん!」
銀八「馬鹿やろう!裸エプロンはアニメでやったんだよ!主役やらせて下さいお願いします!」
アリス「あれ裸エプロンじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
早苗「私夜叉姫ちゃんやりたいです!」
レミリア「甘えるな小娘!夜叉姫は桃伝のヒロイン。つまり私が適任よ!」
銀八「見た目と中身がお子ちゃまだけどな」
二人「確かに」
レミリア「貴様らァァァァァァ!」
銀八「作者が好きなジャンルは…」
レミリア「唐突に切り変えたなコノヤロー…、後で覚えときなさい」
銀八「アクションやシューティングゲームが好きだな。漫画なら妖怪が出る話が好きだね」
アリス「鬼灯の冷徹なんてストライクゾーンド真ん中だったでしょう」
銀八「バトル漫画も大好きだねぇ」
早苗「進撃とかヘルシングやら、古い漫画も好きですよね」
銀八「取りあえず妖怪モノが大好物よ。最近読んでんのがゲゲゲの鬼太郎」
アリス「渋い…」
東方にハマったキッカケやら
銀八「そうさな。最初に見た東方は、ゼロ魔のルイズが召喚したって話か」
アリス「そういうサイト合ったわね」
銀八「作者が高二かそこらの時、ゼロ魔にハマってた時期があったのよ。その時に見つけてさ、東方ってなに?って思ってWikiみたけど解らなくてなぁなぁで読んでた。先輩に進められては部室のパソコンに入れて貰ってさ、プレイしたら大はまりよ」
早苗「ハマるキッカケって人それぞれですよね~」
銀八「最初はギャルゲーの類かと思ってたけどさ。シューティングゲームって知った時は驚いたよ」
レミリア「誰もが通る道よ」
銀八「音楽が良い。弾幕が綺麗。個性的なキャラ。これにハマらないのがおかしいよな」
アリス「そして、それだけじゃ収まらずに自分で妖怪やら民俗学を調べたと」
早苗「逆流現象ですね」
銀八「今や立派な東方ファンさ。ニコ動は必ず行ってるし」
アリス「で、思い立ってこの作品を書いたと?」
銀八「この作品は、作者が見聞きしたものを再解釈したものです。過度な期待はしないで下さい」
レミリア「今頃注意書き!?」
お開き
銀八「そんなこんなでこれからは連載再開さ。相変わらずマイペースでいくけどな」
アリス「書ければそれで良しよ」
早苗「楽しめればそれでよしですね」
レミリア「失踪しないように気をつけなさいよ」
銀八「あたぼうよ。まだ書きたいやつ書けてないのに辞めれるかってんだ。そう言うわけで、アウフ・ヴィーダーゼーン!」
三人「ジークハイル・ヴィクトーリア!」
銀八「二次会カラオケいく?」
早苗「行きましょう行きましょう!」
アリス「あ~飲み過ぎた。明日起きれるかな?」
レミリア「私は昼までグーグーグーよ」
アリス「今回は鬼太郎で締めたか…」