東方万事屋録 The Fantasm of Silver soul 作:曙光
ゴジラVSビオランテ 権藤吾郎
銀時「風邪は飲み薬より座薬が効くぜ、ウドンゲさん」
鈴仙「だから座薬って言うなァァッ!!」
晴天に包まれた幻想郷。
永遠亭から退院してからの数日間は、滞っていた仕事を片付ける日々だった。
飲食店の臨時店員の要請はアリス達に任せることは出来るが、修理関係は俺がいないとならない。
しばらくは依頼を平行しつつ、溜まった依頼を消化していった。
今日は依頼も特にない。
万事屋でみんなとダベる昼下がりだ。
「なんかあれだな、久しぶりに万事屋に来た気がするわ」
「入院してた事も含めて久々ね」
「おかげで仕事が溜まっていい迷惑よ」
この家にいるのはアリスと早苗とレミリアと咲夜と俺の五人。
文は取材があるからといない。
まぁ基本情報屋だからいないことが多いけど。
用があったらこっちから呼ぶし。
茶を飲みつつ会話に花咲かす。
実に穏やかだ。
このまま何もなければいいけどな。
ドンドンドン!
ふと戸をたたく音。依頼が来たか?
「あ、私が出ますね」
そういって早苗が立ち上がり玄関に向かう。
「押し売りとかなら、朝日のように爽やかに追い返せよ」
「は~い」
「どんな追い返し方?」
アリスのツッコミを聞くと帰ってきた感が強くなるな。
玄関に向かう早苗を見送りながら咲夜の淹れた茶を啜っていると…。
「あれ?あなたは…」
「げっ!?」
なんか玄関が騒がしくなる。
なんだと思って目を向けると、早苗がなにやら引っ張ってきている。
「依頼があるから来たんでしょう?早く入りなさい」
「痛い痛い!引っ張らないでよ!」
やがて連れてきたのは水色の髪をした女の子。
あれ?こいつ見たことあんぞ。
「ど~も…依頼に来た多々良小傘と申します…」
「え~と多々良小傘さんね、…あんた前に会ったことあるよな?神社に行ったときに」
確か脅かしに来てレミリアにでこピンかまされて泣いていたよな。
その後は知らないけど。
「あ~…そういえばそうね。存在が薄くて忘れてたわ」
「ひどい!表は蕎麦屋って言ってぶっ飛ばしたのに!?」
出された茶を飲みながら吸血鬼に文句言うあたり度胸はある方だろうな。
確かこいつ付喪神だったよな?
"器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑かす、これを付喪神と号すと言えり"
長く使われた道具が心を持って変化した姿。
百年使われれば神聖さが宿り神様として扱われる事もあるらしいが、九十九年以内に捨てられたりすれば、中途半端に妖怪化して持ち主に復讐するとか。
百引く一で九十九。後一歩の所で神様になれなかった存在。
ゆえに九十九神とも書くそうだ。
……だいぶ妖怪の知識が付いてきたな。
けどパチュリーとレミリアがうるせえしなぁ。
まぁ覚えて損は無いと割り切ってるけど。
「.....」
小傘を観察する。
左目が赤い、いわゆるオッドアイか。
普通に女の子な印象があるな。それより目を引くのが隣に立てかけた傘。
紫色の、これまたスタンダートな化け傘だ。
おそらくこれが妖怪としての部分だろう。
赤い一つ目がこっちを見る。
目潰ししたら効くかな?
