東方万事屋録 The Fantasm of Silver soul 作:曙光
11eyes 皐月駆
レミリア「応とも!ならばその気概、私に見せなさい!」
銀時「お前の能力っていまいちわかんねぇよな。運命操るって嘘じゃね?」
レミリア「うるせェェェェ!」
────それは、意志を持った災害だった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ガァァァァァァァッ!」
激突───さながら掘削機を彷彿させるような衝突音。
空気が激しく浸透し、草花を揺らした。
豹変した妖夢の攻撃と速さが重みを増す。
先程の詠唱。あれが妖夢を怪物にさせた。
打ち合う攻撃はまるで小型の台風。
中心に立つ
放つプレッシャーが辺りを圧する。
近付けば死ぬと、警告を出すように。
レミリア・スカーレットはただ見守ることしか出来なかった。
未だ動けぬ己の体。何かしようとも返って足手まといだ。
故に見守るしか出来ない。
「お嬢様…」
今この場で即座に動けるのは咲夜のみ。
銀時に加勢しようと己の得物、銀の投げナイフを手に取る。
だがレミリアは、それを制すように首を横に振る。
「これは銀時の戦い。手出し無用よ」
「ですが───」
「解ってる!」
咲夜の言葉にレミリアは声を荒げた。
「まだ観えないのよ。下手に手を出せば銀時が不利になるかもしれない。今は待つのよ」
「……」
レミリアの能力───運命を操る程度の能力。
それは未来予知に近いものだ。
結果が解ってるなら、その過程に小石程度の何かを加えれば結果が大きく変わる。
運命操作。
強力に見えるが、決して万能ではない。
因果を超越するような強い意思を持つ者や、神に愛される者。
そういった運命はレミリアでも操れない。
平たく言えばご都合主義。
勝利という運命しか存在しないデウス・エクス・マキナ。
しかし───今この場は運命の平行線。
どっちが勝つかまだ解らない。
ならば己に出来る事は、天秤が傾いたらそれに一石加えるだけ。
吸血鬼と従者は、今はただ男の勝利を祈るだけだった。
疾走、跳躍、一閃。
虚を捉えた銀時の一撃は、妖夢の頭部を砕かんと振り下ろす。
だが妖夢は、その一撃を左手に握った白楼剣で防いだ。
まるで遠くにいる知人に手を上げて挨拶するかのような無造作な動きで。
「チィッ!」
渾身の一撃を防がれた銀時は舌打ちをしながら跳び退がる。
それを逃さぬとばかりに妖夢は追撃する。
「悪鬼畜生ヲ祓イ清メン!恐ミ恐ミモオォォォス!」
口から出るのは浄滅を願う祝詞。
だが今の妖夢からだとそれは呪いの詞だ。
祝福の為では断じてない。
迫り狂う斬撃を躱す、捌く、弾く。
豹変した妖夢に対して銀時はいたく冷静だった。
腐っても銀時は百戦錬磨。
奇人、狂人、超人を相手に戦って来た。
仲間の助けを借りて。
託された意志を剣に乗せて。
自身の魂で戦って来た。
己の
妖夢の一撃に重みが増した。
速度も上がった。溢れる殺意は魔人の域。
だが、その代償に技のキレが落ちた。
流麗だった技が、覚えたての技を力任せに振るう雑な動きになっていた。
ただの人なら脅威に映るだろう。
だが銀時からすれば、落ち着いて対処すれば問題ない。
彼からすれば脅威とは程遠い。
「どうした妖夢?動きが雑になってんぞ。狂化してから弱くなってんじゃねぇか?ランスロットを見習えよ。狂化しても技が冴えてたぜ」
余裕が出来てきたとみるや銀時は分かりやすい挑発をする。
向こうにこちらの言葉が伝わるか解らないが、物は試しだとばかりにニタリと笑う。
「アアァァァァァッ!!」
妖夢自身、目の前の
だが本能、魂が自分を舐めてると察し、さらに回転率を上げていく。
「オォン・ゼセイジャ・サンボリギャテイ・ソワカァ!ノウマク・サマンダ・バザラダン・センダマカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマンンッ!!」
紡がれる詞は薬師如来と不動明王の真言。
仏道における病祓いの如来と妖魔調伏の明王。
災害・病と妖怪は密接に関わっている。
それらを祓い降伏させんと握る力を強めて刃を振るう。
たが────
「うるせぇな。訳わかんねぇ事ピーチクパーチク。シュライバーの方がまだ自重してたわ!」