やってみたいが今はやめとこう。
「で、依頼はなんだ?」
「えと...驚かし方について相談があってきたの」
「...脅かし方ぁ?」
いかにも妖怪らしい珍妙な依頼だな。
周りを見ると、なに言ってんだこいつ的な顔をしてるし。
「わたしたち妖怪の中には、人の心を食べるものがいるの。わたしの場合は恐怖心、人を驚かすことがわたしの食事なのよ。でも最近驚く人間も少なくなってきてひもじい思いを過ごしてるの。ここは妖怪でも相談に乗ってくれるって聞いたから来たのよ」
「なるほどね。依頼は受けるけど代金は?現物支給も受け付けるけど」
「ああそれなら大丈夫」
言ってポケットから何かを出した。
緑色の宝石だ。おそらく翡翠かエメラルドだろう。
石ころ程度の大きさのそれは、淡い緑色に輝いている。
「わたしの宝物よ。山で見つけたものだから質はいいと思う」
「よしわかった、アリス鑑定頼むわ」
「はいはい」
言ってアリスは宝石を手に取り観察を始める。
この手の鑑定は魔法使いが専門なので偽物を掴まされることは無いだろう。
すると、早苗がボソボソと耳打ちをして来る。
「いいんですか銀さん、妖怪の依頼を受けちゃって」
「何言ってんだよ、依頼に来て料金払えばみなお客様だよ。人も妖怪も関係ありゃしねえさ」
「むう…」
早苗は不満そうに唇を尖らせた。
巫女として妖怪退治したいのだろう。
確か前に田畑を荒らす妖怪の退治を依頼された時、やたら喜々として退治してたな。
こいつ妖怪相手だとSの気があるのだろうか。
レミリアをおちょくるのも、もしやそれだからか?
「鑑定終了。中々質の良い翡翠ね」
「よし分かった。依頼は引き受けよう」
「ありがとうございます!」
そういって深々と頭を下げる小傘。
まあちゃっちゃと終わらせますか。
一度外に出た俺たちは、まず小傘の脅かし方を見てみることにした。
ついた場所は人里から命蓮寺っつう寺まで続く街道だ。
「この通りは人が多い。まずはお前さんのやり方を見せてもらうぞ」
「わかったわ」
「つまんなかったらお前の本体に目潰し喰らわすからな」
「なにそれ怖い!」
言われて小傘は驚かす準備をしだす。
俺達は畦道に隠れて様子を伺うことにした。
「……いまさらだけどさ、ちょっと無謀じゃないのこの依頼」
隠れて様子を伺っていると、隣にいたアリスがそう切り出す。
「なに言ってんだよ。さっきの翡翠を見たろ?妖怪も結構貯めこんでんだ。この依頼が成功して、妖怪からの依頼も増えれば儲かる事間違いないさ」
「その依頼が成功する気が無いんだけど」
スッと指を示したほうを見る。
そこには腰掛けるくらいの大きさの岩に身を潜める小傘の姿があった。
「...え?あいつ、あれで隠れてるつもりか?」
本体の傘が岩から出ていて遠目から見ても誰かいることが明白だぞ。
しかもあいつそれに気づいていない。
馬鹿だろあいつ…。
「あっ、来ましたよ」
向こうのほうから笑い声が聞こえる。
見ると親子連れの姿があった。こっちに向かってくる。
しかし小傘は、前の方に集中していて後ろの方に気付いていなかった。
...いや気付けよ!獲物が来てんのに何気付いてねぇんだよ!
集中すんのはいいけど後方にも気を配れぇぇぇ!
「あ!小傘ちゃんこんにちは~」
「あら小傘ちゃん。こんなとこでお仕事?」
ほら声かけられた!おいどうすんだよもう驚かす空気じゃねえぞ!
「あっこんにちは~」
律儀に挨拶するなアアアアアッ!!
「ねぇ小傘ちゃんあれやってよ」
「しょうがないな~。うらめしや~!」
「わ~い!」
「あらよかったわね。小傘ちゃんもありがとうね、これ飴玉よ」
「わあ、ありがとうございます」
「ばいば~い!」
笑顔で手を振る親子連れに小傘は手を振り返す。
俺たちは黙って立ち上がり小傘のもとに向かう。
「あっどう?わたしの実力は」
「早苗、押さえてろ」
「はい」
「え?いやなにするの!?」
「そいやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁ!わたしの本体がぁぁぁぁぁぁぁ!」
本体目掛けた目潰しに小傘の叫びが青空に響き渡った。
「お前さ、舐めてるだろ?驚かしたいつってたのに何普通に接してんだよ」
「妖怪としてのプライドはどこに行ったのかしら?それだからいつまでたっても驚かす(笑)なのよ」
「うう…」
正座する小傘に俺たちは取り囲む。
小傘は何も言い返せずにただただ俯いた。
「聞くところによると、子供たちには大うけだそうよ。大人たちからだと大して驚かないけど拗ねるからってわざと驚いた振りしてくれるんだって」
「舐められてるレベルじゃねえだろそれ!もうおまえさ、マスコット妖怪な立ち位置で行ってみたら?そのほうが絶対いいって」
「でもわたしは、妖怪として人を驚かせたいのよ!」
きっぱりと言う。
こいつの意思は固いようだ。
しかしどうするか───
「ならまずは姿を変えてみたらどうかしら?」
ここで口を開いたのは咲夜だ。
我に策ありと自信満々に笑う。
「この子ははっきり言って驚かすには向いていない姿よ。小柄でオッドアイ。嗜虐心をそそる雰囲気。いじめたくなる子犬系といってもいいかしら」
「ああ分かりますね。子傘さんは無意味にいじめたくなりますもの。パッションリップみたいに」
「そんなあんたたちはメルトリリスか」
確かにこいつは、ついついいじめたくなる感じがしてならない。
まずは形から変えてみようって訳か。
「手持ちの化粧道具でいけるかしら…。少し待っててね。すぐに済ますから」
言って咲夜は小傘の手を引いて茂みの方に向かう。
大丈夫かと思っていたら───
「お待たせ」
「え?もう終わったのか?」
「時間止めてる間に終わらせたわ」
さすが。時間停止って便利だな。
「さあ出てきていいわよ」
言うや茂みから出てきた小傘のその顔は───
「ふ───ふふふふ、はあ───はっはっはっはっは!お前を蝋人形にしてやろうかあああ!」
「なんで閣下ああああああああ!?」
真っ白い顔に悪魔的メイクが施してあった。
その様で高らかに笑う姿は、なるほどインパクトは抜群だ。
ちなみにさっきツッコんだのはアリスだからな。
「よりにもよってなんで閣下!?」
「いきなり出てきて驚かすならこれがいいかなって思ったの」
「いや確かにインパクトはでかいけど、もう唐傘お化けの要素が無いじゃん!洋風ホラーのピエロじゃん!」
「いやいいと思うぜこれ」
アリスは文句を言うが、要はインパクト勝負何だろう?
ならコレは最良だと、早苗とレミリアが頷いた。
「姿を見た瞬間退治されても文句は言えないデザインですね」
「一気に十万歳は年取ったように見えるわ。これなら妖怪から大道芸人になってもいけるわね」
「じゃあ最初から芸人でいけばいいじゃん!ちょっとあんたも何か言ったら?アイデンティティーが崩壊してるわよ」
「気が溢れる…昂ぶる…ふははははは!人間どもよ、恐怖に震えるがいいわ!」
「ピエロどころかブロリーだった!?」
さて、準備は出来た。
俺たちは再び隠れて様子を伺う事にする。
小傘は木陰に身を潜めて待機する。
俺からのアドバイスで出ていくまで傘は閉じておけを守ってくれてた。
「次が来ましたよ」
向こうから誰か来る。
赤いマントを口元まで隠した奇妙な女だ。
最近ある法則を見つけたんだが、ああいう珍妙な恰好をしたやつは大抵が妖怪だということだ。
自己主張が激しいのかねぇ。
「あいつは…」
咲夜が何か言いかけたが遅い。
小傘が隠れている所まであと少し。
三、二、一歩───
「お前を驚かせてやろうかああああ!!」
傘を開きながら木陰から飛び出し、あらんかぎりの声を上げる。
もうすでに驚かせてるけどな。