銀時はそれを知らぬとばかりに迎え撃つ。
繰り出された斬撃を最小限の動きで躱して妖夢の懐に入り込み───
「──────!?」
「腹に力入れろオラァァァァァッ!」
握り固めた左拳を妖夢の鳩尾に叩き込んだ。
「──────!」
衝撃で飛ばされた妖夢は銀時から三メートル程離れた距離で倒れ伏した。
よく飛んだもんだと銀時は拳を解きハラハラと払う。
「ここまでやっといて今更だけど、俺は女相手でも容赦しねぇぞ。立てコラ。まだ決着じゃねえだろ?」
「…………」
銀時の言葉で妖夢はゆらりと立ち上がる。
さしたるダメージは無く、動きを抑制したかと思えば否だ。
痛みなど感じない。それがどうしたと向き直る。
「スーパーアーマーでも付けてんのか?格ゲーだと真っ先に嫌われるぞそれ」
「フウゥゥゥゥ…」
幾ばくか落ち着いたようだが爆発する寸前なのは変わらない。
やれやれと銀時は得物を構えた。
「スペカはあと一枚。まぁ今のおめぇに理解出来てるか知んねぇけど───」
距離およそ四メートル。
すぐに飛びかかれる距離に両者は立つ。
「精々傷負わすくらいしてやらァァァァァァ!」
「ウオォォォォォォォォッ!」
雄叫びを上げて両者は接近する。
互いの得物が交差する刹那───
『!?』
その戦いに乱入する者が現れた。
突如足下から発生したのは光。
ゆらゆらと陽炎のような淡い光から現れたのは───
「蝶だと?」
淡い紫色の光を放つ蝶だ。
まるでこの世の物とは思えない、
幻想的なその有り様に銀時と妖夢は一時戦いを止めて跳び退いた。
一体誰がやったのか。
レミリアでも咲夜でも、ましてや妖夢でもない。
「………」
しかしなんと儚くも美しいのか、銀時はその光景に魅入った。
死に逝く霊が蝶の姿をとれば、こうも美しくなるのだろうかと、本気でそう思う程に。
「あの蝶は……」
レミリアもまたその光景を凝視していた。
魅入ったからでは無い。
この蝶を出した者を知っているからだ。
「幽霊達に無縁塚が騒がしいって報告を受けたから、寝る間を惜しんで来てみれば───」
やがて静寂した修羅場に響き渡る声音。
この場にいた者たちはその声の主に目を向ける。
「一体全体、この有り様は何かしら?」
青い死装束を着た雪のように儚げな女。
その女の事は───この場にいる者全て知っていた。
幽霊と死を操る能力ゆえに、冥界の管理を任された亡霊の女性。
冥界、白玉楼を治める者にして妖夢の主───西行寺幽々子。
彼女が無縁塚に降り立った。
「幽々子、あんたなんでここに!?」
「ここは無縁塚よ。墓地だから冥界とも繋がってるし、トコトコと歩いてきたわ」
手にした扇を口元に持っていきニコリと笑い、レミリアの疑問を優雅に返した。
「ふむ……」
やがて幽々子は、この場にいる者全てを見渡した。
銀時を、妖夢を、レミリアを、咲夜を。
一通り見渡した後、何度か頷いて妖夢を見た。
そのまま大きく息を吸い込んで───
「ずるいじゃない妖夢!こんな面白そうな事を私だけ除け者にして!」
『そっちかよォォォォォォォォッ!!』
幽々子のシャウトをさらに返したのは妖夢を除く三人のシャウト。
今言うべき事はソコじゃないという意味合いを込めたシャウトが響く。
「シリアスな流れをぶった斬って言うことはそれェ!?他に言う事あるでしょ!?」
「あら。妖夢その眼どうしたの?カラコンつけたのね」
「カラコンじゃないから!カラコンつけてあんな禍々しくなるなら、カラコンなんて存在しないわァァァァッ!」
冗談よ、と幽々子はレミリアのシャウトをさらりと流す。
やがて、幽々子の視線は銀時を捉えた。
「こんばんは銀時さん。ご機嫌いかが?」
「あんたの従者がめっちゃ怖くてやばいです。何とかしてください」
「そうは言ってもねぇ…。あの子なんかおかしいし。まぁ何時もの事だけど」
言われて銀時は妖夢を見る。
今の妖夢に先程の獰猛性は無く、静かに佇んでいた。
ある意味、幽々子が抑止力になっているのか。
狂化しても従者。
主の指示があるまで動かない忠犬を彷彿させた。
「このまま止めてくれるならこっちも嬉しいんだけどな」
「あら駄目よ。決闘してるんでしょ?途中で止めたら駄目よ」
「あんた…」
自分の従者が暴走しているのに無責任な事を言う幽々子に対し、
銀時は目つきを鋭くする。
幽々子はそれに対しても涼やかに流した。
「まあまあそんな顔しないで。あの子が言ってきた決闘何でしょう?途中で投げ出したらあの子の為にならないわ」
「……」
「ね?」
ウィンクしながら笑う幽々子に銀時は諦めたように溜め息をつく。
「いい性格してんなあんた」
「褒め言葉として受け取るわ。───ああそうだこれを」
言うや幽々子が手渡したのは赤い玉だ。
ビー玉サイズのそれは、一見すると飴玉にも見える。
「これは?」
「妖夢に効果がある魔法の玉よ。隙を見て口に放り込んじゃって」
そう言うと幽々子は踵を返してレミリアの下に歩き出す。
その際にぽつりと─────
「妖夢をお願い」
消え入りそうな声を銀時は聞いた。
「どういうつもり?」
隣に立つ幽々子に対してレミリアの第一声はそれだった。
幽々子は扇を口元に当てて隣に座る吸血鬼を見る。
「何がかしら?」
「何が、じゃないわよ。あなた今の状況が解ってんの?」
「妖夢が何者かに諭されて銀時さんと決闘して、不利になるや何かしらの事をされて暴走した事でしょう?」
的確に、かつ端的な状況を述べた幽々子にレミリアはますます解らなくなる。
ならば何故幽々子自身が止めようとしないのかと。
「止める事なら出来るわ。紫ならあれも解除出来るだろうし。けどそれじゃ駄目なのよ。あの子が発端の決闘で第三者が解決したら、自分の不甲斐なさから後悔するでしょう?だったら───」
「本人達で解決しろってか?ふざけないで。それで私のツレが死んだらどうする気よ」
視線だけで人を殺せそうな怒気を孕ませたレミリアに対し、幽々子はコロコロと笑う。
「随分ご執心ねぇ。そんなに彼がお気に入り?なら彼を信じてあげなさい。それが彼の力になるわよ」
「……」
上手くかわされた感も否めないが、これ以上言ってもしょうがないとレミリアは視線を戦場に移した。
二人はまだ動いていない。
だがいずれ戦いを再開するだろう。
銀時に勝利を願う───その瞬間。
「──────ッ!」
「お嬢様?」
不意に、目眩に襲われて目頭を抑えた。
咲夜も主の異変に声を掛ける。
「ヤバい…」
やがて顔を上げたレミリアが告げたのは、
「銀時が…負ける…」
最悪の未来への予知だった。
銀時は己の状態を、首を鳴らしながら確認する。
多少の疲労感があるが許容範囲。
行動に支障するキズを負ってない。
一つ目の魔石の効果はすでに切れている。
まだ一つ残っているから、ここぞと言う時に使えばよい。
問題無い。まだ動けると妖夢に向き合う。
「ちょっと邪魔が入ったが、仕切り直しだ。お前さんもまだ納得してねぇだろ?」
「……」
妖夢は何も言わない。
凶暴性はナリを潜め、精巧な人形のように無表情だ。
やがて静かに二刀を構え銀時と向き合う。
不気味な奴だ、と思いながらもそれに応じて腰を落として構える。
「いくぜぇッ!」
先手を取ったのは銀時。
一息で距離を詰め、妖夢に木刀を叩き込む。
「……」
それに対して妖夢は難無く防いだ。
しかし銀時の一撃は重い。
両の刀を交差させて拮抗する。
鍔迫り合いに持ちこんだ両者はジリジリと、互いの出方を窺う。
「フッ!」
鍔迫り合いの状態から銀時は突然後ろに向かって倒れ込み、
バック宙の要領で妖夢の下顎に蹴りを当てる。
体勢を崩して怯む隙に銀時はレッグポーチから取り出した白い玉を地面に投げた。
煙幕弾。
パチュリーから貰った魔導具の一つ。
白煙に包まれた辺り一帯は何も見えない。
その隙に隠れたのか。妖夢は一瞬だけ銀時を見失う。
「つぇあァァァァァァァッ!!」
白煙を切り裂き、雄叫びを上げながら飛びかかった銀時は、
妖夢の死角───背中に目掛けて得物を叩き込もうとする。
「シイィッ!」
妖夢はそれすらも読んでいたかのように、振り向き様に右手の楼観剣で防いだ。
「やろォッ!」
すかさず右足で蹴りを叩き込むがまたも防がれる。
舌打ちしながら後ろに飛び退がり妖夢と距離を取った。
"嫌に冷静じゃねぇか"
先程までの凶暴性が嘘のように静まり、冷静に攻撃に対処し始めた。
力業でねじ伏せて来るものかと思っていただけに若干拍子抜けする。
何かを境に変化があったとしか思えないこの沈着ぶりは───
”まさかあの女か?”