赤い女は一瞬強張った顔をすると───どさりと何かが落ちる音がした。
一瞬理解できなかった。倒れた音では無い。
その女の首が───まるで熟し過ぎた果実のように事も無げに落ちた音だった。
ごろごろ転がる首。
それを間近に見た小傘は、バタンと後ろ向きに倒れこんだ。
「あ~びっくりした。いきなりだったから焦ったわ」
首が無くなった女は、信じられないことに体だけが動き、落ちた首をひょいと拾い上げ元の位置に戻した。
「この子、傘お化けよね?なんか雰囲気が違うけどイメチェンしたのかな?まあいいか」
小傘に一瞥くれると何事もなかったかのように去っていく赤い女。
俺たちはその背を見送りながら───
「ええええええ!?何あれ何なのアレ!?首取れても平気な顔してたぞ!?」
「あ……ありのまま、今起こった事を話すわ!小傘が飛び出した瞬間相手の首が転げ落ちて、小傘が倒れたのを無視して帰っていった!なにを言ってるのか私にもわからないわ…マミるだとか紅葉卸しなんてちゃちなもんじゃ断じて無い!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……」
呆気にとられ過ぎて動揺しているのか、
俺たちは口々に訳分からない事を口走る。
いきなり首が取れれば誰だってこうなるハズだ。
「落ち着きなさい。あれ、ろくろ首よ」
しかし一番冷静なのは咲夜だった。
窘めるようにみんなを落ち着かせた。
「ろくろ首って、今のが?」
「そうよ。名前は赤蛮奇。道具が暴れる異変に乗じて暴れ出した所を私が退治したのよ。頭だけ飛ばすから飛頭蛮だけど、首を伸ばすタイプと混同されやすいそうね」
ああ、なんか聞いた事あるな。
やることが同じだと一緒にされやすい妖怪って。
キャラが立ってねぇのかね。妖怪も大変だな。
「それよりもさ、小傘はいいの?」
『あ…』
「いやさ、相手が悪かったんだよ。まさか首を落とすなんて返されたら誰だって驚くよ?お前はよくやったよ」
あの後小傘を起こしたが、脅かしたのに脅かし返されたと塞ぎ込んでしまった。
今は何とか宥めている所だ。
「相手さえ間違えなきゃ完璧よ。もっと自信を持ちなさい」
「………本当に?」
あ、ちょっと持ち直した。
しかしメイクのせいでちょっと怖ぇよ。
「よし!なら善は急げだ!行ってこい唐傘閣下!」
「どんな閣下!?」
バンと背中を押して小傘を奮い立たせると、そのまま最初の隠れ場所に向かって行く。
そうして待つこと数分後───
「来たわ───ってあいつは!?」
親指と人差し指で輪を作って遠くを見ていたアリスが素っ頓狂な声を上げる。
因みに指で輪を作っていたのは遠見の魔法らしい。
何に驚いているのか俺も見てみると、日傘をさした女が歩いてくる。
ショートカットの緑髪をした綺麗な姉ちゃんだが、俺はあの女を知っている。
春の宴会でレミリアとの挨拶周りの時にその姿を見かけた。
声を掛けようとしたらレミリアが、
「関わると厄介よ」
そう言ってスルーする事になった。
「うわぁ、最悪ね。よりにもよってアイツなんてさ…」
「とりあえず、骨を拾う準備はしときましょうか?」
「まだ死んだなんて決まってないでしょう!」
「?」
なんでこんなに慌ててるのか分からん。
確かに服装から妖怪かもしれねぇが、慌てるようなもんじゃ無いだろう。
「ああ駄目だ…小傘さん気付いてないですよ」
うずくまっているので姿は見えていないのだろう。
だが足音で誰か来ると分かっているだろうが、
みんなの反応からヤバい奴みたいだし、大丈夫だろうか───
小傘が隠れている岩場まであと三歩、二歩、一歩。
射程距離に踏み込んだ刹那───
「驚けぇぇぇぇぇぇぇ!!」
飛び出した小傘が有らん限りの声を上げる。
だが───
「ッ!?」
不意を付かれたように目を開いた女が、反射的に出しただろうチョップを小傘の叩き込んだ。
「ぐふぅッ!?」
脳天に直撃したチョップに呻きながら倒れる小傘。
女の方は、しまったやりすぎたといった具合に顔をしかめて立ち尽くしていた。
「あ~あ、言わんこっちゃない…」
こめかみに指を当てながらレミリアは嘆息する。
死んではいないだろうが、おそらく気絶するだけだろう。
しかし───