幽々子が現れてからとしか考えられない。
成る程腐っても従者かと、銀時は笑う。
「主を見止めて本来の実力出せたってか?いいぜ、今のお前がさっきより強いな」
「……」
お世辞と皮肉を混ぜ合わせた言葉を投げても妖夢は何も言わない。
今や冷徹な戦闘機械になった妖夢に言葉の揺さぶりは効かなかった。
やがて、懐から取り出したカードを高らかに上げる。
「あと一枚だ。精々楽しませろよ白髪の半分お化け」
「…………空観剣───」
そして妖夢は、
「『六根清浄斬』!」
不気味な笑みを浮かべながら発言した。
「ッ!?」
それはまるで意志を持つ疾風だった。
体捌きは旋風。斬撃は鎌鼬を彷彿とさせる。
宣言の後の妖夢は、先程までと全く違う様を見せた。
特出すべきはそのスピード。
さっきまでも十分速い。
しかし今のそれは段違いの疾さ。
「舐めんなァァァァ!!」
それでも銀時は妖夢に喰らいつく。
過去、銀時と死闘を演じた強敵達も同等、それ以上を繰り出してきた。
積み上げた経験と勘が辛うじて銀時を奮い立たせる。
「もう人間の動きじゃないわ…」
ぽつりと呟いた咲夜の声は、今の状況をそう表現した。
ラストスペルを発動した妖夢の動きが劇的に変化した。
自分が銀時と逆だったら果たしてああも相手出来るのだろうか。
「それってどっちが?妖夢は半分人間じゃないし、銀時さんの事?」
横で笑う幽々子に対して咲夜は苛立ちが顔に出始める。
しかし幽々子はお構いないように笑った。
「そんな顔しないで、美人が台無しよ。でもあのスペル、殆どルールから外れてるわよ。弾幕ごっこは殺し合いじゃないのに」
空観剣「六根清浄斬」
本来の仕様は、六体に分身した妖夢が囲うように追い詰める剣技。
それが今や、超越した身体能力で滅多斬る魔人の剣と化す。
単純故に強力だ。
しかし逆に言えばそれしか出来ない。
咲夜なら能力で時を止めるなり停滞させるなりして動きを封じればよい。
だが銀時は───
「あいつは能力なんて持ってないのよ。今は勘と経験で何とかなってるけど、いずれ消耗して……」
ふと、咲夜の中にある憶測が生まれる。
レミリアが見た運命とはもしやこれではないかと。
銀時は人間。
このまま剣戟を続ければ、いずれ消耗して隙が出来る。
そして……。
ちらりと咲夜はレミリアを見る。
「銀時が…負ける…死んじゃう…」
「……」
体を抱きしめながら顔を真っ青にブツブツと戦いを見ていた。
そんな主の姿を見た咲夜はどうしたらいいか解らなくなった。
「レミリア」
不意に、幽々子が口を開く。
「何が観えたか解らないけど、結果が解るなら運命を変えられる。そうでしょう?」
「──────」
納得出来ないなら変えてしまえと幽々子は言う。
それを聞いたレミリアの眼が紅く輝く。
やがて目を瞑る事数瞬───
再び目を開けたレミリアは深く息を吐き出して咲夜に向き合った。
「咲夜、協力して。このふざけた
打ち合う剣戟。
得物をぶつける度に衝撃が身体を走り、筋肉が悲鳴を上げる。
荒れ狂う死の風になった妖夢は銀時の命を断たんと迫る。
「ヅゥッ!」
骨に響くほど打ち合う。
神経が擦り切れるほど捌く。
筋肉が断絶するほど躱した。
少しずつ、だが確実に銀時の体力を削り、その身体に刃が刻まれる。
「うおォォォォォッ!!」
それでも銀時は得物を振るう。
傷にまみれても、男は雄々しく戦う。
「ハアァァァァァァァァ!!」
振るわれる右胴への横一閃。
奇しくも妖夢も同じ剣閃だ。
二刀が衝突した刹那───銀時の愛刀、洞爺湖が粉々に砕け散った。
「…………!」
デタラメな衝撃を受け続けた故に蓄積したダメージが祟り、粉々に砕け散った愛刀。
破片が宙を舞う。
妖夢は返す力で銀時を斬り捨てようと楼観剣を疾らせる。
「!?」
「まだ終わっちゃいねぇぞ…!」