「ところでさ、あの女だれよ?なんかえらく警戒してたみたいだけど」
「知らないの?あいつは───」
「そこに隠れてる奴、出てきなさい」
アリスの説明の前に向こうが隠れている俺たちに声を掛ける。
気付かれたか。まぁ結構デカい声で話してたし。
「………」
仕方ないので茂みから立ち上がる。
すると女は、あらと驚いたように声を漏らした。
「これは誰かと思えば、今や飛ぶ鳥勢いのお侍さんではないかしら」
向こうは親しげに話しかけてくるが、生憎とこっちは名前すら知らない。
正直会話に困るけどな。
「どーも、坂田銀時で~す。姉ちゃん名前は?」
「四季のフラワーマスターこと風見幽香よ。以後お見知り置きを」
優雅に会釈したその姿に、まるでお嬢様だなと思いながらこちらも会釈する。
するとレミリア、アリス、早苗の三人が、まるで俺を守る形に立ちふさがった。
「噂通り、美人を侍らして何でも屋をやっているそうね。しかも女に守られる形になって恥ずかしく無いのかしら?それでよく侍を名乗れるわね」
「──────」
なんかいきなりまくし立てて来たぞ。
しかもかなり神経を逆撫でるような感じで。
直感だが、こいつもSの類だろう。
「銀時、こいつは風見幽香。幻想郷の古参妖怪で、最も危険な奴よ」
レミリアが説明しなくても、大体危険なのは承知している。
笑顔だが、その顔の下は暴力的な雰囲気が見え隠れしている。
「似たような奴をよ~く知ってるよ。既知感ってやつだ」
「あら、その人と私はそんなに似てる?」
「笑顔が殺しの作法とか言ってるアホなやつだよ」
「ふ~ん、会ってみたいなぁ。ところでさ、この間の決闘、見たわよ」
「はあ?」
妖夢との決闘を見ていた?
確かにあの時は周りに気を使う暇が無かったから気付かないだけかもしれないが、レミリアや幽ヶ子辺りが気付いていたら何か言ってた筈だぞ。
見られていたとしたら妖精か下級妖怪くらいじゃないのか?
「あの半人がそこの吸血鬼を攫う時に近くにいたの。あんなショボい手にまんまと引っかかる様は滑稽だったわ」
「………」
おちょくられたレミリアの歯を食いしばる音が聞こえる。
よほど悔しいだろうが、怒りに任せて飛びかからない辺りまだ自制は利いてるだろうな。
「それで姿を隠してこっそり観戦してたのよ。……坂田銀時、あなたは素晴らしいわ。強敵相手に真っ向から立ち向かう勇気、技量と経験による戦法。口だけがデカい人里の退治屋なんかと比べ物にならないその度胸。まさしく益荒男のそれよ」
「お褒めに預かり光栄だな」
「スペルカードルールも良いけど、やっぱりわたしは血湧き肉踊る肉弾戦が好みね。私、強い人は好きよ?」
ニヤリと、妖しく笑う様に背筋がゾクリと逆立つ。
あ~やべぇ、逃げてぇなぁ。
「決闘を見ていたのは私だけじゃないわ。妖精、妖怪達もあなたの戦いぶりを見ていた。これから、名を上げようと挑戦して来る奴もいるかもね」
「──────」
クスリと笑う。
我ながら面倒くさいことに巻き込まれたなと、ボリボリ頭を掻く。
「今日は花壇の世話が帰るわ。用が合ったら太陽の畑にいらっしゃい」
───優しく殺してあげるから。
そう囁いてスッと踵を返した。
しかしパタと歩くのを止め、倒れている小傘を指差した。
「ところで、この子の変貌はあなたちの仕業?」
「ウチのメイドさんが魔改造した結果だよ」
横を見ると、私がやりましたと言いたげなドヤ顔をして親指を立てる咲夜の姿。
少しウザぇ…。
それを聞いてああそうと納得したのか、そのまま帰っていった。
「──────あ~。緊張した」
「だから言ったでしょう?関わったら厄介だって」
立ち去る背中を見送り、見えなくなるとドッと肩の力が抜ける。
ようやく肩の荷が降りたように楽になると、レミリアの言葉を聞きながらコキコキと首を回す。
やっぱ幻想郷ってヤバい奴がいるよなぁ。
「あいつは人をおちょくるのが大好きなサディストよ。通称アルティメット・サディスティック・クリーチャーなんて呼ばれてるわ」
「知り合いのドS王子とどっちが強いかねぇ」
「どんな王子?ちょっと大丈夫なの?目を付けられたからいつ戦りあうか分からないわよ」
「そん時はそん時だ」
アリスは心配しているが、要は太陽の畑ってとこに近づかなきゃいいんだろ?