だが銀時はその左手で楼観剣を受け止めた。
握った手から血が流れる。
それすらも意に返さず、右手に持った洞爺湖の残骸を逆手に持ち替え、妖夢の左肩に突き刺した。
「──────!?」
迸る鮮血。
苦悶の表情を浮かべながらも妖夢は銀時に頭突きを喰らわせる。
「グアッ!?」
脳を揺らす衝撃が走り、思わず銀時は仰け反る。
妖夢は左肩の傷など知らぬとばかりに───
「ハァッ!」
白楼剣の渾身の一閃を銀時に叩きつけた。
「ガッ───ハ……!」
銀時の身体から鮮血が噴き出す。
しかし勢いは最初だけだ。
後からはドクドクと血が流れた。
幸運と呼べることは、白楼剣の切れ味が殆ど無いことだろう。
白楼剣は幽霊を斬る為の刀。本来は儀礼用の用いる霊刀。
それが辛うじて致命傷を免れた。
「トッテンパラリノプウ……」
昔話を締めくくる幕引きの言葉と共に、楼観剣の一閃が銀時の首を襲う。
避けられない。
蓄積したダメージが反応を遅らせる。
柄にもなく銀時は己の死を覚悟した。
生と死の刹那────横から乱入した閃光が両者の間に降り注いだ。
「──────!?」
驚きはどちらのモノだったか。
土煙を上げながら飛来した閃光が銀時の首を断つ処刑刀の動きを止めた。
只ならぬ気配を感じたのか、妖夢は後ろに跳び退がる。
土煙が晴れ、現れたのは、槍だ。
紅い。ただ血のように紅く輝く。
蝙蝠の翼を思わせる矛先は、鮮血を浴びた夜の鳥を思わせた。
「こいつは………」
銀時は知っている。
この槍を、そして持ち主を。
戯れに見せて貰った吸血鬼の魔槍。
神槍──スピア・ザ・グングニル。
北欧神話の主神が持つ神の槍の名を冠した、勝利を約束された運命の槍。
「わ~しまった~白熱過ぎてつい槍を落としちゃったわ~」
「お嬢様、落としたってレベルじゃありませんよね?確実に投げましたよ」
棒がかった声の方を見ると、
槍を投げた後であろうモーションの咲夜と腕を組みながら仁王立ちのレミリアの姿があった。
レミリアがグングニルを造り、それを咲夜が投擲したというところか。
それを見た銀時は、
「あのバカ共め…」
余計な事しやがってと悪態突きながらも笑った。
「決闘に文字通り横槍入れやがって…」
「だから落としたって言ってるじゃない。それはもう戦場に落ちた物よ。好きに使うといいわ」
厚顔にニヤリと笑う吸血鬼の少女。
「アァァァァァァァァッッ!!!」
その姿に猛り狂う声を上げたのは妖夢だ。
あとほんの刹那で銀時の首を落とせたのを邪魔された憤りか。
レミリアの立つ場所に斬撃を放つ。
「バ───止めろ!」
止める間もなく放たれた一閃がレミリア達のいる場所に直撃する。
土煙が飛び散る。視界は不良。
ロクに動けないレミリアには回避出来ない。
「レミリアアァァァァァァァァッ!!」
銀時の叫びが響く。
やがて一陣の風が吹き、土煙が晴れた。
「は…?」
いない。
レミリアの姿が無い。
それどころか咲夜と幽々子の姿も無い。
あるのは妖夢の斬撃痕だけ。
三人の姿は形もなく消えた。
「こっちよ銀時!」
声のする方に向けて銀時は横を向く。
その先には───レミリアを抱えた咲夜に抱きつく幽々子の姿があった。
「ていうか何であなたもついてんのよ!?」
「いやねぇ、斬撃が飛んで来たとき「あ、こいつ時止めるわね」と思って抱きついただけよ」
「ちゃっかり便乗しないでよ!重い苦しい!」
「まぁ酷い。これでも平均はキープしてるわよ」
「いや亡霊の平均体重って何ぃッ!?」
恐らく時間を止めて回避したのだろう。
迫り来る殺の斬撃を刹那に見極めた咲夜の技量に銀時は───
「ハハ…」
笑う。
乾いた声で笑う。
ああやっぱりおもしれぇわと笑った。
「ウゥゥゥゥゥ…!」
そのやり取りにうなり声を漏らした妖夢は、
何をしている疾く去ねとレミリア達に歩を進めようとした。
だが───
「おい」
突如横合いから殴りつけられた衝撃で妖夢は紙切れの如く飛ばされた。
レミリア達に関心が向いていたからか回避出来なかったが、
ゆらりと立ち上がり、自分を殴った男を見る。
「相手間違えてんじゃねぇぞ。お前の相手は俺だろ」
振り切った拳を突き出して睨む男の目は、見る者を震え上がらせる程に冷ややか。
怒りと殺意と呆れをごちゃごちゃにかき混ぜた鬼の眼。
「いいぜ。テメエが望むなら、戦のフルコース───」
突き刺さった魔槍を引き抜き、腰を低く構える。
「特と味わえよ。ハラぁ膨れても無理矢理に喰わせてやるよ」
鋭く尖らせる眼は、獲物を狙う鬼のソレ。
神楽の開始から早一刻。
終幕への拍子は奏でられた。
グダグダ座談会 明治剣客浪漫譚
銀八「いや~何とか9月中に投稿出来たわ」
アリス「いやいくら何でも遅くない?」
早苗「どうもシリアスやバトル描写は書ける時と書けない時の差が激しいみたいですよ」
レミリア「厨二にならないととても無理よね。構想は出来ても書いてるうちにあれ書きたいこれ言わせたいが出てくるから時間がかかるのよ」
銀八「それに加えて追加が入ったからな」
アリス「追加ってまさか…」
銀八「白神さんから詠唱考えて欲しいって」
アリス「またぁ!?」
銀八「どうも設定上どうしても必要なやつが出てきたんだよ。まぁ漠然と構想は出来てるからさ、後は原典探して詠唱を考えるだけさ」
早苗「あと代筆も頼まれてましたよね?」
レミリア「今流行りのゴーストライターね」
銀八「この間に設定と構想を練ってたみたいだな。まだ本編で出してない銀魂キャラの練習にもなったしよかったと思うよ」
アリス「ポジティブねぇ」
早苗「タグも色々編集してましたよね?」
レミリア「このSF人情バトルオペラって何?」
銀八「作者のDies好きとスペルカードルールの認識だよ」
アリス「どういう事?」
銀八「他の二次創作見てるとさ、スペカを単なる必殺技として使ってるとこが多いのよ。いや間違っちゃねぇけどさ。スペルカードルールの本質は、自分達と周りを楽しむスポーツだと思うんだよ。プロレスみたいなショーとも言ってもいい。芝居掛かった振る舞いとか台詞回しとか、演劇みたいに楽しむ事も重要だと思う。だからこのタグを思いついたんだよね」
レミリア「本気でやる遊びって事ね。しかしよく思いついたわね」
銀八「銀魂要素も入れたいってふと思いついたんだ。白神さん、こっち来たらこのタグ使いません?なかなかイケると思いますよこれ」
アリス「そういうのはメールでやり取りしなさいよ。話戻るけど本編の描写ってどうして書いてるの?」
銀八「基本脳髄の赴くままに。つまったら一旦置いて他の漫画やゲームしてネタ集めたり、FateやDiesやKKKやり直して描写を参考にしたりしてる。あと最近発見した方法があるんだ」
早苗「何ですか?」
銀八「先日朝早いのに前日に昼寝して結局夜通しで起きた時があったんだ」
アリス「いやバカでしょあんた」
銀八「眠いの我慢して用事を済ませてさぁ早く帰って寝ようとしたときに…降りてきたよ」
アリス「…何が?」
銀八「厨二の神が」
レミリア「厨二神…正田卿か!」
アリス「いや生きてるからあの人!」
銀八「いわゆるトランス状態だな。夜のテンションに近い状態のお陰で地の文の厨二回しが浮かんで来るんだよ。頭の中でニートがダンスしててさ、思いつくままにメモしといた。次回で使うから楽しみにしとけよ」
早苗「そろそろ終わりですかね」
銀八「最近質問こねぇから銀八先生とパッチェ先生が休みがちだなぁ。何か聞きたい事があれば随時どうぞ。それでは皆さん。アウフ・ヴィーダーゼーン!」
三人「ジークハイル・ヴィクトーリア!」
アリス「…だいぶ恒例化してきたわねこれ…」
銀八「名物と思えばいいんだよ」