余裕余裕。
「幽香もだけど、あんたに挑戦しようとする有象無象が気になるわね。あんたは肉体面はカンストしてるもんだから、これからは策を練れるようにならないと」
「今やってる
面倒くさいなぁと空を見る。
憎たらしいほど澄み切った青空。
気分が晴れないまま悶々としていると、
「……ところで小傘はいいの?」
「あ………」
咲夜の一言で俺たちは本来の目的を思い出した。
「もう駄目だァァァァァァァ!何やっても失敗ばかり!もうわたしの二次創作における不幸ポジションは覆せないんだァァァァァァァ!!」
頭を抱えながら自分の不遇っぷりに嘆く小傘。
哀れ過ぎて声が掛けられない。
どうしたもんかと悩んでいると───
「………」
早苗が一歩進んで小傘を抱きかかえ、そのまま立ち上がらせた。
「な、何よ───」
狼狽える小傘の横っ面を───
「真に脅かすなら!」
「ブッ!?」
腰の入った平手打ちを叩き込み、
「壊せぇぇぇぇぇぇッ!!」
「グフゥッ!?」
そのままエルボーを叩き込んだァァァァァ!?
理由あるかもしれない暴力が小傘を襲う!
「何を……」
「あなたはそれでいいんですか?」
頬を抑えて抗議しようとする小傘だが、早苗はそれを腰に手を当てながら制する。
「一度や二度の失敗で諦めるの?あなたはそれ以上の失敗を経験してきたでしょう?ならまだ行ける筈ですよ!たった一つの成功の為に頑張れと、
……何これ?
なんでこんな熱い展開になってんのねぇ?
「───そうよ、そうだわ!わたしはまだやれる!よぉしやるわよォォ!」
なんか復活したぞ。
単純ってレベルじゃねぇぞオイ。
意気揚々と再び隠れ場所に戻る小傘。
それを見送りながら、俺たちも元の場所に戻っていく。
「珍しいわね。あんたが妖怪相手に激励するなんて。何?心変わり?」
「………そんなんじゃありませんよ」
アリスの問いに答える早苗。
だが、肩がフルフルと震えていた。
「やはり小傘さんはいじめてこそ真価を発揮しますね。ここで諦めて貰っては張り合いがなくなります。だから頑張って貰わないと……フフフ」
黒い笑みを浮かべる早苗。
駄目だこいつ……もう何とか出来る領域じゃねぇ…。
早苗の笑みに引きつつ、さて次はと遠くを見る。
『あ……』
その姿が見えた瞬間、俺達は祈った。
何をって?……………小傘の無事をだよ。
息を殺しながら肺の中の空気を吐き出す。
たったそれだけだが、多々良小傘の精神を落ち着けるのに十分だった。
目を閉じて目標の足音を聞く。
低級とは言え彼女も妖怪。人間よりは耳は良い。
余計な情報を遮断する。
誰が来るか、ギャンブル的な要素も込めて全霊を足音に集中する。
ザッザッ。
歩幅から女性。
真っ直ぐ近付いてくる。
射程距離まで後少し。
三歩、二歩、一歩。
今だとばかりに小傘は飛び出した。
「うぉぉぉぉぉッ!驚けェェェェェ!!」
完全に虚を狙ったタイミング、速度、インパクト。
これで驚かないヤツはいないと、今までの経験がそう告げていた。
そう、わたしは生まれ変わった。
新たな姿を手に入れて、幻想郷を一世風靡させる!
多々良小傘の新しい伝説が─────始まり掛けたがそれはすぐに幕を閉じた。
「………あれ?」
ガシリと掴まれる頭。
前が見えない小傘からは誰の仕業か分からない。
開いた指から誰がやったのかと見る。
「──────ッ!」
そして、その顔を見た瞬間に絶望した。
「……わぁほんと、驚いたわ」
楽園の素敵な巫女──博麗霊夢。
彼女が小傘を掴みながら、死神のようにぞっとする笑みを浮かべていた。
「ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
昼下がりの幻想郷。
多々良小傘の悲鳴は、遥か上空まで響き渡った。
"報告書"
依頼者:多々良小傘
依頼内容:人の驚かし方の研究に協力して欲しい。
報酬:翡翠の石
街道で実行。
十六夜咲夜のメイクで閣下となってから三度機会が来る。
一度目は赤蛮奇に驚かし返され気絶。
二度目は風見幽香に出会い頭に叩き倒され気絶。(この時に風見幽香が坂田銀時に興味を覚えられ、他の妖怪が銀時に挑戦しようとしている事を知る)
三度目は、偶然通りかかった博麗霊夢に叩きのめされ満身創痍。
回収後手当てをすると、穏やかな顔をしながら、
「本当の恐怖って、希望から絶望に落ちる時なんだね……」
と悟るように呟いた。
何かヒントを得たのか、あの閣下メイクは辞め、これからは新たな驚かし方を研究すると言って帰って行く。
報酬の翡翠は質屋に出し、金額としては二十円と五十銭(外の価値に直すと二十万五千円)
予想以上の成果だったので、内五円ほどを飲み会に使用。
なので実質的な報酬は十五円と五銭。
会計のアリスは不満げだったが置いておこう。
執筆者 書記担当 東風谷早苗。
グダグダ座談会 Amantes Amentes
銀八「え~、今年最後という訳で、クリスマスという名の酒盛りを開始します」
レミリア「随分早い投稿ね」
銀八「前回と併用しながら書いてたからな。続き物だと長くなるから、行き詰まったら書いてたのさ。よし、投稿日がクリスマスだし、あれで始めるぞ。それでは皆さん」
四人「フローエ・ヴァイナハテン!」
銀八「それにしてもさ、もう今年も終わりだな~。早かったよ。コレ書き始めたの四月だから半年以上続いてたんだな~」
アリス「当初の予定は周一ペースだったのにいつの間にか月一ペースになってたわよね」
早苗「そりゃ、リアルの予定がありますからね。ペースが狂うのは仕方がないですよ」
銀八「一つ言えることはな、何年掛かっても絶対に完結させるぞ」
レミリア「おお、大きく出たわね」
銀八「そりゃあ初めての小説だし、何としても完結させたいって言う親心だよ」
アリス「ま、無茶しない程度にね」
銀八「書けない時もネタ集めたりしなきゃな。そういやFate/ホロウをクリアしたから今八命陣やってんだよ」
レミリア「Diesと神咒ネタがあって面白いわね。流石正田卿よ」
「昨日晶ルートクリアして今歩美ルートだ。今年中に全クリしたいな。……あとさ、邯鄲見て思ったんだが、お前ら「赤夜叉」さんって知ってるか?」
早苗「知ってます!リリカル銀魂の!」
銀八「作者が初めて読んだ銀魂二次創作だ。Fateのやつもあったな~。なんか作者、銀魂とクロスした作品にハマる傾向があるみたいなんだよね」
アリス「で?それがどうしたのよ」
銀八「その人が書いたオリジナルに「イメージ」ってやつがあってな。イメージするだけで色んな事が出来るやつがリリカルなのはの世界に行く話。神様転生じゃなくていつの間にか行ってたやつだ。で、このイメージ、何かに似てないか?」
レミリア「……あ、邯鄲の夢?」
銀八「そうだな。八命陣が出るずっと前にあった話だ。それでふと思い出したんだよ。懐かしいねぇ」
アリス「もう六年くらい前じゃなかった?」
銀八「ああ、もうそんなに立つのか。作者(おれ)も年取る訳だよ。あの人の作品で二次創作を知ったんだよな」
早苗「月日の流れですか。今こうして書いてるのも赤夜叉さんの影響ですかね」
銀八「そうさな。あの人の影響はデカいよ。なんかリリカル銀魂の三次創作が流行ったから退会したんだよな。それだけ影響ある人だよ」
レミリア「なるほどね。話変わるけど、八命陣クリアしたら次は何するの?」
銀八「絶望少女だな。順序が狂ったけど今から楽しみだ」
アリス「ところで今年のクリスマスを作者はどう過ごすの?」
銀八「何時も通り家族とティッキンを食べて、酒飲みながらパシフィック・リム観る」
アリス「なんでチキンの発音がいいの!?」
銀八「いや、家族がチキンのことをティッキンて言うから。さてこんなもんか。今年も色々あったけど、来年も東方万事屋をよろしく。それでは良いお年を。アウフ・ヴィーダゼーン!」
三人「ジークハイル・ヴィクトーリア!」